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1060話 魔力と星なし

「ジナル。今話した内容を、両ギルドは発表するんだな」


セイゼルクさんがジナルさんを見る。


「あぁ、言い回しはもう少し丁寧になるだろうけど、同じ内容だ。ちなみに星3つの事についても話す筈だ」


「あれ? 『公式な発表はまだ出来ない』って言っていたのに?」


私が首を傾げてジナルさんを見ると、彼は楽しそうな表情を浮かべた。


「公式な発表はしないけど、ほら」


ほら?


「つい、ぽろっと話してしまう事もあるだろう?」


「あぁ、星を3つ貰った者達の中には、これ以上成長しないと思って放置する者もいるから。そいつ等への警告だな」


シファルさんが笑ってジナルさんを見ると、彼は肩を竦めた。


「でも、その情報が間違っていたらどうするの?」


事例が少ないんだよね?


「公式に発表したものなら謝らないと駄目だけど、違うから」


あぁ、だからつい、ぽろっとなんだ。


ジナルさんを見ると、彼は楽しそうに笑っていた。


「で、発表出来ないけど、話せる事はないのか?」


お父さんの質問に、ジナルさんが少し考え込む。


「そうだな。最低7年と言ったけど、今回集めた情報をもとに導き出した答えなんだ。だから、場合によってはもっと短い期間でスキルをもらえるかもしれない。あと、スキルを得ると成長が早くなるようだ」


ジナルさんの説明にラットルアさんが首を傾げた。


「成長が早くなるとは?」


「これはスキルが増えたり変わったりした者達の証言なんだけど、彼らによると、毎日同じ訓練を続けていると、ある日ふと前日よりも体の動きが良くなったと感じる事があったそうだ。その日以降、自分の成長も実感しやすくなったらしい。今回スキルに変化があったと気付いた者は、『動きが良くなった時期にスキルをもらえたのだろう』と話していた」


スキルの有無って、そんなに大きいんだ。


「それは、最初からスキルを持っていると感じられない事だな」


シファルさんが感慨深げに言うと、セイゼルクさん達も頷いた。


「これについては調べている最中だけど、実際にスキルが変化した者達の言葉だからな。おそらく本当に成長速度に変化があるんだろう」


ジナルさんは話し終えると、なぜか私をチラッと見た。

そんなジナルさんの態度に首を傾げると、彼は天井に視線を向けた。


「なんだ?」


ジナルさんの態度に眉間に皺を寄せるお父さん。


「アイビーは、これからどうするか決めたのか?」


急に私の事?


「私は、冒険者登録をするつもりだけど……」


「それは」


「『捨てられた大地』へ行きたいから」


私が言い切ると、ジナルさんが小さく息を吐き出した。


「そうか」


ジナルさんが真剣な表情で私を見る。


「フォロンダ公爵が、アイビーが冒険者になると決めたら伝えて欲しいと伝言を預かった。スキルの件で、彼はまた忙しくなってしまって会う時間が取れないそうだから」


フォロンダ公爵から?


「伝言はなんですか?」


私が冒険者になると決めたらって、どういう事だろう?

もしかして、冒険者になっても「捨てられた大地」へは行けないとか?


「星なしについてだ」


ジナルさんの言葉に、心臓がドキッと強く脈打つ。


「はい」


「昔、星なしについて調査した者がいた。その者が残した書類から、『星なし』が現れるのはテイマーだけだそうだ」


ジナルさんの言葉に、私だけでなく皆が驚いた表情をした。


「さらに、星なしのテイマーだけが、全ての魔物をテイム出来る可能性を持っているそうだ」


「えっ? 全ての魔物を?」


私が疑問を口にすると、ジナルさんが頷いた。


「人にも魔物にも、二種類の魔力があるそうだ。分かりやすく言うと、それは『赤い魔力』と『青い魔力』の二つだ」


赤い魔力と青い魔力か……。


「そして、違う色の魔力を持つ者同士は、相性がよくないみたいだ。相性が悪いと、たとえ話が合ったとしても、自然と挨拶程度の関係になったり、理由のない不快感を覚えたり、無意識に距離を置いてしまうんだ」


魔力の相性って大切なんだね。


「それは魔物にも当てはまる。違う色の魔力を持つ魔物は、テイムが出来ないんだ。魔物が強く拒絶するから。もし無理やりテイムしようとしても、死ぬまで抵抗し続けると書いてあったそうだ」


