第14話 文化祭
季節はいよいよ秋へと変わっていった。
暑さがなくなり徐々に夕刻になると肌寒くなる季節。
毎年この時期になると学院では文化祭が行われる。
学院の文化祭は少々特殊で学院内で街の人が露店を出して商売を行う事ができる。
収穫祭から文化祭と祭が続く事がベロニアの1つの行事になっている。
当然、学生も各部活ごとにイベントを催している。
学院では部活に加入している生徒は7割ほどで、この時期になると皆イベントの準備で忙しい。
そんな中、3割の生徒は部活に入っていないため見学が主流となる。
シュオ・セーレン、カイル・ディラート、リーザ・フローレンスの3人もその3割に入る人間だった。
元々3人はとある部活に入っていた。
その部活は3年生から1年生まで仲が良く、比較的楽しい部活だった。
しかし、とある3年生の男子がリーザを気に入ってしまった事から問題が発生した。
その男子がリーザになんとか近づこうとしているところをその彼女が知ってしまい、結果リーザは女子から嫌がらせを受ける事になった。
それに怒ったカイルとシュオはリーザを連れて部活を辞めたのだった。
そういう訳で3人は今年は文化祭を楽しむ立場として楽しみにしていた。
当日、学院の門を通ると、たくさんの露店が出ている。
まさに先日の収穫祭のようだ。
3人は美味しい食べ物を食べたり、色々なお店で展示品を見たりと楽しんでいた。
しばらく店を見て回っていくとシュオがお目当てにしていた店があった。
収穫祭の時に知り合ったリッテの鍛冶屋である。
あれを見て以来シュオはリッテの武器が欲しくなり、父になんとかお願いをしてお金を工面してもらった。
父アルギリドも普段武器などを欲しがらないシュオがどうしてもと言ってきたため、お金を用意してあげた。
前に見た剣はさすがに購入できないが、それでもそこそこの武器なら購入できるほどのお金を用意している。
「リッテ。やっぱりここでもお店を出していたか。」
「あら、シュオ。あなたもいたのね。まあここの学生なら当然か。」
「今日店が出てたら武器を売ってもらおうと思っててな。俺に合いそうな武器を売って欲しいんだ。」
リッテはシュオを下から上までじっくり見てから腕を組んで考える。
「......そうね。今のあなたなら短剣なんかがいいかもしれないわね。」
「短剣か。確かにこの体ならでかい剣は触れないしな。」
第三世界では長剣を振っていたが、今の貧弱な人間の体ではスピードを活かした武器の方がいいかもしれない。
「なあシュオ。俺達せっかくだから先に行って色々見てるぞ。」
後ろで待ってたカイルが焦れたらしく、シュオに言ってきた。
「分かった。後でお前らを探して追いつくよ。」
シュオは手を上げてカイル達を見送った。
「さて、今持ってる予算がこれだけなんだが、これで見繕える武器はあるか?」
お金の入ってる袋をリッテに渡す。
リッテは袋を開けるとお金を数える。
「うーん、この金額だとこの辺りかな。」
そう言ってリッテは1本の短剣を取り出す。
以前見た剣よりは輝きが劣るものの、それでもかなりの品質のものだとシュオでもわかる。
「これは前回見せた『月鋼』よりは落ちる『熱光輝』っていう金属で作られた剣なんだけど、それでもいい仕事はしてくれると思うよ。」
「そうか。それならそいつを貰おう。」
リッテは短剣を鞘に納めるとシュオに手渡してくる。
長剣ほどのズッシリした重さはないが、十分に戦える重さだ。
「そういやシュオは武道大会には出ないのかい?」
「なんだそれは? 初めて聞いた。」
「キミ生徒だよね? なのになんで武道大会の事を知らないのさ。」
「あまり派手には動きたくなくてね。それでその大会ってどんなものなんだ?」
