おじさん、女の子と対峙する
森の中にいたハズのおじさんが今度は白い空間に移動していた。
しかも、自分の体に戻った状態で。
そうこうしていると女の子とおじさんが対峙する。
最後に女の子に驚愕の真実を伝えられる。
※カクヨムにも投稿しております。
ふっと目を覚ます。視界いっぱいに白い天井が見える。
(これぞ、よくある転生物の知らない天井だ、ってやつだな。)
いや、しょうもない思って考えている場合ではない。とりあえず、起き上がって周りに何があるかを確認しなければいけないだろう。
寝ている体勢からと体を起こした瞬間に、頭がまたズキンと痛みがはしる。
この痛みで思い出す。自分があまりの痛みに座っていられなくなり、気絶してしまった事を。
耐え難いほどの頭痛は一体何だったのだろうか。
あの時のような気絶してしまうほどの痛みはないが、未だに軽い痛みが残っては、まだ残っている。
何でか最後に何かに触れたような気がしたけど、何かはよく覚えていない。見る前に倒れてしまったからだろうな。
そんなことよりも、ここはどこなんだ。
先程までいた森の中とは違い、今度は真っ白な空間にいるようだ。森の中と同じように誰もいないように見える。
森では木が見えていたり、湖が見えていたりしていたが、この空間では何も見つからない。
本当にただただ白いだけの空間みたいだ。
「本当に、一体何だっていうんだ…。」
話した瞬間、思わず喉を触ると、そこには男性特有のぽこっと出ている喉仏があった。
という事は、間違いなく自分の声が出ているのは間違いない。
そのまま手を見てみると、そこにはゴツゴツして、指紋がなくなっているのでは?と言わんばかりの指にあるたこ。
体を見てみると、身に覚えのあるスーツを着ていた。このスーツは女の子になる前に着ていた服もので間違いない。
色々と疑問が浮かんできてしまって、今、女の子の体ではなく、自分の体になっているようだ。
でも、それならば、少女の体はどうしてしまったのか。
もちろん自分のことは心配だけれど、あんな傷を負っている少女はどうなってしまったのかも気になってしまう。
いや、考えていてもしょうがない。
とりあえず探索でもしてみるか。ちょっと冒険チックな感じがしてワクワクしてしまう。
もういい大人だとしても、そういうロマン的なのは持ったままだ。
さぁ行くぞ、と意気込んで歩き出したはいいものの。
「何もないんだが!?」
こだまも返ってこなければ、誰かが声を声を返してくれるわけでもない。
遠くに音が吸い込まれていってるのではってという程に。
まるで、白い空間のみが広がっているような感じだ。
一体、自分…いや、自分と少女の身に一体何が起こってるんだ?
考え込んで唸っていると、急に目の前が急に光り輝き出した。
あまりの光に声が漏れ出ていく。
「うわっ!何だ!?目が開けてられない…!」
あまりの眩しさに目を瞑った。
(待て待て!何でこんなに光ってるんだ!?)
