第09話 動いた者たちと進んだ者たち
朝起きると家のチャイムが鳴った、扉を開けるとそこに待っていたのは……
トペルカ初オリジナル小説第9話、ついに主人公が動き出す……
---- 4月12日 ----
「えぇっと……お、おはようございますっ!」
玄関を開けるとそこには意外な人物が立っていた。
「えーと、おは……よう?」
「な、なんで疑問系なんですか?」
「いや、意外だったからさ……。河上さん学園に行くのにこんな所通らないよね?」
「はい。そうですけど……」
「じゃあどうして……?」
「えと、それはっ、そのっ……えぇええっと…………い、一緒に学校行きたいと思って……その……」
恥かしそうに俯く河上さん。少し前までなら可愛いなで済んだところだが自分の気持ちに気がついた今破壊力は抜群だ。今すぐ抱き付きたい気分になる。まぁ理性でそこは抑えるけどさ。
「??? 一緒に行くも何もいつも途中で合流するのにわざわざこなくても……」
自分の気持ちを抑えるつもりでちょっと素っ気ない言い方になってしまった。やっちまった……。
「め、迷惑……でしたか? も、もしそうだったらごめんなさい!」
「い、いや、別に迷惑って訳じゃ! ……というかむしろ嬉しいし」
「ホント……ですか?」
「あぁ、美冬はクラス委員の仕事でもう出てるし健吾は朝練だし智子は……たぶん寝坊するだろうから河上さんと会えなかったら1人寂しく登校するところだったからさ」
「よ、よかったぁ~……」
「んーまぁ、とりあえず中入る? まだ全然時間あるし」
「あ、はい。えと、その…………」
返事はするものの中々入ってこない。
「ん? どうかしたの?」
「えと、その……お、男の人の家に入るの初めてで……その……き、緊張します……」
「いや、初めてって、歓迎会のときに普通に入ったよね?」
「そ、そうですよね……。すみません。その、あの時はみんないたからで……いざ1人でお邪魔するとなるとその……やっぱり緊張します……」
「なるほど。まぁ、そんな気にしなくていいと思うけどね。美冬なんて普通に鍵開けて入ってくるし」
「え……? 鍵、ですか……?」
「うん、鍵。うちの親が過保護っていうかなんていうか……俺1人暮らしじゃ心配だからって美冬に家の合い鍵預けてるんだよ」
「そ、そうなんですか……。優しいご両親なんですね」
「そうだな……子供の頃は家に中々帰ってこない親が嫌いだったけど今は尊敬、してるかな。毎日忙しいクセしてよく手紙を送ってきたりするし。ほんと、良い親だと思うよ」
「なるほど……。そんなご両親の元で生まれたから荒木さんはすごく優しいんですね」
「いや、それはわかんないけど……あー親の話はまた今度で、あんまり喋ってると朝ごはん食べる時間がなくなるから」
「あ、すみません。わたし、なんかはしゃいじゃって……」
「別にいいよ、ところで河上さんってもう朝ごはんは食べたの?」
「い、いえ……実はまだ食べてないです……荒木さんがいつもどれくらいで家を出るからわからなくてその……」
「そっか。食パンとハムエッグでよければ作れるけど食べる?」
「え、でも……その悪いですし……」
「俺としては河上さんが朝ごはん食べずに倒れるほうが心配なんだが……」
「……えと、じゃあお願い、できますか?」
「おう、まかせとけ!」
それから他愛ない話をしながら朝食を取り終えた俺たちは学校に向かった。
学園の正面玄関に辿り着くとある一角が普段以上の喧騒に包まれていた。
「ん? なんだ? 皆掲示板に集まってるけど……」
「さぁ? なんなんでしょうね」
「ちょっと見てみるか。重要なお知らせかもしれないし」
「はい」
掲示板に近づくにつれてなぜか俺たちに視線が集まっていく。
