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第12話 朝の冗談と一人欠けた会議

---- 4月21日 ----


「みぃちゃん、梨乃ちゃん、和真君おはよ~」

いつも通り3人で学校に向かっていると珍しい事に智子が1人待っていた。


「おはよう、今日は早いね」


「おはようございます」


「おう」


「うん、何だか早く目が覚めちゃって……ってねぇ、みぃちゃん!」


「な、なに? いきなり大声出して……」


「この2人もしかして朝からずっとこうなの?」


「う、うん、そうなの……はぁ~……」

美冬がわざとらしくため息をつく。


「朝から……みぃちゃん、わたしこれが毎日あると思うと耐えれないよ……」


「よしよし、今度からは2人で登校しようね……」


「うん……」


「どうしたんだ? 2人して」


「みぃちゃん聞いた!? 『どうしたんだ?』だって! 無自覚だよぉ」


「智子、諦めて……もうどうしようもないのよ……残念だけど……」


「そ、そんな! あんなに良い人だったのに!」


「あー、えっと……何の茶番だ? というか話の流れ的に俺が変わったみたいな言い方だな、おい」


「変わったよ! ちょっと前まではちょっとした事で顔を赤くしてたのに今となっては人前で……しかも友達の目の前で仲良さそうに手なんか繋いじゃって、見てるこっちが恥ずかしいよ!」


「ぅ……それは、まぁ……慣れたというか……なんというか……」


「ジッーーーー」

美冬がジト目でわざわざ擬音を出しながら俺と梨乃を何度も見てくる。


「ねぇ、2人共昨日なにかあった?」


「っ!?」

その言葉で梨乃が一瞬体をビクつかせる。

なんだか嫌な予感がする……。


「な、何言ってるんだ? 別にいつも通りだぞ?」

一瞬口ごもりながらなんとか最後まで言い切る。大丈夫だ、問題ない。


「ねぇ、みぃちゃん、なぁ~んか怪しいよね~」


「確かに……」

さて、怪しむ2人にどう説明しようか……。正直黙ってても智子が何度も聞いてくるだろうなぁ……。う~ん……。


「う~ん。ねぇねぇ、梨乃ちゃん、昨日和真くんと何かあった?」


「え、えと、あの、それは、その……あぅ……あぅあぅ……」

昨日の事を思い出したのか顔が赤くなっていく。

梨乃、頼むからそういう反応しないでくれ……。まぁ気持ちはわからなくはないが……実際自分も微妙に身体が熱い。


「何かあったけど言えない、距離が短くなった、顔を赤く……………………っ!?」

なにか呟いていた美冬が途端に真っ赤になる。

まさか……気付いたか?


「と、智子! やめましょ! 友達でも話したくない事ぐらいあるから……だから、ね?」


「??? 急にどうしたの? さっきまであんなに知りたがってたのに……あっ! もしかしてわかったの!? みぃちゃん私に教えて!」


「えと、それは……」

そう言って俺を見る美冬。

いや、俺に振られても困るんだけど!? だ、誰か助けてくれ……。


「4人共こんな所で何をしているんだい?」

そこに俺の祈りが通じたのか洋介がやってきた。


「あ、洋介くん、おはよ~」

「よう、洋介」

「おはようございます、浅井さん」

3人で一斉に洋介に挨拶をする、この状況から抜け出したいがために……!


「おはよ~、ねぇ洋介くん、聞いて聞いて、3人共ひどいんだよ! 和真君と梨乃ちゃんがなにか隠してるんだけど教えてくれないの! みぃちゃんも途中でわかったみたいなんだけど教えてくれなくて……」


「ふむ、なるほど……」

俺と梨乃を見てニヤつく洋介、正直気持ち悪い。


「まぁ、許してあげたら? 人に言えない事なんていくらでもあるだろ? ここは友達らしく温かく見守ってあげようじゃないか」

おお、珍しく助けてくれた。後で飲み物でも奢――


「まぁ、何があったか、って言われるとナニがあったんだろうね」

……前言撤回、後で覚えてろよ……。


「??? よくわからないけど……まぁいいや、人に言えない事ってあるもんね!」

よかった、言葉の意味は理解していないようだ。

そしてなぜか洋介の説明で納得してくれたらしい。

どうせなら美冬の言葉で納得して欲しかったがこのさいどうでもいいか。


(あの、和真くん)

梨乃が耳打ちをしてくる。

(ん? どうした?)

