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第08話 資料探しと休日 後編 修正版

河上さんの過去を聞きより近づきたいと思うようになった俺。

充実したデートの後、神崎さんの元へ行った。そこで待っていた話とは……



「やっぱりやめようか?」

「い、いえ……大丈夫……です。たぶん……」

いや、人の左腕に目を瞑りながらしがみ付いて震えてるのをみて大丈夫と言われても説得力皆無なんだが……。

役得って言えばそれまでだけど、こう……なんていうか当たってほんと、色々と反応してしまう訳で……。非常に緊張する。まったく、誰だエロゲとかギャルゲの主人公が羨ましいとか言う奴! 実際に思いっきり腕組まれると頭混乱するんだぞ!

まぁそう思ったところで現実は変えられないよな……。


「と、とりあえず……さ、その……さっきからこう……女の子特有の柔らかいのが当たっててその……で、出来ればもう少し離れて欲しいなぁ〜って……」

「ふぇ……?」

状況が分かっていないのか俺の腕と顔を交互に見つめてくる。


「あ……あっ……」

ようやく状況を理解したのか凄い勢いで顔が真っ赤に染まって行く。


「ご、ごごごめんなさい!!」

全力で俺から離れる。それはそれで傷つくんだが……本人はそれ所じゃないだろう。


「いや、別にそんな謝られるほどの事では……というか俺からしたら役得なわけで……」

「役得……ですか?」

「あ、あぁ……男からすればすごい嬉しい事だからさ。なんか俺頼られてる~とか合法で女の子の胸触れる~みたいな……」

ってちょっと待て! これじゃあまるで変態じゃねぇか……!?


「あぅ……うぅ~…………あ、あの、嬉しかった……ですか? そ、その……む、胸……触れて……」

「もちろん!」

……ちょっとはオブラートに包んで言おうぜ、俺の本能……。これじゃあ自分が変態だって公言しているようなもんじゃないか……。


「ほ、本当……ですか? えと、その、美冬さんとか智子さん……とか一ノ瀬先輩と比べたらすごくち、小さい……のに?」

うぅ、いつまでこの話を引っ張るんだろう……。精神的にきつい、我慢するのが……。


「た、確かに3人に比べたら小ぶりだけどその、や、柔らかくて気持ちよかったよ?」

誰か俺の本能を止めてくれ……。


「そ、そうですか……よかったぁ~…………」

なぜかそれを聞いて安堵する河上さん。


「え? なんで安心してるの?」

「あ、えと、これは、その……な、なんでもないです! い、今のは聞かなかったことにしてください!」

「河上さんがそういうならなら……」

「はい、お願いします」

「「…………」」

こんな状態で会話を続けろというのが無理難題な訳で……。だが今日の俺はいつもと違う!


「えと、そろそろ中に入ろうか。あ、その前に何か買って行く?」

「い、いえ……たぶん食べれないと思うので……その、ずっと目を瞑ってると思い……ます」

「あーなるほど……」

ようは上映中はそれ所じゃないと……。


「今ならまだやめられるけど……。まぁ中に入ってもいざとなったらホールから出ればいいだけか、どうする?」

「だ、大丈夫です。い、行きます……!」

なにが彼女をそこまで勇気付けるのかは分からないが河上さんなりに何か理由があるのだろう。……まさか先輩が脅迫したんじゃないだろうな……?

理由が気になるがそこはまぁ触れないほうがいいだろう。

俺は河上さんの言葉に『わかった』と手短いに答えホールに入る。

中に入るとまだ少し明かりがついていた。どうやらまだ始まってはいないようだ。


「えっと、席は……」

座席番号はF-13と14、良く言えば劇場の真ん中らへんなので見やすいが、悪く言えばホラーが苦手の河上さんにとっては最悪な席だろう。

席の埋まり具合は上々、ほとんどの席が埋まっていた。さすがベストセラー小説の実写映画と言ったところか。

席に着き辺りを見渡すと男女ペアが多く見られる。こういうホラーものはカップル同士で見るのが定石なのかはわからないが自分たちがここにいるのが場違いではないか? と思うほど多かった。


