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998話 弓と魔力

「沢山ありますが、お願いします」


「分かりました」


ドールさんがとてもいい笑顔で、お父さんからマジックバッグを受け取る。


「ちっ」


んっ?


小さな舌打ちが聞こえた方を見ると、笑顔のフォリーさんがいた。


聞き間違いかな?


「では、行ってきます。フォリー、あとをお願いしますね」


「分かりました」


笑顔で会話するドールさんとフォリーさんだけど、なんとなく寒気を感じる。

もう夏なのにな。


部屋に戻り、特訓に使っている弓と予備の弓を出す。

いつも使っている弓を手に取り、細部まで目と手で触って確かめる。

魔力を流して使用すると、ヒビが入ってしまうらしい。

そして、それを放置すると弓が壊れるから注意するように言われた。


「シファルさん、魔力を流した弓について詳しく教えてくれると言っていたけど、あれはいつなんだろう? うん、この弓は大丈夫」


歪みもないし、触っても違和感はない。


「弦にも問題無し」


次は、予備の弓だね。


同じように、目と手で細部まで確かめる。

こっちの弓ではまだ魔力を流していないけど、確認は大切だからね。


「こっちも問題無し。弦の張りも、大丈夫」


コンコンコン。


「アイビー、今、大丈夫かな?」


「シファルさん? 大丈夫です、どうぞ」


シファルさんが部屋に入って来るとソラが勢いよく飛びつく。


「あっ、ソラ!」


「大丈夫。ソラは、元気だな」


ソラを抱き止め笑うシファルさんにホッとする。


「ソラ。急に飛びついたら危ないでしょ?」


「ぷっぷぷ~」


小さな声で申し訳なさそうに鳴くソラの頭を、シファルさんが撫でる。


「今度からは、合図を送ってから飛び込んできてくれ」


「ぷっぷぷ~」


彼はソラに甘いな。


「シファルさん、どうしたんですか?」


「あっ、そうだった。これを渡そうと思って」


シファルさんから受け取った瓶を見る。

中には透明の何かが入っていた。


「これは?」


「魔力を流した弓で特訓を始めようと思って。ソラ達がいれば可能みたいだから」


「ぷっぷぷ~」


「てっりゅりゅ~」


シファルさんの言葉を聞いて、嬉しそうに鳴くソラとフレム。

ソラは前に協力してもらったから分かるけど、フレムも?


「フレムも矢に魔力を籠められるのかな?」


「てっりゅりゅ~」


シファルさんの問いに胸を張って答えるフレム。

そんな姿につい笑ってしまう。


「てりゅ」


少し不服そうに鳴くフレムの頭を撫でる。


「ごめん。特訓に付き合ってくれるの?」


「てっりゅりゅ~」


「ぷっぷぷ~」


「ありがとう」


「そのクリームだけど」


「はい」


シファルさんから受け取った瓶を見る。


「魔力を流した弓の手入れに使うんだ。魔力を流すとどうしても弓が部分的に弱ってしまう。それを修復させる物なんだよ」


そんな物があるんだ。


「弓を使った後に、乾いた布に少量付けて拭くといいよ。そうだ、これから時間ある?」


「うん」


「それだったら魔力と弓について説明するよ」


「お願いします」


シファルさんに、魔力を籠めた弓について教えてもらう。

射る時の注意点や、手入れの方法など。

あと、弓が壊れる前兆も。


どれだけ注意しても、魔力を籠めた弓は使用中に壊れる経験をするそうだ。

その時に、怪我をしないようにするために前兆を知る事は大切みたい。


「そんな簡単には壊れないけど、忘れた頃に壊れるんだよ」


「数年に1度とか?」


「使う頻度によるかな。あとは、弓自体の強度。作り手に寄って、かなり違うから」


そうなんだ。


コンコンコン。


「アイビー?」


「お父さん? どうぞ」


部屋に入って来るお父さんに視線を向ける


「夕飯の時間だけど、行こうか」


えっ、夕飯?


慌てて時計を見ると、本当に夕飯の時間になっている。

弓の事や特訓方法を教えて貰っていたので、気付かなかった。


「お昼が遅かったから、あんまりお腹が空いていないんだよね」


お昼を食べてから、そんなに動いていないし。


「そうか。お腹が空いてから、夕飯にしてもらうように頼もうか?」


ん~、どうしよう。


「お父さんは?」


「俺は食べるぞ。お腹が空いているからな」


えっ、いつもより遅いお昼だったのに?

