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落語【声劇台本書き起こし】

落語声劇「山号寺号」

作者: 霧夜シオン
掲載日:2025/11/13


落語声劇「山号寺号(さんごうじごう)」


台本化:霧夜(きりや)シオン@吟囁亭喃咄(ぎんじょうていなんとつ)


所要時間:約15分


必要演者数:2名

      (0:0:2)

      (2:0:0)【性別準拠人数比率】

      (1:1:0)

      (0:2:0)


※当台本は落語を声劇台本として書き起こしたものです。

よって性別は全て不問とさせていただきます。

(創作落語や合作などの落語声劇台本はその限りではありません。)


※当台本は元となった落語を声劇として成立させるために大筋は元の作品

 に沿っていますが、セリフの追加及び改変が随所にあります。

 それでも良い方は演じてみていただければ幸いです。



●登場人物


一八:太鼓持(たいこも)ち。普段ご贔屓(ひいき)にしてもらっている若旦那(わかだんな)としばらく会って

   いなかったが、黒門町(くろもんちょう)で再会。

   難しい字の方だと「幇間持ち」。


若旦那:とある商家(しょうか)の若旦那(わかだんな)。

    自身の贔屓(ひいき)にしている太鼓持ちの一八(いちはち)と出会う。



●配役例


一八:

若旦那:



※枕はどちらかが適宜(てきぎ)兼(か)ねてください。



枕:太鼓持ちという仕事がございます。昔だとちょいと難しい字を書く

  んですが、どう書くかと申しますと……、ちょっと口では申し上げ

  にくいので、あとで宿題という形でお願いいたしますね。

  決して面倒くさいわけじゃありませんからね。

  で、その太鼓持ちですが、現代だと他人のご機嫌取(きげんと)りをしたり、

  おべっかを使ったりして、自分だけ利益を得ようとする人間を揶揄(やゆ)

  する意味合いが主流です。

  しかし、一方では江戸時代から続く伝統芸能を指し、宴席や座敷に

  おいて客の話に付き合ったり、小噺(こばなし)や踊りや物真似(ものまね)などの芸を披露(ひろう)

  して場を盛り上げる、男芸者(おとこげいしゃ)とも呼ばれますな。

  これが意外に大変な仕事で、落語家というのは高座(こうざ)と客席という

  線引(せんび)きがございますが、太鼓持ちはお座敷の中で旦那(だんな)と二人きりで

  す。

  だからちょいとしくじったりなんかすると、あぁもういいよ、お前は

  クビですよ、とすぐに首を切られてしまう仕事なわけです。

  ですから太鼓持ちという仕事は常に命がけなんだそうで。

  お客様には決して逆らわない、なんでもかんでもご無理ごもっとも

  という世界で、客が気に入らないからってとんずらする、もしくは

  ずいッと出て行く事を意味する「随徳寺(ずいとくじ)」なんてわけにもいかなかっ

  たようです。

  しかしやり方によっては波風(なみかぜ)をなるべく立てずに反論したり、

  自分の意見を通していける、そういう場合もございますようで。


一八:おっ、ヨォヨォヨォッ!そこにいらっしゃるのは若旦那(わかだんな)じゃあござ

   いませんか!

   ねっ、若旦那(わかだんな)!若旦那(わかだんな)っ!!


若旦那:ん?誰かと思ったら、太鼓持(たいこも)ちの一八(いっぱち)じゃないか。

    久しぶりだな。


一八:久しぶりだなじゃありませんよォ本当に。

   何ですよォ若旦那(わかだんな)、最近とんとお見限りじゃありませんか。

   たまにはお声をかけて下さいまし。そうでしょ、ね?

   実は若旦那(わかだんな)を探してほうぼう歩いてたんですよォ。


若旦那:なんだい、私を探してたって?


一八:そうですよォ、いや実はちょいと申し上げたい事がありましてな。

   覚えてますでしょ、柳橋(やなぎばし)で会った、あのちょいと目の綺麗(きれい)な女の子

   。

   あの子がぜひ若旦那(わかだんな)に会ってね、ご飯などいただきながらしみじみ

   と胸の内(うち)なぞをね、話してみたいなんて事を申しましてね。

   その子の事、覚えてーー


若旦那:【↑の語尾に食い気味に】

    しーーっ。


一八:【制止されても気にせず】

   ね、覚えてますでしょ、あの女の子がぜひーー


若旦那:【↑の語尾に食い気味に】

    しーーーっ。


一八:【制止されても気にせず】

   若旦那(わかだんな)にーー


若旦那:【↑の語尾に食い気味に】

    しーーーっ!


