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977話 探していた魔物

周りを警戒しながら森の中を進む。

さっき聞こえた音の正体も気になるけど、異様な静けさも気になる。


コツコツコツ。


あっ、さっきよりはっきりと聞こえた。


「聞こえたか?」


セイゼルクさんが立ち止まって皆を見る。


「聞こえた、何かを叩く音か?」


ヌーガさんが周りに視線を走らせる。

私も同じように周りを見る。

かなり視界は悪いが、少しでも動いていれば気付く筈。


カサカサカサ。


全員が後ろを振り返る。

でも、何もいない。


「風か?」


お父さんが剣を握る。


「行こう」


セイゼルクさんの硬い声に、緊張感が増す。

それをゆっくり深呼吸する事で落ち着け、足を動かす。


「探してる魔物が土の中にいる可能性もあるんだよな?」


ラットルアさんの言葉に、セイゼルクさんが頷く。


「あぁ。穴があったり、土が柔らかい場所は気を付けた方がいいだろうな」


セイゼルクさんの説明に、足元の土を確かめる。

根が張り巡らされていて、土も固い。

これなら、土の中にはいないかな。


「うわっ」


セイゼルクさんの叫び声に、全員が武器を構える。


「セイゼルク? 大丈夫か?」


お父さんが、周りを確かめながらセイゼルクさんの下へ行く。


「大丈夫。穴に足を突っ込んだだけだ」


えっ?

穴?


「魔物が移動した穴のようだ。土に毛が混ざっている」


つまり、この辺りに探している魔物がいるかもしれないって事だよね。


弓を持って深呼吸する。


「にゃあぁぁ」


シエルが急に大きな鳴き声を上げ、セイゼルクさんの背負っているカゴを加えて引っ張る。


コツコツコツコツコツ。


小さく聞こえていた音が、どんどん大きくなる。


「来るぞ! 全員下がれ!」


お父さんが叫ぶと、穴から急いで離れる。


「ソラ、フレム、ソル。木の上に!」


「アイビーも」


「分かった」


お父さんに返事をして、近くの木に登る。


あっ、蔓植物が木に絡まっているから滑りやすい。

気を付けないと。


「ぎゃあぁぁぁあああああああ」


土の中から勢いよく飛び出して来る巨大な魔物に体が震える。


この魔物も凄い殺気だ!


外に出た巨大な魔物は、周りに視線を走らせるとセイゼルクさん達を見つけ襲い掛かった。


「があぁぁぁ」


「動きが早い! 逃げろ」


お父さんの叫び声に、セイゼルクさん達が魔物から逃げる。

彼等を追う魔物の背後から、お父さんが首を狙って剣を振り下ろす。


「ぎゃあぁ!」


魔物の首にお父さんの剣が刺さったように見えた。

が、魔物が首を振り回すと剣は抜けお父さんが地面に転がる。


「お父さん!」


「大丈夫だ。でも、昨日の魔物より皮が硬いぞ、気を付けろ!」


「ドルイド、助かった。今度はこっちからだ」


セイゼルクさんとヌーガさんが、魔物に向かって剣を振る。


2人の攻撃を受けた魔物は、爪で応戦する。


「デカいくせに動きが早いな!」


セイゼルクさんが鬱陶しそうに叫ぶと、魔物が苛立つように鳴く。


「シファル、アイビー。奴の視界を何とか潰してくれ」


ラットルアさんが戦いながら叫ぶ。


「分かった」


シファルさんが木の枝を移動しながら私を見る。


「アイビーは無理をしないように」


「はい」


私はシファルさんのように移動しながら矢は打てないから、どこか安定した場所を探そう。


魔物との距離を考えながら木を移動する。

ソラ達も私の後に続く。


「ここなら」


太い枝まで移動して、魔物との距離を見る。

さっきより少し遠い。

でも、しっかり矢を放つためには仕方ない。


矢を構え、動き回っている魔物の目を狙う。


「ぷっぷぷ~」


構えている矢にソラが魔力を込めてくれる。


「ありがとう、ソラ。あ~、少しはジッとしてよ!」


今だ!


魔物の動きを読み、矢を放つ。


「ぎゃぁ」


外した!


矢は、目の横。

少し刺さったみたいだけど、皮が硬いのだろう矢は落ちた。


魔物がぎょろぎょろと周りを見るので、木の陰に隠れる。


「ぎゃぁぁぁあああああああ」


魔物の大きな叫び声に視線を向けると、右目に矢が深く刺さっていた。


シファルさんだ!