(さっきの浅井さんが言った事どう言う意味なんですか……?)

そしてわからない子がここにもう1人。


(あー、いや、梨乃は知らなくていい事だよ)

(??? わかりました、和真くんがそう言うなら……)


「ところでさ、そろそろ行った方がよくないか? このままだとまた学園までダッシュだぞ?」


「そうだね、そろそろ行こうか」


「走るの嫌だしいいよぉ~」


「じゃあ今日は僕も一緒に行こうかな」


「にしても洋介がこの時間なんて珍しいな、いつもはもっと早いだろ?」


「あぁ、ちょっと記事製作に時間が掛かってね、それでちょっと寝坊したのさ」


「寝坊してこの時間かよ、普段何時起きなんだよ……」


「知りたいかい?」


「いや、やめとく」

なんだか嫌な予感がする。


「そうかい、とりあえず昨日の君のお楽しみはトップ記事にしておくよ」


「ちょっと待て! お楽しみってなんの事だ!」


「なにって、もちろんナニ……」


「そのネタはもういい!」

だからこいつは……!


「まぁ、それは冗談として次は体育祭実行委員の取材に行くつもりだからよろしく」


「今の言葉が一片たりとも冗談に聞こえなかったが、取材の事はわかった。日程は決まってるのか?」


「いや、まだ特には、決まったら教えるよ」


「わかった、そうしてくれ」


そんな会話をしながら学園に着くと早速俺と梨乃で職員室に向かった。

もちろん資料のコピーをしてもらうためだ。


「「失礼します」」

職員室に入り、すぐに担任の席へ向かう。


「郷田先生、おはようございます」


「ん? あぁ、なんだ荒木と河上か、2人揃ってどうしたんだ?」


「実はこの資料のコピーをお願いしたくて……」

から資料を取り出し担任に見せる。


「……これを全部か? しかも実行委員の人数分」


「えー、はい、そうなります……やっぱり駄目ですか?」


「ん? この資料は……なぁ、荒木。この資料もしかして去年の資料か?」


「はい、先輩……、一ノ瀬先輩から参考に、と頂きました」


「ちょっと待ってろ」

そう言って担任が職員室奥にある部屋に行く。




数分後――




「またせたな」

戻ってきた担任は大量の資料の束を抱えていた。


「これは……」

よくよくみるとその資料の表示は今自分が持っている資料とまったく同じものだった。


「去年の実行委員が使ってた物だ、少し汚れているがまだまだ使えるだろう。足りない分はコピーしておく」


「ありがとうございます。郷田先生、お願いします」


「あぁ、っとそうだ荒木」


「? なんですか?」


「お前ら付き合ってるんだよな?」

俺と梨乃を交互に見てそんな事を言い出す先生。


「え!? いや、それは、その……はい……」


「やっぱりな、まぁ高校生だし異性に興味もあるだろうから付き合うなとはいわないが、間違えだけは犯すなよ?」


「はい、それに関しては大丈夫ですよ」

内心はまったくもって穏やかじゃないけど!


「まぁ荒木に関してはそんな心配は無用か、すまない、忘れてくれ」


「あはは……」

む、胸が苦しい……、これが信用を裏切る痛みなのか……?


