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〜Doragoon Life〜 最強種族の王子、転生して学園生活を謳歌する  作者: かみやまあおい
第3部

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第61話 天使の実力

一方、ベロニア王国の首都より北東に、およそ6キロメートルほど離れた、活火山が連なるアルドラ地域の、とある洞窟。

そこに、もう一つの、そしてより強力な魔力を放つ魔法陣が存在していた。

その魔力はあまりにも強大で、洞窟の入り口から外にまで溢れ出ており、その邪悪な力の影響によって、洞窟の周囲に生い茂る木々は、まるで生命力を吸い取られたかのように、ことごとく枯れ果て、不気味な姿を晒していた。

その、死と絶望に包まれたかのような洞窟の前に、一人の男の姿が、まるで陽炎のように、ふわりと現れた。天使マルキエル、その人であった。


「ふむ、確かに、ここは先程の森とは比較にならぬほど、禍々しく、そして強大な魔力が渦巻いている。ここに、あのラムジュを殺めたというアスタロトとやらがいるのは、まず間違いなさそうですな。」


マルキエルは、満足げに頷くと、腰につけていた白銀の長剣を、静かに、しかし確かな手応えと共に抜き放った。

その剣は、まるで太陽光を凝縮したかのように、眩いばかりの神々しい輝きを放っている。これは、剣そのものが持つ力というよりも、剣に纏わせたマルキエルの、純粋で強大な聖なる魔力によるものだろう。


「さて、では、存分に楽しませてもらうとしましょうか。我が好敵手の仇討ち、そして、この世界の浄化の始まりです。」


マルキエルは、その美しい顔に、どこか冷酷な、そして愉悦に満ちた笑みを浮かべながら、躊躇うことなく、その不気味な洞窟の中へと、静かに足を踏み入れていった。


洞窟の内部は、それほど長く、そして入り組んではいなかった。中に入ってすぐの場所に、奥へと続く一本道があり、その道の先には、禍々しい紫色の光を放つ、巨大な魔法陣がはっきりと見えた。

そして、その魔法陣の周囲には、まるでそれを守護するかのように、おびただしい数の魔獣の群れが、殺気立った様子で蠢いていた。


「ほう、これほどの数の雑魚どもが、この私の足を止められるとでも、本気で思っているのですかね。愚かな。」


マルキエルの姿が、一瞬、まるで霞のように掻き消える。と、次の瞬間には、魔法陣の周囲にいた魔獣たちの首が、まるで熟れた果実が枝から落ちるかのように、次々と、そしてあっけなく宙を舞い、地面へと転がり落ちていく。

人間の体を借りていながら、この圧倒的なまでの強さ。もし、彼が本来の天使の姿であったならば、一体どれほどの力を振るうというのだろうか。想像するだに恐ろしい。


さらに奥へと進むと、そこには、先程よりもさらに巨大で、そして禍々しい光を放つ魔法陣が、まるで生きているかのように脈打っていた。


「ふむ、これは確かに、自然に発生するような代物ではないですな。どこぞの愚かな人間が、自らの欲望のために、禁断の魔族と契約でも結んだのでしょうか。嘆かわしい限りです。」


マルキエルは、忌々しげにそう呟くと、その手に持つ聖剣を、魔法陣の中心へと深々と突き刺し、厳かな声で浄化の呪文を唱え始めた。それにより、魔法陣の放つ不吉な光が、徐々に、そして確実にその勢いを弱めていく。


その時だった。封印されかかっていた魔法陣の中から、突如として一体のおぞましい姿をした魔族が、咆哮と共に飛び出してきた。その魔族は、巨大な漆黒の翼を持ち、その身には四本の剛腕を備えている。まさに、アイスから事前に聞いていた、アスタロトの特徴と完全に一致していた。おそらく、こいつが、ラムジュを殺めた張本人なのだろう。


「貴様、何者だ? この俺様の、神聖なる魔法陣を、たかが人間ごときが封印できるわけがないだろうが!」


アスタロトは、マルキエルを睨みつけ、威嚇するように低い声で唸る。

魔法陣とは、そこから呼び出される悪魔や魔族の強さに比例して、その封印を解く、あるいは再び封じるために必要な力も、大きく変わってくる。つまり、呼び出された存在が強ければ強いほど、その魔法陣を制御するためには、より強大な力が必要となるのだ。


「私ですか? 私は、見ての通り、しがない人間ではありませんよ。まあ、今は少々訳あって、この脆弱な人間の体をお借りしてはいますがね。」


マルキエルは、アスタロトの威嚇にも全く動じることなく、余裕の笑みを浮かべて答えた。

その言葉に、アスタロトはハッとしたように目を見開いた。


「その口ぶり…その尋常ならざる気配…さては、お前、この第四世界の住人ではないな!? 別の世界から来た者か!」

「おやおや、ご名答です。魔族の中にも、多少は知能のある個体がいるようですね。私は、第三世界の秩序と平和を守護する、天空騎士団長マルキエル。あなたたち、この世界の調和を乱す忌まわしき魔族を、一匹残らず滅ぼすために、わざわざこの世界までやって参りました。」