「その……カップルが多いですね」

河上さんがそう口にする。自分と同じ事を考えていたのがちょっと嬉しく感じる。はぁ~、一度気が付くと駄目になるな、ホント。……俺たちも他の人から見たらそう見えるのだろうか? 不意にそんな考えがよぎる。


「俺たちも周りから見たらそういう風に見えるのかな……」

自分でもびっくりする程自然に思っていた事が零れる。


「ふぇえ!? え、あの……その……えと……」

「あ、いや! な、なんでもない! 忘れてくれ! というかごめん! そんなの迷惑だよな……」

何言ってるんだろう……今日の俺おかしすぎる……。


「そ、そんな! め、迷惑なんかじゃないです!」

「え……?」

河上さんの口から予想外の返答が帰ってくる。

え? え? それって……。

頭が混乱してきた。それってつまり……。


「え、あ、ちがっ!? えっと、その今のはその、えと…………し、知り合いの人がいないのでそう思われても良いっていう意味です!」

「そ、そっか……そうだよね。はは……」

「そ、そうですよ……あははは……」

ちょっとは俺に気があるのかと思ったが違ったらしい……。ちょっと自惚れ過ぎたな……。


「はぁ~……」

「ため息なんかついてどうかしたんですか? も、もしかして私のせいですか……?」

「あ、いや。別に河上さんのせいじゃないよ。ただちょっと自分はバカだなぁ~と思っただけ。気にしなくていいよ」

「は、はぁ……、そういうなら追求はしませんけど……。前にもいいましたが相談できる事でしたらちゃんと相談してくださいね?」

「あぁ、わかってる。ありがとう」

言える訳ねぇ……。というか本人じゃなくても言えないよな。そう考えると相談出来る相手がいない。自分で腹をくくるしかないか。でも、もし駄目だったら……きっとギクシャクした関係になるだろう。それが怖い……。今の俺には『変わりたい自分』と『変わりたくない自分』が混在している。俺は……。


ブーーーーーーーーーー。


俺の考えを遮るように劇場内にブザー音が鳴り響く、どうやら始まりらしい。


「あ、あの、荒木さん……」

ブザーが鳴り終わり、辺りが暗くなったところで話しかけられる。


「ん? なんだ? もう外に出る?」

「で、出ないです! せっかく一ノ瀬先輩に貰ったんですから……」

「いや、まぁその辺は気にしなくてもいいと思うんだが……。まぁいいか。それで?」

「……手、繋いで貰えませんか?」

「……え? 別にいいけど、なんで?」

「えと、その……そっちの方が怖k……安心出来ると思って…………駄目……ですか?」

その言い直しは意味がないと思うんだが……という野暮な突っ込みはなしだ。それよりもそんな目でお願いされたら別の意味で俺が安心出来ない訳で……。断るなんて選択肢はないけどな!



「あ、あぁ、いいよ。」

「あ、ありがとうございます……」

そう言ってそっとというより恐る恐るという表現が正しい感じに俺の手を握る。その手は俺なんかが握ったら壊れてしまうんじゃないか? という程小さく柔らかいものだった。

や、やばい……汗が……。


「そ、その、気持ち悪くないかな? ちょっと汗出てるし……」

「い、いえ……。頼んだのは私の方ですし……。それに私の方こそ嫌じゃないですか……?」

「嫌だなんてそんな! その……柔らかくて気持ち良いくらいだよ」

…………はい、また地雷踏みましたよっと……。なんでこう言ってから気が付くかな……。


「えと、ありがとう……ございます?」

「は、はは……」

わ、笑うしかない……。



そんなこんなで映画の内容ではなく別の意味でドキドキした映画だった。……具体的にいうと扉が急に勝手に閉まるシーンや雷が鳴るシーンにバルコニーの上から死体が落ちてきたりするシーン、たったそれだけでその度に震えながら抱きつかれた。……最後のは俺もちょっとびびったのは内緒だ。

