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〜Doragoon Life〜 最強種族の王子、転生して学園生活を謳歌する  作者: かみやまあおい
第1部

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第21話 マッドティーチャー エア

学院の校門前に着くと、そこには見慣れた二人の友人の姿があった。

金髪で快活なカイルと、薄緑色の髪でしっかり者のリーザ。二人は、シュオが近づいてくるのに気づくと、駆け寄ってきた。


「おはよう、カイル、リーザ。」


シュオはいつものように、少しはにかみながら挨拶をした。

その、あまりにも「普通」のシュオの挨拶に、カイルとリーザは一瞬、目を丸くした。

そして互いに顔を見合わせ、困惑したような表情を浮かべた。


「お、おい、シュオ…?」


カイルが恐る恐る尋ねてきた。


「お前、一週間も学校休んでたけど…その間に、何かあったのか…?」

「え?」


シュオはカイルの言葉に驚いた。


「一週間も休んでたの、僕?」

「ええ、そうよ。」


リーザも不思議そうな顔で頷いた。


「一週間前までと、なんだか…様子が全然違うみたいだけど…本当に何かあったの?」


シュオは二人の言葉を聞いて確信した。やはり自分は最近まで「別人」だったのだ。

そして一週間前に何らかの理由で学校を休み、今日、元の自分に戻った、ということらしい。

シュオは意を決して、二人の親友に正直に話すことにした。

自分がマッシュの魔法を受けて意識を失ってから今日までの、約三ヶ月間の記憶が全くないことを。


「……はあああっ!?」


シュオの告白にカイルとリーザは唖然とし、言葉を失った。


「と、とりあえず、教室に行こう! 話はそれからだ!」


カイルが動揺しながらも提案した。


三人は周囲の生徒たちの奇妙な視線を感じながら、教室へと向かった。

廊下を歩いていると、何人かの生徒がカイルに頭を下げて挨拶をしてきた。

中には上級生と思われる生徒もいた。シュオは、その度に驚き、戸惑った。


「ねえ、カイル…なんでキミ、色んな人に挨拶されるの…?」


シュオが尋ねると、カイルは信じられないという顔で答えた。


「お前、自分が何したか、本当に覚えてないのか  俺たち、少し前から生徒会に入ったんだぞ! お前が生徒会長に勝負で勝って、俺達を巻き込んで生徒会に入ったんだ!」

「せいとかい!? 僕が!? 生徒会長に勝った!?」


シュオはさらに驚愕した。

落ちこぼれの自分が、学院の権力組織である生徒会に入り、しかも学院最強の生徒会長に勝ったなど、到底信じられない話だった。

自分の知らない間に自分の身に何が起こっていたのか、ますます分からなくなってきた。


教室に着き、自分たちの席に座ると、カイルが真剣な顔で切り出した。


「よし、シュオ。状況を整理しよう。」


シュオとリーザは、こくりと頷いた。

カイルとリーザが語る「シュオが覚えていない三ヶ月間の出来事」は、シュオの想像を遥かに超える、荒唐無稽なものだった。

マッシュを圧倒的な力で懲らしめたこと。

生徒会長ガイアとの決闘に勝利したこと。

その後、生徒会に半ば強引に参加させられたこと。

そして、つい一週間前には、学園内に現れた未知の怪物『魔獣』と戦い、それを討伐したこと。

しかも、その際には、本来の属性である水とは違う、雷や炎の強力な魔法、さらには見たことも聞いたこともない、禍々しい力を使っていたというのだ。


「……僕が…そんなことを…?」


シュオは信じられないという顔で二人の話を聞いていた。まるで、英雄譚を聞いているかのようだ。

しかし自分の体についた傷や痣がそれが現実であったことを物語っている。


「なあ、シュオ。お前、今、雷の魔法とか使えるか?」


カイルが期待と不安の入り混じった目で尋ねてきた。


「そ、そんなのできるわけないじゃないか!」


シュオは慌てて首を振った。


「僕の属性は水だよ! それも、第四位魔法だって、まだうまく使えないのに…。」

「でも、三ヶ月の間のお前は、確かに雷も炎も使ってたんだ! それも、第二位とか、第一位の超高等魔法を!」


カイルは食い下がった。


「それも、本当に覚えてないのか?」

「覚えてないよ! そんなことができたら、僕だって苦労してないよ!」


シュオは半ば泣きそうになりながら答えた。

三人はその後も可能性を話し合ったが、なぜシュオの記憶がなくなり、別人格が現れ、そしてまた元に戻ったのか、その理由は全く分からなかった。


「…こうなったら、専門家に相談してみるしかないかもね。」


リーザがため息をつきながら言った。


「学院には、魔術と魂の関係とか、そういう特殊な分野を研究している先生がいるって聞いたことがあるわ。」