「なんだ? なんかすごい見られてる気がするんだが……」
「あぅ、あぅ……っ。な、なんか恥かしいです……」
そんな視線を無視して掲示板の前に行くとなぜか驚いたような顔をして全員その場から離れていった。
「一体なんなんだ……? どう思う? 河上――」
河上さんを見ると顔を真っ赤にして固まっていた。その視線の先には――
「ファンクラブ通信……?」
そこに張り出されていたのはファンクラブ通信という物だった。確か洋介に新聞部をやめたてファンクラブに入った奴がそんな様なものを作ってファンクラブ限定で回していると聞いたことがある。でもなんでこんなところに……? とりあえず内容はっと……。
『号外! 我らの女神、河上梨乃様に不埒な輩が取り付いた!』
………………は? ファンクラブってこっちの方か、というか不埒な輩って誰の事だ? 俺はそのまま読み進める。
『4月11日、某所にて腕組みをして映画館に入るところを我がファンクラブ会員NO.018が目撃、こちらかが証拠写真である』
その文章のすぐ下には俺が河上さんと笑いながら映画館に入る写真が掲載されていた。
………………これはまずい。俺はそう、直感的に感じた。
「河上さん、ここは危険だ逃げよう!」
「え? え? あ、あの、荒木さん!? そ、そんな手を引っ張ら――」
「ごめん! それは我慢して! たぶん早く逃げないとまずい!」
「えと、えと、よ、よくわかりませんが逃げるんですか?」
「あぁ!」
「あ、荒木さん待ってください! あ、足速いですよ~~~~~~~」
「荒木和真まてぇえええええええええええええ! 河上様と手をつなぐなんてなんと羨まs……けしからん!」
背後から数人が逃げる俺たちを追いかけてくる。
待って言われて待つ馬鹿なんているか! というかデジャヴ……はぁ~。
「河上さん、大丈夫?」
しばらく逃げ続けるが執拗に追いかけてくる。なんちゅう執念だ……。
「は、はい……たぶん……」
急に走り出したからなちょっと辛そうだな、なんとかしないと……このまま走り続けても埒が明かない。なにか秘策は…………ん? ちょうど俺たちが走っている正面のT字に分かれている廊下の右側の外に洋介の姿が見えた。その洋介はたぶんだが俺の顔見てある一角、右に曲がってすぐにある1枚目のガラスを指差していた。
……なるほどね。ありがとう、洋介。
俺は心の中で洋介にお礼を言い、疲れ気味の河上さんに話しかける。
「河上さん、そこの角、右に曲がるよ」
「え? あ、はい……わかり、ました……」
「うん、曲がったら窓を開けるからそこから外に出る。わかった?」
「えぇえ!? で、でも……、窓……開けて、いる内……に、来るんじゃ……」
「大丈夫、俺を信じて」
「はい…………」
話している間に目標地点が近づいてくる。…………ここだ!
右足で踏み込み、窓に向けて直角に曲がる。
「よっと。河上さん手、出して」
「は、はい……」
河上さんの手を引き外に連れ出すと同時に追ってきたやつらがやってきた。
「くそ! 外に逃げるとは!」
追っ手が窓から外へ出ようとするがそれは無駄な足掻きだ。なぜなら――
「ちょっと、あんた達! なに窓から外に出ようとしてるの!」
廊下から聞こえる声なのに外からでもその声がはっきりと聞こえた。
「げっ……せ、生徒会長!?」
「窓から外へ出たらだめだって小学校で学ばなかったのかしら? まったくもう……」
「い、いや……こ、これはですね、その……」
「ちゃ、ちゃんとした理由があるんです! なぁ、刈谷?」
「あ、あぁそうなんですよ、生徒会長」
「へぇ~ちゃんとした理由ねぇ……じゃあその理由というの聞かせてもらおうかしら」
