時の発条
ねぇ、そこの君、死神ってしってる?
ほら、怖い話とかでよく出るじゃないか、人は死ぬ直前に死神が見えるって
あれって本当なんだね、え?なんで知ってるかって?そりゃ簡単さ。
僕は今自殺しようとしている。そして死のうと思った瞬間、目の前にその死神様が現れたわけさ・・・
「おい、聞いてんのか白牧 黒斗」
にやにやしながら僕の顔を覗いてきた。
「なんで僕の名前を知っているんだい?死神さん」
「ケケ、それは言えないなぁ」
そう僕の名前は白牧 黒斗
新東京の住んでいる、どこにでもいる学生だ
「で、さっきから何を考えているんだ?ククク」
「いやぁ、まさか死神様に会えるとは思わなくてね、感激しているところだよ」
「ケケケ、そりゃよかった。」
「で、死神様、僕を殺すために来たのかい?なら、さっさと殺ってくれよ」
「ククク、残念だがそれはできないんだなぁそれが。」
不気味な笑みを見せながら返してきた
「なら、今から死ぬのを見届けにに来たんだね。」
「ククク、それも違う」
「なら勝手に死なせてもらうね、さようなら死神さん」
僕ははなりふり構わず鋏をのどに刺した
刺した瞬間、ものすごい激痛と、苦しさに襲われた
意識が朦朧とする中、死神様を見てみると
口元が動いているように見えた、
まぁ死んでゆく僕には関係ないことか・・・・・・
そして僕は静かに目を閉じた・・・・・・
あれから、どのくらい時が経っただろうか。
もうここは地獄なのかな・・・・・・
腹減ったな・・・・死んでも腹は減るのな・・・・・・
僕は静かに目を開いた
僕は驚愕した
目に前に移った景色は・・・・・・自分の部屋の天井だった。
僕は飛び起きあたりを確認する
今まで使っていたベッド
ありきたりなテレビ
平凡な机
間違いなく僕が使っていた部屋だった・・・・・・
「どうなってんだよ・・・・・・」
僕がそうつぶやくと
「ケケケ、どうだったかい、死ぬ感覚は」
部屋の隅からスッと現れたのは、死ぬ前にあった死神だった。
「どうなってんだ、僕は死んだはずだ!!」
そう叫ぶと死神は
「クク、俺は死神だが、ちと特別な死神でな、黒斗、お前に用があってきた。
「僕に用?特別な死神?」
なにを言っているんだ、しかしそれよりも・・・・・・
「おい、僕が今こうして生きていることもお前の仕業か」
「クク、なんで、そう思う」
「今、特別な死神って言ったよな?それに僕に用があるとも言っていた。つまりあの時僕が死んだら都合 が悪くなるからな 、その場合生き返らせるのが得策だからな」
「ケケ、正解だ、お前は俺が生き返らせた、いや元に戻したといったほうが正しいがな」
「元に戻した?どういうことだ。
「時計を見てみな」
僕はふと壁にかけていた時計を見た・・・・・・
「・・・っなウソだろ」
僕は自分の目を疑った
時計には午前2時と表示されていた
「なんでだよ・・・僕が鋏を取り出すときは3時だったはず・・・・・・」
「クク、俺が時を過去に戻してお前が死ぬ前に戻したのさ」
「・・・・・・はぁ」
僕は一気に脱力感に襲われた
時を戻した?僕は死んでいない?
頭の中の整理が追い付いていない
「さて、おめぇさんも目覚めたことだし、本題に入るか」
「もう勝手に進めてくれ・・・・・・」
「ケケ、黒斗よ、イリアは知ってるか?」
「!!!」
僕は跳ね起きた
「イリアを知っているのか!」
「あぁ、知ってるとも」
「今イリアがいる場所も知ってるのか!」
「・・・・・・」
死神は急に真剣な顔つきになった。
「いいか、よく聞け黒斗」
声のトーンが下がった。
「イリアは今、異世界にいる。」
「はぁ?異世界?」
「あぁ禁忌の世界、パラドスクにいる」
「ちょ、えっ、ってか、僕まだ死神さんの名前すら知らないんだけど・・」
「あっ、そういやそうだったな、俺様の名前は時を司る死神”クロイク”だ」
「クロイク、で、そのパラドスクにはどうやって行けばいい?」
「その行く方法なんだが・・・その前に契約が必要なんだ」
「契約?」
「禁忌の世界、パラドスクに行ったら、もう、この世界に戻ることはできなくなる。」
「・・・・・・」
「ま、行く行かないはお前さん次第さ」
「・・・だろう」
「なんだ、聞こえないぞ」
「・・・・・・いだろう」
「いだろう?」
「いいだろう!!!そのパラドスクに連れて行け!!
「いいんだな?二度と戻れなくなるぞ」
「あぁ、イリアにもう一度会えるのなら!」
「いいだろう、では手の甲をこっちに差し出せ」
僕はクロイクの前に手の甲を見せる
「・・・・・・ふっ!」
クロイクの目が黒から白に変わった
その刹那、僕の手の甲に紋章が刻み込まれていった
「・・・・・・よし、これがあればパラドスクに行けるぞ」
その紋章は死神と天使が手を握っているような紋章だった
「では、パラドスクへの扉を開けるぞ」
クロイクは窓に向かって呪文のようなものを言い放った
すると窓が見る見る変わってゆき、黒いカーテンのようなのもが現れた
「さぁ行くぞ黒斗、イリアに会いたいんだろう・・・・・・」
「あぁ、必ずイリアに会う!」
僕はそのカーテンに入っていった・・・・・・
ここから僕の時の発条が再び動き出すのだ・・・・・・