頭を振る魔物の体が、木々にぶつかる。


バキバキバキ。


木々が倒れる音を聞きながら、魔物に向かって矢を構える。


今だ!


魔物が動きを止め、周りに視線を向けた瞬間を狙う。


「があぁぁあぁ」


よしっ!

左目に刺さった!

シファルさんの矢ほど深く刺さっていないけど、おそらく大丈夫。


「一気に倒すぞ!」


両目を潰された魔物が、逃げるように後退する。

その機会を見逃さずセイゼルクさんは魔物との距離を一気に詰め、剣を振り下ろした。

ヌーガさんとラットルアさん、お父さんも後に続く。


矢を構え、口元を狙う。

首の皮はきっと硬いから、あと私が狙える場所は口だけ!


「ぎゃぁあああ」


大きく鳴き叫んだ魔物の口に向かって矢を放す。


「があぁあ」


よしっ。


口の中に消えた矢。

ただ、何処に刺さったのかは分からないけど。


「アイビー、離れろ。そっちに倒れる」


セイゼルクさんの言葉に、木から下りその場を離れる。


「ソラ、フレム、ソル。急いで!」


魔物の倒れる方向を見ながら、ソラ達と走る。


「こっちだ」


ヌーガさんの声が聞こえた方に向かって走ると、後ろからドスンという音が聞こえた。


「もう、大丈夫だ」


ヌーガさんに肩を優しく撫でられる。


「大丈夫か」


「はい。大丈夫」


心配そうに私を見るヌーガさんに笑顔を見せる。


「討伐完了」


セイゼルクさんの声に力が抜け、その場に座り込む。


「おい。本当に大丈夫なのか?」


「終わったと思ったら、力が抜けちゃって」


ヌーガさんに笑って言うと、彼も笑った。


「そうか。確かに、あの言葉は力が抜けるよな」


ヌーガさんも? 

全く、そうは見えないけど。


「アイビー」


「お父さん。怪我はない?」


走って来るお父さんを見る。


「大丈夫だ。ちゃんと治療してから来た」


つまり怪我をしたんだね。

まぁ、あの魔物だもんね。


お父さんの全身を見る。

服に血が付いているけど、酷い怪我はなかったみたい。


「ヌーガさんは?」


ヌーガさんの全身を見る。

お父さんと同じぐらいの怪我かな?


「大丈夫だ。すぐにポーションを飲むから」


ポンとヌーガさんの手が頭に乗る。


「随分と弓が上手くなったんだな。助かったよ、ありがとう」


ヌーガさんが私の頭を優しく撫でる。


私、皆の助けになれたんだ。

ふふっ、嬉しい。


「立てるか?」


お父さんが手を差し出す。

それを借りて立ち上がると、葉っぱや土が付いた服を払う。


「あれ?」


一緒に走っていたソラ達がいない?

慌てて周りを見ると、お父さんがある方向を指した。


「あはははっ」


まさか、倒した魔物の上で跳びはねているなんて。


「行こうか。セイゼルク達も心配しているだろうから」


「うん」


倒した魔物の傍に寄ると、魔物を調べていたセイゼルクさんとシファルさんが私を見た。

そしてホッとした表情になった。


「無事だな?」


セイゼルクさんの言葉に頷く。


「うん。怪我もしていないよ。皆も、酷い怪我はなかったみたいだね」


昨日より怪我は少ないみたい。


「あれ?」


ラットルアさんがいない?

怪我をして休んでいるのかな?


「アイビー、良かった無事だったんだ」


んっ?

魔物が出てきた穴から顔を出すラットルアさん。


「うん、私は大丈夫。ところで、どうしてそんな所に?」


「穴の中にある足跡を調べていたんだ。他にも魔物がいるのか調べるために」


「どうだった?」


セイゼルクさんが真剣な表情でラットルアさんを見る。


「足跡は1種類。全く同じ大きさの魔物がいないかぎりは、他の魔物はいないと考えて良いと思うぞ」


全員がホッとした表情をする。


良かった。

もう、こんな巨大な魔物は相手にしたくない。


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― 新着の感想 ―
でっかいモグラ?
話の進行が遅すぎてもう無理
なんなんだろうなぁこいつ
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