一八:…どうしましたんで?

   おや、女の子が…?


若旦那:あのな、一人で歩いてんじゃないんだよ。

    ちゃんと辺(あた)りをごらん。供(とも)を連れてんだ。


一八:え、お供(とも)?

   こりゃお供(とも)さんとは気が付きませんで…おやおやおや、腰(こし)んとこに

   へばりついておりますなァははは。

   可愛(かわい)らしいお嬢(じょう)さんでござんすな、お年はおいくつで?

   え、取って十(とお)。鶏(にわとり)みたいですな。

   取って十(とお)と来ましたか。

   護衛(ごえい)付きとは知らなかった、一八(いっぱち)迂闊(うかつ)!

   それで、今日はどちらさんまで行かれてたんでございますか?


若旦那:今日かい?今日はちょいと時間が余ったんでな、これを連れて

    浅草(あさくさ)の観音(かんのん)様へ行って来たんだ。


一八:よォよォよォッ!えらいッ!

   えらいですよォ若旦那(わかだんな)ァ!

   若旦那(わかだんな)はそういう所が良いんですよォ!

   何がったって年は若いけども信心深(しんじんぶか)いというね、そういうところ

   が尊敬できるんですよォ!こんち憎いですねェ!そうですか!

   お若いのに金竜山浅草寺(きんりゅうざんせんそうじ)へお参りをされた、結構(けっこう)でございますねェ

   !


若旦那:?なんだね?


一八:ですからね、金竜山浅草寺(きんりゅうざんせんそうじ)へお参りに行って来た帰りなんでござい

   ましょ?えらいですよ若旦那(わかだんな)、信心深(しんじんぶか)い!


若旦那:いや、そうじゃないんだよ。

    私が行ったのはね、浅草(あさくさ)の観音(かんのん)様だよ。


一八:いえですから、金竜山浅草寺(きんりゅうざんせんそうじ)でしょ?


若旦那:いや、観音(かんのん)ーー


一八:【↑の語尾にうまくつなげて】

   ですから金竜山浅草寺(きんりゅうざんせんそうじ)で。


若旦那:…なんでお前は私の行き先を勝手(かって)に変えるんだい。

    ずいぶんと強情(ごうじょう)だね。怒るよ?

    なにも私が観音(かんのん)様へ行こうてのをお前が無理(むり)に浅草寺(せんそうじ)にやっちま

    うことはないだろう。


一八:いやぁなんですね若旦那(わかだんな)、いけませんよォ。若旦那(わかだんな)らしくござんせ

   んなァ。

   なんだか逆(さか)らったような形になっちゃいまして申し訳ございません

   でしたけどもね、そうじゃあないんですよォ。

   金竜山浅草寺(きんりゅうざんせんそうじ)に安置(あんち)し奉(たてまつ)る聖観世音菩薩(しょうかんぜおんぼさつ)、お寺さんには山号寺号(さんごうじごう)

   って言い方があるんですよォ。

   なになに山(ざん)なになに寺(じ)って、そういう言い方があるんですよォ。

   ですから成田山新勝寺(なりたざんしんしょうじ)とか、三縁山増上寺(さんえんざんぞうじょうじ)とか、播州山泉岳寺(ばんしゅうざんせんがくじ)、

   東叡山寛永寺(とうえいざんかんえいじ)、っていろいろありましてな。

   全部なになに山(ざん)なになに寺(じ)って言いますでしょ、それを山号寺号(さんごうじごう)って

   言うんですよォ。

   ですからね、浅草(あさくさ)の観音(かんのん)様は確かにそのままでもよろしいんです

   けども、本当の名前は金竜山浅草寺(きんりゅうざんせんそうじ)と、こういうわけなんでござい

   ますよォ。

   山号寺号(さんごうじごう)ってのはね、どこにだってあるんですよォ。


若旦那:へえ、そういうもんかい。これは驚いた。さすがは芸人だな。

    太鼓持(たいこも)ちとは付き合うもんだねえ。ちっとも知らなかった。

    これは一本参ったよ。

    じゃあその、山号寺号(さんごうじごう)ってのはどこにでもあるのかい?


