表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
〜Doragoon Life〜 最強種族の王子、転生して学園生活を謳歌する  作者: かみやまあおい
第3部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

76/89

第65話 シュオ対ラムジュ

天使マルキエルとマリアの前で同じ顔の2人が睨み合って対峙している。

シュオとラムジュ、この2人が戦う事があろうとは誰が想像したか。

1年前は2人で1人だったと言ってもいい存在同士の戦い。

だが片方は天使の力によって前よりも強くなり、逆にもう片方は竜の力を失い弱くなっている。

誰が聞いても勝つのはシュオだと予想するだろう。

しかしラムジュは必死に足掻いていた。

シュオの高速の剣捌きをギリギリで避け、攻撃をなんとか当てようとしている。だが普通の人間と同じレベルになってしまったラムジュの攻撃はことごとくかわされる。

感情をまったく出さないシュオにはラムジュの挑発も通用しない。

ジリジリとラムジュは追い詰められていく。

いつの間にか後ろは壁、部屋の隅へと追い詰められていた。


(どうする......このままじゃあの作戦もおじゃんだ......)


なんとかこの現状を打破すべく思考を巡らせようとするラムジュ。

しかしそんな暇をあたえる事もなくシュオの斬撃が繰り広げられていく。

だがラムジュもただやり合っていた訳ではない。

少しずつシュオの攻撃パターンが分かってきた。

感情を無くした戦闘兵器キリングマシンとなったシュオの攻撃は確実に急所を突こうとしてくる。

スピードで上回らなくても攻撃パターンさえ分かってしまえば致命傷を受ける事はない。

この辺りは力を失っていても幾多の戦闘を繰り広げてきたラムジュの経験の賜物だろう。


「何をしているのです! 早くそいつを殺してしまいなさい!」


さすがにじれたのかマルキエルが声を張り上げる。

それに反応したのかシュオがスピードを上げる。

剣先がラムジュの急所を突くように振られるが、それをラムジュは剣で防ぐ。


そして一瞬の隙ができた。

ガードが空いた腹を目掛けラムジュが強烈な蹴りを繰り出す。

蹴られたシュオは初めて地面に転がった。

そこにラムジュが詰める。

剣を投げて転がるシュオの上に飛び乗ると、両手を抑え思い切り頭突きをかました。

シュオの額が割れ血が流れる。


「てめえ! 人間のくせして天使の手先になってるんじゃねえよ!」


当然ラムジュも流血したが、構わずに何度も何度も頭突きを繰り返す。

2人の顔が血に染まる。

しかし息を切らすラムジュとは対照的に表情一つ変わらないシュオ。


ラムジュの勢いが弱った瞬間、シュオは抑えられていた右腕を振り解き短剣をラムジュの脇腹に刺した。

痛みで表情を歪めるラムジュ。

しかしラムジュはこれも想定通りだったのか、刺された短剣を自分の体から抜けないように左手で押さえ込んだ。

シュオが力をこめて抜こうとするもそれをラムジュはさせない。

左手にラムジュの意識が集中したせいか今度は右手が振り解かれる。そしてラムジュの胸にシュオのもう片方の短剣が刺さった。

口から吐血するラムジュ。

さすがにこれは致命傷に近かった。

だがラムジュにとってはこれも想定内だった。

胸に刺さった短剣を持ったシュオの右腕を掴むと力を込めて右膝で腕の肘を蹴り上げた。

シュオの左腕が膝からあらぬ方向に折れ曲がる。

痛みを感じないと言ってもその状況で力の入らなくなった左腕は短剣を手放す。

ラムジュは、胸に突き刺さる短剣を抜くとシュオ目掛けて振り下ろした。

短剣は確実にシュオの心臓を貫いた。

それと同時にシュオの全身がビクビクと跳ね上がる。


「今だ!」


そう叫んだラムジュは短剣を抜き、自分の心臓を突き刺した。

そして剣を抜きもう一度突き刺す。

最後に剣を抜くと自分の首を剣で切り裂いた。

ラムジュの体は動かなくなってシュオの上から転げ落ちる。

シュオの体もほぼ動かなくなっている。


「バカな......自殺をして何になると言うのですか......」


目の前の惨劇にさすがのマルキエルも驚きを隠せなかった。

どうにかして逃げようとするのではなく、まさか自殺をしようなどとあの竜人族が考えるはずがないと思っていた。

だがこれで自分の目的は済んだ。

竜人族の魂は無事天獄に封印されたであろう。


「マルキエル、これであなたの目的は達成されたわよね。シュオ様の体は返してもらうわよ。」

「......いいでしょう。これで竜人族も死にました。もうその戦闘兵器も死んだはずです。持って帰って弔ってあげなさい。ついでにその竜人族の器も処分してください。」