……これは俺の精神的によくない映画だ。そう、心に刻んだ3時間だった。……意外と長い映画だったな。

映画も見終わり、少し涙目の河上さんを引き連れ遅めの昼食を取るために朝に寄った喫茶店に向かう。……なんでからかわれるのがわかっているのにそこに行くかというと単純にリーズナブルだからだ。これが学生の(さが)かな……。


「いらっしゃ――なんだ、和真くんか」

「いや、なんだはないでしょ……。お客にその反応はどうかと思いますよ?」

「なによ~、お客様は神様かよ!」

「別にそこまで言ってないですよね!? ただ単に普通の接客をしてくださいと……」

「じゃあ手本見せて」

「…………は?」

「正しい接客が出来ない可哀相な私に教えてくれやがりませんかお客様」

「それって人に物を頼む態度じゃないです! というか美秋さんの方が得意ですよね!?」

「高級レストランでアルバイトしている子が何を言ってるの?」

「ぐっ……でも、基本裏方で……」

「裏方でもその辺の教育はされたんでしょ」

「そりゃあまぁ……それなりに」

「ですって渡辺さん」

ん? 渡辺さん? それって……いや、まさかな……。


「ふむ、まぁ荒木はよくやっていると思うよ。正直表に出してもいいと思っている」

ガタイのいいヒゲをお洒落のように生やした男の人が厨房から出てくる。って――


「りょ、料理長!? ど、どうしてここに!?」

そう、この人は俺が働いているレストランの料理長、渡辺正宗(わたなべまさむね)だ。


「どうしてと言われてもな……。ここの店長と幼稚園の頃からの友達でな、よく仕事話をするんでな。荒木こそどうしたん――――なるほどな。そういう事か。はっはっは」

「ちょっと待ってください! 明らかに誤解していると思います!」

「何を勘違いだというんだ? その後ろにいる女の子、お前の彼女だろ? 別に照れる事じゃないだろ。いやぁ~若いって羨ましいねぇ~まったく。森下くんもそう思うだろ?」

「そうですね。羨ましい限りですよ」

「あ、あの、えと…………」

あ~~~もう! どうして俺の周りにはこう早とちりする奴が多いんだ! いや、まぁ嫌じゃないけどさ……むしろ実際にそうなりたいというか……って今はそんな事はどうでもいい!


「はぁ~美秋さんも悪乗りしないでくださいよ……。別に彼女じゃないですよ」

「ふふ、悪乗りねぇ~。そういうことにしておいてあげる」

「はは、まぁ荒木、あんまり女の子を泣かせるんじゃないぞ?」

「え? 何の事ですか?」

「彼女、涙の後がついてるぞ」

「あー」

指摘させれたようによく見ると河上さんの顔に微かに涙の後が残っていた。


「い、いえ……これは、その映画を見て流しただけで荒木さんのせいじゃないです」

「そうか、それならいいか。さて、俺はそろそろ戻るか。あんまり外に出てると弟子たちがうるさいからな」

「料理長も大変ですね」

「そうだな、だが好きでやっている事だ、楽しくやっているさ。じゃあな荒木、あーえっと……」

「あ……、す、すみません。私は河上、河上梨乃っていいます」

「河上……いや、まさかな……」

料理長が一瞬何かを考えるような素振りを見せたがすぐに普段どおりの顔に戻る。何か気になる事があるのだろうか?