一八:へへ、当たり前じゃございませんかァ!

   無いところはない、どこにだってありますよォ!


若旦那:あぁそうかい、わかったわかった。

    どこにでもあるんだね?じゃあここは下谷(したや)の黒門町(くろもんちょう)だが、

    ここに山号寺号(さんごうじごう)はあるのかい?


一八:…へへへ、何をおっしゃいます若旦那(わかだんな)。

   それァいけませんやァ。

   お寺さんは、ってそう言ったじゃございませんか。あなた話聞いて

   ました?

   お寺さんがあればそこに山号寺号(さんごうじごう)ってのがあるんでございますよ。

   。ここらは寺が無いでしょ。

   この界隈(かいわい)には黒焼(くろや)き屋しかありませんよ。

   噺家(はなしか)は二人いるなんてな事うかがってますけどねェ。


若旦那:だから私はお前さんに聞いたんだ。山号寺号(さんごうじごう)がどこにでもあるの

    かって。そしたらどこにでもあると言ったじゃないか。

    お前さんも男だ、芸人なんだ。いったん外に出した言葉に責任を

    持たなくちゃいけない。

    何か工夫(くふう)をしてごらんてんだよ。

    まあタダでは言わないよ。私のわがままだからね。

    お前さんが山号寺号(さんごうじごう)を一つ見つけるごとに、

    一円の祝儀(しゅうぎ)をやろうじゃないか。

    見つけられなきゃクビだ。

    どうだい?


一八:っちょちょ、待ってくださいよォ。

   穏やかじゃないですよ若旦那ァ。

   そういう乱暴なこと言っちゃ嫌ですよ。

   山号寺号(さんごうじごう)を一つ見つけるたんびに一円いただけるんで?

   【ポンと手を叩いて】

   よッいいね!

   結構(けっこう)ですなァ、なんてったって商売になりますからねェ!

   ちなみに山号寺号(さんごうじごう)になってれば何でもよろしいんで?


若旦那:ああかまわないよ。やってごらん。


一八:そうですか!それじゃ、えぇ~っと、山号寺号(さんごうじごう)はァ~っとォ~…

   おっ若旦那(わかだんな)!ちょいと見て下さいよ、あそこ!

   あそこでもって車夫(しゃふ)が客待(きゃくま)ちしてますでしょ。

   あれで行きましょ。


若旦那:んん?なんてんだい?


一八:車屋(くるまや)「さん」広小(ひろこう)「路(じ)」てなどうです?

   山号寺号(さんごうじごう)になってますでしょ?


若旦那:ははぁ、洒落(しゃれ)で来たか。偉(えら)いもんだねえ。

    車屋(くるまや)さん広小路(ひろこうじ)か、なるほどねえ。


一八:でしょ?

   そういうわけで一円くださいな。


若旦那:うーむ、頓智(とんち)でくるとはこれァ偉(えら)いねえ。

    さすがだなァ頭がいい。

    よし、それじゃ一円やろう。


一八:ありがとう存じます、頂戴(ちょうだい)いたします。

   懐(ふところ)へ納(おさ)めましてと…これで首は繋(つな)がりましたな。

   それで、あとは一つあるごとに一円いただけるんでしたな?


若旦那:そうは言ったけどね、そうそうあるもんじゃないだろう。


一八:へへへありますよォ。

   こうならあっしも商売、これでぐっと稼(かせ)いでね、懐(ふところ)をあっためます

   から、どんどん行きますよォ!

   えぇ~とね…おっ、向こうの方でもってあの、おかみさんですか、

   店の開店準備をしてますよ。

   雑巾(ぞうきん)でもってキレイキレイに掃除(そうじ)してますな。

   おかみ「さん」拭(ふ)き掃(そう)「除(じ)」ってなどうです?


若旦那:おかみさん拭(ふ)き掃除(そうじ)か、あるもんだねえ。

    よし、一円やろう。


一八:ありがとう存じます!

   それじゃ次は…お、若旦那(わかだんな)、あっちの方(ほう)でもって、ばあやさんが

   子守(こもり)をしていますなァ。

   おんば「さん」、子(こ)が大(だい)「事(じ)」てなもんです。


若旦那:うぅむうまいねぇ。

    おんばさん、子(こ)が大事(だいじ)か。

    それァ確かに違いないな。

    どれ、一円やろう。


一八:ありがとう存じます!

