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がきんちょ軍団

作者: 姫 寅吉
掲載日:2026/09/04

日常生活の見たこと聞いたこと感じたことを書いてみました。


 私は学校の近くに住んでいる住人だ。


 九月一日、午前八時十分。今日から二学期。日差しは柔らかいが、それでもまだ暑い。通学路いっぱいに広がって歩く小学生の姿が見える。私は彼らを『がきんちょ軍団』と言っている。


 通学路では、旗を持った地域の人が『がきんちょ軍団』の登校を見守っている。優しい笑顔で、「おはよう」と挨拶をかけている。低学年は、にこやかに返事をするのがいつもほほえましく感じるが、学年があがるにつれて挨拶が少なくなるのですこし残念だ。


 よく見ると、ランドセルと両手に重たい手提げを持ち、首をうなだれて登校している『がきんちょ軍団』がいる。

「今日から学校か。……マンガの続き見たかったなあ」

後ろ髪を引かれる思いで歩いているのがにじみ出ている。また、起きて間もないのか、眠たそうな顔で歩いている『がきんちょ軍団』がいる。生活リズムが取り戻せていないのかもしれない。「もっとしゃきっとしような」と声をかけてたくなってしまう。お節介というやつか。


 「キィィィィ」

不意に、自転車のブレーキをかけるかん高い音がした。どうしたのだろう。男性が四列に並んで歩いている『がきんちょ軍団』の後ろで困惑した顔をしている。どうやら『がきんちょ軍団』が道をふさいでしまったらしい。

「広がってゆっくり歩くな。もっと右によって二列で歩け」

と文句の一つも言いたいのであろうが、さすが大人だ。黙って自転車を押しながら『がきんちょ軍団』の後を歩いている。しかし、時間を気にしている男性をよそに、『がきんちょ軍団』は我関せずに会話をして登校している。


 授業中は一般人が通学路を散歩したり、自転車に乗ってスーパーへ買い物に行ったりと、ごく平凡な日常の時間が流れている。私は、この時間が一番のんびりしている。


 しかし、午後三時前から、「がきんちょ軍団」の活動が本格的になる。授業が終わった開放感からなのか、『がきんちょ軍団』が学校から走りながら下校する。

「おまえ、ちょっと待てよ。走るのはずるいぞ」

「早く来いよ。俺、早く家に帰ってゲームしたいから」

「まってよ」

『がきんちょ軍団』は大きな声で叫びながら、駆けている。「危ないぞ」とはらはらして見ているが、『がきんちょ軍団』はお構いなしである。


 「キィイイイイイイイイイイ、ガシャン」

自転車に乗っていた女性が通学路を走っていた『がきんちょ軍団』とぶつかりそうになった。やっぱり、そうなるのは目に見えていた。幸い、女性は急ブレーキをかけて、事故を回避したのでお互いに怪我はしなかったが、自転車は横転した。『がきんちょ軍団』はちらっと女性を見ただけで、慌てて逃げ去った。それを見た女性は顔を赤くさせて携帯を取り出すとどこかへ電話をかけ始めた。おそらく学校へ苦情を言うのだろう。こういうことは何度か見たことがある。学校も『がきんちょ軍団』のおかげで余計な対応に追われているのだろう。


 女性は携帯で話し始めると、ヒートアップして大きな声で叫んでいた。

「学校ではどんな教育をしているのよ。危なかったのよ。通学路で走らないようにきちんと指導してもらいたいわ。……そうよ、二、三生の男の子よ。……事故が起こったら学校が責任とってくれるの?……二度とこんなことがないようにきつく指導してね」

言っている内容はもっともだが、あまりにも大きい声なので私も驚いた。『がきんちょ軍団』は明日、学校でこっぴどく指導されるのだろうな。


 こうして、私は窓から『がきんちょ軍団』を毎日眺めている。かわいらしい姿をしているが、何をするのか分からない嵐のような軍団である。それでも、彼らはこうやって少しずつ交通ルールを学んで行くのだろう。危うさは成長とともに薄れ『がきんちょ軍団』もやがて落ち着いた大人へと変わっていく。私はその変化を今日も静かに見守っている。



いかがでしたか? 少しでも楽しめたら幸いです

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