表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1125/1158

1038話 果樹園の果物

今日から寝泊まりする部屋に入ると、少し大きめのベッドとテーブルにソファがあった。


「思ったより広いな」


後ろから覗き込んでいたお父さんが呟く。


「そうだね。ベッドも普通の宿にあるものより大きいね」


私はベッドのそばに寄って、少し押してみた。


うん、しっかりしたベッドだ。


「見回りの準備が出来たら呼びに来るよ」


「分かった。あっ、待って。マジックアイテムを起動させるから」


お父さんが部屋に入ると、マジックアイテムを起動させてからソラ達を出す。


「ぷっぷぷ~」


「てっりゅりゅ~」


「ぺふっ」


「にゃうん」


ソラ達はバッグから出ると、みんなで部屋を探検し始める。


「問題なさそうだな。それじゃ、準備して来るよ」


お父さんが部屋から出ると、皆に視線を向ける。


「今日から2週間、この部屋で寝泊まりするからね」


「ぷっぷぷ~」


ベッドに上がったソラが、私を見ながらピョンピョンと飛び跳ねる。


「気に入ったの?」


フォロンダ公爵の屋敷にあるベッドより硬めなんだけど、好の硬さなのかな?


「ぷっぷぷ~」


「気に入ったんだ。あっ、もしかしてよく跳ねるから?」


「ぷっぷぷ~」


「てりゅ?」


ソラの反応を見て、フレムもベッドに上がると、ぴょんぴょんと跳び跳ねる。


「ぷ~?」


フレムが飛び跳ねると、傍で飛び跳ねていたソラの体が傾く。

それに気付いたフレムが、楽しそうに飛び跳ねる速度を上げた。


「ぷぷっ!」


「てりゅ~」


怒ったように鳴くソラと、楽しそうに鳴くフレム。

そんな2匹の様子を、ソルは眠たそうに窓辺から見つめている。

シエルは元の姿に戻り、窓の外を眺めながら尻尾を軽く振っていた。


「皆、自由だね」


4匹の様子を見ながら、果樹園を見て回る準備をする。

矢がたくさん入っているマジックバッグを肩から下げると、弓を手に取る。


コンコンコン。


「はい」


「アイビー、俺だ。開けてもいいか?」


お父さんだ。


「どうぞ」


お父さんが部屋に入ってくると、ベッドの上で競うように飛び跳ねているソラ達を見て笑った。


「何をしているんだ?」


「最初は飛び跳ねるのが楽しかったみたいだけど、今は……ぶつかり合っているのかな?」


「てりゅ~」


ソラと空中でぶつかったフレムが、ベッドから転がり落ちる。


「フレム、大丈夫?」


足元に転がってきたフレムを見る。


「……てりゅ!」


「あっ、楽しかったみたいだな」


目をキラキラさせて鳴くフレムを見て、お父さんが笑う。


「そうみたいだね」


フレムはベッドの上に戻り、ソラを見る。

そしてソラに向かって、勢いよく飛び跳ねた。

勢いを増したフレムのせいで、今度はソラがベッドから転がり落ちる。


「ぷぷ~」


楽しそうに転がるソラ。


「なんでも楽しめるっていいよな」


お父さんは、そんな2匹を微笑ましそうに見た。


コンコンコン。


「アイビー、こっちにドルイドが来ていないか?」


セイゼルクさんの声に、お父さんが部屋の扉を開ける。


「ここにいる。用事か?」


「そろそろ見回りに行こうと思う。準備は出来ているか?」


お父さんは私を見て、セイゼルクさんに頷く。


「大丈夫だ」


「では、行こうか。外で待ってるよ」


セイゼルクさんの話を聞いたソラ達は、いつものバッグの傍に集まる。


「皆、一緒に行ってくれるんだね」


「ぷっぷぷ~」


「てっりゅりゅ~」


「ぺふっ」


「にゃうん」


いつもと少し違う鳴き声をあげるシエルを見る。

視線が合うと、尻尾が楽しそうに揺れた。


「シエル、やる気だな」


「にゃうん」


お父さんを見て、少しだけ尻尾の揺れが激しくなるシエル。


確かにやる気だ。


皆をバッグに入れ部屋を出ると、しっかりと鍵をする。

宿泊施設の出入り口にいたセイゼルクさん達と合流すると、果樹園の周辺を見て回る。


「アイビー、そろそろ皆を出してもいいぞ」


お父さんの言葉に、皆が入っているバッグを開ける。

バッグから出てきたソラ達は、歩きだした私達の周りを自由に跳ね回った。


「にゃうん」


しばらく歩くと、シエルが本来の姿に戻り、近くの木の上に乗った。


「上から見て回ってくれるの?」


「にゃうん」