   それじゃ次々と、片(かた)っ端(ぱし)から行きましょうな。

   えぇまずあそこに見えるのは、経師屋(きょうじや)「さん」腰障(こししょう)「子(じ)」。


若旦那:ほぉ、経師屋(きょうじや)さん腰障子(こししょうじ)か。

    今じゃあんまり聞かない名称だが、まぁまぁ山号寺号(さんごうじごう)になって

    るからな。ほら、一円だ。


一八:ありがとう存じます!

   えぇと、こっちをご覧なさいな。

   床屋(とこや)「さん」耳掃(みみそう)「除(じ)」てなもんで。


若旦那:今度は床屋(とこや)かい。

    まぁまぁ、条件は満たしてるからね。

    一円やろう。


一八:へへ、ありがとう存じます!

   それじゃこちらをご覧なさい。

   魚屋「さん」ムロア「ジ」ってやつで。


若旦那:またよくあるな。

    魚屋さんムロアジとはね。

    まぁいいよ、やろう。


一八:毎度、ありがとう存じます!

   そのまたこっちをご覧なさい。

   えー酒屋「さん」味噌下(みそした)「地(じ)」。


若旦那:味噌下地(みそしたじ)って…そりゃ無理があるだろう。

    味噌醤油(みそしょうゆ)ならあるが、味噌下地(みそしたじ)って言い方はないだろ。


一八:ダメですか?


若旦那:こじつけはいけないよ。

    けど条件は満たしてるからな…しょうがない、やろう。


一八:さすが若旦那(わかだんな)!ありがとう存じます!

   そしたらこちらをご覧なさい。


若旦那:なんだい?あれはお蕎麦屋(そばや)さんじゃないか。


一八:そう蕎麦屋(そばや)!

   お蕎麦屋(そばや)「さん」卵と「じ」ってなどうです?


若旦那:お蕎麦屋(そばや)さん卵とじ?

    …まぁ、条件は合ってるからな…しょうがないな。

    ほら。


一八:へへ、こらァどうも、ありがとう存じます!

   頂戴(ちょうだい)いたします!

   そしたらまたこちらをご覧なさい。

   時計屋「さん」いま何「時」?ってなァどうです?


若旦那:ンンンなかなかひどいのが来たな。時計屋さん、いま何時か。


一八:ひどいっておっしゃったって、条件は満たしてるんですから。

   くださいよ。


若旦那:~~しょうがないなどうも。

    やらないとは言わないよ。ほら。


一八:ありがとう存じます!

   それじゃあ、時計屋「さん」いま三「時」。


若旦那:そんなのはダメだよ!

    それ通るんだったら時刻が全部いいことになるじゃないか!


一八:あぁさよで…。

   ん~じゃあこっちへ行きましょう!

   肉屋「さん」ソーセー「ジ」。


若旦那:ほぉ、そう来たか。

    しかしあるもんだな。肉屋さんソーセージか。

    よし、一円やろう。


一八:ありがとう存じます!

   そのまたあちらをご覧なさい。

   洋服屋「さん」紺(こん)サー「ジ」。


若旦那:なるほど、紺色のサージ、紺(こん)サージを上手(うま)く使ったな。

    洋服屋さん紺(こん)サージ、うん、一円やろう。


一八:へへへどうもありがとう存じます!

   頂戴(ちょうだい)いたします!

   え~と他にはァ~……あっ!ちょいと見て下さい若旦那(わかだんな)!

   あすこに病院がありますねェ。

   病院なんというのも今はどこにでもありますから、どうですかね。

   お医者「さん」、投げるさ「じ」ってのは?


若旦那:最後まで諦(あきら)めないでほしいね。

    投げる匙(さじ)ってのは良くないよ。

    ん~まぁしかし、山号寺号(さんごうじごう)にはなってるからね…。

    まぁやろう。


一八:ありがとう存じます!頂戴(ちょうだい)します!

   それじゃ、お医者「さん」いぼ「痔(じ)」。


若旦那:汚いな!

    それにまた医者をネタにしたのかい。

    一つの職業だけで祝儀(しゅうぎ)を稼(かせ)ぐのは無しだよ。


一八:ダメですか。

   じゃあ今度は綺麗(きれい)にいきましょう。

   今度はどうです、役者で行きましょう。

   高島屋(たかしまや)さん左團(さだん)「次(じ)」。


若旦那:おぉいいな、高島屋(たかしまや)さん左團次(さだんじ)か!

