これはデートに値するのだろうか
決戦の金曜……いや、土曜日。
思わぬ提案から決行された四人での外出は最寄り駅での待ち合わせから始まった。
「……あれ、北都もう来てたのか?」
僕の次に待ち合わせ場所に姿を現したのは玲央だった。
「あ、うん」
待ち切れなくて、とは流石に恥ずかしくて口に出せなかったが玲央は全て悟ったようで悪戯な笑みを浮かべた。
「あー成程。門永さんを待ち切れなかったわけね」
「……! 何で解ったんだよ?!」
「いやいや俺らどんだけの付き合いだと思ってんだよ。そんでお前分かり易すぎだから」
そう返され一気に顔に熱が集まる。思わず頬に手を当てていたらいきなり後ろから「わっ」と言う声と共に背中を押され、あまりの驚きに飛び退いて蹲った。
「わーっ!!」
「おいおい吃驚し過ぎだろ」
そう言いつつお腹を抱えて笑うのは安部君だ。そんな彼の隣で戸惑っていたのは、待ち望んでいた門永さんその人だった。
「ごめんねっ? そんなに驚くとは思ってなくてっ」
大丈夫?と気遣い手を差し出してくれる彼女。よくよく見れば私服の彼女もやはり魅力的で麗しく、僕はそのまま見惚れてしまった。
「……? 藤木君?」
首を傾げてみせる動作もフィルターが掛かったみたいに煌めいて映ってしまうからこの気持ちは本当に厄介だ。なんて思っていたら盛大な舌打ちと共に無理矢理腕を引っ張られ立ち上がらせられた。
「わっ」
「ったく、こんな往来でいつまでも座り込んでんじゃねーよ」
引き上げたのは言わずとも安部君だ。なんて余計なことをしてくれたんだと恨まずにはいられない。けれど実際いつまで経っても彼女の手を取らなかった僕も悪かったかもしれない。そう思うと次第に自己嫌悪に陥る。
「……さ、気を取り直して行こうぜー!」
僕の心情を察してか玲央が力強く僕の背を叩く。それを機に僕も気持ちを浮上させる。
そう、なんたって門永さんと一緒なのだから!
「で、何処行くんだ?」
安部君が面倒くさそうに髪を掻きながら誰にともなく問い掛ける。するとそれに玲央が応えた。
「今日はー……水族館に行きます!!」
「……え、そうなの?」
「……マジかよ」
僕の驚きの声と安部君の愕然とした声が重なった。あとの一人……門永さんといえば絶えず笑顔を浮かべていた。が、そんな彼女の隣で安部君が引き攣った顔をしている。
「……お前、変なこと考えてんじゃねーだろうな」
「変なことって?」
笑顔のまま彼に詰め寄る彼女。その距離の近さにツキリと胸が痛む。やはり安部君と門永さんは付き合っているのでは……という考察が頭を過ぎる。
「……さてはお前、さっきの見てなんか良からぬ事想像してただろ。人で遊ぶのも大概にしとけよ」
「遊んでないわ。だって本気でそうだったらなって思ってるもの」
「余計に質が悪いっつーんだよ!!」
何だか知らない間に口論に発展していて僕は目を白黒させた。そんな隣で玲央が囁く。
「チャンスじゃね? 良かったな」
「……!? ちょっと玲央!!」
此方は此方で揶揄ってくるし、とんだ波乱の幕開けで今日という日がスタートする事となった……