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ぼっちは転生してもぼっちでした  作者: 妄想大好きおじさん
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5.将来に向けて鍛え始めました

こんにちは、俺です。

最近5歳になりました。


俺が魔法を使えることが判明したため、お母さんも気遣う必要がなくなったのか、生活の中で魔法が使われるようになった。

例えば火を起こす際、火打石を使っていたのを魔法で起こしたり、洗濯するのにわざわざ川に行かずに魔法で水を出したりなどだ。

改めて魔法って便利なんだなと実感した。

そして3年間、俺を気遣って魔法を使わなかったお母さんの愛情深さ。

やっぱりこの人は聖母なのではないだろうか?


ある日そのことについて触れてみた。


「お母さん。僕が魔法を使えるって分かるまでお母さんが魔法を使わなかったのは、僕のことを気遣ってだよね?どうもありがとう!」

「うふふ、どういたしまして。カル君くらいの年齢の子だったらそんなこと気付かないだろうに、カル君には全部お見通しなのね。でもね、カル君。お母さん全く魔法を使わなかったわけではないのよ。」


なん…だと…?


「お母さんがカル君から離れている間に何かあったら困るでしょ?だから遠くの音を拾う”風の囁き(ウィスパー)”っていう魔法でカル君の周りの音を聞いてたのよ。他にも目に見えないところで魔法を使ってたわ。」


ウィンクされた。

効果は抜群だ。

しかし、そうか。

そんな魔法を使っていたのか。

地獄耳だなんて思ってすみません。


「そうなんだ?全然気付かなかった!お母さん凄い!」


素直に思ったことを口にした。


「ありがとう。でもお母さんからしたら、カル君の方がずっと凄いわ。風の精も火の精も同一の(エレメント)だなんてとんでもない大発見よ。お母さんもそれなりに長く生きてるけど、全然気が付かなかったわ。それを意識するようになってから、魔力の消費量が減って魔法効率が格段によくなったんですもの。カル君はお母さんの自慢の息子よ!」


そしてご褒美タイムだ。

相変わらず柔らかい。


ちなみに呪文の詠唱についてだが、これはある程度簡略化できるようだ。

現にお母さんは火をつける時、”火よ、灯れ”で済ましている。

初めて魔法を教わった時のあの呪文は、初級者が使用する定型文みたいなものだそうだ。

魔法の3工程を意識できるため、最初は皆あの呪文から入るらしい。

そこから経験を積んで3工程を自然にこなせるようになると、呪文を短くしても(エレメント)に魔法のイメージを伝えられるようになるそうだ。

(エレメント)に魔法のイメージが伝わればいいので、簡略化した呪文は人によって違うらしい。

お母さんは、風の精を呼ぶ、火の精に変換する、火が灯るイメージをする、発動するという工程を、”火よ、灯れ”だけで済ませていることになる。

俺は無詠唱とはいえ、『来い。火の精になれ。火(のイメージ)。灯れ。』と各工程を踏まないと同じ事が出来ない。

お母さん曰く、各工程を別々のものではなく全部で1つの工程としてイメージするのがコツだという。

まあこれは練習あるのみだろう。

ここまで来ると魔法の決まりなんてあって無いようなものに感じる。

もしかして、イメージがきちんと伝われば、なんでも実現可能なんじゃないか?

これは夢が広がる。


それはそうと、気になった発言があった。


「長く生きてるって、そういえばお母さんって、いく…つ……!」


瞬間、ピシリッと音が聞こえた。

空気も冷たく感じる。

よく見ると周りに白い綿毛が漂っていた。

これは氷の精だ。

こいつら空気を読み過ぎだ。

一般的に氷は水属性と認識されているようだが、俺にはハッキリと違う色で見えてるため、区別するようにしている。

まあ、今はそんなことどうでもいい。

ギギギギギと音が聞こえそうなぎこちなさで、お母さんは俺を解放し、正面で向き合った。

両肩はガッシリとロックされている。


「なぁに?カル君?」


笑顔だ。

全然笑ってない笑顔だ。

氷の微笑だ。

これはヤバい。

氷の精だって、何も空気を読んで現れたわけじゃない。

そんなことは分かってる。

お母さんが無意識に周りの(エレメント)を氷の精に変換したんだ。

このままだと、俺の危険が危ない。


「お、お母さんって、いくつ…いくつくらいの魔法が使えるの!?」


俺ってば冴えてる!

転生前の人生含めて最高のファインプレーだ!

会話的にそこまで不自然じゃないはず!

氷の精が徐々に風の精に戻っていく!

やった!成功だ!


「う〜ん、その質問は難しいわね。魔法は工夫次第で何でもできるから。とりあえず一般的に知られてる魔法なら一通り出来るわよ。」


流石エルフである。

いや、これはお母さんだからか?