「えと、実はですね……われらが女神、河上様を映画館に連れ込んだ不埒な輩が居りまして……その、ファンクラブとしてはその様な者に罰を与えようかと……」
「へぇ~、映画館に連れ込まれたねぇ。おかしいわね~、私の耳には女子生徒が映画館で変な事をされたという話は聞いてないんだけど」
「そ、それは……きっと口止めされているんですよ!」
「そう、ところでその不埒な輩ってさっきあなた達が追っていた男子かしら?」
「「はい! そうです!」」
見事に息ぴったりだな、まぁその間にちょっと隠れておくか……。
「でも確かその男子は河上さん……だったかしら? その子の手を引いて逃げてたのよね? それっておかしいわよねぇ、口止めされている男子について行く子なんているかしら?」
「きっと無理やり……!」
「……はぁ~。素直に謝ったら許してあげようと思ったけどもう面倒くさいわね……。とりあえず今すぐ生徒会室にいらっしゃい。窓から外に出ようとした件と無許可で掲示板を使用した件について、そこでじっくりと話を聞いてあげるわ……ふふ」
「「ひぃ、ひぃいいいい…………」」
「ということで、連行?」
そう言って先輩が男2人の襟を掴み、生徒会室へと連れて行った。
「ふぅ……助かったか、河上さん大丈夫?」
「え!? あ、はい……大丈夫、です……」
「そう? なんか顔が赤いけど……」
まぁ急に走りだしたからかな。
「あ、えと……その……」
河上さんの視線が下を向く。それに釣られて下を見ると俺の手が河上さんの腰……よりやや下を掴んでいた。
「ご、ごめんっ!!……うわぁっ!」
勢いよく手を離すまではよかったがそのまま慣性の法則に従いおもいっきり尻餅をつく。
「ってて……」
「あ、荒木さん!? 大丈夫ですか!?」
「あぁこれくらい大丈夫だ。それよりホントごめん……」
無意識だったとはいえあんな所触ったんだ。嫌われるかな……。
「い、いえ。そんな謝らないでください。その……わざとじゃないですよね……?」
「あぁ! それは誓って!」
「ならいいですよ」
「え……? いいのか……?」
「はい、だって不可抗力なんですよね? それなら仕方ないじゃないですか。そ、それにその……わ、私を助けてくれたのでこ、これくらいなら……」
そう言う河上さんは耳まで真っ赤にしていた。
たぶん無理してるんだろうな。普通なら叫ばれてもおかしくないし……。
「そ、そっか……ありがと」
「はい……」
なんとなく気恥ずかしくなり頬を掻く。
「えーと、2人とも僕が居ること忘れてないかい?」
「うわぁっ!?」
「きゃっ!?」
そんな雰囲気の中突然、背後から声を掛けられる。振り返るとそこには――
「な、なんだ洋介か……びっくりしただろ……」
まったく……驚かせやがって……。
「いや、僕はずっと後ろにいたけど?」
「なにっ!? 全然気が付かなか――」
ん? ちょっと待て。ずっといたって事は……。
「な、なぁ洋介、ずっとって具体的にどの辺りから見ていたんだ?」
「具体的にか……具体的に言うと和真が河上さんのお尻………の上の方を触っていたところかな?」
「ほぼ全部かよ……」
「にして和真は奥手だねぇ。触るなら堂々と触ればいいものを……」
「んなことするか!」
だ、誰が河上さんの……その、お尻なんて…………きょ、興味ないわけじゃないけど……むしろありすぎるぐらいだが…………だ、駄目だ! 落ち着け、俺……。
「ふむ、つまり一切興味ない、というわけだ」
「だ、誰もそんな事言ってねぇ! そりゃあ少しは……――――ってあっ!?」
し、しまった……思わず本音が……。
「あ、あぅ~……」
河上さんが俺から数歩下がる。
「い、いや、ちがっ!? い、今のはその、えっとその……」
ど、どうする……この状況を打破するにはどうすればいい……。思い切って開き直るか?