「それじゃ、失礼します」


「失礼します」

2人で頭を下げ職員室を出て行く。


「はぁ~、先生に嘘ついちまったな」


「そうですね……でも、仕方ないですよ」


「それもそうだな。ところで痛みとかはもう大丈夫?」


「えと、その、まだちょっと歩くと痛みますけど昨日よりは大分楽になりました」


「そっか。ごめんな……ちょっとやりすぎだったよな」


「い、いえ! その……わ、わたしも和真くんを求めたのでおあいこ……ですっ!」


「わかった。でも本当に無理しないで、なにかあったら――」


「もう、和真くんは心配しすぎです。本当に辛かったらちゃんといいますから、でも……心配してくれるのはすごく嬉しいです」


「あぁ、わかった」

ちょっと心配し過ぎちゃったかな。まぁ大丈夫そうだから問題ないとは思うが……それで心配なもんは心配だ。

一応注意だけはしておくか。




放課後――




職員室に資料を取りに行きその帰り、先輩に生徒会室に呼び出された。


「それで話ってなんですか?」


「時間もないし単刀直入に言うわよ。あんた今日の会議欠席しなさい」


「…………は? 一体何を……」

意味がわからない、これからだというのに委員長の俺が休むなんて論外だろ。


「ちょっと梨乃ちゃん1人にやらせたいのよ」


「は、はぁ~……、でもなんでそんな事を?」


「あんたがいるとすぐにフォローするからに決まってるでしょ」


「そりゃあそうでしょ。困ってたらフォローするのが普通じゃないですか」


「確かにフォローすることを悪いとは言わないわ。ただ、しすぎるのは彼女のためにならないでしょ」


「それはそうですけど……だからって無理に……」


「じゃあもしもだけど和真が何らかの理由で会議、ううん、体育祭当日に出れなかったとして梨乃ちゃんは平気? こう言ったら本人に悪いけど絶対あたふたして何も出来ないと思うわ」


「そ、それは……」

先輩の言いたい事はわかる。ようは俺が居ない時の判断力を見るために状況をわざと作ってもしもの時の為に備えると言う事だ。

梨乃の性格を考えるときついだろう。でも……必要なこと、か……。


「と、まぁそんなわけで今日は会議が終わるまでここに居る事、わかった?」


「……わかりました」


「はぁ~……、そんな心配そうな顔しなくても大丈夫よ。それにきっと面白いことになると思うわよ。無理そうだったら私がちゃんとフォロー入れるから。それじゃあね」

そう言って先輩は戻っていった。






……梨乃、ごめん。

心の中で謝る俺だった。





---- Rino Side ----





「くしゅんっ!」


「あら? 梨乃ちゃん風邪?」


「いえ……なんだか急に鼻がムズムズしちゃって……もう大丈夫です」


「そっか、もしかしたら誰かが梨乃ちゃんの事考えてるのかもね」


「あぅ……きゅ、急に変な事言わないでください」

でも、もし和真くんがわたしの事考えてるなら……、そうだったらいいな……。


「別に変な事は……あ~なるほど、そういう事ね。ふふ……」


「な、何1人で納得してるんですか……?」


「ねぇ、梨乃ちゃん。さっき自分の事考えてるのが和真だったらいいなぁ~て思ったでしょ」


「……っ! そ、それは……その……はぃ……ちょっと思いました……」

な、なんでわかったんだろう……わたしってそんなに分かりやすいのかな?


