少女の過去 ④
悲しい過去を抱えて居た少女。
過去のみならず、おじさんの事がなぜ少女の中に居たことも理由が発覚する!
さて、おじさんと少女はどうなるのか。
その後、馬車が用意されていたが、家族の見送りもなく、身一つで外に出されてしまった。
寂しげな顔をしなだら、ミラちゃんは馬車に乗り込む。
しかし、なぜか馬車の中にミラちゃんの事を苦しめていたメイドが勢いよく乗り込んでくる。
ミラちゃんもそうだが、俺も急に入ってきたメイドに驚いてしまう。
『このメイド、嫌そうな顔をしているのに、何で着いてきたんだ…?』
疑問でしかないが、もしかしたらミラちゃんの為に着いていけって、あの親父が言ったのかもしれない。
なんだかんだ、ミラちゃんにとって良い事が起こるかもしれないな。
そんな淡い期待は、すぐに裏切られてしまう。
馬車が走り出した瞬間に、メイドがいつもミラちゃんが着ている服を押し付けていた。そして、とんでもない事を吐き出す。
「すぐにこれに着替えなさい。」
「え…?これはお屋敷で着ていた…。」
「そうよ。さっさと着替えなさい。」
「…はい、わかりました。」
戸惑いながら、ミラちゃんは馬車の中で着替え出した。
俺は慌てて、見てはいけないと思って反対の方を向く、と同時に顎に手を当てて考える。
『待てよ…?何で綺麗な服を着ていたのに、わざわざ家で着ていたボロボロなやつに着替えないといけないんだ?…まさかっ!』
俺は覚えた違和感がわかった瞬間に、嫌な予感の正体もここで理解した。このままではミラちゃんが危ない。
今は着替えていようがいまいがどうでもいい。勢いよく振り向いて、ミラちゃんに向かって叫ぶ。
『ミラちゃん!早く逃げてくれ!君は…君がっ、殺されてしまう!』
俺の言葉が届かない事は重々承知だが、この願いがどうにか届いて欲しかった。この後に行われてしまう事の予想が、容易に想像できてしまったから。
しかし、俺の言葉は届かず、無情にも考えていたことが、現実となってしまう。
「着替えました。」
「そう…。馬車を止めて。」
「え…?」
『やめろ!止めるな!!』
メイドの言葉と共に馬車が止まる。
届かない俺の声は、空へとやんわりと消えていく。
止まって暫くすると、扉を叩く音が聞こえてくる。音が聞こえた瞬間に、ミラちゃんの髪の毛を掴んで扉を開けて降りようとする。
「痛い!やめて、痛いです…!」
「うるさいっ!」
「うっ!」
メイドは馬車から勢いよく、ミラちゃんを地面に叩きつけた。
泥まみれになったミラちゃんは、必死に起きようとするが、次の瞬間にはメイドに頭をふみつけられる。
『テメェ…!ミラちゃんに何しやがるっ』
元々あった怒りが膨れ上がって弾けた瞬間、俺は掴めないのを忘れて掴み掛かった。
しかし、メイドの体をすり抜けてしまって、掴むことすら出来ない。
俺が行き場のない怒りに震えていると、ミラちゃんの頭からメイドが足をのける。そのまま嫌らしい笑みを浮かべて、言葉の刃を吐き出す。
「これからあんたは、死ぬのよ。」
「え…?」
呆然とするミラちゃんに、俺は嫌な予測ていた事が当たってしまったと、拳を力一杯握りしめる。
絶望に打ちひしがれているミラちゃんに、さらにメイドは言葉を投げ続けていく。
「あんたはね、お嫁に行くんじゃない。ここで殺される。不幸にも事故にあってしまって…って事にしてね。」
「そんな…。」
「かわいそうにねぇ。侯爵様はあんたを最初から、嫁になんて行かせるつもりはなかった。ただ殺すための言い訳として、あんたに言っただけのウソ。」
「お父様…。そんな、少しくらいは…。」
「少しは愛されてると思ってたの!?あははは!そんな訳ないじゃない!不幸を呼ぶ人間が愛されるなんてありえないのよ!」
メイドの言葉に、俺の堪忍袋の尾が切れる音がした。
その瞬間に、自分が普段使わないであろうほどの暴言を、口から吐き出してた。
『どいつもこいつも…!人間じゃない…人の皮を被ったバケモンばっかだ!』
『何でそんな言葉を言えるんだ!簡単に言って良い言葉じゃない!』
『どんな姿でも、性格でも、愛されて良い命だ!』
『お前らの方が、よっぽど人に不幸を運ぶじゃないか!!このクソ野郎どもが!!』
俺の叫びは虚しく消えていくなんて事はわかってる。でも、言わずには言われなかった。ミラちゃんの絶望にみちた顔を見たから。
泣きそうになる。俺よりもミラちゃんの方が苦しいというのに、辛いというのに。しかし、勝手に涙が溜まってきて、視界がぼやけてくる。
そして、俺のことを置いたまま、騎士たちが剣を鞘から抜く音が聞こえた。
「私の役目はここまで。後は、この人達にやってもらうわね?…早く殺して。」
メイドの言葉と主に、剣を向けて振り下ろそうとした時に、ミラちゃんは辛うじて避けたのと同時に森に向かって走り出す。
逃げて行くミラちゃんに、メイドが慌てて指示を出す。
「逃げたじゃないのよ!早く追って!ガキ一人もさっさと殺せないの!?」
「うるさい!今からやる!」
ミラちゃんに1人に対して、3人の騎士が追いかけていく。
なんて卑怯な行いだ。騎士の風上にも置けないだろう。
しかし、俺もダメなやつに感じる。見てるだけで、何にもできていない。どんなに手を伸ばしても、届く事はない。
何もできないとわかっていても、この苦しみは消えてはくれないだろう。
必死で逃げるミラちゃんを追いかけながら、俺は祈るように見つめ続けた。
どうか、助かってほしいと。
その想いに応えてくれるかのように、ミラちゃんは必死で逃げていた。
ミラちゃんは靴が脱げても、少しづつ自分の体が傷ついても。だが、体力が持たずに足が絡まって転けてしまう。
「あっ…!」
『ミラちゃん!!』
ミラちゃんの体が前に向かって倒れる。もう彼女の体は満身創痍だった。木の枝や土で出来た傷だらけで、もう動けそうにもない状況に置かれている。
そこに、騎士たちがやってくる。
「ようやっと止まったな。」
「悪いが、これもし仕事なんだ。」
「謝る事じゃないだろ。不吉な事を運んでくるガキだ。ここで殺しとかねぇと。」
「じゃあな。呪うなら自分が産まれてきた事を、恨むんだな。」
『やめてくれぇぇぇぇ!!』
俺の声も虚しく、彼女は三人の剣によって、刺されてしまった。
6話目です!
中々過去編から抜け出せない…
でも、ここから話が進みます!
次の更新をお待ちください!
よろしくお願いします!