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943話 隠れ家?

「ジナル、隠れ家がバレているみたいだな?」


お父さんの言葉に、ジナルさんが少し考える。


「大丈夫だとは思うが、待っててくれ。見て来る」


「分かった」


ジナルさんを見送ってからお父さんを見る。


「フラフさん達は大丈夫かな?」


敵が、彼女たちの下に行ってしまったけど。


ジナルさん達が怪我した様子を思い出す。

もしかして危ないのでは?


「それは大丈夫だろう」


お父さんを見ると、本当に心配している様子がない。

それに首を傾げる。


「フラフさん達は強いの?」


「たぶん、凄く強いだろうな」


あれ?

お父さんは、フラフさんとアゼラさんの事を知っていたのかな?

強さが分かるという事は、知っているからだよね?

でも「たぶん」と言っているし……どうなんだろう?


「俺は、2人の事について何も知らないぞ」


「えっ? だったら、凄く強い事はどうして分かったの?」


「ジナルが全く心配していなかったから」


あっ、そうだ。

さっき裏切り者達がフラフさん達の所に行くと言っていたのに、心配していなかった。


「少しでも不安があれば、彼の事だから気にする筈だ」


「うん、そうだね」


そうか。

ジナルさんが大丈夫だと判断出来るほど、フラフさん達は強いのか。

それなら、きっと大丈夫だよね。


あれ?

バンガさんとジックさんが随分と静かだな?


そっと2人を窺うと、目を閉じてジッとしているのが見えた。


「大丈夫ですか?」


もしかして気分でも悪いのかな?


「んっ? あぁ、大丈夫。休憩なしで王都からここまで来たからかな? 急に眠気が……」


ジックさんの言葉に、お父さんが小さく笑う。


「あと少しで隠れ家に着く。それまで我慢しろ」


「あぁ。……起きろ」


ジックさんが、隣のバンガさんの頭を軽く叩く。


「ぐっ。いたい」


バンガさんも眠いのかな?

でも彼は少し前からこの町に滞在していたから、休憩は出来ていたと思うのだけど。


「バンガも眠いのか? いつからだ?」


お父さんも不思議に思ったのか、彼を見る。


「いつから? ドル兄と会った後からかな? 急に睡魔に襲われるんだ」


バンガさんの言葉に、お父さんが少し神妙な表情になる。


あっ、戻って来た。


近付いて来るジナルさんの気配に気付く視線を向ける。


「待たせた」


「どうだった?」


「大丈夫だ。偽の隠れ家がバレただけだった」


偽の隠れ家?


「敵にバレてもいい様に作った隠れ家の事だ」


私の疑問に気付いたのか、ジナルさんが説明してくれる。


「教えてくれてありがとう」


凄いな。

そんな隠れ家まで用意してあるんだ。


「こっちだ、行こう」


ジナルさんの後に続き移動する。

バンガさんとジックさんを見ると、欠伸をしていた。


まだ調べていない大通りから左側の3本奥の道。

ジナルさんが連れて来てくれた隠れ家を見て驚く。

あすろより大きい、


「宿?」


私の言葉にジナルさんが笑う。


「そう、しかもここは高級宿だ」


宿に入ると、少し緊張する。

今までの宿と(おもむき)が違う。

宿に入った正面には大きな絵が飾ってあり、椅子とソファが置いてある。


「いらっしゃいませ」


宿のカウンターに立つ男性に視線を向けると、微笑まれた。


「急に来て悪いな。部屋は空いているか?」


「もちろんです。今、ご用意いたしますね」


男性が奥に声を掛けると、2人の女性が現れて頭を下げた。


「1人部屋3、家族部屋1。すぐに整えて下さい」


「「分かりました」」


「あっ、悪い。まだ他にも仲間が来るんだ。えっと、追加で1人部屋が5人分と家族部屋を1つ頼む」


ジナルさんの言葉に女性達が頷く。


「分かりました、すぐにお部屋の方はご用意いたします。部屋が整いましたらお呼びいたしますので、食堂でお待ち下さい」


部屋の用意をしに行く女性を見送る。

なんだか、落ち着かない。


「敵が来たら始末しますか?」


カウンターにいる男性を見る。

表情はふんわりした微笑みなので、質問と合わない。

でも、彼が聞いたんだよね?


