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1046話 魔法陣の扱い方

甘味を食べながらのんびりしていると、食堂にトンガさんとボーグさん達が来た。


「奴から話を聞けましたか?」


シファルさんの質問にトンガさんが頷く。


「商人の指示で結果を見に来たそうです」


予想した通りだね。


「あの魔法陣は、魔物を呼び寄せるものだったそうです。本来なら今頃は、果樹園が魔物に襲われている筈だったのに、何も起こっていない。それを不思議に思って近付いて様子を見ていたと言っていました」


魔物を呼び寄せる魔法陣だったんだ。


「本当に恐ろしい事を考えるものですよね」


トンガさんは疲れた様子で椅子に座った。

ボーグさんがトンガさんの前にお茶を置くと、トンガさんはお礼を言って一口飲む。


「森の中で魔物を呼び寄せるなんて、しかも今は異常な魔物の目撃情報が増えているのに」


トンガさんの呟きに、ボーグさんが肩を竦めた。


「商人はギルドを通して取引をしようとしたみたいですが、ギルドの方で却下されたみたいです。それで直接交渉に来た。でもオトガさんに断られた事で逆恨み。『わざわざ俺が来てやったのに断るなんて許せない』と言っていたみたいです」


サーガさんが呆れた様子で話すと、シファルさんも呆れた表情になった。


「なんだその考えは、ありえないだろう」


ヌーガさんが不機嫌そうに呟くと、トンガさんが小さく笑う。


「一部の商人には、身勝手な考えで行動を起こす人が多いですよ」


「他にもいたんですか?」


ラットルアさんが驚いた声を上げる。


「はい。『自分達と取引するまで嫌がらせしてやろう』と、魔物除けの中身を入れ替えられた事もありました」


トンガさんの説明に、ラットルアさんの眉間に皺が寄る。


「匂いに違和感があったのですぐに気付きましたけど、あの時はいつもの取引相手から買った物だったから、少しショックでしたね。魔物除けを買う取引相手を変えても、また同じことが起きたので、それ以降は薬草を買って自分達で魔物除けを作ることにしたんです。そのために、必死で薬草の勉強をしましたよ」


魔物除けの薬草は種類が多いし、組み合わせで効果も変わる。

勉強はきっと大変だっただろうな。


「ここにいたのか」


セイゼルクさんの声に視線を向けると、疲れた表情で食堂に入って来た。


「随分、疲れているみたいだな。魔法陣の事で問題が起きたのか?」


シファルさんが心配そうに聞くと、セイゼルクさんが溜め息を吐きながらヌーガさんの隣に座る。


「いや、それは大丈夫。ただ、魔法陣を利用したい貴族に捕まって、色々聞かれたんだよ。自分達が求める答えを言うまで、何度も何度も同じ事を聞くから、さすがに切れそうになったよ。まぁ、最後は知り合いの貴族が助けてくれたけどな」


セイゼルクさんの説明に、シファルさんが首を傾げる。


「魔法陣を利用? どういう事だ?」


「噂が広がり過ぎて、魔法陣の事を隠し通せなくなっているんだ」


そんなに広まっているんだ。


「その噂、誰かがわざと広げている可能性は?」


ラットルアさんの表情が険しくなる。


「ある。おそらく魔法陣を利用したい貴族共だろう。あいつらは危険より、地位と金が大好きだからな」


魔法陣を使ってお金稼ぎ?

でも、魔法陣を使ったら最後は死ぬよね?