「あーもう! 可愛いなこの子は! 思わず抱きしめたくなるじゃない! まぁ、しないけど」


「そ、そんな、可愛いなんて……一ノ瀬先輩の方が美人でスタイル良くて綺麗じゃないですか」


「ふふ、ありがとう。でも、彼氏がいる子にそう言われると嫌味に聞こえるわよ」


「あ……ご、ごめんなさい! わ、わたしそんなつもりじゃ……」


「な~んてね、冗談よ。まぁ、ちょっと羨ましいけど」


「一ノ瀬先輩……」


「さて、もう教室の掃除も終わっただろうし戻りましょうか」


「あ、はい」

教室に戻ると実行委員のメンバーがチラホラ廊下で待っているのが見えた。

教室の中を覗くと数人残っているぐらいだった。


「あの、もう掃除も終わったみたいなんで入っても大丈夫……だと思います……」

わたしがそう言うとそれを合図に皆入っていく。

わたしと一ノ瀬先輩もそれに続く。

それから10分ほどでメンバー全員が揃った、1人を除いて。


「あの先輩、ところで和真くんは……」


「ん? 和真? それならこないわよ」


「え……? こない? なんで……」


「なんか先生が和真の家庭の事で用事があるって言ってたから遅くなるわよ」


「そうなんですか……なら、和真くんがくるまで――」


「別に和真がいなくてもいいわよ。始めちゃいましょ」


「で、でも……」


「それに和真の事だから待ってたら絶対『先に始めてよかったのに』て言うわよ」


「そう……ですね。それじゃあ……」

教卓のの前に立って教室全体を見渡す。

うぅ~……皆わたしの事見てる……でも、頑張らないと……。


「えと、その、委員長が別件で会議に遅れるということですが、先に始めたいと思います……。まず、今から配る資料に目を通してください」

先輩と二人で今朝もらった資料を配る。


「その資料は過去10年間の体育祭行事の内容が書かれており……その、ルールがわかりにくいものについては細かなルールも載っています。それで、えと……きょ、今日はその資料を参考に体育祭でどんなことをやるかを決めたいと思います。しばらく時間を取るので、資料に目を通してください」

ふぅ~……こんな感じでいい……んだよね? たぶん……。

先輩をチラと見ると笑顔で親指を立てていた。

よかった……これでいいみたい。



それからしばらくしてみんなで意見交換する事になったんですけど――



「やっぱりコスプレリレーだろ! これに限る!」

どんなことをやりたいかと聞いたらいきなり男の子、たぶん1年生だと思う。その子が大きな声でそう言ってからすごい事になってしまった。


「なに言ってるのよ1年生! そんな事して何が楽しいわけ!」


「そうよ、そうよ! それって結局男子が楽しみたいだけでしょ!」


「そ、そんなことよりメイドリレーというのを……」


「お(あなた)は黙って(て)ろ!」


「じゃあ無難に障害物リレーでいいんじゃないか?」


「無難にって、お前の障害物リレー犯罪ぎりぎりだろ……なんだよ亀甲縛りで走るとか!」


「お前、そこが重要なんだろ! 難易度高いだろ!」


「いや、明らかに難易度以外の問題があるだろ!?」


「もうさいってー! なんで男子ってみんなそんなことばっかりなの!」


「「お前の執事リレーってのもどうかと思うぞ!!!」」


「なによ、執事って言ったら女の子の憧れでしょ。こう、どうぞ、お嬢様とかさ~」


「いや、しらねーよ! というかリレーって言っときながら女の子を助けながら進むってただの嫌がらせじゃねーか!?」


「なによ、嬉しいでしょ?」


「そんなのごく一部だ! まぁ百歩譲って助けながらはいいとしてもなんだよ! 靴を履かせるとか靴を磨くとか! 意味がわかんねーよ!」


「執事ならそれぐらいしなさいよ!」


「「お前は絶対執事と下僕の意味を履き違えてる!」」


「あ、あぅあぅ……あ、あの……皆さん落ちつい――」


「「副委員長はどう思いますか!」」


「ふぇええ!? わ、わたし……ですか?」

ど、どうしよう……そんなこと言われても……。


「そうです! 断然コスプレリレーですよね!」


「副委員長! 同じ女の子なら私の気持ち、わかりますよね?」


「だからお前ら、ここはメイドリ――」


「「だからあなた(お前)は黙って(ろ)なさい!!」」


「で、副委員長はどう思いますか!」


「え、えとあの、その……うぅ…………」


「………………」

ど、どうしよう……一之瀬先輩は黙ったままだし……うぅ……ど、どうすれば……た、助けて和真くん……。




バンッ!




