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04 調理実習の心得 ~ 後編 ~


 モナミが異世界に行った翌日。

爽やかな目覚めとは程遠い日が昇りだしてまだ薄暗い、何時も通りの時間にモナミは目が覚めた。


「・・・・・・・ぅん・・・・

もう朝?・・・・・・

えーと、今日は・・・・・・朝の仕込みの手伝い、頼まれていたよね?

それから掃除と・・・・・・・・・・・あ、そっか」


ベッドからのろのろと起き上がり、これからの予定を口に出す。

そうやって寝ぼけた頭がハッキリして昨日のことをやっと思い出した。


「お父さん達居ないから、お店お休みなんだ・・・・・・・」


昨日、平和な村に、いや、帰ってから聞いた話でわかったことだが世界中で起きた異変。




最も神に近い“竜”の姿を持つ蛇人族の長一族がほえる時、時空が歪み異界への扉が開く




蛇人族の国長の一族が蛇人族の一般的な姿からかけ離れた巨大で神々しい姿をしてるゆえに、そんな御伽噺の様な噂が囁かれていた。

本気にする者何って誰も居ない。

唯の噂。

変わっているからこそ、面白おかしく囃し立てているだけ。


だが昨日、誰もが信じていなかった唯の噂が、現実になった。


あの突風が起きる少し前。

蛇人族の国長とその息子が盛大な親子喧嘩をした。

喧嘩の内容は、


“ゆで卵に塩をかけるかどうか”


と言う、至極どうでも良い内容なのだ。


だが、反抗期真っ盛りの息子は手の付けられないほど、荒れていた。

特に父の言う事なすこと全部を否定するようになっていたのだ。


否定するだけなら未だしも、重要な書類を破いたり貴重な品を壊したり。

周りの大人達は最初、それもまた成長だ、と注意するだけに留めていた。

だが、切欠は些細でどうでも良いことだが、そんなあまりに酷すぎる息子の反抗ぷりについに堪忍袋の緒が切れた国長が息子を怒鳴った。


国長はその時、うっかり普段抑えてる“力”を使ってしまったのだ。


そのせいで世界が歪んだ。

あの空をが何よりの証拠だろう。

世界中の時間と空間が滅茶苦茶になったのだ。

結果、世界に“穴”が空いてその中に落ちた人達が行方不明になってしまった。


その“穴”にモナミの両親と姉も巻き込まれてしまったのだ。

最悪なことに、一階の異変に気づいて慌てて降りてきたアロマとリキッドの目も前で。


自身の常識から離れすぎた出来事に唖然としていた2人がハッとして慌てて外を見に行くと、そこで洗濯物を干していたモナミも居なくなっていた。

その後の2人の心情は察するに容易いだろう。

死に物狂いで居なくなった4人の名を叫びながら村中を探し回り、知り合いの商人や冒険者に港や首都で見掛けていないか訪ね歩き。


結局見つからず、村の大人達に説得され渋々店に戻ってきた。

そこに今まで探し回っていたモナミがひょっこり帰って来たんだ。

2人がモナミの姿を見てああなっても仕方ないだろう。


その事をパニックを起こし、まともに話すら出来ないアロマとリキッドの代わりに

2人を心配し様子を見に着たお隣さんから聞いて、何とかアロマとリキッドを宥め寝かしつけ1日が終わった。


昨日は目の前で泣き続ける2人に構いっぱなしで、実感が湧かなかった。

けど、店に下りても何時も自分より早く起きている両親の姿が見えない事に、鼻の奥がツーンとする。

店に下りる前に覗いた其々の部屋にも居なかった。

店にもその部屋にも、部屋の主が居ないせいか、何時もより広く冷たく感じる。


「・・・・・・・・・・・・とりあえず、掃除はしよう」


こんな状態で店なんて開けるわけがない。

だからと言って毎朝の習慣である掃除をサボって良い訳ではない。

3人が帰って来た時大事な店が汚かったら申し訳ないし、何より気が紛れる。

何時もどおり、いや、何時もより時間と手間を掛けて掃除をしていく。


コンコン


「お客さん?休業の看板は出したままのはず何だけど・・・」


店も厨房も新品とまで行かないにしてもピカピカに磨き上げ、掃除道具を片付けていると、店の戸がノックされた。

掃除をする前にドアノブに


“準備中です。又のお越しをお待ちしています”


