表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1001/1160

918話 噂の真偽

1階に行き、会議室を探す。


「こっちだ」


ジナルさんの声がした方に行くと、階段の奥にある扉から彼が顔を出していた。


「こんな場所にあるんだ」


「あぁ、この場所は……まぁ、色々と役に立つ」


言葉を濁すジナルさんにラットルアさんが肩を竦める。


会議室に入ると、良い匂いがした。

部屋にあるテーブルを見ると、色々とカゴが並んでいる。

そして、セイゼルクさんとシファルさんが手を振っていた。


「セイゼルクさん、シファルさん」


2人の姿に笑顔になる。


「アイビー、おいしそうな物を買って来たから食べようか」


シファルさんがテーブルを指す。

それに頷いたいけど、どう見てもカゴの数が多い。


「多すぎるよね」


「大丈夫。明日には無くなるよ。あぁ、ラットルア。子供達にはこっち」


シファルさんが3つのカゴをラットルアさんに渡す。

カゴの蓋を開けたラットルアさんが首を傾げる。


「どうしてこのお菓子を?」


ラットルアさんの傍によりカゴの中を見ると、綺麗な色の焼き菓子が入っていた。


「小さい子達に人気のお菓子らしい。食べやすそうな物を選んで買って来た」


「そうか。ありがとう」


嬉しそうに笑うラットルアさん。

確かに色が綺麗なので、子供達は好きそうだな。


「目が覚めたらあげようかな。きっと喜ぶよ」


「ラットルアさん。お菓子はご飯を食べた後だよ」


お菓子を先に食べてしまうと、ご飯の量が少なくなるかもしれないからね。


「……うん。分かってるよ」


今、間があったよね?

大丈夫かな?


「大丈夫だ、アイビー。一番年上の子がしっかりしていたから」


「うん、そうだね」


あれ?

つまりラットルアさんは当てにならないって事?


「話をする前に食べようか。何があるのか楽しみだ」


ジナルさんがカゴを見て言うと、セイゼルクさんがカゴの蓋を次々と開けていく。


「今は腹が減っているから、この辺りがお薦めだ。そういえば、夕飯は頼んだのか? もしそうなら食べる量を考えないと駄目なんだが」


「あっ、頼むのを忘れてた」


ジナルさんがハッとすると、苦笑した。


「屋台で見繕ってきて丁度良かったって事か。子供達の夕飯は、アイビーが見繕ってくれるかな? 俺達より、子供達に良い料理を選びそうだ」


「分かった」


シファルさんの提案に頷いて、カゴの中身を見る。

お肉料理が多いけど、野菜料理もしっかりあるね。

良かった。


「あっ、焼きおにぎりだ」


あるカゴを見て、笑顔になる。

まさか、カシメ町で焼きおにぎりを見るなんて。


「あぁ、これか。結構人気の屋台だったよ」


「そうなんだ」


シファルさんの言葉に嬉しくなる。


「はい、お皿」


お父さんからお皿を受け取って、カゴから気になる料理を取っていく。

子供達の夕飯は、マジックバッグから綺麗なカゴを取り出し見繕っていく。

3人分より少し多めの料理をカゴに詰めると蓋をして、ラットルアさんに渡す。


「ありがとう」


彼は受け取ったカゴをすぐにマジックバッグに入れた。

これで、子供達も温かいご飯が食べられるね。


「「「「「いただきます」」」」」


それぞれが気になる料理を食べる。

少し食べたぐらいでは無くならない料理の量に、ちょっと笑ってしまう。

いつもの事だけど、買い方が豪快だよね。


「アイビー」


お父さんを見ると、食べかけの焼きおにぎりを見て少し眉間に皺を寄せていた。


「どうしたの?」


「残念な味だ」


えっ?

