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第01話 始まりの朝

チュンッ、チュンチュン


「んぅ?」

小鳥の囀りで眼を覚ます。


「朝か……ふぁあ~~」

そう呟きながら俺はベットから起き上がり欠伸をし、そのまま少しノビをする。

ベットから降りると着替えるためにクローゼットにある袋に入った制服を取り出し着替え始める。

制服が袋に入っている以外は俺、荒木和真(あらき かずま)のいつも通りの起き方だ。

そういえば自己紹介がまだだったな。

さっきも言ったと思うが俺の名前は荒木和真だ。

「私立綾藤(あやふじ)学園」に通ってる2年生。まぁ正確には『今日から2年生』だけど。

『今日から』と前置きをした通り、今日は4月1日、始業日だ。


「そういえば今何時だ?」

着替え終わったところで時間が気になり、自分の枕元に置いてある目覚まし時計を手にする。時計の針は午前7時を指していた。どうやらかなり早く目が覚めたらしい。自分ではそんなに意識しているつもりはなかったが、これから始まる新しい学園生活を楽しみにしているみたいだ。


「少し早いが朝食でも作るか……」

俺は自分の部屋を出てリビングに向かうとトントントントンと規則正しい音と美味しそうな匂いがしてきた。おかしいな、先週から母さんは海外に行っていないはずだが……。

俺の母親の名前は荒木彩子(あらき さえこ)

普段は何処にでもいる普通の専業主婦なのだが、時折途上国を渡り歩いて病人を診て回っている父親、荒木幸宏(あらき ゆきひろ)について行き、その手伝いをしに行くことがある。ちょうどそれが先週の事だ。

だから家には俺以外誰もいないはずなのだが。そう疑問に思いつつもとりあえずリビングに入るとそこには――


「何やってるんだ? 美冬」

制服に身を包んだ森下美冬(もりした みふゆ)が台所に立っていた。

美冬とは家が隣通しで親同士の仲がよかったということもあり、物心付く前から一緒に居る所謂(いわゆる)幼馴染だ。


「あ、カズくん、おはよう」

俺がリビングに下りてきたのに気が付き、笑顔で迎えてくれる。


「あぁ、おはよう……て暢気に挨拶、じゃなくてだな、俺の家で何してるんだ?」


「うん? そろそろカズくん起きるかなぁ~って朝ごはんの準備してただけよ?」

そう言って美冬がテーブルに視線を移したのに釣られ俺は視線をテーブルへ向ける。

そこにはトーストに目玉焼き、サラダなど朝食の定番が並んでいた。なるほど、美味しそうな匂いの正体はこれだったのか。


「カズくん、コーヒーと紅茶どっちがいい?」

そう言って、コーヒー豆と茶葉を見せてくる。

ふむ、今日はいつもより早起きしているからな、コーヒーにでもしておくか……って。


「そんなことより何で美冬が家に居て、朝食の準備しているんだ!」

俺は思わず叫んでしまう。

だってそうだろ? 朝起きてリビングに入ったらなぜか隣に住む幼馴染が自分の家で料理してたんぜ? 鍵をちゃんと閉めてあるのにだ。おかしいだろ? 幼馴染じゃなかったら通報物だ。


「それは、おば様と約束したからだよ」

美冬の口から意外な言葉が出てきた。

約束? なんだそれ、母さんからは何も聞いてないぞ……? まぁあの母さんの事だから単に言い忘れただけだろうけどさ。天然だし。


「約束ってなんだ?」


「え? カズくん、自分のお母さんから何も聞いてないの?」


「あぁ、何も聞いてないぞ」


「昨日カズくんのお母さんにしばらくカズくんの面倒をみてやってくれ、て言われたの」


「へぇ~母さんが、ねぇ……」

子供が家に1人っていうのが心配なのはわかるが、もう何度も経験した事だろうに……。それにもう高校生なんだからそんなに心配しなくて大丈夫なんだけどな。まぁいいか。


「だから私がこうしてカズくん家に来て朝御飯を作ってるの。理解出来た?」

コーヒーメーカーで作ったコーヒーをコップに淹れながら聞いてくる。


「あぁ状況は理解できた。ってなんでコーヒー淹れてるんだ?」

とりあえず席についてから答える。

俺、確かなにも言ってないよな? いや、まぁ今日は気分的にコーヒーだけど。

これでもし『今日のカズくんはコーヒーの気分かな~て思ったから』なんて言われたら……。


「あ! ごめんなさい。もしかして紅茶がよかった?」


「いや、コーヒーでいいんだけどなんでコーヒー淹れたのかな~と思って」


「えっと今日のカズくんはコーヒーの気分かな~て思ったからなんだけど……」


「そっか。よくわかったな」

ビンゴかよ!? さすが幼馴染、俺の気分をよくわかってる。これがまさにツーカーの仲って奴だな。なんか違うような気がしないでもないがまぁいいか。まぁ、ある程度アイコンタクトも出来るしこれくらいは余裕か。


