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1012話 敵? 味方?

「狙われた理由は、問題の薬草だろうな」


ラットルアさんの言葉に、お父さんが頷く。


「間違いなくそれが原因だな。ところで、敵の気配や魔力を感じ取れるか?」


お父さんが、ラットルアさんと私を見る。


気配に魔力?

あれ?

殺気は感じるけど、気配も魔力も感じ取れない。


「私はどちらも感じない。ラットルアさんは?」


「俺も同じだ。という事は、マジックアイテムを使っているな。しかもかなり高額な物を」


ラットルアさんは嫌そうな表情をすると溜め息を吐く。


高額なマジックアイテムに、豪邸の並ぶこの場所。


貴族が関わっているのかな?


「敵の様子を確認するか」


お父さんはそう言うと、壁沿いに移動して壁の横から少し顔を出した。


ドスッ。

ドスッ。

ドスッ。

ドスッ。


「お父さん!」


「大丈夫だ。見張り役は、かなりいい目をしているな。でも、矢を放っている奴等の実力は微妙かな」


「どうして?」


地面に刺さっている矢を見て、首を傾げる。


「矢の刺さっている位置だ」


位置?


4本の矢は、私達から少し離れた場所に刺さっている。


これで、何が分かるんだろう?


「シファルなら、顔を出した壁に矢を刺す。あと地面に刺さった矢も、もっと俺達の傍だろう」


あぁ、確かに。

シファルさんなら、もっと私たちの傍を攻撃するね。

つまり、シファルさんほど上手くないという事か。


「敵は何人ぐらいだと思う?」


ラットルアさんが、お父さんを見る。


「5人以上だな」


4本の矢は、ほぼ同時に地面に刺さったから最低でも4人。

それと、私達の動きを見張っている者が1人か。


「どうする? 隠れたこの場所もちょっと間違ったしな」


お父さんが周りを見る。


「そうだな」


ラットルアさんも、困った表情で周りを見る。


私たちが隠れている場所は、矢を放ってきた豪邸の庭と道を隔てる1mほどの高さの壁。

壁伝いに移動が出来そうだけど、途中で見通しのいい柵に変わっているため無理なんだよね。


「あっ」


シエルの入っているバッグを見る


「どうした?」


お父さんが私を見る。


「シエルの入っているバッグが揺れているの」


「本当だ。もしかして、協力してくれるのか?」


お父さんの質問に、激しく揺れるバッグ。


「ありがとう。でも、どうするか」


お父さんの眉間に皺が寄る。


「俺とドルイドが敵の視線を集めている間に、シエルが庭を突破するのはどうだ? 奴等も魔物が、しかもアダンダラが襲って来るとは思わないだろうから、かなり混乱させる事が出来る筈だ」


ラットルアさんが私を見る。


「シエルには、少し危険なんだけど」


激しく揺れるバッグを見る。


「シエルはやる気みたい」


心配だけど、シエルはものすごくやる気だと思う。

さっきから揺れが激しい。


「よし、そうと決まれば――」


「ラットルア、待て。誰かがこっちに来る」


お父さんの言葉に、周りの気配を探る。


「本当だ。気配の消し方から、上位冒険者3人だな」


ラットルアさんの言葉に頷く。


「アイビー。バッグの蓋を開けて、シエルが飛び出せるようにしてくれ」


「分かった」


バッグの蓋を開けて中を覗き込むと、プルプルと揺れるシエルがいた。


「シエル、近付いて来る冒険者達が敵だったら、すぐに矢で攻撃してきた者達の下に行って暴れ回って欲しい。少し危険だが、大丈夫か?」


「にゃうん」


バッグから少し顔を出すシエル。


「ありがとう。もし味方だったら、そのままバッグの中にいてくれ」


「にゃうん」


あっ、少し残念そうな鳴き方になった。


気配を感じた冒険者3人が、私たちのいる通路に曲がって来るのが見えた。

彼らの視線がこちらに向く。


「あっ」


その姿を見たラットルアさんが、小さく声を上げた。


「あれ? ラットルアか? そんな所で何をしているんだ?」


こちらに向かって来る冒険者の1人が、ラットルアさんを見て笑顔で手を振る。


「止まれ」


「んっ?」


ラットルアさんを見て首を傾げる冒険者。

その彼の隣にいた冒険者が地面に刺さった矢を指す。


「げっ、なんだこれ。もしかしてラットルアが襲われたのか? 何をしたんだ?」


「どうして俺のせいなんだ? 急に襲われたんだよ。ところでガトラ達は、どうしてここにいるんだ?」


ラットルアさんとガトラさんと呼ばれた冒険者を見る。


「この辺りの見回りを頼まれたんだよ」


ガトラさん達は、身を隠しながらこちらに近付く。


「問題はこの家か?」


ガトラさん達が、問題の豪邸に視線を向ける。


「そうだ。問題になった薬草の臭いがすると思ったら、矢で攻撃された」


ラットルアさんの説明に、ガトラさん達が顔を見合わせる。


「どうした?」


不思議そうにガトラさんを見るラットルアさん。


「新たに分かった問題と関わりがあるのかと思って」


「新たに分かった問題?」


なんだろう?


