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第7話 お仕置き

シュオの放った光はマッシュを避け練習場の壁に激突する。

防御魔術が施されていたはずの頑丈な壁が、まるで紙細工のように爆砕し、巨大な穴が穿たれる。

衝撃波が練習場全体を襲い、立っているのがやっとの状態だ。

壁の破片が雨のように降り注ぎ、爆心地の周辺は黒焦げになり、深いクレーターのような跡が残っていた。


そのあまりの威力に、逃げかけていた生徒たちも、防御魔法を展開していたカイルとリーザも、ただただ息を呑み、動くことができなくなっていた。

マッシュが放った第三位魔法など、まるで子供の火遊びに思えるほどの、桁違いの破壊力。

標的となったマッシュは、頭上を掠めた雷撃の恐怖と、爆発の衝撃波によって、完全に意識を失い、その場にぐったりと倒れ伏していた。

泡を吹いて気絶しているその姿は、哀れとしか言いようがない。


「……チッ。今の体の状態じゃ、この程度の魔法しか使えないか。」


シュオは破壊された壁と気絶したマッシュを一瞥すると、小さく舌打ちをした。

その表情には不満の色が浮かんでいる。まるで、今の結果は全く満足のいくものではなかった、とでも言うように。

転生する前の自分だったらもっとすごい魔法を使えたし、確実に相手に魔法を当てる事が出来た。

人間の体故に魔法に耐えられずに制御ができなかったのだろう。


その時、けたたましい足音と共に、数人の教師が魔術練習場に駆け込んできた。

おそらく先ほどの轟音を聞きつけたか、あるいは逃げ出した生徒が知らせに行ったのだろう。

教師たちは、練習場の惨状、特に爆砕された壁を見て、驚愕に目を見開いた。


「な、なんだこれは!? 壁が…防御魔術が破られているだと!?」


教師の一人が、信じられないという顔で叫ぶ。

だが、シュオは駆け込んできた教師たちには一瞥もくれなかった。

彼は、呆然と立ち尽くしているカイルとリーザの元へと歩み寄ると、その両手を優しく取った。


「おい、二人とも、帰るぞ。…しかし、困ったな。服がこんなにボロボロになっちまった。アーニャに怒られないといいけどな。」


シュオは今の状況よりも破れた制服で家に帰った時にメイドに叱られる事への恐怖に苦笑した。

その声と表情は、先ほどまでの冷徹な雰囲気とは打って変わり、どこか困ったような、いつもの(ように見える)シュオのそれに近くなっていた。


「え…あ…うん…。」

「シュオ君…。」


カイルとリーザはまだ何が起こったのか完全には理解できていない様子だったが、シュオに手を引かれるまま、おぼつかない足取りで歩き出した。


「こら、待ちなさい! 君たち!」


それまで呆然としていた教師の一人が、慌ててシュオたちを呼び止めた。


「この惨状は、一体どういうことかね!? 君たちがやったのかね!?」


シュオは、振り返りもせずに、肩越しに言い放った。


「さあな。詳しいことは、あそこで伸びてる第一貴族様の御曹司にでも聞いてくれ。」


それだけ言うと、シュオはカイルとリーザを連れてさっさと魔術練習場を出て行ってしまった。

残された教師たちは、唖然としてその背中を見送るしかなかった。

練習場を出て、廊下を歩きながら、シュオは隣を歩くカイルに向かって尋ねた。


「なあ、カイル。悪いんだが、シャツの予備とか持ってないか? さすがにこの格好で屋敷に帰るのはまずい。」


その問いかける顔は、先ほどの超常的な力を見せた存在とは到底思えないほど、ごく普通の、少し困った顔をした少年のものだった。


「あ、ああ…教室に、置きっぱなしのがあるはずだけど…。」


カイルは、まだ混乱しながらも答えた。


「助かる。じゃあ、一旦教室に戻ろう。」


シュオはそう言って、教室へと向かう。

カイルとリーザは、黙ってシュオの後をついていった。

聞きたいことは山ほどあった。


さっきのシュオは一体何だったのか。

なぜあんな力を持っているのか。

なぜ属性の違う魔法を使えたのか。


しかし、二人は、今は何も聞かない方がいいような気がしていた。ただ、目の前にいる、少し困ったように笑う友人の隣を歩くことだけを選んだ。


シュオは歩きながら今後の事を考えていた。

この体はやはり不便だ。

何かあった時にこの体で戦うのは不便すぎる。

面倒だが鍛え直さなきゃいけないか。

しかも覚醒しているという属性以外の魔法を使用すると体にかなりの負担がかかるらしい。

まったく人間の体と言うのは...


シュオは早くなんとかして第三世界に戻りたいと強く思ったのだった。

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