「さすがに16年一緒だもん、それくらいはわかるよ」

そう言って2つのコップを手に持ち、片方を俺の前へ、もう片方を俺の正面の席において席につく。


「それもそうだな」

とりあえず俺は淹れたてのコーヒーを冷まし、一口飲む。


「そうだよ」

美冬も同じように一口飲む。


「だからカズくんがすごく優しい人だって事も一番わかってるよ」


「優しい、か。俺は別にそんなつもりはないんだけど」

実際俺は人に優しくしている自覚はまったくないのだが、周りからは結構頼りにされる事が多い。ただ単に厄介ごとを任されてるような気がしないでもないが基本的に引き受ける。それが美冬の言う俺の優しさ、なんだそうだ。別にそれくらい普通だと思うんだけどな。


「と、まぁそんなカズくんがお姉さんの自慢なのよ」

美冬が「えっへん!」と胸を張る。

普段はおしとやかで本当にお姉さん、てイメージがあるけど昔っから結構子供っぽい所あるよなぁ~。


「お姉さんって、俺と同い年だろ?」

今言ったとおり美冬とはもちろん同い年である。ただ誕生日が約半年程俺より早い、それだけでよく自分の事をお姉さんという。まぁ実際子供の頃は美冬の方がお姉さんに見られている事が多かったが。


「でも、私のほうがカズくんより誕生日半年ほど早いよ?」


「それは、そうだが……。うん、そうだな。子供の頃(小学3年生より前)の記憶がない分美冬のほうがお姉さんなのかもな……」

俺は昔を思い出す様に遠くを見つめる。

今言ったように俺には小学校3年より前の記憶がない。聞いた話によると俺は信号無視で突っ込んできたトラックに撥ねられたそうだ。それで奇跡的に助かりはしたが、記憶をなくしてしまった。まぁ昔の記憶がなくなり最初の頃は苦労したが、今では普通に生活している。事故にあったのが子供の頃っていうのが救いだったな。


「カズくん、ごめんね。嫌な事思い出させちゃって……」

美冬が申し訳なさそうに俯く。

美冬の奴いつも気にするなって言ってるのに、まったく。

こういう風に美冬が落ち込んだのは何度もあるから俺はいつも通り美冬を慰める。


「別に美冬のせいじゃないさ、それに子供の頃の記憶がなくってもこうやって幼馴染としてやってきてるんだから何の問題もないじゃないか」

そうだ。美冬が気にすることじゃない、悪いのは……いや、やめよう。こんな話をしても無意味だ。


(―――なんだけどね……)


「ん? 今なんか言ったか?」

今何か呟いたような? なんだ?