しかも、沢山食べていたよね?


「シファルさんは?」


「俺もお腹が空いているから食べるけど、アイビーは後でもいいぞ」


セイゼルクさんも食べるんだろうな。


「一緒に行こうかな。軽く食べればいいし」


皆と一緒に食べたいし。


「無理はするなよ。あとで食べればいいんだ。その時も付き合うから」


心配そうに私を見るお父さんに、笑顔になる。


「大丈夫」


食堂に行くと、既にセイゼルクさんがいた。

そして、テーブルにおいしそうな料理が並んでいる。


あっ、お腹が空いてきたかも。


「温かいうちにどうぞ」


フォリーさんにお礼を言って椅子に座る。


「「「「いただきます」」」」


フォリーさんの料理はやっぱりおいしい。

いつもよりちょっと少ないけど、しっかり食べてしまった。


「「「「ごちそうさまでした」」」」


果実水を飲んでいると、良く知っている気配が食堂に向かって来る。


どうしたんだろう?

かなり焦っているみたいだけど、何かあったのかな?


「アイビー!」


バターン。


「はい?」


食堂に駆けこんで来たラットルアさんを見る。

その後ろにはヌーガさんもいる。


「アイビー、無事か?」


無事?

あっ、侵入者の事を聞いたんだ。


「大丈夫。ドールさんが倒してくれたから」


「傷もない?」


「うん」


「そうか。良かった」


お父さんがいるのに、どうしてこんなに焦っているんだろう?


「冒険者ギルドで噂を聞いた」


噂?

首を傾げてヌーガさんを見る。


「『フォロンダ公爵家にいる、彼の娘が襲われたらしい』と」


フォロンダ領主の娘?

……もしかして私?


ヌーガさんを見ると頷いた。


「やっぱり」


「ガリットが門まで迎えに行っただろう? それで、そう思われたようだ」


ガリットさんが迎えに来ただけで、色々な誤解が生まれたのか。


「ラットルアさん、ヌーガさん。夕飯はどうしますか?」


フォリーさんが食堂に来ると、2人を見る。


「あっ、いただけますか?」


ラットルアさんが申し訳なさそうに聞くと、フォリーさんが笑って頷く。


「もちろんです。すぐにご用意いたしますね」


ふふっと笑いながら調理場に向かうフォリーさん。

その様子に首を傾げているラットルアさん。


これも勝負に勝敗に影響を与えるんだろうな。。


「ラットルア、ヌーガ。襲った者達について、何か聞かなかったか?」


セイゼルクさんが、2人に椅子を勧める。


「ありがとう」


ラットルアさんとヌーガさんが椅子に座ると、少し考えこむ。


「変な噂なら流れていたな。『金がないのに、凄いマジックアイテムを持っていた』とか、『どこかの貴族が資金提供しているらしい』とか、『カシス町の貴族が関わっている』とかだな」


ラットルアさんの説明にヌーガさんが頷く。


「そうか」


セイゼルクさんが神妙な表情で頷く。


「お待たせしました」


フォリーさんが、料理を持ってくるとラットルアさんとヌーガさんが笑顔になる。


「「いただきます」」


凄い勢いで料理を食べる2人。

そんな2人の様子にセイゼルクさんが首を傾げる。


「そんなにお腹が減っていたのか?」


「冒険者ギルドに行ったら、彼女に見つかってしまって。昼は食べたが、ずっと王都を走り回っていたから」


ヌーガさんの説明に、セイゼルクさんとシファルさんが納得した様子で頷く。


前に話してくれた、王都の冒険者ギルドに勤めている元仲間の事だよね。

「人使いが荒い」と言っていたけど、走り回っていたのか。


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― 新着の感想 ―
大好きな作品で、いつも楽しく読ませて貰ってます。 一部展開で気になったのですが シファルさんの言葉を聞いて、嬉しそうに鳴くソラとフレム。 ソラは前に協力してもらったから分かるけど、フレムも? 「フレ…
クリームってあんまり透明な印象が無い。 ジェルなら分かるけど。 オードグズだしこっちのクリームとは違うのかな。
何だろう……色々な事柄に凄くモヤモヤしますね!!早くスッキリしたくて~続きが待ち遠しいです!! やはり貴族えぇ……フォロンダ様のお掃除は周辺や辺境貴族まではまだ手が回っていないのか隠れているのか。 誤…
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