お皿に取った、焼きおにぎりを食べる。

あ~、味が濃すぎるんだ。

こめの味を完全に消している。


「ちょっと味が濃すぎるね」


「あぁ……明日でも明後日もいいけど、焼きおにぎりを作ってくれないか?」


神妙な表情のお父さんに笑ってしまう。


「いいよ。色々な味で作ってみるね」


「ありがとう」


残りの焼きおにぎりを食べる。

もう少し味を優しくしたら、おいしくなるのにな。

もったいない。


「ふ~食った。それでセイゼルク、屋台に向かった理由は?」


ジナルさんが温かいお茶を飲むと、セイゼルクさんを見る。


「『あすろ』に向かっている途中で、女性とぶつかったんだ。真っ青な表情で後ろを気にしていたから、誰かに追われているのだとすぐに分かった。その女性がある場所に連れて行って欲しいと言ったから、話を聞きながら向かった」


「誰に追われていたんだ?」


「借金取り」


セイゼルクさんの返答に、聞いたジナルさんの眉間に皺が寄る。


「借金の踏み倒しは犯罪だ。冒険者ギルドか商業ギルドに連れて行ったのか?」


「いや、違う場所だ」


「違う場所?」


ジナルさんが驚いた表情でセイゼルクさんを見る。


「女性の話では、その借金に全く心当たりがないそうだ。それと、心当たりのない借金の返済を急に求められる者がいるらしいと、少し前から噂になっていたそうだ。女性は『まさか、あの噂が本当の事だったなんて』と泣いていた。あぁ女性が向かった先は、困った時に駆け込む場所らしい」


身に覚えのない借金で返済を求められる?

自警団に調査をお願いしたら、犯罪の可能性があるから調べてくれるよね?

それなのに、自警団ではなく他の場所に逃げこんだ?


「自警団は当てにならないという事か」


ジナルさんの表情が険しくなる。


「女性も噂で聞いた事らしいが、助けたを求めた者が消えたそうだ」


「消えた? 行方不明という事か?」


お父さんが、セイゼルクさんを見る。


「あぁ。ただし噂だ。それが本当なのか分から……」


あれ?

話しの途中で止まった?


セイゼルクさんを見ると、会議室の扉を険しい表情で見ている。

ジナルさんもお父さんも?


「はぁ。入っていいぞ」


ジナルさんの言葉に扉が開く。


「夕飯をどうするのか聞きに来たんだけど、いらないわね」


えっ、フラフさん


「気配が……」


全く感じなかった。

というか、扉を開けて目の前にいるのに感じない。

どんなに上手に隠しても、微かに感じるはずなのに。


「もしかしてマジックアイテム?」


「彼女の隠密スキルだ。フラフ、前に会った時より上達しているな」


「ふふふっ。そうでしょ? ここまで頑張ったのよ、凄いでしょ!」


ジナルさんの言葉に、笑顔になるフラフさん。

そんな彼女に、皆が安堵した表情になる。


「あっ、ごめん」


それに気付いたフラフさんが、申し訳なさそうな表情をする。


「ジナルをちょっと驚かそうとしただけなの。そうだ。さっき話していた噂だけど、本当よ。助けを求めた女性は行方不明。ちなみに、この町では今あちこちで人が消えているわ」


「調べているのか?」


「当たり前じゃない。ただ、人手が足りなくてね」


悔しそうな表情を見せるフラフさん。


「あの……」


シファルさんがフラフさんを見る。


「何かしら?」


「教会関係の研究所から魔物が町に逃げ込んだという噂は?」


「本当の事よ。今、冒険者ギルドが中心になって討伐をしているわ。町の中心部にはいないけど、町を守る壁の近くに潜んでいるみたいね」


「自警団に教会関係者が紛れ込んでいるという噂は?」


「それは嘘。ただし、教会からお金をもらって動いていた別組織の屑共は紛れ込んでいるわ。ちなみに、冒険者ギルドと商業ギルドにもね」


「「「「「はぁ」」」」」


フラフさんの説明に、全員が嫌そうな表情で溜息を吐く。


「フラフたちは、どう動いているんだ?」


「冒険者ギルドの紛れ込んだ者を、排除しているところよ」


フラフさんがジナルさんを見る。


「そうか。うまくいきそうか?」


「今のところは順調ね」


排除か、大変だろうな。


最弱テイマーを読んで頂きありがとうございます。

917話のセイゼルクとシファルの部分を修正いたしました。

1000話突破のお祝いコメントをありがとうございます。

これからもどうぞよろしくお願いいたします。


ほのぼのる500

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ラットルアのお菓子好きが久々にでましたね。
[一言] 1000話超えおめでと!
[一言] アイビーの世界はやっかい事は癖のありすぎる女性が持ち込む事が多いのですね。 アクのある世界で、アイビーには心の強い優しい女性に成長して欲しいです。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