と書かれた看板が掛かっているのは確認している。

それに知り合いだったら、外の看板を見て裏口の方に来るはずだ。


「おはよーございます!郵便でーす!!」

「え?あ、はーい!今、開けます!少々お待ちください!!」


何時もなら、ポストに入れて去っていく筈のポストマンが声を掛けたことに驚くモナミ。

それでも待たせる訳には行かず、店の鍵を開けた。

そこに居たのは何時配達してくれる緑色の征服を着た獣人族の中年男性ポストマンじゃなく、青い征服の鳥人族の若い女性。


「おはようございます!ゲイルズ運送です!」

「・・・・・・・・・・え?」


ゲイルズ運送社。

アルカンシエルの首都に本社を置き、全国に支店がある世界1早い運送会社だ。

世界1と言うのは嘘でなく、世界の反対側に居ても1日で荷物を届けてくれる。


その速さから腐りやすい食品や急ぎ手紙のほかに、







各国から依頼され旅先、特に海外旅行で無くなった家族の訃報を伝えることもある。


「ま、まさか!!」


体が冷たくなり、背中を嫌な汗が伝う。

目の前がグラグラ揺れ、立ってるのも辛い。

女性が差し出すあの封筒の中に両親と姉の・・・・・・・・


震える手で封筒を受け取り、覚悟を決め封筒を見る。

その瞬間、モナミは地面に座り込んでしまった。


「・・・・・・・・・・・・よ、よっかた~。

無事だったんだ」


家族が無事生きている事にホッとして。

もしこれが訃報ならその家族がいる国の紋章が押された封蝋がしてあるはずだし、何より封筒に書かれた見慣れた癖のある文字は母のものだ。


「落ち着いたようなので、そろそろサインお願いしまーす!」

「あ、すみません!」


封を開け中の手紙を読んでいたモナミに女性が声を掛けた。

普通の運送会社と違いゲイルズ運送社はちゃんと荷物を届けた証拠としてサインを求めてくる。

その事を思い出し、慌てて女性が差し出したペンと用紙を受け取りサインするモナミ。


「あ、そうだ。

今から依頼して大丈夫ですか?

まだ、準備できてないんですけど、この手紙を出した人の所へ荷物を至急届けてほしんです」

「はい、大丈夫ですよ!」

「えっと、直ぐ準備するので座って待っていてください!!」


女性にお茶を出し、手紙に書かれていた物を取りに行く。

保管場所は、良く知っている。

でも、これを送るということは・・・・・・・・・・・


「とりあえず、これだけお願いします!」

「はい!ではこれが配送の書類で・・・・・・」


必要な書類を書き、女性が荷物を持って出て行くのを見送ったところでアロマとリキッドが近づいてきた。


「モナミ、今のって・・・・・・」

「大丈夫、お姉ちゃん達は無事だよ!」

「っ、そっか・・・・・無事・・・・・なんだな」

「でも、直ぐには帰れ無いって」

「え。それって、どう言う・・・・」


ホッとしたのも束の間、モナミの言葉にアロマとリキッドの顔に困惑が浮かぶ。

そんな2人にモナミは無言で封筒を渡す。


封筒に入っているのは3通の手紙と、1枚の写真。

写真に写ってるのは怪我1つなく事件当時の恰好のまま、笑顔の3人の姿。

背景にはモナミたちが見たこともない建物が写っている。

手紙に書かれている通りなら、たぶん、モナミの両親の知り合いが暮らす蛇人族の国の何処かの町なのだろう。


そう、モナミの両親と姉は今蛇人族の国にいる。

急に外国に飛ばされ困っていた3人を偶然見つけて助けてくれた、その国にいる古い友人の頼みで暫くそこに住むことにしたそうだ。


「頼みの内容はとても時間の掛かる物で、いつそっちに帰れるか解らない」


だから、何時も自分が愛用している包丁を送って欲しい。


父が書いた1枚目の手紙にはそう書かれていた。

頼まれたとおり、包丁と手入れの道具は手紙と共に送った。

でも、料理人の命と良いほど最も大事な道具である包丁を送って欲しいと言う事は、向こうでも店と同じように料理を作るってことで、それはつまりそれだけ長く向こうに居るって事だろう。