「問題の薬草とある特定の薬を同時に使うと、暴力的になるみたいだ」


「そうなのか?」


「あぁ、今日の午前中に騎士団と冒険者ギルドがその情報を掴んだ。俺達は見回りの前に、この情報を聞いたんだけど、どうもそれを知った誰かが薬屋の店主とその家族を殺して、薬を大量に手に入れたようだ」


「随分と情報が早く回ったな」


お父さんが険しい表情でガトラさん達を見る。


「明日の戴冠式に問題を起こすかもしれないと、冒険者ギルドがすぐに情報を回したんだ。俺達は無関係だからな。といっても。信じられないかもしれないが」


ラットルアさんがお父さんを見る。


「彼らは、商人達の護衛を仕事にしている冒険者だ」


「知り合いなのか?」


「うん。前に一緒に仕事をした事があるんだ。『豪』チームでリーダーのパパス」


ラットルアさんが、女性の冒険者に視線を向ける。


「はじめまして、よろしく」


リーダーは女性なんだ。

今まで出会った女性の中で、一番体格がいいな。

緑の髪で、目の色も緑だ。

カッコいい。


「その隣が、パパスの弟でパガス」


ラットルアさんが、パパスさんの隣にいる冒険者を見る。


「よろしく」


パパスさんの弟?

確かに髪色は一緒で緑だけど、パパスさんより細身だ。

顔付きも、あまり似ていないな。


「さっきからうるさいのがガトラだ」


「うるさいってなんだよ」


ラットルアさんを睨むガトラさん。

彼は不服みたいだけど、パパスさんとパガスさんが頷いている。


「お前らな」


そんな2人に気付いたのか、ガトラさんがパパスさん達を見る。


「それより、早く合図を。異常事態の場合は、すぐに知らせる事になっているだろう?」


「あぁ、そうだったな」


パパスさんの言葉に、ガトラさんがマジックバッグから何かを取り出す。


あれは、なんだろう?


ガトラさんが取り出した物は、丸い穴が開いた白い箱形のマジックアイテム。

パパスさんが「合図」と言っていたから、誰かに異常を知らせる物だろうけど初めて見るな。


「ちょっとうるさくなるぞ」


「うるさく?」


ガトラさんの説明にお父さんが首を傾げる。


「通常は煙だけなんだけど、これは音も出るらしい。俺も初めて使うから、どんな音なのかは知らないけどな」


ガトラさんはそう言うと、丸い穴を上に向けた状態でマジックアイテムのボタンを押す。


ボボボボボン。


「うわっ」


大きな音に、慌てて耳を防ぐ。

すぐに音は消え、空に向かって黒い煙と赤い煙が上がった。


「うるさすぎるだろう」


ラットルアさんがガトラさんに向かって怒鳴る。


「悪い。まさかここまで音が大きいとは聞いていなかった。ただ『ちょっとうるさいから気を付けて下さいね』と聞いただけなんだ」


それは説明不足だね。


ガシャーン。


「んっ?」


豪邸から、ガラスの割れる音が響いた。


「最弱テイマー」を読んで頂きありがとうございます。

隠れている場所を「建物」から「壁」に変更いたしました。

よろしくお願いいたします。


ほのぼのる500

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― 新着の感想 ―
名前パパスで女性ということに戸惑いました。 ドラクエ世界の有名なお父さんと同じ名前なのに女性… どんな活躍するか楽しみー
残念かもだけど、「王都にアダンダラ侵入!Σ( ̄□ ̄;)」ってならなくて良かったかも。 戴冠式延期になりかねない(´д`|||) フォロンダ一派が過労死してしまう。
『敵なら暴れてきて』(=*'꒳'*=)<にゃうん 『味方ならバッグに居て』(= ¯꒳¯ =)<にゃうん この反応の落差よww でも戦闘員出払ってアイビー孤立させるのも良くないと思っていたのでとりあえず…
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