表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1057/1158

972話 黒い壁の洞窟

灯りで照らされた黒い壁が少し気になり、手を当てる。


「あれ?」


冷たいと思っていたのに、生ぬるい。


「どうした?」


「生ぬるいから驚いて」


「生ぬるい?」


セイゼルクさんも不思議そうに壁に触れる。


「本当だ。生ぬるいな」


「うん」


「ぷ~?」


「てりゅ?」


「ぺふっ?」


ソラ達も壁に触れて不思議そうに鳴いている。


「皆、こっちに道があるぞ」


ラットルアさんを探すが暗くて何処にいるか分からない。


「何処だ?」


「ここだ」


シファルさんの問いにラットルアさんは、灯りを揺らして場所を教えてくれた。


「行こう」


セイゼルクさんに促されてラットルアさんの下に向かう。


「少し細いけど、奥に続いている」


ラットルアさんが見つけた道を覗き込む。


「奥が少し明るいね」


「そうなんだよ。何かあると思わないか?」


楽しそうなラットルアさんに、ちょっと笑ってしまう。


「アイビー」


「どうしたの?」


お父さんを見ると、黒い壁に触れて首を傾げている。


「黒い壁の洞窟に、前も入った事があるよな?」


えっ?

いつの事だろう?


「黒い壁の洞窟……あっ!」


思い出した!


「ダイヤモンドが埋まっていた黒い岩の洞窟だ!」


「にゃうん」


あれ?

もしかしてシエルも思い出したのかな?


「ダイヤモンド?」


セイゼルクさんが驚いた様子で私とお父さんを見る。


「そう。あの洞窟の壁も温かかったか?」


温かい?


「前の洞窟は冷たかったと思うよ。ダイヤモンドを採った時に熱を感じたら覚えている筈だから。それに、この洞窟の壁は温かいというより生ぬるいと思うけど」


壁に触れて「えっ」と驚く。


「温かい」


私の言葉に、セイゼルクさんが慌てて壁に触れる。


「さっきの場所とは温度が違うな」


「そうなのか?」


セイゼルクさんの呟きに、お父さんが視線を向ける。


「あぁ、俺とアイビーがいた場所の壁はここまで温かくなかった」


「洞窟の壁が温かいなんて初めてだな。何が原因なんだ?」


ヌーガさんが壁に触れながら首を傾げる。


「奥に行ってみないか? 原因が分かるかもしれないぞ」


ラットルアさんの言葉に全員が頷き、慎重に道を進む。


「壁の熱が上がっているな」


少し歩くと、シファルさんが壁に手を当てる。


「確かに、さっきより温かいな。少し不気味だ」


壁に触れたお父さんが呟く。


「先に進もう」


ラットルアさんが先頭になり奥に進むと、外からの太陽光が入ってきているのか洞窟内が明るくなる。


「この辺りからは、灯りが必要ないな」


ラットルアさんの言う通り、灯りを消しても問題なく周りが見えた。


「奥は広くなっているみたいだ。うわぁ、すっごく綺麗だ」


ラットルアさんが奥を覗き込むと、声を上げる。


「何がだ? あぁ、これは凄いな」


セイゼルクさんも奥を覗き込むと声を上げ、ラットルアさんと中に入って行った。

彼等に続き広い場所に入ると、壁一面に埋まっている何かが光を反射している光景に息を呑んだ。


「ダイヤモンドかな?」


シファルさんが壁に近付くと、埋まっている何かに顔を近付ける。


「気を付けろよ」


「分かった」


セイゼルクさんの注意に頷くシファルさん。


「ここの壁は、かなり熱いぞ」


お父さんを見ると、壁に手を当て眉間に皺を寄せていた。

壁に近寄り、お父さんと同じように壁に手を当てる。


「本当だ。さっきの場所は温かかったのに、ここは少し熱いぐらいだね」


私達の会話を聞いて、皆が壁に手を当てる。


「石の近くが一番熱いみたいだ」


シファルさんを見ると、埋まっている石のすぐ傍に手を当てていた。


「それと埋まっている石だけど、ダイヤモンドではない」


そうなの?