『あぁ! 大好きだよ! 今も触りたくてうずうずしてるし!』
『うぅ……信じて……たのに……荒木さんは絶対にそんな事しない人、だって……なのに…………うぅ…………』
駄目だ! 絶対泣かれる……。どうする! どうすれば……。
この状態から最善の方法を模索するが見つからない。
思ったことをそのまま口にしよう……嘘ついてもしょうがないし……。
「えと、その……だな……お、男ならその、少なからず興味があって……だからその、なんだ……えーっと……ご、ごめん!」
結局こういう流れになるわけで……。
「えと、あの、その……そ、そういうもの……なんですか?」
「あ、あぁ…………たぶん」
「わ、わかりました……」
「「………………」」
気まずいな……。まぁ原因は全部自分にあるわけだけど、嫌われてないかな……いや、これで嫌われないほうがおかしい、か。
とりあえず何か喋らないと……。
「「あ、あの(さ)!」」
俺と河上さんの声がちょうど重なる。
「っと、なに? 先に言っていいよ」
「い、いえ! あ、荒木さんの方こそ先に……」
「あーえっと……」
たぶん俺が良いって言っても返されるだろうな。最近なんとなく河上さんの事がわかってきたし。
「じゃあ俺から……」
「はい……」
「ほんと、今日はごめんな……不可抗力だけじゃなくてあんな発言までして……ほんとごめん」
深々と頭を下げる。いくら不運が重なったとはいえ、悪いのは俺だ。いや、まぁあの発言は自業自得だな。
「い、いえ……大丈夫……です。あの、出来れば忘れて貰いたいですけど……」
「あぁ、善処する」
たぶん無理だろうけど……。さっきから俺の心拍数がおかしい。妙な汗も出てるし、何より河上さんを見ているとなんだか胸が苦しく感じる。はぁ~俺相当好きなんだろうな……。
「ふぅ~、どうやら話し合いは終わったみたいだね」
頃合を見計らったかのように洋介が割って入る。
「で、ちょっと2人にこれからの話をしたいんだけどいいかい?」
「これからのこと?」
「なんですか?」
「君たち、つい数分前のこと完全に忘れてないかい……?」
「数分前……えーっと、あっ!?」
そ、そうだ……そもそもこんな状況に陥った原因、ファンクラブの奴らの事すっかり忘れてた……。
「えとその、それがどうかしたんですか……?」
わからない、というように小首を傾げる河上さん。
「んー、簡単に言うとクラスに入ったら大騒ぎになる、かな」
「まぁ、だろうな……」
玄関前に貼ってある時点で全校生徒が見ようと思えば見れる、極端に言えば俺たち2人は軽く有名人というわけだ。公認のカップルとして、ね。これはかなり骨が折れる。個人的には問題ない、というより嬉しい位だが本人がどう思うか……。それにファンクラブの問題もある、奴らがどう出てくるか……問題は山積みだな。ただでさえ体育祭でこれから忙しくなるというのに……。
「あぅ……荒木さん、ごめんなさい……」
「え? いきなり謝れる理由がわからないんだが……」
「だって……私のせいで荒木さん……に迷惑、掛けて……ぐすっ……いや……ですよね……っ、わたし……なんかのか、……かれし、さんに……ぐすっ……されて……ほんとに……ぅっ……ごめん……なさい……」
え? え? な、なんで急に……、泣いているんだよ……な。
涙は見えないが時折鼻をすする音が聞こえてくる。
どうしようかと戸惑っていると廊下の方から何人かがこちらを見ているのが見えた。
ちょっと離れるか……。
『とりあえず人目のつかない所に行く』
洋介にそう伝え、河上さんに肩を貸しながら連れて行く。
なんで……なんでそんな事で泣くんだよ……迷惑、なんかじゃない……俺は……俺は――
「……ぐすっ……うぅ……っ……すみま、せん……い、いきなり……こんな……恥ずかしい、ところ……見せちゃって……っ」
移動した頃には微かにだが瞳に涙が溜まっていた。
今俺が掛けられる言葉は一つしかない、直感的にそう思う。だけど……それと同時に怖い。もし、この涙の理由が本当に迷惑を掛けた、という事から来た涙だとしたら俺は……とんだ大馬鹿者だ、自惚れるなって話だよな……。これでもし振られたりしたらきっと気まずくなる、それが怖い。それでも俺は本当に自分の気持ちを伝えるのか? 本当にそれでいいのか? 変わりたくない、壊したくない、でも今は…………それでも…………。
「………………迷惑なんかじゃない!」
「っ……え…………?」
「そんな事……言わないでくれ。迷惑なんかじゃ……ないから」
「で、でも……荒木さん……わたし、なんかが……彼女、だって言われて…………」
「『なんか』とか言うなよ! 千堂さんにも言われただろ! それに俺は……俺は……!」
喉がカラカラに渇いていく。すごく体が熱い。恥ずかしさで今すぐ逃げたい気分になってくる。だけど……最後まで言うんだ! きっとここで言わないと絶対に後悔する!