「それじゃあ改めて、荒木、河上さん、また何処かで…………っとそうだ、一個重要な事を忘れていた」

「? なんですか?」

「荒木、今日の夜空いてるか?」

「まぁ空いてるといえば空いてますけど……バイトですか?」

「いや、そうじゃない。まぁある意味バイトに関係ある事だが。今日の夜、何時でもいいから喫茶葵に顔を出せ」

「……は? 喫茶葵に? 何でですか?」

「それはそんとき士郎に聞いてくれ」

「は、はぁ……よくわかりませんけどわかりました」

「それじゃあ私はこれで森下さんもお元気で」

「はい」





――――――――――――

――――――――

――――





「はい、特製スパゲティとBランチお待たせ」

美秋さんが注文した料理をテーブルに置く。


「そういえば2人共なんの映画みたの? 」

「恐怖の館ですよ」

「えっ!? 本当に?」

なんでそんなに驚かれるんだ……? そんなに俺がホラー映画見るのが意外なのか? 確かにホラー映画はあんまり見た事ないけどさ。


「そんな驚くほど意外でしたか?」

「ん~意外っちゃあ意外だけど……。和真くんより梨乃ちゃんがホラー映画がを見たのが意外ね。そういうのてんで駄目そうなイメージだし。あ、もし違ったらごめんなさい」

「い、いえ。美秋さんの言う通りですよ。私その……怖いのとか苦手で……」

「え? そうなの? じゃあなんでそんなの…………、和真あんたまさか……!」

「違います!」

勘違いされる前に全力で否定する。十中八九間違いなく俺が無理やり誘ったと思ったのだろう。


「嫌がる梨乃ちゃんを無理やり連れて行くなんて……何処まで最低なの!」

「いや、今否定しましたよね!? 初めに否定した俺の立場がないじゃないですか!」

「と、まぁそれは冗談として……」

「嘘だ! 今絶対本気の目をしてましたよ!」

「気のせいよ、気のせい。で、どうして梨乃ちゃんを連れて行ったの? まさか苦手なの知らなかったとは言わせないわよ」

「苦手なのは知ってましたけど……。その……」

あーどうしよう。ヘタに河上さんが……というとたぶん女の子のせいにするの? とか言ってきそうだし。どうしたものか。


「あ、あの!」

「ん? 何かしら?」

「えと、その……あ、荒木さんは私が苦手なの知ってます……。ただ私が見たいってお願いしたんです……」

「えぇ? 苦手なのに見たいって言ったの?」

「はい……」

「ふ~ん、そうね……。なにか理由があるとみた。お姉さんに話しなさい!」

「えぇええ!? む、無理です!」

「いいからいいから。無理って事は理由があるのよね。ちょっとこっちにきなさい」

「え、あ、あの、み、美秋さん!? そんな引っ張らない――」

半ば無理やり河上さんが奥へ連れて行かれる。

1人残された俺はどうすれば……?

……とりあえず待つか。



待つこと数分――



「えっと、お待たせしました……」

「お帰り。美秋さんなんだったの?」

「えっと、それは……あはは…………」

どうやらあまり話したくない内容らしい。


「まったく……料理冷めちゃったよ」

「あはは……そうですね……」

さっきから何となくだが元気がない気がする。その辺り聞いてみるか。


「なんかちょっと元気ないけど美秋さんになんかされたの?」

「………………」

「……? 河上さん? お~い」

「きゃっ!? な、なんですか?」

俺がちょっと肩に触れただけで飛び上がって驚かれた。……別になんとも思ってないよ?


「あ、いや、なんか元気ないからどうしたのかなぁ~っと思って」

「い、いえ。大丈夫…………ですよ?」

「そっか。ならいいんだ」

妙な間が気になるが……まぁいっか。


少し冷めてしまった料理を食べ、喫茶店を後にする俺たち。お店から出るときに美秋さんが河上さんに何か耳打ちしてたのは気にしないでおこう。たぶんロクでもないことだと思うから。変に突っ込むと後々面倒になりそうだし。


その後は2人して特に予定がないという事で(自分は夜に喫茶葵に行かないいけないが)適当に大型ショッピングモール、IONを見て周る事にした。いわゆるウィンドウショッピングという奴だ。よく美冬と智子に荷物持ちとして連れて行かれているので大体の店の場所がわかる。河上さんはここに初めて来たとの事、そのせいもあってか場所を教えるたびに『何でも知っているんですね』とか『こんなお店も……』など終始褒められるハメに……けして嫌という訳ではないが何処かこう、むずがゆい。

