1003話 大剣を持つ女性
アマリさんの案内で住宅が集まっている道を歩く。
「子供達がいないですね」
どの町や村でも、住宅が集まっている場所には子供達とその親達の姿があった。
なのに、何故かこの通りにはいない
「ここは大通りに近いからです」
「何か問題でも起きたんですか?」
お父さんの質問に、アマリさんの表情が険しくなる。
「酒に酔った者が、子供を殴った事件がありました。あと大声で脅されたりですね」
それは酷い。
人が集まったら確かに揉め事は増える。
でも、子供を殴るなんて。
「自警団と冒険者ギルドから依頼を受けた冒険者達が治安維持に努めていますが、限界がありますから」
私も巻き込まれないように注意しよう。
「ここから大通りに向かいます。気を付けて下さいね」
アマリさんの言葉に、お父さんの服を掴む。
「行こうか」
「うん」
商業ギルドが近付いて来ると、人がどんどん増えていく。
周りに気を付けながら歩いていると、少し先から争う男性達の声が聞こえた。
「止まりましょう」
アマリさんが、険しい表情で争う男性達を見る。
「どうしましょうか? 彼等のいる場所は、商業ギルドの出入り口の前です」
えっ、そうなの?
争っている男性達の周りを見ると、確かに商業ギルドの出入り口が見えた。
「落ち着きそうにないな」
お父さんの言う通り、興奮しているのか男性達の声がどんどん大きくなっている。
「あっ、武器を出した」
争っていた男性の1人が武器を手にする、それを目にした他の男性達も武器を持つ。
「止めましょ――」
「屑共が、いい加減にいろ!」
お父さんが前に出ようとした瞬間、女性の声があたりに響いた。
そして、揉めていた男性達の傍に、大剣を肩に担いだ女性がいた。
「周りに迷惑を掛けるな。すぐに解散しろ!」
「なんだ貴様は、邪魔をするな!」
危ない!
仲裁した女性に向かって武器を振り上げる男性達。
それを見た女性は、焦る事なく大剣を使い一瞬で男性達を倒した。
「凄いな」
お父さんの呟きに頷く。
「うん。大剣は扱いにくいんだよね?」
軽々と振り回しているけど。
「あぁ、長い分扱いにくい」
やっぱりそうだよね。
「全く、こんな人通りが多い場所で争いやがって」
倒した男性達を縛りながら、女性が周りを見て手を上げた。
「こっちだ。連れて行って調べて」
自警団の服を着た2人の男性が来ると、女性は倒した男性達を引き渡す。
「見回りに戻るわ。あとは宜しくね」
「はい、ありがとうございます」
自警団に手を振って大通りに向かう女性。
「彼女は、冒険者ギルドから依頼を受けた冒険者のようだな」
お父さんの言葉に頷くアマリさん。
「そのようですね」
お父さんがチラッとアマリさんを見る。
「お父さん、何か気になるの?」
「いや、なんでもない。商業ギルドに行こうか」
「うん」
お父さんの態度に首を傾げながら、商業ギルドに向かう。
商業ギルドも、人が多かった。
特に、商品をギルド職員に確かめてもらう場所は長蛇の列だ。
「アイビー、こっちだ」
お父さんが指す方を見ると、別の列が見えた。
先ほどの列より人は少ないが、それでも結構並んでいる。
「結構並んでいるね」
「んっ?」
私を見て首を傾げるお父さん。
「えっ、並ぶんだよね?」
「あぁ、違う。列の奥にある小部屋にあるマジックアイテムを使うから、それほど並ばなくてもいいぞ」
そうだ。
残高を調べるぐらいなら、マジックアイテムがあればいいんだった。
お父さんと一緒に小部屋に入り、小窓の前にある白い板の上に家族口座のプレートを置く。
すぐにずらっと数字が並び、最後に残高が浮かび上がる。
「「えっ?」」
お父さんと顔を見合わせ、もう一度残高を見る。
どうして4600ラダルを超えているんだろう?
ポーション代かな?
