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979話 皆で作ろう

セイゼルクさんとヌーガさんが綺麗に解体してくれたグースの肉を、料理に合わせて切っていく。


「そういえば、静かだな」


ソラ達を探すと、少し離れたところで眠っている。


「疲れたのかな?」


ご飯もまだなのに。


「アイビー、肉を切るのを手伝うよ。スープに入れる肉の大きさは、どれくらいがいい?」


シファルさんを見ると、塊肉を前に首を傾げている。


「煮込む時間が1時間ぐらいだから、一口大ぐらいがいいと思う」


それでも、シファルさんが望むトロトロになるかちょっと微妙だな。


「分かった。あっ、トロトロ肉は明日でもいいからな」


「それなら、もう1つ大鍋を出して明日の分のスープも作ろうか。そっちのお肉はシファルさんが好きな大きさで……」


いや、それは駄目かな。


「私の拳ぐらいで」


手をギュッと握ってシファルさんに見せる。


「それぐらいか。俺の好きな大きさだったらそれの3倍だな」


お任せしなくて良かった。


「野菜は?」


「今日のスープ分は、お肉と同じ大きさで。明日の分は、その2倍ぐらいでお願い。葉野菜はまだ入れないでね」


「分かった」


シファルさんが楽し気にお肉を切り出したので、タレ作りを始める。

ヌーガさんの希望は、複数のタレだったよね。

どんな味にしようかな?


各地の村や町で購入したソースを見る。


「残り少ないソースが多いな」


複数のソースを混ぜてみようかな。

新しい味が出来るかも。


「アイビー。火加減はこれぐらいで問題ないか?」


ヌーガさんを見ると、グースの大きな肉を焼く準備が出来たようだ。


「うん。火が強すぎると表面が焦げて中が生になっちゃうから、弱い火でじっくり焼いて」


「分かった」


焼かれていく肉をジッと見るヌーガさん。


「そんなに見つめる必要はないんだけど」


「ヌーガには幸せの時間だから、気にするな」


セイゼルクさんが苦笑しながら、川から戻って来た。


「水がまだ少し冷たかったけど、さっぱりしたよ。もうすぐラットルアとドルイドも戻って来るから、シファルとヌーガなんだけど」


2日続けて魔物と戦ったセイゼルクさん達の体は、いつもより汚れてしまった。

体を拭くだけでは気になるので、今日は川でしっかり汚れを落とそうと話し合った。

私は、夕飯の準備がしたかったので皆の後でいいと言ったんだけど、ヌーガさんとシファルさんも料理中だな。


「肉と野菜は切り終わってあとは煮込むだけだから、俺は入りに行くよ」


シファルさんがヌーガさんを見る。


「ヌーガの役目はドルイドに任せればいいから、ヌーガと一緒に」


「いや、俺は――」


「俺達が入らないと、アイビーが入れないだろう?」


シファルさんの言葉にヌーガさんが私を見る。


「そうだったな。悪い」


「いえ」


「「ただいま」」


スッキリした表情でお父さんとラットルアさんが戻って来る。


「ドルイド、火加減を教える」


「えっ? 火加減?」


意味が分からず首を傾げるお父さん。


「汚れを落としに行くから、肉を頼む」


真剣な表情のヌーガさんにお父さんは、彼の前にある調理中の肉を見て笑う。


「分かった」


「俺も手伝うよ」


「ラットルアはいい」


ラットルアさんがヌーガさんの返事に不満そうな表情をする。


「俺だってアイビーにいろいろ教わって、肉ぐらい焼けるようになったぞ」


あれは、焼けるようになったと言えるのかな?


「駄目だ。ラットルアは火を強くして焦がす」


そうなんだよね。

ラットルアさんは、じっくり焼くのは面倒になるみたいで火を強めてしまうんだよね。

あれは無意識にやってしまうみたいで、他の人が気を付けていないと焦げてしまう。


「あ~、ドルイド。任せた」


ラットルアさんも分かっているので、肩を竦めてお父さんの肩をポンと叩いた。


「分かった」


笑いながら答えるお父さん。

ヌーガさんは、トングをお父さんに渡し火加減の説明を終えると早歩きで川に向かった。


「あの様子だと、すぐに戻ってきそうだな。ヌーガ、しっかり汚れを落とせよ!」


「分かっている」


「大丈夫、俺が見ておくから。あっ、アイビー! スープの味付けを頼む、忘れていた」


「分かった」


シファルさんが楽しそうな表情でヌーガさんの後に続く。

あれは、ヌーガさんで遊ぶつもりだな。


「手伝うよ」


セイゼルクさんが、スープを作っている大鍋の蓋を開ける。


「薬草を準備するね」


肉の臭みを取る薬草と塩を入れる。

肉と野菜からおいしい出汁が出るから、味付けは簡単でいい。


「あとは、根野菜が軟らかくなったら葉野菜を入れて煮込むだけ」


「分かった」


お父さんが焼いている肉を見る。

任せて大丈夫だね。


あとは、タレだ!