こういう所に来て思ったのだが早くも夏物が置いてあるんだな。いくらなんでも先取りしすぎだろと思うのは俺だけだろうか? そんな俺のくだらない思いを他所に河上さんの視線がある一点に集中していた。

そこを見ると白のワンピースが掛けられていた。値段を見るとまぁよく見かける値段で極々普通の少しフリルのついたワンピースだった。

河上さんが着たら…………。


……小波の音が心地よく、一面真っ白な砂浜、そこに立つ一人の少女……しなやかな肢体に少しゆったりとしたワンピースを着る黒く細長長い髪が風でなびく………………はっ!?


そこまで妄……もとい想像して我に帰る。

……いいかも。やばい、頭から離れない……。


「………………」

あーだめだ。いいな……。


「――――さん?」

一層プレゼントするか? いやでも……。


「荒木さん!」

「うわぁあ!? な、何? 何? なんかあったの?」

「荒木さんさっきから呼んでいるのに返事しなかったので」

「あぁ、ごめん。ちょっと考え事してて」

「最近悩み事多いですよね。大丈夫ですか?」

「あぁ、別に大丈夫だよ。それに今回考えてたのはいつものと違うから。なんていうか……自分の欲求……かな?」

「欲求……? なにか欲しいものがあるんですか?」

「んー、欲しいっちゃ欲しいけど……」

どうする? 素直に言うか? でも言ったところで物欲しそうに見ているってことはお金的に無理なんだろう。もしそんな事いったら下手したら無理やり買わせることになったり……。あ、そうだ。


「ねぇ、河上さん」

「なんですか?」

「その、河上さんの誕生日っていつ?」

「誕生日……ですか? 3月25日ですけど……それがどうかしたんですか?」

「あーそっか。そうなんだ。いや、特に深い意味はないんだ、はは……」

「?????」

3月か……遅い誕生日プレゼントとして渡すか? いや、たぶん河上さんの事だから遠慮して貰わないだろうな……。うーん……。


「荒木さん、また悩んでいるんですか?」

「ん? あ、あぁ……ごめん」

「さっきから謝ってばかりですよ?」

「……そうだな。最近の俺どうかしてるな……」

「あの、ほんとに悩みがあるなら……」

「大丈夫、大丈夫だから」

「………………そんなに私って頼りないですか……?」

「なっ! ち、ちがっ! そ、そういう訳じゃなくて! あーなんて言ったらいいのか……その、これは自分の問題であって人に相談するような問題じゃないというか……その……」

今にも泣き出しそうな顔をされてしまった。そこまで心配させてたのか……。俺のバカ……。


「…………わかりました。本当に大丈夫なんですね?」

「あ、あぁ。それは誓って」

「ふぅ~、ごめんなさい。わたし、図々しいですよね……迷惑ばっかり掛けて……」

「別にそんなことは……河上さんはよくしてくれてるよ。そうやって人の事でも自分の事のように心配してくれて」

「はい……。ありがとうございます」

「あーえっとなんか変な感じになちゃったけど。別の場所いこっか」

「はい♪」


こうして俺と河上さんとの休日が終わった。




その日の夜――




「こんばんは~」

俺は閉店時間間近の店に入り挨拶する。


「おぉ~和真くん。よく来てくれた」

奥からこの喫茶店の店主、神崎さんが出てくる。


「はい、料理長から夜にここへ来るように聞いたんですけど……俺に何か用ですか?」

「なんだ、内容は聞いてないのか。まぁいい、そこに座りなさい」

「はい」

俺は言われたとおり席に座る。その後すぐに神崎さんが俺の正面の席に座った。


「それで話って……」

「そうだな……まぁ単刀直入にいうと――――」


「うちでアルバイトしない?」

「…………はい?」

アル……バイト? ここで? なんで??