「そうだな。ここがバレる確率は低いと思うが、もし来たら」


「分かりました。情報は聞き出し……」


男性が言葉を止めると、宿の出入り口に視線を向けた。


「ここなのか? えっ? 本当に?」


ラットルアさんの驚いた声が聞こえ、ちょっと笑ってしまう。

私と同じ感覚だ。


「本当だって。あっ、ごめん。遅くなってしまって」


アルーさんは宿に入るとジナルさんを見て、ホッとした表情を見せた。


「何かあったのか?」


ジナルさんの言葉に、肩を竦めるアルーさん。


「自警団の馬鹿共が動き回っていたせいで、遠回りするしかなくて遅くなってしまったの」


「俺達が死んだと思って、一気に動き出したな。父親は?」


「大丈夫よ一緒に来たわ。ラリス団長とオグート副隊長は別行動になったから」


「分かった」


父親?

あっ、子供達の父親を病院から連れて来たのか。


少し挙動不審な動きで宿に入って来た子供達の父親を見て笑ってしまう。

子供達は、今までで一番いい笑顔をしている。


「お金ないんだけどな」


お父さんの言葉に、ジナルさんが笑う。


「大丈夫だ。それは気にしなくていい」


「えっと、それでは宜しくお願いします」


ジナルさんとカウンターにいる男性に頭を下げる父親。

子供達も真似をして、頭を下げた。


「可愛らしいですね。食堂でお菓子や果実水をどうぞ」


「ありがとうございます」


アルーさんが、子供達と父親を食堂に連れて行く。

それを見送った男性がジナルさんを見る。


「敵を捕まえたら、始末する前に情報を聞き出しますか?」


「あ~、面倒でなければ頼む」


「分かりました。あぁ、そうでした。今、地下でごう、ごほっ。尋問している者がいるんです。興味深い者ですが、会いますか?」


なんだろうな。

穏やかな話し方に……話している内容はちょっとあれだけど、それに優し気な笑み。

それなのに、寒気がする。

そう、もの凄く寒気を感じる。


腕をこすると、お父さんがポンと肩を叩いた。


「食堂で温かいお茶でも飲もうか」


「うん」


そうだね。

私が此処にいる必要はなかったんだ。


食堂に行くと、ラットルアさん達も一緒に来た。


「あれは敵にまわしたら駄目な者だな」


シファルさんが、カウンターにいる男性を見ながら言う。

それに無言で頷くヌーガさん。


「ははっ。彼ね」


アルーさんが、お菓子を食べながらどこか遠くを見る。

それに、首を傾げる。


「その感覚は正解よ。彼は……敵にまわさない方がいいわ」


アルーさんは、子供達と私を見て言葉を止めるとシファルさんを見て頷いた。

私や子供達に聞かせられない内容だったのかな?


なんだろう?

いや、考えない方がいいかな。


「お待たせいたしました」


部屋の用意をしてくれた女性達は食堂に来ると、私達に鍵を渡し部屋の場所を教えてくれた。


「今度は2階だね」


お父さんと私は2階にある家族部屋に決まり、セイゼルクさん達と同じ階だ。

子供達は3階の家族部屋で、バンガさん達の部屋も3階の様だ。

ジナルさんとアル―さんは、1階にある部屋らしい。


泊まる部屋に入ると、やはり今までとは少し違う。


「ちょっと緊張する。ソラ達を出しても大丈夫かな?」


マジックアイテムを部屋に置き、作動させているお父さんを見る。


「大丈夫。ソラ達は話せば分かる子達だから」


そうなんだけどね。


少し心配しながら、ソラ達が入っているバッグを開ける。

勢いよく飛び出す皆のいつも通りの様子に、ちょっとホッとする。


いや、ホッとしていたら駄目だった。

皆にこの宿の事を話さないと。


ソラ達を見ると、いつもなら飛び跳ねているのに不思議そうに部屋を見回している。

そして私とお父さんを見る。


「この宿は高級宿なの。だから、気を付けてね」


「ぷっぷぷ~」


「てっりゅりゅ~」


「にゃうん」


「ぺふっ」


良かった、分かってくれた。

というか、部屋を見て違う事が分かったの?

凄いな。


部屋を見回す。

まぁ、今までの宿とは違うか。

壁には綺麗な額に入った絵、それに棚にはガラスかな?

小物入れがある。


私が壊さない様にしないと。


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― 新着の感想 ―
カウンターの男性は拷m、ごほっ、尋問官なのかな。((( ;゜Д゜)))ガクガクブルブル
「お金ないんだけどな」 は、子供たちの父親の言葉ですよね? 父親ではなくお父さんになってるのでドルイドの言葉っぽくなってます。
子供達の父親グルーフさんがスルッと合流! 協力するって話になっていた筈ですけど何が出来る方なのか気になります。子供達を見てくれているだけでもラットルアが動けるし向こうと同様こちらも動けますね。 情報共…
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