そして手紙の最後に書かれていたあれは・・・・・・


「無事なこともわかったし、直ぐ帰れない理由も解った。

でも、これって・・・・・・祖母ちゃんが、書いたんだよな?」

「・・・・・・・・え?あぁ、うん。お母さんの字だよね」


リキッドが持ち上げたのは3枚目の手紙。

其々が1枚ずつ書いたらしく、1枚目には父が主に状況説明し、2枚目の姉の手紙は自分達の居ない間の注意事項と言うか小言が書かれていた。


寝る前には歯を磨くこととか、外から帰ったら手洗いうがいは忘れずにとか。

幼い子供じゃないのだからそういう事は大丈夫なのだが、姉はどうも心配性らしい。


問題は3枚目。母が書いた手紙だ。たった1行、


『モナミへ。お母さん、あの蜥蜴を3枚に卸してシチューにするまで帰りません!!』


とだけ書かれた手紙。

何があったが解らないが、インクが滲むほど強く書かれた手紙を見ると、母がそれほど怒っていたることが解る。


母の手紙と父の頼み。


この2つを考えると、友人の頼みとはただ事ではなさそうだ。

今は無事でも、これから先も無事で居てくれるか不安になる。


「・・・・・・・・ごめん。ちょっと出かけてくるね」

「え、モナミちゃん?」


手紙を読んでからずっと考え込んでいたモナミが急に立ち上がり、外に出て行く。

直ぐ、帰ってくるからと、行き先を告げずに出て行き2時間以上。

自分達と同じ様に心配していたご近所さんや村長さんに手紙のことを話しに行ったのか?

と思っていたが、この小さな村でこんなに掛かる分けない。


「ただいまー。村の人たちにお父さん達のこと話して来たよ」

「おかえりな・・・・・・さ・・・・・・・い」

「モナミ、遅かった・・・・・・・な」


予想通り話し合って来たらしいモナミの姿を見て、アロマとリキッドの目が見開かれる。


「モ、モナミ、ちゃん?」

「おま、お前・・・・それ・・・・・・どうしたんだよ!!?」

「え?気合入れてきた!」


そう言ったモナミの笑顔が良く見える。

何せ、出かけるまで腰よりも長かったモナミの髪が女の子にしては短すぎるほどバッサリ切られいるのだから驚くなっと言うのは無理な事だろう。

前髪何って額が見える位短く、カラッと笑ったモナミの顔が良く見えるほどだ。


「気合を入れてきたって・・・・・」

「うん、お父さんの手紙に書かれていたでしょ?


『自分達の居ない間、店を任せる』


って」


手紙の最後に書かれた文字。

それを読んでモナミの頭に浮かんだのは昨日講師が言った言葉だった。


『たった1本でも料理に髪の毛が混じっただけでいっぺんにお客様からの信用は失われます。

それが長年付き合いのあるお客様でもです。

そんな事が起きないように常に清潔感のある髪型を心がけ手入れしましょう』


唯でさえ、自分は父に遠く及ばない。

その自覚は、ある。自信を持って父の味を、いや、それと同等の味の料理を提供できるか解らない。

少なからず、そのせいでお客さんが離れていくのは目に見える。


その上、たった1本の髪の毛から信用を失って、店の評価を下げたら父の居ないこの店は終わってしまうだろう。

だから、店を任された以上、どんな些細な事でも店を守るためにはやる覚悟だ。


モナミが髪を切ったのはその覚悟と、任された以上父を追いかけるだけの見習いじゃなく、店の名を背負う1人の立派な料理人としての覚悟。

その覚悟をしたから、その思いを実現できる自分に変わるために気合を入れたのだ。


「明日から、お店再開するよ!

まだ、私の腕じゃ自信を持って提供できない料理も有るし、まずはメニューの書き換えからかな?

アロマちゃん、リキッド君、味見よろしく!」

「う、うん」

「お、おう。解った」


やる気全開でさっさと着替え厨房に向かうモナミに押され頷くアロマとリキッド。




駆け出したばかりの新・『ゆきぐも亭』、開店である。



この話のきっかけは、


現代の日本のような所に住んでる、又はやって来た主人公達が、現代日本と異なる異世界の方に料理を振る舞う話はよく見ます。


ですが、『異世界の方が現代日本に料理を習いに来る』話をあまり見かけない、


と思ったからです。


主人公が蜘蛛なのは、どうやって主人公が現代日本で料理を習うか考えた結果、

日本にも住んでいて、こっそり授業を聞いていてもバレず、上手くやれば料理の味見も出来る存在感として選びました。



この話は4話分書けるほど気に入っている作品で、この後の話も少し考えています。

ですが、料理を作る描写やお客様が美味しいそうに食事をする描写が難しくて、段々やる気がなくなって断念しました。


その様な理由でずっと放置していましたが、今回、もったいないお化けに取り憑かれないよう、お焚き上げ代わりに投稿しました。


最後になりますが、

ここまでお読みいただき、ありがとございました。


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