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前編 ~No,5の恐怖~

『No,2 ~脱走した危険物~』の続編的な作品です。

「ナンバー05が脱走したぞ」

 ここは政府の秘密組織、通称『ザッドズ』政府はまだ懲りてはいなかった。某山中にある秘密基地でひそかに実験が行われていた。

 かつてを知る唯一の人物、高島キリコはアメリカから帰国を果たしていた。

 夫とともに――

 高島アルツ、またの名を『ナンバー02』と呼ぶ。


 山中ではナンバー05の捜索が始昼夜問わずに行われていた。

「見つかったか?」

「いいえ、まだです」

 部隊長である、轟木シドウ(とどろきしどう)はいらだちを隠せないでおり、部下に八つ当たりをしていた。

「貴重なサンプルをなくしたんだぞ。全力で探せ」

 部下たちの顔面を殴る始末だ。

 この理不尽な対応に部下の不満は爆発寸前だ。


「いっそうのこと現れて隊長を殺してくんねえかな」

「はは、そいつはいいや」

 そんな小言をいう部下の、木藤ガイト(きふじがいと)と、井熊マモル(いくままもる)の前に人影が確かに表れた。

 対人間兵器用ショットガンを構える二人の息は上がっていた。


 恐怖、とでもいおうか。

 緊張はピークに達する。

「よし出てこい、良い子だ」

「焦るな焦るなよ。自分」

 ガサガサっと草が揺れて、そこに標準を合わせる二人の目の前に出てきたのは明らかに違う人間兵器である。


「おいおい、こいつは十五年前の人間兵器じゃないか?」

 ガイトは確信を持っていた。

 というのも自分が新兵ときに一度見ていたからだ。

「俺は当時別部隊で知らないけどそうなのか?」

「ああ、間違いない。こいつはナンバー05より貴重だっぞ」


「攻撃目標発見ただちに戦闘を開始する」

 これはナンバー01、通称イーワン量産機の一体である。

 生き残り、とでも言おう。

 確信はついた。


 軍事用のスマホで、轟木に報告するマモルに対して、ガイトはショットガンで対抗する。

 あれから改良が施された、対人間兵器用ショットガンは一発でイーワン量産機を機能停止にもちこむ。

 ふう、と肩を落としホッとする二人の前に真の恐怖が迫る。


「ナンバー05を発見しました。隊長、隊長……ツ―――」

 通信は途切れてしまった。

 おそらく二人は生きていない、轟木は落胆する。

 このプロジェクトのトップである、湯畑喜久子(ゆはたきくこ)に轟木はコンタクトを取る。


「そうか二人の犠牲者がでたか。だが、捜索は続行しろ」

 湯畑喜久子は十五年前に、佐伯リュウに少なからず接触していた。

 その時にナンバー05、通称ウーファイの計画案を出していた人物。


「局長、ナンバー02が日本に帰国しました。空港の監視カメラに映っています」

 湯畑の秘書である、津田メグム(つだめぐむ)がコーヒーをいれて机にポンと置くと、湯畑はピストルをだして津田の額に銃口をあてる。

「もっと丁寧におけないのかしら?」

「も、申し訳ありません」

 津田は涙ぐみ冷や汗を流しガクガクと足を振るわししまいには腰を落とした。

「いいわよ許してあげる。それにしてもいい顔ね、恐怖に歪んだ顔は」

 ピストルを机に置くとコーヒーを一口飲むと、また銃口を津田に向ける。

「ぬるすぎよ。適温は43度と何度言えばわかるのかしら? こっちは生理前でイライラしてるの」

「申し訳ございません。いれなおします」

「もういいわ。そよりナンバー02はどこにいるの?」

「都内のホテルに宿泊中です。今エージェントが向かっています」

 もう一口コーヒーを飲むと、湯畑は椅子に座り手を組みあごに寄せて命令する。

「ナンバー02を確保せよと伝えてくれる?」

「はい、かしこまりました」


 その頃、山中では依然としてナンバー05の戦慄から目が離せない状況である。

「隊長、ナンバー05が発見されました……ツ――」

 発見されては隊員たちが殺されていく。

 この戦場から離脱しようとする者もいた。

 轟木は容赦なく射殺して部下たちの忠誠心を仰いだ。


「結局、殺されるなら戦うしかないのか」

 落胆する隊員たち。


「よし良い子だ、最後に隊長を殺すんだぞ。いいな?」

 何者かがウーファイに指示している様子だ。

 木陰の中からそいつは戦場を見ていた。

 傍観者、と言わんばかりに面白そうに裏で糸を引っ張っていた。


 同刻――

「ナンバー02だな?」

 エージェントがアルツと接触した。

「また悲劇が……」

 キリコがエージェントからアルツを守ろうしたとき、アルツがみぞうちを思いっきり殴りキリコを失神させた。

「何があった?」

「話が早いですね。来てください」

 エージェントの車に乗せられたアルツは一連の事柄を話した。

「ナンバー05、ウーファイのことは知っている。まさか本当に起動させたとはな」

 車の外を見ながら、懐かしい施設へと向かうアルツ。


「今はザッドズに名前が変わったのか。だがやってることは変わらない……皮肉だな」

「改造を受ける気はありますか?」

 その質問に少し考え込むアルツだが、キリコたち家族を巻き込みたくないという気持ちが優先された。

「答えは、ノーだ」

「そうですか。読み通り」

 サングラスとカツラを取り、イーワンは変声機も取り外した。

「久しぶりですね。アルツさん」

「お前はイーワン。どうして?」

「私にはクローンがいたのを覚えてないんですか? 私、正確にはナンバー00、レイゼーロです」

 アルツは息をのみ信じられない様子でいた。


「とりあえず着きましたよ」

「ここがザッドズの施設か」

 施設の周囲を見るなりアルツは恐怖を感じた。


「どうやら、招かざる客が来たようですね」

 その様子を木陰で見ていた謎の人物はウーファイに命令を下す。

「全員を早急に排除なさい」

「ラジャー」

 ザッドズの兵士たちは次々と殺されていく。

 そして残ったのは轟木シドウ、ただ一人。


「さあ、恐怖を味わいなさい」

 轟木はショットガンを構え、どこからくるかと汗だくで息をひそめる。

 ガサガサっと音がする方向にショットガンを連射する。

 あまりにも恐怖からパニックに陥って冷静ではなかった。

 それがあだとなりウーファイじゃなく、謎の人物に殺害された。

「はは、隊長さんよ俺たちの勝ちだ」

「ウーファイなんて見つかりゃしないんだよ」

 正体は木藤ガイトと井熊マモルだ。


 戦慄の戦場を作り出していたのだ。

 肝心のナンバー05、ウーファイは見つかってはいなかった。

 目撃証言はあいまいで恐怖感から隊員たちは、ウーファイと勘違いしていたのだ。

 人間兵器の恐怖である。


 二人は日ごろの隊長への鬱憤を晴らしたのだ。

 すっきりした、ガイトとマモルはわざとらしく湯畑に連絡をとる。

「湯畑局長、轟木シドウはウーファイに殺害されました」

「そう、おつかれさま。被験者はあなたたちに決定するわ」

「はい?」

 疑問い思う二人に対し湯畑は冷笑した。


「ナンバー05、ウーファイ起動します」

 秘書の津田はウーファイを保管してあるカプセルのスイッチを押した。

 そして山中に放った。

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