突如教室に何かを叩いたような音が鳴り響く。



「あんた達、いい加減にしなさいよ……。そんな自分の意見ばっかり言ってたらまとまるのもまとまらないわよ。あと梨乃ちゃん、あなたはもっとはっきり自分の意見を伝えなさい。そんなんじゃ誰にも聞いてもらえないわよ。まぁ和真なら最後まで待ってくれるだろうけど。皆がみんなそうじゃないのよ」


「あ……」

そう……だよね、わたしがしっかりしないといけないんだよね……。ここにはわたししかいないんだから……。こんなとき和真くんならどうするのかな? 和真くんなら………………うん!


「あ、あの……その、みなさん、まずは席に戻って、ください……。それで、その……意見がある人は挙手してからでお願い、します……。その、板書もしたいので……」

わたしがそういうとみんな自分の席へ戻っていった。

これで……いいんだよね?

一之瀬先輩を見ると満足そうに頷いていた。


和真くん、わたし頑張ります!




---- Kazuma Side -----




「っぶわぁあくっしょん!」


「あはは、荒木君豪快なくしゃみだね~。もしかして風邪かい?」


「あ、いえ……なんだが鼻がムズムズして……すみません」


「別に謝る必要はないよ。というかこっちの方こそごめんね、生徒会の仕事手伝わしちゃって」


「いえ、いつものことですから」

この人は副生徒会長の清水先輩、資料室に通ってチョクチョク顔を合わせているうちに意気投合した先輩だ。

生徒会室で待っているとやってきて仕事を始めたのでじっとしているのも申し訳ないと思い手伝うことにした。


「あはは、そう言ってもらえると助かるよ。会長は根はいい人なんだけどねぇ」

そう言って笑う清水先輩。


「そうですね。根はいい人だと思います」

まぁ普段の言動や行動に問題ありだけど。


「ふぅ……、帳簿の確認終わりました。たぶん間違いはないと思います」


「お、もう出来たんだ、早いね。荒木君生徒会に向いてるんじゃないかな?」


「そんな、お世辞はいいですよ。これくらいなら誰でも出来ますよ」

実際ただ合ってるかどうか計算して確認するだけだし。


「お世辞じゃないんだけどね。で、実際どうだい? 生徒会に入ってみる気はない?」


「まぁ興味はありますけど、遠慮しておきます」


「そっか、それは残念だ。嫌がる人を無理やり入れるはよくないしね。もし入りたくなったらいつでも言ってくれれば歓迎するよ」


「はは、考えておきます」

ふぅ~……。梨乃の奴大丈夫かな?


「どうしたんだい? 何か考え事?」

しばらく無言だったせいか先輩がそんなことを聞いてきた。


「あ~えと、はい……ちょっと……」


「ん~、もしかして荒木君の彼女……河上さん、だっけ? その子のことかな?」


「あ、はい……大丈夫だとは思うんですけど心配で……。その、実行委員のメンバーなんですけど、どうでもいいことには団結力があるんですけど個性的っていうか、元気がありすぎるっていうか……そういう人たちに梨乃が押されていないか心配で……」


「そっか、まぁ会長がいるしたぶん大丈夫でしょ。火に油を注ぐようなことはしない………………よ?」


「いや、そんな間を開けた上に疑問形だと説得力皆無なんですが……」


「あはは、ごめんごめん、でも大丈夫だと思うよ。会長はやるときはやる人だから」


「そう、ですね。大丈夫……ですよね。すみません、なんか心配性で……」


「別にそんなに気にする必要はないよ。それだけ荒木君が河上さんの事が好きだって事でしょ?」


「それは……はい、そうです」


「だったら僕は心配性でもいいと思うよ。まぁさすがに過度なのはダメだけどだからあんまり気にしない気にしない」


「はい、ありがとうございます」

梨乃……ここで応援してるから頑張れ。




---- Rino Side ----




「えと、意見はこれで全部でいい……ですか?」

最後の意見を書き終え確認をする。


「他に意見がないようなのでこれで…………」

一ノ瀬先輩を見ると不機嫌そうに顔をしかめていた。



「い、一ノ瀬先輩……? どうかしたんですか……?」

わたしがそう聞くと突然立ち上がり黒板を叩く。


「あんた達本当にこれやるつもりなの!」

そう言って今度は黒板を何度も叩く。

そこに書かれているのは――


・コスプレリレー

・執事リレー

・メイドリレー

・障害物リレー(きっこう縛り……?)