「第三世界…天空騎士団長…だと!? と、言うことは、貴様、まさか、天使かっ!」


アスタロトの声に、初めて焦りの色が浮かぶ。


「ふふ、どうやら、ようやくご理解いただけたようですね。その通り、私は天使。そして、あなたには、ここで消えてもらいます。」


マルキエルは、地面に突き刺していた聖剣を静かに引き抜くと、その切っ先を真っ直ぐにアスタロトへと向け、優雅に構えた。


「笑わせるな!  たとえ天使であろうとも、この俺様、十三魔族の長の一人である、このアスタロトに勝てるなどと思うなよ!」


アスタロトもまた、その四本の腕に、それぞれ異なる形状の禍々しい剣を握りしめ、戦闘態勢を取る。その全身からは、おぞましいほどの殺気が放たれている。


「魔族の長? それが、一体どうしたと言うのですか。所詮は、第五世界の、取るに足らない下等な存在が、あまり調子に乗らないでいただきたいものですな。」


マルキエルが、まるで戯れのように、その聖剣を横薙ぎに振るった。次の瞬間、アスタロトの四本あった腕のうちの二本が、まるで鋭利な刃物でバターでも切るかのように、いとも簡単に切り落とされた。


「な、なんだと!  い、今、何が起きた…!?」


アスタロトには、何が起きたのか、全く理解することができなかった。あまりにも速すぎる、神速の剣技。


「さあ、遠慮なさらず。どんどん参りましょうか。私を楽しませてくださいな。」


再び、マルキエルが聖剣を振るう。今度は、アスタロトの残りの二本の腕もまた、一瞬にして切り落とされてしまった。


「馬鹿な! こいつの剣筋が、全く、全く見えないだと…! ありえない!」

「当たり前です。私のこの、光の速さで振るわれる聖剣の軌跡が、貴様のような、第五世界の、薄汚い下等生物の濁った目に見えるわけがないでしょう。」


アスタロトの心の中に、生まれて初めて、恐怖という感情が、冷たい水のように染み渡ってくるのを感じた。魔族とて、絶対的な力の差を前にすれば、恐怖を感じるのだ。


「ま、待ってくれ! 頼む、命だけは助けてくれ! な、何が望みだ!? 金か? 地位か? 女か? お前の望むものなら、何でも従おうではないか!」

アスタロトは、完全に戦意を喪失し、地面に這いつくばって必死に命乞いを始めた。

そのあまりにも見苦しい姿に、マルキエルは、その美しい顔に、冷酷な、そして侮蔑に満ちた笑みを浮かべる。


「ほう、私の望み、ですか。そうですねえ…私の望みは、ただ一つ。我が好敵手であった、あの誇り高き竜神族の王子ラムジュを、卑怯な手で殺めたという、お前のその汚らわしい命、ただそれだけですよ。」

「りゅ、竜神族だと!? そ、そんなものは、俺は倒した覚えなど…ぐふっ…!」


アスタロトが、最後までその言い訳の言葉を発する前に、マルキエルの振るった聖剣の一閃が、その首を正確に、そして容赦なく切り落としていた。


「…ふん、他愛もない、実に詰まらぬ下等生物でしたね。本当に、こんな取るに足りない輩に、あのラムジュが遅れを取ったとでもいうのですか。信じ難い話ですな。」


圧倒的な、そして絶対的な力。もし、この凄惨な戦いの光景を目の当たりにしていた者がいたとしたら、その者は、マルキエルのその人間離れした強さと、そしてその冷酷さに、ただただ恐怖し、身を震わせていたことだろう。それほどまでに、マルキエルは、その恐るべき力の一端を見せつけたのだ。


目的を達成したマルキエルは、何事もなかったかのように、再び聖なる魔法を唱え始める。

すると、目の前にあった、あれほどまでに強大な魔力を放っていた禍々しい魔法陣が、まるで陽光に晒された朝霧のように、瞬く間にその輝きを失い、跡形もなく消え去っていった。

残されたアスタロトの無残な死体は、マルキエルが放った浄化の炎の魔法によって、灰すら残さず、完全に焼き尽くされてしまった。


「さて、これで、忌まわしき魔族は始末できましたね。目的の一つは、これで達成です。あとは、あのラムジュの、未だこの世を彷徨っているであろう魂を、完全に封印することのみ。しかし、一体、彼の魂は、今どこに存在しているのでしょうか…? まあ、それも、いずれ分かることでしょう。」


洞窟を出ると、マルキエルは、まるで邪魔なものを払いのけるかのように、その聖剣を一振りし、洞窟の入り口を巨大な岩で完全に破壊し、封鎖してしまった。

そして、次の瞬間には、その神々しい姿は、まるで最初からそこには誰もいなかったかのように、その場から忽然と消え去っていた。後に残されたのは、不気味な静寂と、そして微かに漂う硫黄の匂いだけだった。

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