「河上さん、河上梨乃の事が好きだ! 大好きなんだ! 顔を見るだけでドキドキしてちょっと可愛い仕草をされると一晩中頭に浮かんで寝れなくなる位……気持ち悪いって言われてもいい! それでも俺は河上梨乃の事がが好きだ! だから……だから……! 『なんか』とか言わないでくれ……俺から見たらすごい魅力的なんだ! すごく優しくて、思いやりがあって、他人のことをまるで自分の事のように悩んでくれて……そんな、そんな河上梨乃に俺は惹かれたんだ! だから……だから……」
自分の内に秘めていた思いが爆発し、言葉になって出てくる。途中で自分が何を言っているのかさえわからなくなってきた。それでも伝えなきゃ……俺の想いを、そして最後の言葉を――
「俺と付き合ってください!!」
…………言えた、最後まで……後は返事を……良いか、駄目か……。
「嘘、ですよね……? それって……」
俺が予想していた二つの答えとはまったく違う返答が返ってきた。
「嘘じゃないよ。これが俺の本当の気持ちだ」
「……あ、荒木さんすごく優しいからそう言う事を簡単に言えるんです……。ありがとうございます。嘘でも私の事好きだって言ってくれて……」
なんで……なんでそうなるんだよ!
なんで……そんなに自分を過小評価するんだよ!
何が簡単だ! 簡単なわけないだろ!
伝えたい、嘘じゃないって事を!
「…………簡単じゃない! 恥ずかしい話、すごく怖かった。嫌われるんじゃないか? 振られたらどうしようとかずっとずっと、そんな考えが頭の中でグルグル回ってた。それでもちゃんと自分の気持ちを伝えたかったら……俺は本気、だから」
「本当…………ですか? 嘘じゃ……ないんですか?」
「あぁ。こんな大事なことで嘘なんてつけないよ」
「ぅっ……うぅ…………」
な、なんで泣くんだ……お、俺変な事言ったか? くそ、どうすればいい……。
「あ、えと……お、俺なんか変な事言った……か? もしそうならごめん!」
「っ……い、いえ……ち、ちがっ……うんです……これは……その、嬉しく……て……っ……」
「うれ……しい? そ、それって……」
まさか……。
「はい……わたしも……っ……荒木、さんの事……好き、です……」
泣きながらもはっきりとした声でそう答えてくれた。
「河上さん!」
「きゃっ!」
あまりの嬉しさについ抱きしめてしまった。
抱きしめた体は小さく、繊細でちょっと力を入れたら壊れてしまいそうな、そんな体を優しく抱きしめる。
「あ、荒木……さん?」
突然のことで驚いたのだろう。少し声が上ずっている。
「よかった……本当に良かった……」
「え? え?」
「恐かったんだ……嫌われたんじゃないか、振られるんじゃないかって……本当に、良かった……」
「荒木さん……」
「ごめん、もう少しだけこのままでもいいかな?」
「はい、私でよければ……」
ここからじゃ顔が見えなくてわからないがたぶん笑顔なんだろう。なんとなく声が嬉しそうに聞こえた。
互いの気持ちを確かめ合うようにそのまま予鈴が鳴るまで抱き合った。
ということで、はい。すみません3週間も待たせてしまいました。申し訳ない。
もともと不定期更新と明記してあるのでそこまで気にすることはないと思いますけど、待たせていることに変わりはないので。
さて、次回、10話なんですがこれもちょっと時間が掛かりそうです。すみません。
ということで、まだまだ続くんでよろしくお願いします!