「え、えーと俺の聞き間違いですか? 今『うちでアルバイトしないか?』と聞こえたんですけど……」

「あぁ、言った」

……なんか急すぎて頭がついていかない。とにかく整理しないと。俺は料理長に言われてここにきた。料理長には行けばわかると言われたんだよな。それで来たわけだがいきなりここでアルバイトしないか? どうして? なんで??? 頭が混乱する。


「あーえっと、その……」

「訳が分からないって様子だね」

「は、はぁ~そりゃあいきなりそんな事言われれば……それでどうしてそんな話に……?」

「いや~実はうち、ちょっと人手が足りなくてね。で、友人の渡辺……和真くんのバイト先の料理長さんね。相談したんだよ。そしてよかったら和真くんを使ってやったらどうだ? と言われてね。和真くんの事ならよく知ってるしいいかなっと思って」

「えぇえええええええ!? ちょ、ちょっと待ってください! そ、それってクビ!? りょ、料理長が本当にそう言ったんですか?」

「うん、そうだよ。あ、ちなみにクビって訳じゃないよ?」

「え……? そうなんですか?」

「正確には異動だね」

「……確かにクビではないですね…………」

でもアルバイトで異動って……。そもそもお店関係ないような……。


「まぁこっちが1人欲しいって無理言ったんだよ。そうしたら君を推薦されたってわけ」

「すみません、話についていけないです……」

「はは、そうだろうね。んーわかった。もっともらしい理由で終わろうと思ったけど下手に隠してもしょうがないから言っちゃおうか。実はね、あのレストランなくなるんだよ」

「……え? なくなる……? それってどういう……」

「どういうもなにも言葉通りの意味、簡単に言うと東京に再オープン、本店が移動するんだよ」

「あーなるほど……」

だからか……というか料理長もちゃんと言ってくれればいいのに。


「それでアルバイトの子を持っていくことも出来ない、かといってやめさせるのも可哀相、そういう訳であいつ自らが色んな飲食店に言ってバイトの子を貰ってくれないかって歩き周ったって訳。納得した?」

「は、はい……一応……」

料理長……だから今日あそこにいたのかな……? バイトの子がそのまま別の所でバイトを続けられるように……。


「それが君がここに呼ばれたわけだね。時給は……ちょっと下がるかもしれないけどそこは勘弁してくれないかな。あ、もちろん強制じゃないよ?」

「……わかりました。料理長がそこまでやってくれたんですから他の所になんて行く気はないですよ」

「っほ……よかったぁ〜。断られたらどうしようかと思ったよ〜」

「なんでそんなに安心しているんですか?」

「いや~最初に言ったと思うけど人手不足でさ~ほんと、こんなに早く見つかってよかったよ」

「あーえと、色々と迷惑掛けるかもしれませんがよろしくお願いします」

「あぁ、こちらこそ。シフトは……本音を言えば明日にでも入ってもらいたいけど君にも予定があるだろうし、ここに顔を出せる日をメールか電話でお願い。そのときにシフトを決めよう。今日はもう夜も遅いし。あ、あいつには僕から連絡入れておくよ」

「わかりました。それじゃあ今日はこれで」

「うん、じゃあこれからよろしくね」

「はい」




ちなみに余談だが今のバイト先は今月末までとの事、神崎さん的にはすぐにでも入ってもらいたいみたいだしどうしようか考えさせられる夜だった。

8話が長い、というかただ単に別のタイトルつけて分ければよかったなといまさら思ってしまった。

とまぁそんなことは置いといて、次の更新ですがちょっと8話で力尽きました……普段の2.5話分ぐらいあるので、就活の事もあり9話の投稿がかなり遅くなりそうです。すみません。

目標は2週間以内!結局今までと変わr(ry

と言いたいのですが、もしかしたらもうちょっと掛かるかもしれません。


まだ続くのでよろしくお願いします。


8月21日追記

誤字脱字修正及び一部文書の修正をしました。

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