雨宿りと絵本とクッキー
オルゴール楽曲の流れる喫茶店。
カウンター席では常連客が、ホットケーキとコーヒーを楽しみ、脇に図書館のバーコードがついたサバイバル本がよけられている。
窓辺の席からは葉が落ちて枝だけになった寂しい風景が見える。
けれど店長が年賀状に使うくらい春は桜、夏は緑、秋は紅葉、冬は雪化粧した中庭を楽しめた。
また今年も年末の大掃除まで、夏の風鈴が片付けられず残っていると見やり、水切りの食器を布巾で拭き上げる。
すると雨粒が窓に当たる音が耳に入り、傘立てを出すため外へ。
通りの石畳を打つ雨音と冷気に晒され、吐く息が白く曇る。
近頃昼間でもぐっと冷え込み、いつ雨が雪になってもおかしくない。
そこで軒下に自転車を降り、雨宿りする女子高生の姿を見つけた。
制服は近所にある高校で間違いなく、寒さげにすり合わせた手に息を吹きかけていた。
そもそも寒いなら脚を剥き出しにせず……スカート丈を短くしたくらいで、可愛さは変わらないのにと思ってしまう。
学生の頃は女子の短いスカートなんて無関心だったのに、今は体を冷やさないか心配になる。
「外は寒いでしょう? 中で雨宿りしませんか?」
「……」
突然声をかけたためか、女子高生は警戒の色を見せた。
「飲み物だけでも注文していただければ、合い言葉を答えてくれたお客さんに、プチギフトとしてクッキーを配っているんです」
そして他に比べて安いと勧めた。
一度、女子高生は止みそうもない空を見上げ、ぽつりと返事をした。
「お邪魔します」
「いらっしゃいませ」
店内へ招き入れ、暖房に近い二人席に案内。
紅茶の注文を受け、クッキーがもらえる案内を見せる。
《絵本『木枯らし舞踏会』で踊りに誘うセリフは? ※ヒント:図書館に絵本があります》
これは同じ敷地内の図書館利用を促すための企画も兼ねていた。
さっと目を通した女子高生は顔を上げる。
「コレ知ってます。昔何度も読みました」
件の絵本は木枯らしによって落ち葉が踊るという作品だ。
「では合い言葉を」
自信が窺える彼女を見つめ返し、さっそく答えを求めた。
すると女子高生は小さく息を吸う。
「紅葉の手、銀杏と藤のドレス、小さく可愛らしい錦木の顔、私と一曲踊りませんか?」
座る彼女から上目づかいに見つめられ、降参とばかりに笑顔を返す。
「正解。雨が止むまでごゆっくり」
青いリボンで包装されたクッキーを贈呈し、店長が淹れた紅茶を彼女の前に置くと、冷えた指先を温めるようにカップを手で包み込んだ。
甘い香りの桂の落ち葉で出来た王子や、トゲトゲした杉や松の葉で出来たスギマツ大臣の案もあり広げようとして、なろラジ大賞は1,000文字以下なので諦めました。