「私にそんな2人も運べる訳ないじゃない。その体はあなたが好きにするなり信者に片づけさせるなりして。」


そう言うとマリアは動かなくなったシュオの体をどうにかして背負うとゆっくりと部屋を出ていく。


「ああ...これでようやく私の罪も晴らされた。無事に第三世界に戻れます。」


マルキエルの体の周りに光が集まる。

光はその輝きが最高に達した時に空へと上がっていった。

残されたのはマルキエルの器となっていたエリアスの体とラムジュだった死体のみだった。


―――――――――


「ちょっと、いい加減に起きてよ。」


神殿から出てしばらく経ったところでマリアはシュオの体を下ろす。

そして心の中でごめんなさいと謝りながらシュオの顔を何発か叩く。


「...お前いい加減にしろよ。こっちだってまだ動きづらい状態なんだから。」


なんと死んだはずのシュオの目が開き、話し始めた。


「元に戻れたんだからいいでしょ。それにあのマルキエルも騙す事ができたんだし。」

「ああ、まさかあいつが引っかかってくれるとは思わなかったぜ...」

「とりあえず起き上がれるぐらいにはあなたなら回復できるんでしょ?」

「そりゃまあな。」


シュオ?は風の魔術を唱え出すと癒しの風で自分の体を包み込む。

魔法のおかげでなんとか動けるようにはなった。


「これも私の作戦のおかげなんだから感謝してよね。」

「作戦ってちょっとでも失敗したら本当に俺もシュオも死んでたんだぞ!」

「でも成功したんだからいいでしょ。結果オーライよ。」

「まったく恐ろしい女だよな、お前......」


――――――――


数十分前。


「いい、ラムジュ。マルキエルにあったらあなたは私に騙されたフリをして逃げなさい。」

「は? 何でそんな事を?」


突然言われた言葉にラムジュは意義を唱える。


「そうすればきっと操られたシュオ様が出てくるはずよ。今のシュオ様は操り人形なんだから。」

「なんだよ。出てきたところを逆に捕まえるのか?」

「今のあなたでそんな事できる訳ないでしょ。シュオ様が出てきたら戦うのよ。」

「は? それこそ今の俺で勝てる訳ないだろ。」

「勝たなくていいのよ。なんとかしてシュオ様を戦闘不能に追い込むのよ。」


この女は何を言ってるんだ? さすがのラムジュにもその真意が読めない。


「ほう、勝てないのに戦闘不能に追い込めと。不思議な事を言う女だぜ。それでどうするんだよ。」

「そうしたらあなたも死になさい。」

「はぁ!? お前言ってる意味分かってるのか!? 俺とシュオに共に死ねって言うのか!?」


突然お前も死ねと言われて驚かない人間はいないだろう。ましてや訳もわからずに言われても頭が混乱する。


「違うわよ。あなたが死ねば魂はその体から解放されるでしょ。そうしたらもう一度シュオ様の体に戻るのよ。」

「お、おう......そんな事できるのか?」

「やってみなくちゃわからないけど...きっとできると信じてる。もし戻れたらバレないようにシュオ様の体を治療し続けるのよ。死ぬか生きるか程度で。」


なるほど。

確かに今の魂はこの体に縛り付けられたままだが死んでしまえば解放される。


「難しい注文が多いな...まあやってみるさ。ただ成功の確率は低いぞ。相手はマルキエルに操られているシュオだ。今の俺じゃ相手にならないかもしれない。」

「そこはうまくできるよう祈っててあげる。さあ、マルキエルの所に行きましょう。」


――――――――


そして今に戻る。


「まあなんとかこの体に戻れたし、力も取り戻した。」


腕の袖を捲るとそこにはしっかりと竜の痣が残っていた。


「それでシュオ様はどうなの?」

「あいつの心はこの中にいる。今は術で封じられちまってるから俺の力でなんとか解くさ。」

「よかった......」


ほっとしたのかマリアはその場に座り込んでしまう。


「しかしお前よくあんなすごい作戦考えついたな。あの天使を騙すとは。剣士よりも軍師の方が向いてるぞ。」

「ありがと。ちょっとその道も考えてみるわ。」


ラムジュはマリアの手を取ると立ち上がらせる。


「とりあえず学園の連中に挨拶に行かなきゃな。あとはセーレンの家にも行かないとな。」

「ちょ、ちょっと待って! そんな事したらみんな驚いてひっくり返っちゃうわよ!」


ワハハと笑いながら歩き出すラムジュをマリアは焦って追いかけたのだった。

Xは以下のアカウントでやっています。

フォローお願いします。

@aoi_kamiya0417


感想もお待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