「う、うぅん、なんでもないよ」

美冬が手を振り、慌てて否定する。

あからさまに怪しいが、まぁいいか。


「そうか、ならいいんだけど」

本人がそう言ってるなら深く追求しないほうがいいよな。

その後俺たちは黙々と朝食を取る。


「ふぅ、ごちそうさま」

美冬が作った料理を平らげ、手を軽く合わせる。

にしても美冬の奴、料理の腕また上げたな。ただの目玉焼きと侮っていたがこれは……。

塩、胡椒が満遍なく散らされていて味にムラが無い。こんなこと俺には出来ん。

美冬は元々料理がうまかったけど、さらに上げるとは。


「お粗末さまでした」

美冬が笑顔で返してくる。


「美冬、また料理の腕上げたんじゃないか?」

俺は食べ終わった後皿を重ね、台所に持っていく。


「そう? そう言ってくれると嬉しいな」

よほど褒められたのが嬉しかったのか、満面の笑みを浮かべる。


「と、ごちそうさまでした」

美冬が食べ終え、手を軽く合わせる。

自分が食べ終えた皿を重ね台所に持っていこうとするが、俺はそれを止める。


「洗い物は俺がやるわ」

さっさと美冬が重ねた皿を手に取り、台所に持っていく。

作って貰ったんだからこれくらいやらないとな。


「え、でも……」


「いや、朝御飯を作ってもらったんだからこれぐらいの事はしないと」

そう言って俺はさっさと皿を洗い始める。

実は美冬は意外と頑固な所がある。まぁ今みたいにな。


「わかった……ありがとう。カズくん」


「おう」


「ねぇ、カズくん」


「ん? なんだ?」


「また、同じクラスになれるといいね」


「そうだな、でも、11年連続で同じクラスだと誰かしらの陰謀を感じるな」

実は美冬とは子供の頃(記憶をなくす前から)から昨日までずっと同じクラスになっている。

そんなのありえね~と思うかもしれないが、事実だ。たぶん……。記憶をなくす前の事なんかわからないからな。


「ふふ、そうだね」

美冬が笑いながら俺の言葉に同意する。


「うし、終わった」

皿を乾燥機に入れ、横に掛けてあるタオルで手を拭き、壁掛け時計に目を向ける。時計の針は午前8時ちょうどを指していた。ちょっとまだ早いがどうしたものか……。

俺の家から「私立綾藤学園」までは徒歩20分といったところに位置する。9時25分までに正門に入っていればいい。と、まぁそんなわけで今から出ても1時間は暇な訳で……。どうしたもんか。

そうやって悩んでいると美冬が声を掛けてきた。


「いいじゃない、たまには早く登校するのも。それに一番乗りで新しい教室に入れたら気持ちよくない?」

さすがに早すぎると思うが確かに、教室に一番乗りは気持ちいいかもしれない。面白そうだし美冬の案に乗ってみるか。


「よし、じゃあ行くか」


「あ、ちょっと待って」


「ん?」


「えっと、その……」

美冬がなぜか恥ずかしそうにモジモジする。

あぁ、なるほど。


「早く行って来い」


「う、うん。ありがとう」

そういい残して美冬がトイレへ向かう。

とりあえず俺はトイレに行っている間に元栓がちゃんと閉まっているかの確認と窓の確認……俺は開けてないが母さんが開けて鍵閉めずに……とかあるといけないからな。その二つの確認をし、玄関に向かう。


「行って来ます」

俺は家の中に向かって言う。

これは俺の中でのある意味習慣になっている。なぜか、と聞かれると困る。ただ、なんとなく言いたいだけだ。

習慣を済ました俺は靴を履き、玄関を出ようとする。


「え? ちょ、ちょっと待って~」

ちょうど洗面所から出てきた美冬が走って向かってきた。


「もう、置いてくなんてひどいよ……」

泣きそうな顔でしかも上目遣いで俺を見つめてくる。

その目は反則だろう……。


「わ、悪かった! だからそんな目で見ないでくれ」

俺はその視線に耐え切れずそっぽを向く。

クソ、ちょっとドキドキしちゃったじゃねぇか。

いくら幼馴染だといっても結局は他人、いくら見慣れてるからといって可愛い仕草をされて無表情で居れるわけが無い。


「ふふ、冗談だよ、冗談。それよりも……」

美冬がクスクス笑う。


「ねぇカズくん、さっきドキッっとした? ドキッとしたでしょ?」


「う゛っ、それは…………」

まぁしたかしてないかと言われればした、けど……。

美冬の奴、わかってて言ってるな。


「い、いくら幼馴染だからって女の子にあんな顔されたらドキドキするに決まってるだろ?」

ちょっと口篭ったがまぁいいか。


「ふふ、そっか、ちゃんと女の子って意識はしてくれてるんだ」


「あ、当たり前だろ!へ、変な事言ってないでさっさと行くぞ!」

俺は早足で学校へ向けて歩き出す。まったく、美冬は何考えてるんだ。

くそっ! 美冬が変な事言うから意識しちゃうじゃねぇか……。


「あ、カズくん待って~。ごめん、ごめんってば~!」

美冬が俺を追いかけてくる。


「ったく……」

俺は歩く速度を緩めて美冬が追いつくまでその場で待つ。


「本当にごめんってば~」


「いいよ、気にしてないから」

俺はまだ少し恥ずかしさが残っていて、ついそっぽを向いて言ってしまう。


「ほ、ほんとに?」

美冬が覗き込むように聞いてきた。

そうゆうのが気になるんだけどな。まぁいいか。

うし、ちょっとイタズラしてやるか。


「あ、あぁ。それにしても……」


「やっぱ美冬って結構子供っぽいところあるよな」


「う゛っ……」

今度は和真の言葉で美冬が詰まる。

よし、形勢逆転。俺は少し勝利の味を楽しむ。


「そ、それは~ほらっ! ちょっと子供っぽいところがあるほうが可愛いじゃない」

必死で言い訳を並べてきた。

自分で可愛いって言うなよ……。だけど、その切り替えしを待っていた!