私の質問に、鳴き声で答えるシエル。


「シエル、ありがとう。頼むな」


「にゃうん」


シエルはセイゼルクさんを見ると、一声鳴いた。

そして、颯爽と木々の間に消えていった。


「色々な果樹があるね」


果樹園を左手に見ながら、森の様子を見て回る。


「そうだな。高値で取引されている高級果樹ばかりだ。森の中でしか育たない種類だからだろうな」


お父さんの説明に頷く。


もし普通に育つ果樹だったら、安全な門の中で育てるはずだよね。

だから、ここにあるのは森の中でしか育たない種類なんだろう。


私の隣を歩くお父さんが、ある果樹を指す。


「あれは、森の奥でしか育たないと言われている果樹だ。本当に貴重なんだぞ。ここにあるという事は、森の奥以外でも育てられるようになったんだな」


「そうなんだ」


あれ?

楕円形で、全体にオレンジ色だけど先だけ青い果物は見た事があるな。

あっ、シエルが案内してくれた先で収穫した果物だ。

ちょっと酸味があって凄くおいしかったな。


「あの果物、貴重だったんだ」


案内してくれた場所にはたくさん実っていたから、かなり食べた記憶があるな。


「その奥にある果樹も、珍しいぞ」


ラットルアさんが指す方を見ると、黄色い細長い実が沢山実っていた。


「あぁ、あれも珍しいんだ」


濃厚な甘さでおいしかったよ。


「少し先にある果樹も珍しい種類だぞ。薬実としても使う事もあるんだ。まぁ、そう簡単に手に入らないけどな。まさかここで見られるとは思わなかったな」


セイゼルクさんが指した少し先にある果樹を見る。

丸くて青い実が実っている。


「あれも……」


さっぱりした甘味で、あれを食べた翌日は足が軽く感じたな。

薬実だったんだ。


あっ、その近くにある果樹も、隣にある果樹も見たことがあるし、どちらもおいしかったな。


「本当に珍しい果樹が多いな。森の奥でしか育たないと言われていた種類もたくさんある。ここは凄いな」


シファルさんが感心した様子を見せると、セイゼルクさんが頷く。


「にゃうん」


「シエル?」


木々の間から姿を見せたシエルが、森の奥を見てから私を見る。


「何か見つけたの?」


「にゃうん」


「まさかトースの巣を、もう見つけたとか?」


「にゃうん」


お父さんの疑問に元気に答えるシエル。


「行ってみよう」


セイゼルクさんの言葉に、シエルが地面に下りてくると先導し始めた。

シエルは数分歩くと立ち止まり、上を見上げた。


「この上?」


セイゼルクさんがシエルの傍に立ち見上げる。


「ん~?」


セイゼルクさんがジッと上を見ている横で、私も上を見る。

でも木々の葉が邪魔で、上の様子がよく見えない。


「あった」


シファルさんを見ると、マジックアイテムを使ってトースの巣を見ていた。


「貸してくれ」


シファルさんがセイゼルクさんにマジックアイテムを渡すと、セイゼルクさんがそれを使って上を見る。


「あぁ、本当にあるな。シエル、ありがとう」


セイゼルクさんが傍にいるシエルの頭を撫でる。


「にゃうん」


「どうする? すぐに巣を駆除するのか?」


お父さんがセイゼルクさんを見ると、彼は頷く。


「あぁ、もう一度ここに来るのは面倒だ。見つけたらその都度、駆除していこう。今回は、ラットルアとヌーガで頼む」


「「分かった」」


ラットルアさんとヌーガさんが木登りの準備をする。


「お父さん、トースの巣はどうやって駆除するの? 子供がいるの?」


「この巣に、トースの子供はいない。トースは森の奥で子供を育てて、ある程度育たないと出てこないから」


そうなんだ。

だったら、木の上にある巣はなんなんだろう?


「餌場の近くに作る巣は、新しいつがいを見つけるために作るんだ。だから巣を壊されると、この場所は良くない場所だと思って去っていく筈だ。もし去らない場合は、討伐する事になるけどな」


トースって、なんだか不思議な魔物だな。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
だいたい食べことあるのかw
うわああああ追いついてしまった!!! ここまで本当に面白かったです! 更新楽しみにしてます!(更新待ちながら1からまたみます!)
シエルのやる気満々発言に、これまでにシエルにやらかし履歴w アイビー、旅って楽しいね( ˊ̱˂˃ˋ̱ )
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