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933話 散策をしようか

バンガさんが木箱の中を覗いて力の抜けた表情をする。


「バンガ」


「何?」


「制限が掛かっているのは分かるが、話せる事はそれだけか?」


「あぁ、捜査に関係する事は話せるけどそれ以外は無理だな」


2人の会話に首を傾げる。


「お父さん、制限って何?」


「裏の仕事を受ける者は、仕事に関する事を第三者に伝えられない様に細かく契約しているんだ」


やっぱり裏の仕事は大変なんだな。


「捜査に必要なら、契約していても呪具については話せるよ。話せないのは関わった人間関係かな」


バンガさんを見ると、うんざりした表情をしている。

話せない人間関係で何かあるんだろうか?


「ドル兄、アイビー」


彼を見ると、真剣な表情で私とお父さんを見た。


「お願いがあるんだけど」


「どうした?」


お父さんの言葉に、バンガさんが頭を下げた。


「仲間が、残りの呪具を持ってこの町に来る。それもソルに壊して貰いたい。頼む」


「ぺふっ」


木箱から顔を出すソル。

その表情は、嬉しそうだ。


「バンガ。もちろん協力する。というか、ソルは既にそのつもりの様だ」


お父さんの言葉にバンガさんがソルを見る。

そして安心した様に笑った。


「ありがとう、ソル」


「ぺふっ!」


力強く鳴くソル。

「任せて」という事だろうか?


きょろきょろと部屋を見回すソル。


「ソル、呪具はまだないよ」


「……ぺ~」


不服そうに鳴くソルに笑ってしまう。

あっ、さっきの「任せて」というより「すぐ頂戴」だったかも。

ソルならありえそう。


「仲間は何人で、いつ頃着くんだ?」


ジナルさんが真剣な表情でバンガさんを見る。

木箱の中からソルもバンガさんを見る。


「仲間は3人。呪具同士が影響しない様に、2日後、4日後、6日後に王都を出発したはずだ。だから、2日後に出発した者は明日か明後日には着くと思う」


明日か明後日か。

バンガさんの仲間達に呪具の影響が出ていなければいいけれど。


「ぺふ~」


嬉しそうに鳴くソルに溜め息が零れる。


「ソル。呪具は危険な物なの。だから少しは気を付けてね」


ソルが不思議そうに体を傾ける。


「危なくないの?」


「ぺふっ」


危なくないのか。

まぁ、ソルにとっては美味しい物という認識だもんね。


「バンガ、仲間の特徴を教えてくれ。門番に知り合いがいるから、宿にすぐ来る様に伝言を頼むよ」


ジナルさんの言葉に、バンガさんが頷く。


「ありがとう。ジックは22歳で男。坊主頭で首に傷がある。ニャーシは19歳で女性。肩ぐらいまでの真っすぐな黄色の髪。あと、怖い印象を与える顔なんだよ」


バンガさんの説明に首を傾げる。

怖い印象を与える顔ってどんな顔なんだろう?


「最後にタンタ。21歳の女性で短髪だ。髪は、緑色をしている」


「分かった」


ジナルさんがバンガさんから聞いた特徴を紙に書くと、席を立つ。


「早く町に到着する可能性があるから、今すぐ門番に伝えて来るよ」


ジナルさんの言葉にフラフさんも立ち上がる。


「それなら私は、門番の休憩所から飛び出して来た女性について調べて来るわね」


「俺達はどうしたらいい?」


セイゼルクさんがジナルさんを見る。


「そうだな……呪具に関する噂なんて聞いた事はないし。あっ、呪具の研究所がこの町にあるんだったな」


「あぁ、場所は3ヵ所」


3ヵ所もあるの?


「そんなにあるのか? 場所は?」


バンガさんがマジックバッグから紙を出すとジナルさんに渡す。


「そんなにというが、他にもある可能性があるんだ」


「そうなのか? これは、住所と地図か」


ジナルさんが紙を広げると、眉間に皺を寄せた。


「大通りに面している場所が2ヵ所と……これは、商業ギルドの近くだな」


「既に封鎖されている場所があるわ」


ジナルさんの隣から紙を見たフラフさんが言う。


「どれだ?」


「2番目の大通りに面している建物よ。教会関連の施設だと分かったから、捜査が入って封鎖されたのよ。残りの2ヵ所は、これまで捜査上に上がった事もないわね」


ジナルさんが紙に何か書き込むと、セイゼルクさんに渡す。


「この2ヵ所周辺を調べてくれ。危険を感じたら引いていい。呪具が、王都の資料に載っていた数だけだとは断言出来ないからな」


「分かった」


私達はどうするんだろう?