「あいつらは、魔法陣の本当の恐ろしさを理解していない。だから自分達なら使いこなせると、なぜか妙な自信があるんだよな」


セイゼルクさんの説明に、シファルさん達が嫌そうな表情になる。


「いるんですよね。なぜか自分達は守られているから大丈夫と考えている貴族が」


トンガさんを見ると、遠い目をして溜め息を吐いていた。


「貴族と何かあったんですか?」


ラットルアさんの質問に、トンガさんが乾いた笑いをこぼす。


「えぇ。果樹の中には、夜中に花を咲かせる種類があるんです。それを知った貴族が、どうしても見たいと言い出したんです。しかし、夜の森は危険なので、俺達は『夜は魔物が活発になるので危険ですから、来ないでください』と何度もお願いしました。それでも貴族は『俺は大丈夫だ』と言って夜中に森に入ってしまい、案の定、魔物に襲われてしまったんですよ」


大丈夫という自信はどこから来たんだろう?


「それで終われば良かったんですが、なぜか魔物に襲われたのは俺達のせいだと騒ぎ出して……はぁ」


わぁ、それは最悪だ。


「大変でしたよね。知り合いの貴族が間に入ってくれるまで、色々と」


ボーグさんが言葉に、トンガさんが力なく頷く。


「もう、あの時の事は思い出したくもないですね。あの、魔法陣を利用して本当に大丈夫なんですか? 最終的に死んでしまうんですよね?」


トンガさんが心配そうにセイゼルクさんを見る。


「魔石に込められた力を使う魔法陣だったら、安全な使い方もあるみたいです。色々制限はあるみたいですが」


「そうなのか?」


セイゼルクさんの説明に、ラットルアさんが声を上げる。


「あぁ、調査したり実験したりして分かったみたいだ。あと、ジナルが持っていた魔法陣の本。これがかなり役に立ったそうだ」


本屋さんから持ってきた魔法陣の本の事だ。

もしかしたら、魔法陣が噂で広まる未来が見えたから、あの本をジナルさんに託したのかもしれないな。


「安全だと言われても、ちょっと怖いですけどね」


トンガさんは、すぐには手を出さないだろうな。

彼は慎重な性格のようだから。


「まぁ、怖い物ではありますから、必要ないなら手を出さない方がいいでしょう」


セイゼルクさんの説明に、トンガさんが神妙に頷いた。


「そういえばシファル。今日はどうだった?」


「トースの巣は全部で7個。全て駆除した」


「7個か。昨日も思ったけど、巣の数が多いよな」


シファルさんの説明に、セイゼルクさんが呟く。


「あと、巨大化したトースが襲いかかってきたから討伐して、調べるために持ち帰って来た」


「トースも?」


目を大きくするセイゼルクさんにシファルさんが頷く。


「あっ、持って帰ってきたトースですが、明日捕まえた冒険者を冒険者ギルドに連れて行くときに、一緒に持っていきますね」


トンガさんの言葉に、シファルさんが視線を向ける。


「では、お願いします」


シファルさんが床に置いていたマジックバッグの1つを、トンガさんに差しだした。

トンガさんはそれを受け取ると、マジックバッグの蓋を少し開けて中を確かめ、すぐに閉めた。


「そうだ。ボーグさん」


お父さんがボーグさんを見る。


「はい」


「ここ2日、ノースを見かけましたか?」


「ノース? あれ?」


お父さんの質問に考え込むボーグさん。


「ここ2日は全く見かけていません。3日や4日前は、1日に1回は目撃していたのに……」


ボーグさんの言葉に、サーガさんが頷く。


「ノースの活動場所が変わったのか。それともこちらを警戒しているのか」


シエルがいるからか。


「警戒?」


シファルさんの言葉に、ボーグさんが首を傾げる。


あっ、魔法陣の事でソルの事は話したけど、シエルの事はまだ話していなかった。


シファルさんをチラッと見ると、彼は手で顔を隠していた。


「明日も、今日に続いてトースの巣を探そうか。同時に、ノースの痕跡も」


セイゼルクさんの言葉に、ラットルアさん達が頷いた。


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― 新着の感想 ―
貴族は1割も残らなさそう……
シファルさんが好きすぎるんだがこれは恋か!?恋に落ちたみたいだーーー!!!
かわいそうなフォロンダ領主様。このままだと、彼以外の貴族はみんな途絶えてしまう。。。
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