10話 2つ目の村
罠にかかった野ネズミの解体をする。
最初の頃に比べると、ずいぶん早く解体が出来るようになった。
解体では匂いが、大敵となる。
気を付けていても、血の匂いがどうしても充満するのだ。
なるべくささっと解体して、すぐに移動。
これが私の基本だ。
解体した肉を水で洗って、大き目のバナの葉で綺麗に包む。
バナの葉は、殺菌効果があり、よく使われている。
森の中では、簡単に見つける事が出来る木の1つだ。
それをバッグに入れて、解体で出た骨などはそのままその場に残す。
素早く解体しても、血の匂いで誘われてどうしても魔物が来てしまう。
骨などを残すのは、そちらに魔物を引き付け、私の移動する時間を稼ぐのだ。
何度か経験して、この方法が一番安全だと気が付いた。
立ち止まって耳を澄ます。
人の気配と、微かにだが声も聞こえる。
どうやら2か所目の村に着いたようだ。
此処からは村に入って、情報を仕入れる予定だ。
バッグの中にある肉は少し前に捌いたばかり、少しお金に替えられないだろうか?
村の様子を見てから考えよう。
……
村には旅人の姿を、多数見ることができた。
冒険者の格好をしている者も、結構見られる。
この村なら部外者が肉を売っても、目立つことはないだろう。
野ネズミの干し肉は栄養価が高く人気だと聞いた。
売るなら、鮮度が大切だな。
村の中心にある通りから、周りを見渡す。
肉を売っている店の中から、村の中心部に一番近い肉屋に入る。
「すみません、野ネズミのお肉を売りたいのですが」
「お、野ネズミか?ちょっと見せて見ろ」
体格の良い男が店の奥から顔を出す。
私の姿を見て少し驚いたようだが、何かを聞かれることはなかった。
バナの葉に包まれた肉をそのまま渡す。
男は肉を確認して、1つ頷いた。
初めての事なのでドキドキと心臓がうるさい。
「鮮度がいいな、いいぞ。この量だと100ダルだな」
近くに売っていた、干し肉の値段を見る。
私の食料の5日分の干し肉が、100ダルぐらいか。
そんなモノだろう。
「それで、お願いします」
「はいよ」
手の中に100ダルが乗る。
初めてお金を手にして、ちょっと感動する。
「また、捕ったらよろしくな。
最近は大物狙いが多くてな。野ネズミを持ってくる奴は少ないんだ」
1つ頭を下げて店を出る。
落とさないように、腰に括り付けたバッグにお金をしまう。
腰ひもをくくり直して、村から出て森に入る。
「やった!」
自分でお金を稼げた事に、顔がにやける。
私のスキルでは仕事には就けない。
大変だけど、狩りをしてお肉を売れば、生活ができるかもしれない。
ほんの少しだけど、未来を想像できることがうれしい。
「野ネズミを狩って、もう少しだけお金を稼いでから移動しようかな」
森の中に、寝床にちょうど良い木を見つける。
寝床にできるかどうか、周りを確認していく。
木の周りに残された魔物の痕跡を調べる。
もう一度気配を探ってみるが、危険を感じるような気配はない。
今日はいい気分で、寝ることが出来そうだ。
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