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第4話 学院生活

カイル達と話をしていると教師が教室に入ってきた。

今まで騒いでいた生徒達が黙る。


こいつらよほど真面目なのか。

それともこの教師が相当怖いのか。


教師はシュオの顔を見ると驚いた顔をした。


「セーレン君、無事に登校できるようになったのですね。」

「ん? ああ、おかげさまでもう元気だよ。まったくたかが雷魔法で3日も意識を失うなんてのがおかしな話なんだよ。」


その話し方にカイルとリーザが驚いて両側からシュオを見る。

それを見て自分が何か悪い事を言ったかとシュオは考える。


「ま、まあ...いいでしょう。以前よりも元気になったみたいですし。では授業を開始します。」


教師は顔を引きつらせながらも授業を開始した。

授業は魔力の論理と言うよく意味の分からない授業だったが、話としてはシュオにとっては簡単なものだった。小さい頃からできるような事をなんでこいつらは勉強してるんだ?とさえ思った。


授業の話に飽きたシュオはなぜ今自分がここにいるのかを考える。

マルキエルに殺される瞬間、あの時俺の魂が転生する何かがあったのか。

だが誰も魔法を唱えていた形跡はない。

ならマルキエル自身が俺の魂を転生させた?

いや、そんな事はないはずだ。

あいつなら確実に俺を仕留めて俺の魂を天獄に封印したかったはずだ。

天使ってのはそういうものだ。

そうすると、今回の転生は完全にイレギュラーか...


「...シュオ! シュオ!」


気づくと横からカイルが自分の事を小声で呼んでいた。


「どうした?」

「先生が呼んでるよ!」


気づくと教師が怒りの顔で自分の事を見ている。

なんだ? 自分が何かしたのか?


「シュオ・セーレン! 早く前に出てきなさい!」


教師が怒りの表情で自分を呼ぶ。なんだ一体?と不思議に思いながらシュオは教室の前に歩いていく。


「シュオ・セーレン、今の授業の内容を実践してみてください。」

「授業の内容...? すまん、まったく聞いてなかった。もう1度教えてくれるか?」


ここで教師の怒りはピークに達した。


「シュオ・セーレン! その態度だけでも許せないが授業の内容もまったく聞いていなかったとはどういう事ですか!?」

「いやだから悪かったと謝ってるじゃないか。それで何をすればいいんだ?」

「君はまったく反省してないようだな!」


そのやり取りに他のクラスメイトはクスクス笑い出すがカイルとリーザだけはハラハラしながらシュオを見ていた。


「...分かりました。もう1度だけ言います。あそこの壁に的を作ってあります。あれに対してあなたの魔法を当ててみてください。」

「なんだ、そんな事か。最初から言ってくれればいいのにな。あんたも人が悪いな。」


もうクラスメイトは我慢できずに大笑いになった。教師のこめかみに青筋が浮かんでいるのが分かる。


「いいから早くしなさい! あなたとおしゃべりをしている時間はないのです!」

「分かったよ、ちょっと待てって。」


シュオは右手を壁に向けてかざすと手の平の前に炎の弾を作る。

ここでクラスメイト達の表情が変わる。

シュオ・セーレンの覚醒した魔術属性は確か『水』だったはずだ。

それなのに目の前のシュオは炎の魔法を扱っている。


「リーザ...シュオって炎の属性も覚醒したのか...?」

「知らないよ...私も聞いた事ない...」


シュオは炎の弾を作り終えると壁目掛けて放った。

凄まじい勢いで飛んだ炎の弾は的どころか壁すらも破壊した。

教室中に壁の粉塵が舞う。


「先生、これでいいか?」


シュオが振り向いて教師の顔を見る。

教師の顔は完全に固まっていた。


「......き、きみの魔力はすごいものですね......」

「どうも。でもこれじゃ産まれてからのものなんでそんな大した事ないぞ。」

「そ、そうですか......壁は私が修理するから君は席に戻っていいですよ...」


何をこの教師は震えているんだ?

ひょっとして俺が壁を壊した事を怒っているのか?

それとも俺の魔力が小さかったのか?