なんにせよ凄い事には変わらない。


「やっぱりお母さんは凄いや!」


とりあえず褒めておく。


「ふふ、ありがとう、カル君。」


優しい笑顔でお母さんが答える。

なんとか事態は収拾できたようだ。


「でも気を付けてね、カル君。次からは問答無用でお仕置きしちゃうんだからね。」


優しい笑顔のまま言われた。

お母さんの周りに再び氷の精が現れたのを見て、戦慄を覚えた。


俺は引きつった笑顔で頷くのがやっとだった。


◆◆◆◆◆


さて、魔法が使えることで舞い上がって魔法の考察ばかりしていたが、そろそろ体も鍛えようかと思っている。

なんてったって魔物が存在するのだ。

世界を旅するに当たって、魔法だけだと心許ない。

というわけで特訓だ!


と、意気込んだはいいが、何をすればいいんだ?

自慢じゃないが、転生前はデスクワークで、運動もほとんどしなかったため、メタボ予備軍だった。

そんな俺にはどんな特訓が効率的なのか見当がつかない。

とりあえず腕立てでもやってみようかな?

思いつきで腕立てを始めてみる。

100回を超えた辺りで異変に気付く。

いや、異変が無いことに気付く。

全く疲れないのだ。

このままだと、千回やっても疲れなさそうだ。


「カル君?何をしてるの?」


お母さんがキョトンとした顔で聞いてきた。


「えっとね、僕絵本に出てくる戦士さんみたいに、魔法じゃなくて、剣でも魔物を倒せるようになりたいんだ!だから体を鍛えようと思っ「カル君はあんな筋肉の塊になる必要ないのよ!」」


被された。

生まれてこの方、こんな事は初めてだったから、ちょっとビックリした。


「えっと、お母さん?」

「せっかくカル君はこんなに可愛く育っているのに、あんな粗野でデリカシーのない筋肉になるなんて、お母さん受け入れられないわ!お願いだから考え直して!」


必死さが伝わってくる。

何がお母さんをそこまで駆り立てているのだろうか?


「お母さん。落ち着いて。僕は別にムキムキになりたいわけじゃないよ。ただ、魔法以外にも戦うことが出来るようになりたいって思ったんだ。」

「そうよね!そうなのよね!あぁ、よかったわぁ〜。」

「でも絵本の戦士さんはそんなにムキムキじゃなかったよ。どちらかと言ったらほっそりしてたと思うんだけど。」

「カル君。書かれていること全てが必ずしも真実とは限らないの。時には疑う事も大事よ。覚えておいてね。」


なんかお母さんが遠い目をしてる。

話からして、絵本の戦士のモデルになった人の事を知ってるっぽいんだけど、これは聞かない方が良さそうだ。

実際のところ、誰だろうと俺にはあまり関係ないだろうしね。


「それで、魔法以外で戦うことが出来るようになりたいだったかしら?」

「うん、そのために体を鍛えようと思ったんだ!」

「うんうん、向上心があるのはとてもいいことよ。でもね、カル君。エルフは基本的に身体能力が高いから、人族や獣人族みたいに鍛える必要はないの。多分カル君もその必要は無いんじゃないかな?強くなることを目指すなら、体を鍛えるよりも、技術を磨いた方がいいかもしれないわね。」


なるほど、流石お母さん。

説得力がある。

実際駆け回っても息切れしないし、腕立てをしても疲れを感じないのだから、お母さんが言ってることは正しいのだろう。

ただ、それでも考えてしまう。


「うん、分かった!でもお母さん。もしエルフが体を鍛えたら、どのくらい強くなるの?」

「え?だからエルフは鍛える必要がないのよ?」

「うん、エルフは鍛えなくても強いんだよね?だったら鍛えたらもっと強くなるの?それとも鍛えても強くはならないの?」

「…どうなのかしらね?そんなこと考えたこともなかったわ。少なくともお母さんが知ってる範囲で体を鍛えたエルフなんていないわね。う〜ん、多分だけど、お母さんが今から鍛えても強くはならないわね。それはエルフの成長は15〜20歳くらいで止まってしまうから。でもカル君なら…。いいえ、やっぱり確かなことは言えないわ。ごめんなさい。」

「謝らないで。お母さんは何も悪くないんだから。それに分からなければ試してみればいいんだし!無駄になるかもしれないけど、その時はその時だよ!別に何か損するわけでもないしね。あ、それとは別に、戦う技術っていうのを教えて欲しいな!」

「ええ、それならお母さんがバッチリ教えてあげるわ!お母さんも、お母さんのお母さんから教わったのよ。しっかりとカル君にも引き継いでもらわなきゃね!」

「うん、よろしくお願いします!」


美人の鬼教官。

ごく一部の人にはご褒美なのだろうか?


俺には特訓後に膝枕という休憩という名のご褒美が与えられたので、不満はない!


この奥様ったら、飴と鞭の使い分けが絶妙過ぎです!

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