「あぁ、そうだな。そのほうが美冬らしくて可愛い」


「っ!?」

その言葉を聞いた瞬間美冬の顔が耳から首まで真っ赤になる。


「え、えぇと、えぇと……」

美冬が顔をトマトのように真っ赤にしながらうろたえる。

くく、駄目だ、俺、耐えろ……くくっ。

俺は必死に笑いをこらえるが、とうとう耐え切れなくなり


「くく、あははははははははは」

大声で笑ってしまった。


「ちょ、ちょっとカズくん笑うなんてひどいよ!」


「くく、ご、ごめん。あまりにも美冬の反応が面白くて、くく……」

腹を押さえながら笑う。

や、やばい。笑い死ぬ、ククッ。


「も、もう知らない!」

まだ少し赤い顔で怒りながら早足にささっと行ってしまう。


「くく、わ、悪かったって。ごめん、俺が悪かった。待ってくれ、くく……」

謝りながらも必死で笑いを抑える。

だ、駄目だ。わ、笑いがとまらねぇ、はは。


「笑うのやめるまで許してあげないよ!」

美冬はそういいながらも歩くスピードを緩める。


「だから、悪かったて今のは俺が悪かった」

歩くスピードを緩めた美冬になんとか追いつく。

やっぱり可愛い所あるよなぁ~。

ふと、俺はそう思った。


「もう……」

「しょうがないなぁ~」とでも言いたげに少しため息をつく。


そうして歩いているうちにある場所のT字路に着く、いつもならここで友達と合流するのだが、さすがに今日はかなり早く出てきたのでいないようだ。ちなみにその友達というのは1年生のときからの友達で超天然娘の宮沢智子(みやざわ ともこ)と熱血馬鹿の植野健吾(うえの けんご)という。智子は初登校初日に美冬と仲良くなったらしくそのまま俺とも話すようになり、今では親友といえるほどの仲だ。健吾は……よく覚えてない。まぁどうでもいいだろう。


「やっぱり居ないか。まぁこんな時間にくるほうがおかしいわな。行こうぜ」

そう言って俺は学園に向けて歩き出す。


「でも、案外2人と私達と同じかもしれないよ?」

俺はその言葉で歩くのをやめる。


「なんだ? 類は友を呼ぶ、ていうことか? あの2人と同じ、ねぇ。智子はともかく健吾と同じ思考回路なのは簡便だな、いや、智子でも願い下げか……」


「もぅ、そんな事言ったら二人とも怒るよ?」


「こんな事じゃ怒らないだろ、それに聞かれなければ、美冬が言わなければ問題ない」


「それは、そうだけど、後ろ……」

美冬が後ろを指差す。


「え?」

俺は美冬が指を指したほうへ振り返る。


「誰が新学期で興奮して朝早く目覚めちまった奴だってぇ?」

そこには怒った顔の健吾と


「もぉ~和真くん、そんな事言うなんてひどいよぉ~」

顔を膨らませた智子が立っていた。


「なんだお前ら、いたのか。それと健吾、それ自爆だからな?」

俺はこいつらと同類なのか……。俺は軽いショックを受ける。


「うるせぇ! というか2人も俺らと同じだったからここにいるんだろ!」


「まぁ、否定はしないが、少なくともお前よりも起きたのは遅いはずだ」

これでもし健吾より早起きだったら俺はもう生きていけない!