「ああ、エア先生のことか!」


カイルが思い出したように言った。


「変わり者だって有名だけど、知識は本物だって評判だ。」


三人は授業が終わった後、そのエア・グリニスという教師の研究室を訪ねてみることに決めた。


――――――――


放課後。三人は、学院の奥まった場所にあるエアの研究室へと向かった。

扉の前まで来ると、中から何やら怪しげな詠唱のような声や、奇妙な実験音が聞こえてくる。


「…なんか、入るの怖いな…。」


カイルが及び腰になりながら、恐る恐るドアをノックした。

しばらくすると中から「はーい、どなたー?」という、少し間の抜けた声が聞こえ、ガチャリと扉が開いた。

現れたのは白衣を着た、長身でスタイルの良い女性だった。長い黒髪を無造作にまとめ、度の強そうな眼鏡をかけている。

年の頃は三十代前半だろうか。彼女が、エア・グリニス先生らしい。


「あらあら、可愛い生徒さんたち。私に何か御用かしら?」


エアは人懐っこい笑顔で三人に尋ねた。

カイルが「先生にご相談したい事がありまして」と言うと、エアは部屋に入るように促した。恐る恐る中へと入る3人。

3人が中へ入るとエアはドアを閉め部屋の奥の椅子に座る。


「それで私に何を相談したいのかしら?」


カイルが代表して、シュオに起こっている奇妙な現象について、事情を説明した。

三ヶ月間の記憶喪失、別人格の出現、属性の違う強力な魔術の使用、そして突然の帰還。エアは、興味深そうに腕を組み、時折鋭い質問を挟みながら、黙って話を聞いていた。


全てを聞き終わると、エアは「なるほどねぇ…」と呟き、顎に手を当てて何やら考え込み始めた。三人は、緊張しながら、エアが話し出すのを待った。

やがて、エアはゆっくりと口を開いた。


「…私が長年研究している仮説があるの。」


エアは、眼鏡の位置を直しながら言った。


「人が魔術の属性に覚醒するのは、その人の『魂』に、特定の属性が深く紐づけられているからではないか、ということ。一つの魂には、基本的に一つの属性しか結びつかない。だから、複数の属性を操ることは、本来極めて困難なのよ。」

「じゃあ、どうしてシュオ君は、三ヶ月の間だけ、色々な属性の魔法を使えたんですか?」


リーザが疑問を投げかけた。


「これはあくまで推論だけど…」


エアは、少し声を潜めて言った。


「シュオ君の体には、その三ヶ月間、別の魂が宿っていた…つまり、魂の『入れ替わり』が起こっていたんじゃないかしら。」

「い、入れ替わり!?」


その言葉にシュオは衝撃を受けた。自分の中に、別の魂が…?


「古代の魔術の中にはね、死者の魂を呼び戻し、別の肉体に定着させる、なんていう禁忌の術もあったとされているわ。肉体から離れた魂が、別の魂と入れ替わる…可能性としては、ゼロではないと思うの。」


エアは続けた。


「おそらく、シュオ君がマッシュ君の魔法を受けた衝撃が、何らかのキッカケとなって、君の魂が一時的に体から離れ、そこに別の、強力な魔術の才能を持つ魂が入り込んでしまった…そう考えるのが、一番自然かもしれないわね。」


エアの推論は突拍子もないものだったが、シュオに起こった不可解な現象を説明するには妙に説得力があった。


「じゃ、じゃあ、その入れ替わってた魂は、どうしてまた僕と入れ替わったんですか? それに、入れ替わってた間、僕の魂はどこに行ってたんですか?」


シュオは矢継ぎ早に質問を投げかけた。


「うーん、そこまでは、私の研究でもまだ分からないわねぇ。」


エアは、お手上げ、と言わんばかりに両手を広げて答えた。


「魂なんて、目に見えないものだし、実験するわけにもいかないからね。」


そしてエアは悪戯っぽい笑みを浮かべると、シュオに向かって提案した。


「ねえ、シュオ君。良かったら、私の研究を手伝ってみない?」


エアは目を輝かせながら言った。


「君のその特異な体験は、私の研究にとって、非常に貴重なサンプルになると思うの。毎日放課後、ここに来て、色々と検査させてもらったり、話を聞かせてもらったりできないかしら?」

「え…手伝い…ですか?」


シュオは戸惑った。

何をされるのか、少し怖い気もする。しかし、自分の身に何が起こっていたのかを知りたい、という気持ちの方が、今は勝っていた。


「…分かりました。僕でよければ、協力します。」


シュオは意を決して答えた。


「本当!? やったー!」


エアは子供のようにはしゃぎ、「じゃあ、早速明日からお願いね!」と嬉しそうに言った。

こうして、シュオ・セーレンは、自身の身に起こった謎を解き明かすため、そして、自分の中に眠るかもしれない「もう一人の自分」の手がかりを探すため、変わり者の魔術研究者エア・グリニスの研究に協力することになった。

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