    褒(ほ)めてやろう。

    よしよし、ほら一円だ。


一八:ありがとう存じます!

   では同じく小團(こだん)「次(じ)」。


若旦那:そりゃダメだろ。

    さっき医者のくだりで言ったじゃないか。


一八:ですから、一円とは言いませんよォ。

   半分でよろしいですから。五十銭(ごじゅっせん)。


若旦那:そうはいかないよ!

    しかし驚いたね。私の懐(ふところ)がすっからかんだ。

    おい一八(いっぱち)、だいぶ儲(もう)かったようだな。


一八:へい、バカな儲(もう)かり温(あった)まりってねェ!

   これからちょいと一杯やりましてね、家(うち)へ帰ってお眠(ねむ)になりますよ

   ォ。いい夢を見ようってんでね!

   それじゃ若旦那(わかだんな)、ごきげんようさようなーー


若旦那:【↑の語尾に食い気味に】

    おぉいおいおいおい、愛想(あいそ)がないね。

    久しぶりで会ったんじゃないか。それに今度は私もやりたいね。


一八:若旦那(わかだんな)が?

   よッ、いいね!うかがいましょ。

   どんな具合(ぐあい)で?


若旦那:その前に、お前さんにやった銭(ぜに)をそっくりこちらへ貸してごらん

    。


一八:あ、この銭(ぜに)ですか?

   えぇあの、そちらの方へ渡すのは構わないんですけどね、

   これ今のあっしの金ですよ。

   もと俺の金なんてのは流行(はや)りませんからね。

   よくいるんですよォ、博打(ばくち)なんかで取られると、「それはもと俺の

   金だ」なんてのが。


若旦那:わかってるよ。

    いいかい、これを受け取って懐(ふところ)へ入れる。どうだい?


一八:はぁなるほどね、懐(ふところ)へ入れると。

   面白(おもしろ)くないですな。

   若旦那(わかだんな)「さん」嫌(や)な感「じ」で。


若旦那:そう言いなさんな。

    いいかい、ぐっとこう懐(ふところ)を入れてなーー


一八:【↑の語尾に食い気味に】

   懐(ふところ)さんとかなんとか?


若旦那:そんな事は言わないよ。

    こうしてぐっと私が尻(しり)っ端折(ぱしょ)りをしてな。


一八:はぁはぁ、手がかかりますな。


若旦那:こうしておいてーー、

    一目散(いちもくさん)、随徳(ずいとく)「寺(じ)」ッ!!


一八:!あぁぁ南無(なむ)「三(さん)」、仕損(しそん)「じ」。




終劇




参考にした落語口演の噺家演者様等(敬称略)


立川談志(七代目)

柳家一琴



※用語解説



・成田山新勝寺(なりたざんしんしょうじ)

千葉県成田市成田にある真言宗智山派の仏教寺院。


・三縁山増上寺(さんえんざんぞうじょうじ)

東京都港区にある浄土宗の七大本山の一つ。


・東叡山寛永寺(とうえいざんかんえいじ)

東京都台東区上野桜木一丁目にある天台宗関東総本山の寺院。


・下谷(したや)の黒門町(くろもんちょう)

東京都台東区にあった地名。

旧下谷区の旧町名、現在の上野1 - 3丁目の一部。

寛永寺総門の通称(黒門)にちなむ。

噺家が二人住んでた、は一人は八代目桂文楽師匠だが、もう一人は不明。

家元、誰なんです?


・一円

明治の頃だと、単純に3800倍だそうなので、令和の今だと

3800円ほどだそうで。


・車夫(しゃふ)

人力車の引手。


・経師屋(きょうじや)

掛け軸、襖、屏風などを仕立てる職人のことで、現在では壁紙を貼る内装

業者も指す。


・ムロアジ

アジ科の海水魚で、マアジよりも細長い円筒形をしており、体側には

赤褐色の縦帯がある。

伊豆諸島で獲れる「クサヤモロ」はくさやの原料で有名。

新鮮な状態では刺身としても美味しいが身が柔らかくなりやすい為、

産地以外では干物や加工品として流通することが多い。


・下地(したじ)

お下地。醤油の事。


・紺(こん)サージ

紺色のサージ。制服などに用いられる服地。


・高島屋左團次(たかしまやさだんじ)

市川左團次。

高島屋は歌舞伎の屋号。





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