お父さんを見ると、何か考え込んでいる。


「アイビー。俺達はゆっくりこの町を散策しよう」


「えっ? 散策?」


お父さんを見る。


「そう。散策」


お父さんは何を考えているんだろう?

ジナルさん達も不思議そうにお父さんを見る。


「皆を連れてな」


皆って、ソラやフレムの事だよね?

それに意味があるんだろうか?


「もしかしたら、ソルが思いがけない場所で反応するかもしれないだろう?」


あぁ、呪具の魔力に反応するから2ヵ所以外の場所が見つかるかもしれないのか。

でも、研究所に呪具がなければソルも気付けないのでは?


「研究所に呪具がなかったら分からないと思うけど」


「まぁそうだけど。町を歩き回る価値はあると思う」


そうかな?


「見つからなかったら、なくて良かったね。あったら、見つけられて良かったねだよ」


お父さんの言葉に笑ってしまう。


「そうだけど」


木箱の中で落ち着ているソルを見る。


「それに研究所なら、1つか2つぐらい呪具があると思うんだよな」


お父さんを見ると、呪具の描かれた紙を手にしていた。


「魔力を抑え込むマジックアイテムでも、時間が経てばその力は弱まる。教会関係者が捕まってからそれなりの時間が経った。レアなマジックアイテムにも、そろそろ限界がくる頃だろう」


だから町を見て回るのか。

もしかしたら、ソルが感知するかもしれないから。


「ジナル、いいか?」


お父さんがジナルさんを見る。

彼は少し考えると、溜め息を吐いた。


「正直、調べてくれるのはありがたい。呪具の魔力を感知出来るのはソルしかいないからな」


ジナルさんが私を見る。


「危ないと少しでも思ったら、すぐに宿に戻って来て欲しい。あと無茶はしない事」


彼の言葉に頷く。


「では頼む」


やる事が決まったので、皆を連れて部屋に戻る。


「「あっ」」


部屋に戻って視界に入った、黒い魔石の山にお父さんと同時に声が出る。


「どうしよう、あれ」


「とりあえず、マジックボックスの中に入れておくよ。今回の事件で必要になるかもしれないからな」


確かに必要になるかも。


魔石の山を見る。

あの数が必要になるの?

それは、ちょっと怖いんだけど。


魔石をマジックボックスに入れ、皆をバッグから出す。


「ソル」


散策する前に、ソルに確かめておこう。


「ぺふっ?」


「呪具の魔力と同じ魔力を、まだ感じる?」


「ぺ~……ぺっ?」


悩む様な鳴くソル。


「分からないのか?」


「ぺふっ」


お父さんの言葉に、力なく答えるソル。

これは、呪具の魔力を感じるているのかな?

それとも感じていないのかな?


「何か魔力を感じるけど、呪具の魔力か分からない?」


「ぺふっ! ぺふっ!」


お父さんを見て鳴くソラの頭を撫でる。


「その魔力に近付けば、分かるかな?」


「ぺふっ!」


力強く答えるソルにお父さんが笑う。


「その魔力の出所が、分かっている2ヵ所ならいいんだけどな」


「そうだね」


お父さんの言葉に頷くとソルの頭を撫でる。


視界の隅に入った魔石が大量に入ったマジックボックスを見る。

あの中身が使われない事が一番なんだけどな。


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― 新着の感想 ―
何か魔力を感じるけど、呪具の魔力か分からない?」 「ぺふっ! ぺふっ!」 お父さんを見て鳴くソラの頭を撫でる。 ソラの頭を撫でるでゎなく、ソルの頭を撫でるの間違いじゃないですか?
[気になる点] とりあえず今は呪具に気を取られているけど、失踪?誘拐?事件も孕んでいる町中で父娘が単独グループで動くの少し怖いですね。未だに2つの因果関係が分かりませんし…一応、テイム仲間達が一緒では…
[気になる点] 個人の好みだが、『男』と言っといて『女性』って言うのはなんとなく男女差別感。 統一されてる方が自分は好み。 [一言] 結果的にアイビーが囮になってしまうかもしれんけど、アイビー自身がそ…
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