・水風船当て


「なによこれ! まともなのが一つもないじゃない!」


「「普通の物だと楽しめないと思うんです!」」


「あんた達こういうときだけは息ピッタリなのね……。はぁ~……」

ため息をつく一ノ瀬先輩。

あはは……それにしてもすごいなぁ……。この学園って毎年こんな感じなのかな? あ、でも一ノ瀬先輩の様子を見る限りそうゆうわけじゃないのかな……?

すごく恥かしいけどやってみたら意外と面白いのかもしれない。……和真くんってこういう……コスプレって好きなのかな? もし好きならわたしが着たら喜んでくれるかな?って今はそういう事じゃなくて……。

う~ん。皆の意見をうまくまとめてひとつに出来ないかな……。

やっぱり人によって着るのが嫌な人がいるわけだし…………あっ!

着るのが駄目なら持ってくる、というのはどうなのかな……? それなら着るよりは恥かしくないし……。でもそれを持って走るの? 持って走る……持って走る………………そうだ!


「あ、あの!」

わたしの声で皆が一斉にこちらを向く。


「えと、あの、その……」

ちゃんと自分の意見を言わないと……さっきは言えたんだから大丈夫……。


「えと、その……か、借り物競争はどう……ですか?」


「副会長~それじゃあ普通過ぎると思うんですけど~」


「そうね~、なんていうかパンチが足りないよね~」


「あ、あぅ……あぅあぅ……」

色んなところからダメ出しを受ける。

違う、ちゃんと伝わるように言わなきゃ!


「その、ふ、普通の借り物競争じゃない……です」


「普通じゃない借り物競争……ね、面白そうじゃない言ってみて」

一ノ瀬先輩が期待した様子でみてくる。その期待に応えないと!


「はぁ~ふぅ~…………。その、皆さんの意見をまとめた物にしてみようと思うんです。たとえば、コスプレリレー、これって名前の通りコスプレして走るんですよね?」


「あ、あぁ……そうだけど」


「でもそれはやりたい人とやりたくない人っていますよね? だから借り物としてコスプレ衣装を持ってくる、という風にするんです。だけど、それじゃあつまらないですよね?」


「そうだな……そんなの意味がない」


「はい、ですからそれを着てもいいようにするんです。もちろん着替えている時のタイムは止めます。そして衣装を着てゴールした人にはボーナスポイントを与えるようにすればいいんです。そうすれば誰でも参加出来ますよね?」


「なるほど……」

わたしの説明で頷いてくれた。これなら……。


「メイドリレーに関しては同じなので省きますね。それで執事リレーなんですが……その、手を繋いで一緒にゴールする……じゃ駄目ですか? その、やっぱりこればかりはどうしようもないので……」


「……そうね。嫌々やられるのも嫌だしそれでいいわ」


「あ……、ありがとうございます。それで、その……障害物リレーなんですが……やっぱり縄で縛るのは問題があるので……その、縄『跳び』じゃ駄目……ですか?」


「ぷっ……!」

わたしがそう言った途端一ノ瀬先輩が噴出す。


「えっ!? わ、わたし何か変な事言いましたか……?」


「くくっ、うぅん、なんでもないわ。それにしても亀甲縛りの変わりに縄跳びって……ふふっ、梨乃ちゃんらしい発想ね」


「ふぇ……? だ、だってその……きっこう縛りって何かの縛り方……なんですよね? やっぱり縛るのは問題があると思ったんで同じ縄を使う物がいいと思ったんですけど……」


「くくっ……、あ~、違う違う。ただ梨乃ちゃんが亀甲縛りってどういう物か知らないんだなぁ~と思ってね」


「えっと、はい……。知らないです。どういうものなんですか……?」


「あ、副委員長もしよかったら俺が縛――」


「しようとした瞬間私が変わりにあなたを縛ってあげるわよ。ふふ……」


「………………じょ、冗談ですよ。あはは……」

??? 結局どういう物なんだろう?