いくつもの疑問を浮かべながらシュオは自分の席に戻る。


「おい、シュオ! いつの間に炎の属性なんて覚醒してたんだよ!」


席に着くと横からカイルが小さな声で聴いてくる。


「覚醒? よく分からないが小さい頃からあんなもの使える。」

「嘘でしょ? シュオの魔術って『水』だったじゃない!」


リーザも小さな声でシュオに言ってくる。


なるほど、シュオ・セーレンが使える魔法は水だけだったのか。

それにしても人間と言うのは1つの属性の魔法しか使えないのか。実に不便なものだ。

そんな状況で戦闘になった時にどうしようというんんだ。


シュオが考える間に教師が壁を魔法で直した。


「そ、それでは授業の続きを行います......」


何事もなかったかのように教師が授業を再開した。

シュオは相変わらず授業を聞かず、先ほどまで考えていた謎について考察を再開していた。


――――――――


昼休み。

授業が終わりクラスメイト達が席を立って教室の外に出たり仲間同士で話をしたりする。


「シュオ、昼飯に行こうぜ。」


横からカイルが声をかけてきた。


「昼飯か。確かに腹は減ったな。この世界の料理はうまいし早く食べに行こう。」


そうシュオが言った時だった。

教室の入口が騒がしくなった。大きな笑い声と共に、三人の男子生徒が、肩で風を切るように入ってきた。

制服は着ているものの着こなしはだらしなく、その態度は学院の生徒というより、街のチンピラに近い雰囲気だ。

その三人が教室に入ってきた途端、それまでわずかに残っていた話し声も完全に消え、教室全体が息を詰めたような緊張感に包まれた。

他の生徒たちは、彼らと目を合わせないように俯いている。


シュオはその三人の中心にいる少年を観察した。

黒髪で、体格はシュオより少し小柄だが、目つきが悪く、口元には常に嘲るような笑みを浮かべている。

取り巻きらしき二人を従え、明らかに自分が教室の支配者であるかのように振る舞っている。

その黒髪の少年は、教室を見渡し、窓際のシュオの姿を認めると、ニヤリと歪んだ笑みを浮かべ、まっすぐこちらに近寄ってきた。

取り巻きの二人も、その後ろに続く。

少年はシュオ達の席の横で足を止めると、見下すような視線で話しかけてきた。


「よぉ、シュオ。ようやくお目覚めかよ。3日も寝てたんだってな?」


少年はわざとらしく吹き出しながら言った。その声には、あからさまな侮蔑が含まれている。

シュオはその言葉に内心でイラつきを覚えたが、今は騒ぎを起こす時ではないと判断し、黙って相手を見据えた。


「おいおい、なんだよその目は? あの程度の魔法で三日も気絶するとは、さすがはセーレン家の落ちこぼれ様だな。全く、貴族の面汚しだぜ。」


少年はさらに嘲るように言葉を続けた。

教室の他の生徒たちは、黙ってその様子を見ているだけだ。

誰もシュオを助けようとはしない。いや、できないのだろう。この少年には、逆らえない何かがあるようだ。

しかしそんな中、隣に座っていたカイルが、震える声で反論した。


「や、やめろよ、マッシュ! シュオは…シュオはお前のせいで3日も寝込んでたんだぞ!」

「マッシュ…?」


シュオはその名前を聞いて、アーニャの話を思い出した。

こいつがシュオを魔法で攻撃し、3日間も意識不明にした張本人、マッシュ・ランフォードか。第一貴族ランフォード家の次男であり、生徒会長ガイア・ランフォードの弟。


(なるほど、第一貴族の息子だから、こんなに威張っていられるわけか)


シュオはマッシュの全身から放たれる魔力量を無意識のうちに感じ取っていた。

確かに教室にいる他の生徒たちに比べれば、その魔力量は少し高い。だが、シュオが知る竜人族の基準で言えば、それは赤子同然、取るに足らないレベルだった。

こんな程度の魔力を持つ者の魔法で気絶させられた元のシュオは、一体どれだけひ弱だったのか。シュオは、もはや他人事のように、元の体の持ち主を憐れんだ。


「あぁ? カイル、お前、俺に口答えすんのか?」


マッシュはカイルを睨みつけた。その瞳には、明確な脅しの色が浮かんでいる。

カイルはびくりと体を震わせ、顔を青くして黙り込んでしまった。

マッシュは満足げに鼻を鳴らすと、再びシュオに向き直った。


「おい、シュオ。今日の放課後、また俺の新しい魔法の練習に付き合えよ。今度は、もう少し手加減してやるからさ。」


マッシュはニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべながら言った。それは練習などではなく、単なるいじめ、サンドバッグにされることを意味しているのは明らかだった。


「ふざけるな! 3日前も、お前はそう言ってシュオを…!」


カイルが再び声を上げようとしたが、マッシュの鋭い一瞥で言葉を飲み込んだ。


(…こいつは、本当にいい奴なんだな)


シュオは恐怖に震えながらも自分を庇おうとするカイルの姿に、少し感心した。

元のシュオは落ちこぼれだったのかもしれないが、少なくとも、一人だけは本当の友人を持っていたようだ。


「黙れよ、カイル。」


マッシュは吐き捨てるように言った。


「俺は今、シュオと話してるんだ。部外者は引っ込んでろ。」


その言葉には、カイルへの侮蔑と、シュオへの支配欲が滲み出ていた。

シュオはカイルの肩を軽く叩いて制すると、マッシュに向き直り、平坦な声で言った。


「悪いな、マッシュ。今日の放課後は、色々とやらなければならないことがあって忙しいんだ。お前の遊びに付き合っている暇はない。」


その予想外の、そして毅然とした断りの言葉に、マッシュは一瞬虚を突かれたような顔をした。

普段のシュオなら怯えて何も言えないか、あるいは泣きながら従うかのどちらかだったからだ。マッシュの顔に、苛立ちと怒りの色が浮かび上がった。


「…なんだと、てめぇ…!」

「カイル、リーザ。昼飯を食べに行くぞ。」


シュオはマッシュを無視して教室を出ていった。カイルとリーザも慌てて後を追う。


「シュオ・セーレン...覚えてろよ...」


マッシュはシュオの後ろ姿を見ながら吐き捨てた。

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