「ほぉ、俺が何時に起きたかわかるのか?」


「あぁ」


「じゃあ言ってみろ」


「5時」

まぁ健吾の事だ、これくらいだろう。


「ぐっ……!」

健吾が息を詰まらせる。

お、当たったか。


「なんだ、図星か」


「そうゆうお前は、どうなんだ?」


「ん? 俺か? 7時」


「あんまかわんねぇーじゃねーか!」

健吾が怒鳴る。


「いや2時間も違うだろ……」

2時間も違うのに変わんないって、どんだけだよ。

俺は少し呆れる。


「はいはい、二人ともそこまで」

そこで美冬が手をパンパン叩いて仲介に入る。


「皆今日は早起きした、これでいいじゃない」

「うんうん、そうだよぉ~みぃ~ちゃんの言うとおーり!」

智子があたかも自分が言ったよう胸を張る。


「なんでお前が誇らしげなんだ?」


「え~そんな事ないよぉ~」


「はぁ~……」

俺たち3人は同時にため息をつく。この辺はほんと、よく出来てるな、と思う。


「ふ……」

不意に俺の顔から笑みがこぼれる。


「なんだお前急に笑って、気持ちわる~」

健吾がささっと俺から離れる。


「あ、いや、なんだかんだ言って俺はこのメンバー、こうゆう雰囲気好きなんだなっと思っただけだ」

そう、だよな。確かに馬鹿ばっかだけどこいつらと馬鹿やるのはすごく楽しい。本当に俺はこいつらに出会えてよかった。

少し感傷に浸る。


「お、おぅ……」

健吾が俺の予想外の反応に戸惑う。


「ふふ、そうかもしれないわ」

美冬が笑みを浮かべ、同意してくれた。


「うんうん、皆と一緒にいると楽しいし、何よりテスト勉強に困らないもんね」

智子が笑顔で首を振って同意してくれる……ってテストかよ!?


「はは、それは言えてるかも!」

健吾が笑いながら智子の意見に同意する。

お前もかよ……。

俺はただただ呆れるが――


「ったくお前ら……」

呆れながらも笑みがこぼれる。


「う~ん、じゃあ今度の試験は手伝わないようにしようかしら」

美冬が名案を出してくれた。


「お、それいいな。二人とも、頑張れよ」

俺は智子と健吾の肩に手を置く。

さて、どんな反応するかな。


「えぇえええええええ、みいちゃんそれはひどいよぉ~」

今にも泣きだしそうな顔で美冬に泣きつく。

ひどいって、勉強は自分でするもんだろうが。


「ま、待ってくれ! それだけは!」


「お前ら……ったく」


「さ~てどうしようかしら?」

美冬が俺の顔を見てきた。


(カズくんどうする?)

美冬が送った視線のメッセージは俺にそう伝わった。

ふむ、どうしてやろうか……。よし。


「そうだなぁ~。1週間ぐらいジュース奢って貰おうかな?」


「ちょ!? それは勘弁してくれ! 俺バイトしてないんだぞ!?」

くく、焦ってる、焦ってる。


「はは、冗談だ。ちゃんと教えてやるよ。ただし、二人とも最初から頼るんじゃなくて自分達で勉強もしろよ?」

まぁ皆で勉強したほうが楽しいしな。

こいつらとだと大抵遊びに発展するのがあれだが……。

冗談と言っておきながら不安になる。……まぁいつもの事か。


「うん、まかせて~」


「お、おう!」


「はは、ちゃんと勉強しろよ」


「なんか今日笑ってばっかりな気がする」


「ふふ、そうかも」

美冬が俺の言葉に同意してくれる。


「えへへ」

智子が笑顔になる。

「はは」

釣られて健吾も笑うが――


「健吾」


「なんだ?」


「笑うな、キモイ」

先にお返しだ、馬鹿。


「おまっ!?」


「ふ、冗談だ」


「お前今本気だっただろ!?」

まぁ、本気ではないと思う。よくわからん。とりあえず誤魔化すか。


「さ~てどうだかな」


「おい!」


「こ~ら、二人ともケンカしてると先行っちゃうよ~」

気がつくと二人とは大分距離が離れていた。

あの2人いつの間に……。俺から美冬まで約10m程離れていた。


「あぁ! 今行く!」


「ほら、いくぞ健吾」


「言われなくてもわかってるよ!」

俺達は美冬達に追いつくため小走り気味に歩き出す。


「おっそいよぉ~二人とも~」


「悪い、悪い」


「わりぃ」

なんとか追いつき、謝る。


「じゃあ全員揃った事だし行きましょうか」

美冬がそう言ってまとめる。


「うん!」


「あぁ」


「おう!」

三者三様の返事で返す。


いつまでも、ずっとこの関係が続きますように……。

俺はそう願う。

それが俺の高校2年の始まりだった。



今日から本編スタートです。お待たせしました。


シークレットゲーム After Story(以下SGAS) を読んだ方はわかると思いますが、今回のメインキャラはSGASにゲスト出演した4人+αになります。


SGASとは違い、高校生時代の話になります。

投稿すると言っておきながら長々待たせてしまって申し訳ない……。

まだまだペーペーですが楽しんで頂ければ幸いです。

これから ガクモノ! をよろしくお願いします。


7月30日追記

 文章の体裁が崩れてたので修正しました。

なんか仕様変更でもあったのかな?

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