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〜Doragoon Life〜 最強種族の王子、転生して学園生活を謳歌する  作者: かみやまあおい
第3部

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第53話  惨劇の爪痕

ラムジュが魔族アスタロトに倒されたという悲劇が起きて一年が過ぎようとしていた。

季節は巡り、また暑い夏が近づいている。

ラムジュを倒し、シュオの命を奪った魔族アスタロトは、あの後、すぐに忽然と姿を消した。

自身の復活とラムジュへの復讐に満足したのか、ラムジュが動かなくなった後どこかへと飛んで行ったのである。

王国騎士団や冒険者たちが血眼になって行方を捜索しているが、新たな発見報告はなく、不気味な沈黙が続いていた。

その沈黙は、次なる災厄の予兆なのかもしれないと、人々は言い知れぬ不安を抱えていた。


一年が過ぎて学院も変化をしていた。

3年生だったマティ達は卒業し、シュオ達の学年は最上級の3年生になった。

学院ではリーザが生徒会長に、カイルが副会長に就任し、2年生の3人もそれぞれ役職に就いた。

新入生も数人加わって生徒会は賑わいを見せていた。

しかし、カイルとリーザの心には深い傷が残ったままとなっていた。


一年前のシュオ・セーレンの死


シュオの不在は、彼らの日常にぽっかりと穴を開けたままだった。


――――――――


あの日、生徒会で活動を行っていたリーザ達は突然放送によって教師に呼び出される。

向かった来賓室には教師が何人かとボロボロの姿になったアイスの姿があった。

そこでリーザ達はアイスからシュオ・セーレンの死を伝えられた。


アイスの言葉を聞いた面々の様子は様々だった。

カイルはそれが信じられず、リーザは言葉を失い、ただ涙を流すことしかできなかった。

アイスの苦渋に満ちた表情が、それが紛れもない現実であることを物語っていた。

マリア・ガナッシュはアイスに駆け寄り、アイスの胸ぐらを掴んで問い詰めた。

しかし、アイスの何も言えない表情を見て、彼女もまた愕然とし、その場に崩れ落ちて泣き続けた。その嗚咽は、聞く者の胸を締め付けた。


セーレン家にも悲報は届き、父アルギリドは愛息の死に泣き崩れ、兄たちは深い悲しみと怒りを露わにした。

シュオ付きのメイドだったアーニャは、知らせを聞いた瞬間、糸が切れた人形のように崩れ落ち、声を殺して泣き続けた。

護衛のエシュもまた、守るべき主を失った無力感に天を仰いだ。


シュオの死後、彼の遺体は英雄として法王庁にて特別な儀礼によって荼毘に付した。

そのため、セーレン家ではまともな葬儀も執り行えなかった。


シュオの死に心を痛めたアーニャは、長年仕えたセーレン家のメイドを辞め、かつて自分が育った貧民街へと一人静かに戻っていった。彼女はシュオに仕え続ける事を望みにしており、シュオがいなくなったセーレン家に未練はなくなっていた。シュオとの思い出だけを胸にアーニャは去っていった。


エシュもまた、自責の念からセーレン家を下野し、あてのない冒険者として旅に出た。

シュオをもっと鍛えておくことができれば、エシュの思いは「デルガライト事件」の時以来の喪失感を感じていた。

彼女の背負う大剣は、以前にも増して重く感じられた。


そして、アイスは民間人であるシュオを危険な場に立ち入らせ、死なせてしまった責任を取り、自ら騎士団を脱退した。彼の胸中には、計り知れない後悔があっただろう。

その後、彼はどこからも姿を消した。


カイルやリーザもまた、シュオを失った悲しみから一時期は塞ぎ込んだが、生徒会という最後の砦が、辛うじて二人を支えていた。

彼らはシュオの遺志を継ぐかのように、より一層活動に力を注ぐようになった。


しかし、その中でも、最も大きな心の傷を負ったのはマリア・ガナッシュだった。

シュオを心から敬愛し、心の拠り所としていた彼女にとって、そのシュオがいなくなったという事実は、あまりにも受け入れ難く、彼女の繊細な心を粉々に砕いてしまった。

マリアは自室に引き篭もり、誰とも会わず、食事もろくに取らず、ただ虚空を見つめるだけの日々を送った。

リーザだけが時折様子を見に来るが、かつての学院の女王の面影はなく、まるで生ける屍のようだった。

彼女の時間は、あの日から止まってしまったかのようだった。

彼女はあれから1年部屋を出ず、絶望的な気持ちを持ちながら、ただシュオの帰りを待っていた。


そんな絶望的な状況の中にも、唯一の光明はあった。

対魔族用特殊武器『フランベルジュ』が、ついに完成したのである。

シュオが生前に使った剣のデータを元に、キュアを中心とする研究チームが総力を挙げて開発した、対魔族戦における切り札だった。完成したフランベルジュは直ちに騎士団への支給が開始され、剣以外の武器開発も進められた。

これは、日に日に増す魔族の脅威に対し、人類が有効に対抗するための新たな希望となりつつあった。

何度か魔獣が出現はしたが、フランベルジュを使用した騎士団は今までとは違い魔獣に戦闘で勝利するようになっていた。


また、王国では、なぜ急に魔族がこの第四世界に現れるようになったのかについて、本格的な調査を開始した。

学院も協力した日々の研究で様々な探索魔法が改良され、国内の各地で、魔獣を召喚したと思われる未知の魔法陣がいくつも発見された。

何者かが、意図的にこの世界を混乱に陥れるため、あるいは破壊するために、第五世界の住人である魔族を召喚しているのではないか、という恐るべき可能性までは掴むことができた。だが、それが一体誰の仕業であり、その真の目的が何なのかまでは、未だ厚い謎のヴェールに包まれたままだった。


この一年という短い期間で、人も、国も、そして世界の状況も、大きく動き出していた。シュオの死という大きな悲劇を乗り越え、残された者たちは、それぞれが悲しみを胸に抱きながらも、新たな道を、新たな希望を求めて、懸命に前を向いて歩み始めようとしていた。


そして再び時計の針は動き出そうとしている.........

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