それにしては多すぎる気がする。
「あっ、これとこれだ」
お父さんが指した場所を見る。
「マーチュ村からとソース権利料?」
「マーチュ村はポーション代だな。王都の冒険者ギルドがあの村の復興を手伝うと言っていたから、お金に余裕が出来たんだろう。あとソース権利料は、焼きおにぎりのソースが売れたんだろうな」
そういえば焼きおにぎりに塗るソースを、商業ギルドに登録したな。
「こめが広まった時に、ソースも広まったのかな?」
「たぶん、そうだろう」
それで、権利料が沢山入ったのか。
「ちょっと贅沢しても、問題ないな。これにフォロンダ様に売ったポーション代金も入ってくるし」
お父さんが私を見て笑う。
「そうだね」
小部屋を出て、アマリさんと合流する。
そうだ、お爺ちゃん達とオグト隊長、それにボロルダさん達に無事を知らせよう。
「アマリさん、ふぁっくすの紙を貰いたいんですが何処か分かりますか?」
「はい。こちらですよ」
「俺も父さん達に送るか。また、遅いって怒られるな」
「お爺ちゃん達元気かな?」
お爺ちゃんやお婆ちゃん、そしてシリーラさんの顔を思い出す。
「どうかな? 子供が生まれている筈だから、忙しいかもな」
「そうだ、赤ちゃん。もう、生まれているのかな?」
「あぁ、生まれているだろう」
「お祝いしないの?」
生まれたらお祝いしようと言っていたのに。
「それは3歳過ぎだろう?」
3歳?
「3歳までは魔力が不安定だから亡くなる事が多いんだよ。だから3歳を過ぎてからお祝いをするんだけど、知らなかったのか?」
「うん、知らなかった」
私は魔力が少ないから、その心配はなかったんだろうな。
あれ?
「生まれた時に、魔力は調べないんだね」
調べていたら私が魔力が少ない星なしだと、気付いていた筈だもんね。
「3歳を過ぎると魔力は安定するけど、5歳ぐらいまでは魔力が減ったり増えたりすると言われている。だから魔力量を調べるのは、5歳過ぎがいいと言われているんだ」
「そうなんだ」
知らない事が、まだあるな。
商業ギルドを出て、人が少ない道を選び武器屋「マルール」へ向かう。
遠い所で争う声が聞こえたり、何かが壊れる音も聞こえたけど、巻き込まれる事なく「マルール」に到着した。
「いらっしゃいませ」
お店に入ると、優しそうな笑顔の男性が傍に来た。
「お探しの物がありましたら、ご案内いたします」
「ありがとう。とりあえず、弓を見るか?」
お父さんが私を見る。
「うん」
男性の案内で、弓が沢山並んでいる場所に来る。
「初心者用から冒険者達が好む物まですべてございます。購入して頂いた弓は、調整いたしますので声をおかけ下さい」
頭を下げ去って行く男性。
ゆっくり見られるように、離れてくれたのかな?
「凄い量だね」
壁一面に並ぶ弓を眺める。
「気になる物はあるか?」
お父さんが私を見る。
「気になるというか、色が綺麗だよね」
ソラのように青い色をした弓に視線を向ける。
「これか?」
お父さんが、青い弓を取ってくれる。
「ありがとう」
握る部分が青く、上と下の部分は黒くなっている。
ソラとソルの色を合わせたような弓だ。
「あの子達の色だな」
「うん」
構えて弦を引く。
凄く、手に馴染む。
「弓の重さはどうだ?」
「今使っている物と変わらないみたい。ただ、弦はもう少し細い方がいいかも」
「それは買う時に相談だな」
「うん」
「これはどうだ?」
お父さんが、赤い弓を差し出す。
フレムの色だ。
「ありがとう」
あっ、これは今使っている弓より少しだけ軽い。
少し違和感があるな。
「駄目みたいだな」
お父さんと一緒に、色々な弓を試す。
「どれが良かった?」
「青い弓が、一番良かったみたい」
構えた時の、腕に掛かる重みもしっくりきたし。