ソースを複数混ぜて味を見る。

これに、みじん切りした野菜を入れてみよう。

潰した果物を入れるのもいいかも。


「グースの肉はうまみが強かったんだよね。甘すぎないタレの方がいいかな?」


そうだ、塩と乾燥した薬草を混ぜた物も作ろう。

タレとは違うけど、合うと思う。


「塊肉用のタレは完成。サンドイッチに使うタレも出来た」


ラットルアさん希望のサンドイッチは、薄切り肉だったね。


「お父さん。お肉はどんな感じ?」


「うまそうに焼けているぞ。小さい方は、もういいかもな」


サンドイッチ用に焼いたお肉の事だね。

お父さんからトングを借りて、焼き加減を見る。


「もう、大丈夫そう」


焼けたお肉を木の板に乗せ、薄く切ってタレと絡める。

次は、丸く焼いたパンに斜めに切り込みを入れて、そこに葉野菜とタレに絡めた肉を挟んで、完成。


「あとは、この山になっているパンに挟んでいくと」


パンの数は30個。

頑張ろう。


「手伝うよ」


「ありがとう」


ラットルアさんと一緒に、サンドイッチを作っていく。


「お肉は足りるかな?」


ラットルアさんが作ったサンドイッチは、お肉の量が多い。

もしかしたら、お肉が足りなくなるかもしれない。


「最後の1個がちょっと少ないかな」


いや、普通の量だね。


「「完成」」


「「ただいま」」


不満そうな表情で戻って来るヌーガさん。

楽しそうな笑顔で戻って来るシファルさん。

何があったのかは、聞かないでおこう。


「ヌーガ、いい感じに焼けているぞ」


お父さんの言葉に嬉しそうに笑うヌーガさん。


「アイビー、行こうか」


「うん」


「アイビー、あとやる事は?」


シファルさんの言葉に振り返る。


スープは煮込むだけだし、焼いている肉はヌーガさんに任せればいい。

サンドイッチは出来た。


「サラダが欲しいな」


「分かった、作っておくよ」


シファルさんにお礼を言って、お父さんと一緒に川に向かう。


「周りを見ておくから、ゆっくり汚れを落としていいからな」


私が汚れを落としている間、お父さんとシエルが周りを警戒してくれる。


「うん、ありがとう」


ゆっくりでいいと言われたけど、急ごう。

川に入り、頭と体を洗う。

川から上がり、体を拭いて新しい服を着る。


「終わったよ。さっぱりした」


さっと洗っただけなんだけど、気持ちいい。


「ゆっくりで良かったのに」


「にゃうん」


お父さんとシエルが私を見る。


「私は、魔物と直接戦ったわけではないから返り血もないし、それにお腹が空いた」


実は、さっきからお腹が鳴っている。


「それは俺もだ。急ごうか」


「うん」


お父さんとシエルと一緒に急いで皆の下に戻る。


「「ただいま」」


セイゼルクさんとシファルさんが少し驚いた表情で私を見た。

ヌーガさんとラットルアさんは、嬉しそうだ。


「皆、夕飯にしようか」


「ぷっぷぷ~」


「てっりゅりゅ~」


「ぺふっ」


えっ?


ソラ達を見る。

ポーションやマジックアイテムが入っているマジックバッグの傍で跳びはねている。


「分かった。皆もご飯だな」


お父さんがソラ達のご飯を用意してくれている間に、出来上がった料理をお皿に盛る。

簡易テーブルに並んだ料理に、誰かが唾をのみ込んだ。

椅子に座るとセイゼルクさんに視線を向ける。


「昨日と今日はお疲れ様。今日はグースを堪能しよう」


「「「「「いただきます」」」」」


スープを飲む。


「「あぁ、おいしい」」


んっ?


シファルさんと顔を見合わせ、そして2人で笑う。


「おいしいな」


「うん」


お肉の焼け具合もいいし、タレも塩と薬草を混ぜた物も合う。

サンドイッチは、ちょっと肉が多すぎたので少なめを選んで食べた。


皆を見る。

お父さんもセイゼルクさん達も、笑顔で食べている。


「アイビー、今日もありがとう」


お父さんの言葉に笑顔になる。


明日からも、おいしい物を作ろう。


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― 新着の感想 ―
肉をうまく食うそれだけで癒される。
仲良くワイワイしてるのが良い。
ダメだ~お肉と聞いて腹減っちゃう だいぶ前の初めてスープ思い出した。もう失敗しないのかな?
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