「そこまで嫌がるのか」


ジナルさんの説明を聞いて、ヌーガさんが声を上げる。


「残っていた書類を読む限りそうみたいだ。魔物の本能が、拒否するんだろうな」


魔力の色がそこまで影響するなんて。


「全ての魔物をテイム出来る可能性……もしかして、アイビーには魔力の色がないのか? もしくは、両方の色を持っているとか?」


「えっ?」


お父さんの呟きに、思わず声が漏れた。


「星なしについて書かれていた書類には『色がない』とあったそうだ」


ジナルさんの返答が聞こえ、慌てて彼を見る。


「アイビーの周りには、木の魔物やサーペントが集まってきたよな?」


「サーペントさん達は、確かに沢山集まってくれたと思う」


ジナルさんの言葉に、少し考えてから頷く。


「木の魔物についてはまだ分からない事が多いけれど、サーペントについては特別な存在だと言う事が、ある書類から分かったんだ」


特別?


「サーペントの集団には、赤い魔力と青い魔力、両方の色を持つ個体が一緒にいて、それが大きな集団を作る事を可能にしているようなんだ」


ジナルさんの説明を聞きながら、サーペントさん達の事を思い出す。

どのサーペント達も、優しかったな。


「あぁ、それでか」


お父さんが納得した表情で頷いた。


「お父さん、どうしたの?」


「アイビーはどのサーペントにも触れていたけど、俺だと絶対に触らせてくれないサーペントがいたんだよ。もしかしたら、その子の持つ魔力と俺の魔力の色が違ったのかもしれないと思ってな」


えっ、触らせてくれないサーペントさんがいたの?

気付かなかった。


「どのサーペントにも拒否される事なく触れたという事は、星なしについて調べていた者の出した答えが正解なんだろう。あと、星なしの魔力は魔物達にとって気持ちが良く、落ち着かせる事が出来るかもしれないとあったそうだけど、何か思い当たる事はないか?」


私の魔力が、魔物にとって気持ちが良い?


「えっと……それはないと思う。私を見て襲ってきた魔物もいるし」


「そうか」


少し残念そうに呟くジナルさんに、私は首を傾げる。


「捨てられた大地の魔物に効くか期待したのか?」


シファルさんが呆れた表情で言うと、ジナルさんが申し訳なさそうに私を見た。


「ごめん」


「『捨てられた大地』の状況は酷いのか?」


お父さんが険しい表情をすると、ジナルさんが小さく何度も頷いた。

ジナルさんの反応を見て、お父さんもセイゼルクさん達も黙り込んだ。


「酷いって何が?」


ジナルさんが私を見る。


「『捨てられた大地』から、毎年数匹の魔物が溢れているんだけど、今年はその数が一気に増えているんだ。それに、自我を失って暴れる魔物がここ数ヶ月で倍増した。おそらく『捨てられた大地』で何かが起こっているんだと思う」


王都が襲われるまでまだ時間があると思ったけど、違うのかな?


「『戴冠式が終わり数年後』か。1年後に王都が襲われる可能性もあるんだな」


えっ、1年後?


お父さんの言葉に、首を傾げる。


「そうだな。数年後と書いてあったから、2年か3年は猶予があると思ったけど……」


私もシファルさんと同じ感覚だったけど、1年後の可能性もあるんだ。


「間に合わない。どうしたらいいんだろう」


ジナルさんの話から、どう頑張っても「捨てられた大地」へ行くまでにスキルは得られない。

でも、頑張って練習を続ければいいという事は分かった。

だから、2年くらいかけて皆の足を引っ張らないようになろうと思っていたけれど、まさか1年後にそんな事態が起きるかもしれないなんて……。


「『行かない』という気持ちにはならないんだな」


「えっ?」


シファルさんの呟きは小さすぎて、よく聞き取れなかった。


「いや。もう少し、練習時間を増やそうか?」


「はい。お願いします」


2~3年かけて強くなるつもりだったけれど、1年、いや、半年で強くならないと。


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― 新着の感想 ―
星はあえて増やさない方がいいのかもね 後からスキルを習得できる世界になっていくのかな
スキルが消えるについては使わない以外に 似た系統のスキルの熟練度が揃って統合進化して上位スキルになる場合もありそう
アイビーにあった空白のスキルスロットには料理か弓術か投擲か⋯ 少なくとも剣術が来ないことは確かだw
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