「生徒だけでなく自由参加で色んな人が参加するらしいよ。元々は生徒に外の世界の厳しさを体験してもらうって趣旨だったらしいけど、今じゃ冒険者達の力比べの場所って感じさ。」
「なるほどね...」
武道大会、そこに出ればこの短剣を試す事ができる。
それに強い相手がいればいい運動にもなるだろう。
「ありがとうリッテ。その大会に俺も参加してみようと思う。」
「まあ無茶はするんじゃないよ。あんたのその体でガチムチの冒険者どもに勝てるとは思えないから。」
シュオはリッテに手を振ると学院内にある闘技場へと向かった。
闘技場前には人だかりができており、参加するもの、見物するもので溢れかえっている。
シュオはまっすぐ受付に向かった。
「武道大会に参加したいんだが。」
「うちの生徒かい? まだ枠は1つ空いているけどほとんどが冒険者だから痛い目にあうだけだぞ?」
「いいんだよ。参加する奴らがどんなもんなのか試したいだけだ。」
受付の人間は「仕方ないな」と名簿に記載すると中へと通す。
闘技場の中にはトーナメント表ができあがっており、一番最後に参加したシュオの相手はカウという男だった。
順番が来るとシュオは舞台に上がる。
その姿を観客席から見物として見ていたカイルとリーザは驚く。
「ちょっと! なんでシュオ君があそこにいるの!?」
「俺だって知らねえよ! いつの間に申し込んだんだ!」
相手の男は長剣を使ったオーソドックスなスタイルだった。
シュオは先ほど買ったばかりの短剣を抜く。
審判から開始が宣言されると買うはまっすぐシュオに向かってくる。
(遅いな......)
シュオはさらっとかわすと足をかけて相手を転ばす。そして倒れたカウの首筋に短剣を突き付けた。
「勝者、シュオ・セーレン!」
審判の声に闘技場が沸く。
まあ毎年学生でも1回戦は勝ちあがる者は何人かいる。シュオもそのレベルだろうと考えている客が大半ではあった。
見物客の予想に反してシュオは勝ち上がっていった。
2回戦、準々決勝、準決勝といずれも見事な動きで相手を避け、的確に相手の首筋に短剣を突き付けるというスタイルで勝ち進んできた。
そして決勝戦。
相手はなんとセーレン家に仕える女戦士、エシュだった。
「まさかここでシュオ様とお会いするとは思いませんでした。」
「こっちこそ。最初見た時から相当強いやつだと思ってたがこんな処で対戦できるとはな。」
両者が構えたところで審判が声をかける。
それと同時に両者ともに動き出す。
今までと違い、エシュの剣捌きには無駄がない。シュオもかわすのに苦労をしている。
しかしそれはエシュも一緒で、今までなら仕留めていた攻撃をかわされるという事に戸惑いを感じていた。
(おかしい...シュオ様がこんなに戦闘のセンスがあったなんて聞いていない...この者は一体何者だ?)
エシュは一歩引くと、剣を腰に溜め一気にスピードを上げて飛び込む。
そのスピードにシュオは短剣を持って捌こうとする。が、シュオと言う元々の人間の力、それに短剣と言う力を捌きにくい武器だったため後ろに弾き飛ばされてしまった。
倒れたシュオの前にエシュの剣が向けられる。
「はは、さすがだよ.,.俺の負けだ。」
シュオが降参した事で闘技場はこの日一番の盛り上がりを見せた。
降参したとはいえ学院の1年生が決勝戦まで上がり、その決勝でもすごい戦いを見せたのだ。
「あなたは本当にシュオ様なのですか?」
手を差し伸べながらエシュは尋ねる。
「まあ今のところはな。それよりも次にやった時は負けないからな。」
その手を掴み、シュオは立ち上がった。
こうしてシュオは武道大会準優勝という結果を納めた。
しかし、これは静かに学院生活を過ごしたいというシュオの思いを無駄にするものとなってしまった。
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