「えと、あの……」


「あぁ、ごめんごめん。そうねぇ~知りたかったら和真に聞くといいわ」


「えぇっと、はい……わかりました」

後で和真くんに聞いてみようかな。


「えとあと水風船なんですが……やっぱりこれは服が透けたりして問題があると思うので却下という事で……」

本当は全部の意見を反映させたいけどこれは難しい……よね。

和真くんならなにか思いつくかもしれないけどわたしじゃこれが限界。


「それでこの案どう……ですか?」

意を決して前を見る。


「そうね……。色々と詰めないといけない所は多いけど一番まともで面白そうね」


「そうだな、俺たちの意見もちゃんと反映されてるし」


「うんうん、副委員長って頼り無さそうなイメージだったけど全然そんな事なかった。ごめんね」


「い、いえ……」

皆がわたしの意見に賛成してくれる。よかった……。


「とりあえず目玉はこれって事でいいかしら?」

一ノ瀬先輩がそう聞くと皆が一斉に頷く。


「それじゃあ決まりね。さて、それじゃあこれの内容をどんどん詰めて行くわよ。それでいいわね? 梨乃ちゃん」


「は、はい。それじゃあ……さっそく衣装の事について――」





---- 1時間後 ----




「それじゃあ今日はここまでという事で……皆さんお疲れ様でした」

それを合図に一人、また一人と教室去っていき、気が付くと一ノ瀬先輩と二人っきりになっていた。


「ふぅ~……」

緊張が解け全身から力が抜けそうになる。


「ふふ、相当疲れちゃったみたいね。お疲れ様」


「あ……はい。すごく……緊張しました」


「そっか。まぁ思ったより大丈夫そうね。和真もそう思うでしょ?」


「えっ!?」





---- Kazuma Side----





「そっか。まぁ思ったより大丈夫そうね。和真もそう思うでしょ?」

突然先輩に名前を呼ばれる。

梨乃の驚く声が聞こえたがまぁ驚くよな……ずっと居なかった訳だし。

俺は扉を開け教室の中に入る。


「梨乃、お疲れ様」

梨乃の頭を撫でる。


「えへへ……。ところで和真くん、先生との話は終わったんですか?」


「先生との話……? あ、あぁうん。終わったよ」

あぶねぇ……。一瞬何の事言ってるかわからなかった。そういう設定だったな。

とりあえず話題逸らしを……。


「ところで会議どうだった? 何かいい案出た?」


「えと、それが……案が出る所かオリジナル種目決まっちゃいましたよ」

梨乃が嬉しそうに言う。


なるほどね、先輩が言ってた面白い事ってこういう事か。

となると梨乃がまとめたって事だよな。梨乃には悪いが正直意外だ。

これは少し認識を改めないとな。


「それじゃあ帰りながら教えてもらおうかな」


「はい、まず種目名なんですが――」



そうやって梨乃の話を聞きながら家路に着いた。……帰りに亀甲縛りの事を聞かれたが一体なんだったんだろうか?

結局最後まで謎は解けなかった。

お・ま・た・せし・ま・し・たぁあああああああああああ!

12話です。本当に遅くなってすみません!

今回は梨乃が頑張るお話という事でちょっと変わった話だったのではないでしょうか? 楽しんでもらえたなら嬉しいです。


さて、ここで一つ重要なお知らせがあります。

小説執筆活動ですが諸事情により執筆が難しい状況となっております。

なので、投稿間隔が今までの1~3週間から1ヶ月~2ヶ月以上間隔の投稿になってしまいます。

楽しみにしている方、本当に申し訳ございません。

少し暗い話になってしまいましたが、これからも宜しくお願いします。

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