表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1087/1159

1002話 一度で十分

パンジュはとてもおいしかった。

ただやっぱり多かった。


「えっ、食べ切ったの?」


お父さんの前にある空のカゴを見る。


「うん。うまかったからな」


満足そうな表情のお父さんに笑ってしまう。


まさか食べ切るとは。

あれ?

アマリさんも食べ切っている。

私と同じ量だったのに。


「アイビーは残してもいいぞ」


「うん。私は2個でお腹いっぱい」


次は違うお肉でまた食べたいな。


「では、これから何処に行きますか?」


アマリさんが私とお父さんを見る。


「アイビーは何を見たい?」


色々考えたけど、やっぱり必要な物だよね。


「調理器具と武器が見たい」


あれ?

お父さんがちょっと残念そう。

どうして?


「アイビー。夏服は大丈夫か? 大きくなったから、サイズが合わない物も出ているだろう?」


夏服?

去年買った時に、少しだけ大きいサイズを買ったから今年は問題ない。

去年ぴったりだった物は着れなくなったけど。


「大丈夫だよ」


「そうか。あっ、靴を見に行こう」


「うん」


サイズは大丈夫だけど、裏の部分のかなりすり切れている。

このまま履き続けると、滑って怪我を負うかもしれない。


「分かりました。調理器具という事は道具屋ですね。専門店の方がいいですか?」


アマリさんが私を見る。


「はい、専門店でお願いします」


その方が、色々な調理器具が見れそうだもんね。


「分かりました。次に武器ですが、有名なのは『マルール』です。そこでいいですか?」


マルール。

王都の門で出会った白髪のおじいさんが言っていたお店だ。


「『マルール』には行こうと思っていたので、そこでお願いします」


「はい。最後に靴ですね。『マルール』の傍に王都で一番大きい靴屋がありますから、そこで見てみましょう」


アマリさんの言葉にお父さんと頷く。


「では、行きましょうか」


アマリさんに付いて、大通りに向かう。


「お父さんが見たいのは靴屋だけ? 他にはないの?」


アマリさんを追いながらお父さんを見る。


「今はこれと言って欲しい物がないからな。でも、武器は俺も見たかったからアイビーが言ってくれて丁度良かった」


「どんな武器があるのか、楽しみだね」


「そうだな」


大通りに近付くと、人がどんどん多くなっていく。


これは気を付けないと。


「あっ」


大通りに入る直前、人の波に流されお父さんとアマリさんから離れてしまう。


どうしよう。


「アイビー」


お父さんの声に視線を向けると、慌てた様子で走って来た。


「危なかった」


お父さんを見ると、心配そうに私を見る。


「大丈夫か?」


「うん、服を掴んでいい?」


「あぁ、その方が俺も安心できる」


頷くと、お父さんの服を掴む。

これで大丈夫、アマリさんは何処だろう?


「アイビーさん。良かった、いましたね。大丈夫ですか?」


「大丈夫です」


アマリさんが、慌てて私達も元に来るとホッとした表情をした。

どうやらお父さんとは別に探してくれていたみたい。


「店の前は人が多くて流されやすいので、大通りの真ん中あたりを歩きますね。人の流れには気を付けて下さい」


アマリさんの言葉に頷くと、お父さんと一緒に大通りを歩く。


「店の近くまで来たので、左側に行きます。気を付けて下さいね」


彼女の誘導で、壁にいろいろな料理器具がくっついている店の前に出た。


「これ、本物の調理器具かな?」


壁に引っ付いている鍋を触る。

ヒンヤリとした冷たさがちょっと気持ちいい。


「本物みたいだな」


お父さんが楽しそうな表情で、壁に引っ付いているフライパンに触る。


「店主が面白がって付けたそうですよ。入りましょうか」


アマリさんの後に続いて店の中に入る。

店の中も人が多く、少し混雑していた。


「通常で使う物は右。珍しい料理器具は左にあるみたいですね」


アマリさんが上を見て言う。

不思議に思い視線を向けると、天井から板がぶら下がっていた。


「あの板の下に、板に書かれた物が置いてあるみたいだ」


お父さんの説明に、近くにある板を見る。

板には、鋏と書かれてある。

そして、その下を見ると沢山の鋏があった。


「分かりやすいね」


「そうだな。どんな調理器具を見たいんだ?」


ん~、王都にある珍しい料理器具が見たかったんだよね。


「珍しい調理器具かな」


お父さんがお店の左側を見る。


「それならこっちだな。アマリさん、左です」


3人で珍しい料理器具が置かれている場所に行く。

こちら側は少し人が少ないみたいだ。


「うわ、凄いなこれ」


お父さんが小型の鍋を手にして、驚いている。


「何が凄いの?」


横から、鍋の説明を見る。

『魔力が回復する料理を作れる鍋』。

えっ、このお鍋で料理をすると魔力を回復する料理が作れるの?

でも、私には関係ないな。


「値段も凄いけどな」


値段?


もう一度、鍋の説明書を見る。


「うわっ」


200ラダルって金板20枚?


「高いね」


「そうだな」


小型の鍋を棚に戻すお父さん。

その隣の鍋を持ち、何かを確かめると棚に戻した。


「アイビー。珍しい料理器具は値段が凄いみたいだ」


近くの棚からフライパンを取り、値段を見る。

100ラダル。


「特にこの辺りにある調理器具は、魔力を回復するみたいだな」


確かに、フライパンにも「魔力を回復する料理が作れる」とあった。


「フライパンの方が安いね」


「回復する魔力量で、値段が違うみたいだ。この星が、回復する魔力を表しているみたいだぞ」


お父さんが鍋の説明書に描かれている星を指す。

確かに、商品に寄って星の数が違うみたい。


「星が5つのお鍋だ」


値段を見る。

すぐに鍋を棚に置いた。


「1200ラダルだって、誰が買うんだろね」


「金が有り余っている冒険者だな。あっ、そうだ。一度口座の残高を調べておこうか」


「うん」


家族口座の残高だよね。

旅に必要な物は、そこから払っているから残高も少なくなっていると思う。

あっでも、ポーションの代金が入っているだった。

という事は、それほど心配はいらないのかな?


「では、ギルドに行きましょうか」


うわっ。

アマリさん、後ろにいたんだ。

ドールさんと同じで、気配が分からなかった。


「ここからギルドまでどれくらい掛かりますか? この人込みだから、遠いなら戴冠式が終わった後でいいのですが」


お父さんが大通りの方を見て言う。


戴冠式が終われば、人も少なくなる筈だもんね。


「武器屋に行く途中に、商業ギルドがあります。ここから2、3分の距離ですが、この人込みではもう少しかかるかもしれませんね」


大通りの人込みを思い出して、ちょっと憂鬱になる。


「少し遠回りになりますが、裏から行きましょうか? そっちの方が、人が少ないと思います」


アマリさんが私を見る。


「それでお願いします」


大通りは一度経験したらもう十分。

遠回りになっても、人の少ない方が歩きやすい。


「お父さんも、それでいい?」


「あぁ、俺もその方が嬉しい。さすがにちょっと多すぎる」


お父さんと私を見て、アマリさんが笑う。


「分かりました。ここでは気になる商品はなかったですか?」


珍しい物は色々あったけど値段がね。


「うん。この店は、もういいかな」


お父さんも私の言葉に頷く。


「では、商業ギルドに行きましょうか」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
この二人の口座は減るどころか増えてそうで怖いよな。
口座の残高は、減るどころか、天文学的に増えていると思うんだ。。。
人酔いで身体崩さないようにね。田舎モンには都会の人混みはきつい場合があるよ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