シファルさんを見ると、岩から石を掘り出す道具をマジックバッグから出していた。


「待て、シファル。この石、等間隔で埋まっていないか? 誰かが距離を測って埋めたみたいに」


壁から離れた場所で全体を見ていたヌーガさんが、シファルさんを止める。

お父さんとセイゼルクさんが壁から離れると、壁を見回して頷いた。


「本当だ。自然に出来た物だったら、こんなに綺麗に並ばない。それに、石の大きさも同じに見える」


セイゼルクさんがシファルさんを見て首を横に振る。


「何かあるかもしれないから、止めておこう」


「分かった」


残念そうな様子で、出した道具をマジックバッグに戻すシファルさん。


ラットルアさんを見ると、ゆっくり壁沿いに動いていた。

手が壁に触れているので、きっと熱を感じているんだろう。


「この辺りの壁だけ冷たいんだけど、どう思う?」


「えっ?」


セイゼルクさんが首を傾げてラットルアさんを見る。


「この辺りだけ冷たいんだよ」


ラットルアさんが指した壁に触れると、ヒンヤリした冷たさを感じた。


「本当だな」


「それにこの場所だけ、何も埋まっていない」


ラットルアさんの言うとおり、冷たい壁には何も埋まっていない。

という事は、壁の熱と埋まっている石に関係がある事になる。


「ここから出よう。何かあってからでは遅い」


お父さんの言葉に、全員が頷き外に向かう。


「にゃうん」


私達の傍にいたシエルが、少し落ち込んだ様子で鳴く。


「シエル。洞窟を見つけてくれてありがとう」


「にゃ?」


シエルがセイゼルクさんを見る。


「この洞窟は、絶対に調査が必要だ。何か問題が起こる前に見つけられたのは、シエルのお陰だ。だから、ありがとう」


「にゃうん」


シエルが嬉しそうに鳴くので、笑顔になる。


「外だ」


セイゼルクさんの言葉にホッとした瞬間、こちらに向かって来る魔力を感じた。


「魔物だ!」


セイゼルクさんが武器を手にすると、お父さん達も武器に手を掛けた。


「がうぁ。がぁ」


凄い速度で近付く魔物の気配に、緊張感が増す。


「この洞窟に隠れるのは止めた方がいいよな。外に出よう」


セイゼルクさんが先頭に立ち洞窟を出ると、武器を構える。


「にゃうん」


シエルが魔物に向かって威嚇するが、速度は落ちる様子がない。

それを不思議に思いながら、傍にあった木に登ると矢を構えた。


あれ?

こっちに向かって来る魔物が他にもいる?


「気を付けろ! 他にも魔物がこっちに向かってきている。ヌーガとラットルアは、右からくる魔物を狙ってくれ。ドルイドは左だ」


別の木に登ったシファルさんは、周りを見回しながらヌーガさん達に指示を出す。


「アイビー」


シファルさんが私を見る。


「ドルイドを助けてくれ。俺はセイゼルクを助ける」


彼の言葉に頷く。


「分かった」


お父さんの傍にある木に飛び移り、矢を構える。


どうしよう。

私の矢がお父さんに刺さったら。


「アイビー、大丈夫だ。落ち着け」


1匹の魔物が、お父さんに向かって勢いよく駆けて来るのが見えた。

ゆっくり息を吐き出し、矢を放つ。


「ぎゃうあ」


放った矢は、魔物の前脚に少し傷を負わせた。

でも、魔物の勢いは止まらない。


「おかしいな」


お父さんは呟きながら、目の前に迫った魔物の首に剣を突き刺した。


「ぎゃあぁああ」


狂ったように鳴く魔物にとどめを刺したお父さんは、魔物が来た方向に視線を向けた。


「大丈夫か?」


シファルさんに向かって手を振る。


「私とお父さんは大丈夫。シファルさん達は大丈夫?」


「あぁ、大丈夫だ。皆無事だ」


彼の言葉に体から力が抜ける。


「お父さん、ごめんね」


「どうした?」


「助けにならなかった」


魔物に矢は当たらなかったし、走る速度を変える事も出来なかった。


「そんな事はないぞ。矢が掠ったから、魔物の視線が俺から逸れた。そのお陰で、狙っていた場所に攻撃が出来たんだ」


そうなのかな?

掠った矢を気にしている様子はなかったけど。


「本当だからな」


「ふふっ、分かった。お父さんや皆が無事で良かった」


それが一番重要だよね。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
だいじょうぶ。たとえ間違って矢が刺さってもお父さんは気にしないから。ソラのポーションで傷治せるし、割とマジで落ち込むアイビーの方を気にしそう。
シェルさーんっっw ダイヤモンドだよ、えっへん( ˊ̱˂˃ˋ̱ ) からにしょんぼりは可愛いなぁ。 シェルさんの威嚇が効かないのは珍しいですね。
いつも拝読させていただいております。 最初、ピノキオの様に魔物の腹の中かと思いながら恐々読んでましたが、魔石の様な物の力で熱を帯びてるとわかり、ということは人の手による何かの仕掛けだと思って、別の意味…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