絶対俺は間違っていない。
こんなに光る必要なんてないはずだ。例え何かが起こるとしても、目を開けたら視界が白くなっていそうだ。
何かがいたとしても、見えないだろうから、やばいのがいたら瞬殺だろうなと、しょうもないことを考えてしまう。
本当にどうでもいいけど、光っている時間が長い。ここまで長く光る必要があるのか。
これ、もしかしたら、思っていたことが現実になる可能性があるという感覚がした。
色々と怖い事を考えていたら、光が徐々におさまってくる。ゆっくり光が落ち着いてくれるおかげか、目が開けやすくなっていた。
これで何が起こったとしても、動揺する必要もないな。
待て、動揺はある。それどころか動揺する間もなく、殺される未来しか見えない。
何で楽観視しようとした?どう足掻いても、ゆったりとしている場合ではないじゃないか。
このままでは殺されてしまう可能性があるのだが、どんな生物であっても急な行動に出られると、何が起こったのか分からず止まってしまう。
相手が困惑している隙に逃げ出そう。
という事は、ここで役立つのはたった一つしかない。それは土下座だ。目が開けれるようになるくらいに光がおさまれば土下座をかまそう。
そう、俺の土下座はそんじょそこらの土下座とは訳が違う。
毎日、上司に謝る時には必ずしているから、年季も何もかもが違うが、言っていて自分で悲しくなってしまったのはご愛嬌だ。
でも、上司が満足してくれるのだから、そんなもんなんだろう。
何とも言えない思いをしていると、光がおさまったきた。
目が開けるようになった瞬間に、光っていた方に向かって、スライディング土下座をかます。
「すいません!こうやって急に来て、あなたの土地を荒らすつもりなんてなかったんです!許してください!何でもするので!」
完璧だ。これほどに美しい土下座はないだろう。
心の中でドヤっていると、可愛らしい少女の声が聞こえてきた。
『え?え、おじさん?どうしたの…?』
初めて聞く女の子の…いや、聞いた事がある。俺はこの声を知っているはずだ。
そう考えて、ゆっくり顔を上げると、そこにはやはり自分の見知った顔があった。
「もしかして君は…さっき俺が憑依してしまっていた女の子かい…?」
俺の言葉に少し泣きそうな顔をしながら頷いてくれる。納得がいった。
ここに俺を連れてきたのは、やはりこの女の子だったんだな。
俺が勝手に納得して、ふむふむと頷いていると、女の子の方は少しおどおどしてる様子だった。
しまった。こんな事をしている場合ではない。
安心してもらう為に、しゃがみ込んで女の子の目線に合わせて挨拶をする。
「さっきは急にごめん。びっくりしたよね。」
『えっと、大丈夫、です…。』
「ならよかった!まずは自己紹介をしておくね。俺の名前は風神 誠。よろしくね。」
『よろ、しくお願いします…。』
「君の名前を教えてくれるかな?」
『…私の名前はミラ、です。』
「ミラちゃんかぁ。とっても素敵な名前だね。俺の事は、さっき言ってくれたように、おじさんって呼んでくれていいよ!」
俺がミラちゃんの名前を褒めると、嬉しそうに微笑んだ。
そうだよな。両親からもらった大切な贈り物だ。嬉しくなって当たり前だろう。
ミラちゃんの微笑みに、俺も嬉しくて笑う。
俺はだからこそ、悲しくなる。
ミラちゃんの体が薄っすらと透けている事から、もしかしたら死んでしまっているのかもしれない。
もしそうだったのだとしたら、心が痛む。なぜ、こんなにも幼い子があれほどの目にあわないといけないんだ。
ぐっと眉間に皺が寄る。こんな目にあわせた奴を俺は許す事はできない。
まだまだこの先、楽しい事、面白い事、勿論それだけではないだろうが、色んな事を体験していけるだろうに、こんなにも幼い時に奪われてしまうなんて事、許されるはずもない。
下を向いていた顔を上げると、ミラちゃんが泣きそうな顔をしていた。
あまりにも酷な話に厳つい顔になってしまっていたのかもしれない。
俺は慌てて弁解をする。
「怖い顔してしまってごめんね。君が悪いわけじゃないんだよ。何で君が酷い目にあわないといけないのかって思うと、腹が立ってきて怖い顔になってしまってたんだ。」
『酷い目って…?』
「俺は君の中に入っていた。…いや、待て、これは語弊がある!えっと、君の体の中に魂だけ入らせてもらってたんだけどね。その時に見てしまったんだ…。君の身体中にある傷跡を。」
『…。』
「一体何があったのか…聞いても、いいかな…?」
『本当に、知りたい?』
「え?」
『私がもしかしたら、悪い子かもしれなくても…?』
(悪い子…?一体どういう…)
そこまで考えて、ハッとする。
悪い子かもしれないって気にしていたという事は、俺が怖い顔をしてしまった時に勘違いをさせてしまったかもしれい。
やってしまった。こんな思いをさせたいわけじゃなかったというのに。
悔やんでいても時間は止まってはくれないのだから、考えを切り替えて悲しそうな顔でこちらを見ているミラちゃんに言い訳をしなくては。
「いや、君を悪い子だとは思っていないよ。」
『でも…、私は本当に悪い子なの…。』
「…どうしてそう思うのか、聞いてもいいかな…?」
さらに悲しそうな顔になってしまった女の子に、優しい声になるように努めて何でそう思ったのかを聞いてみる。
すると、思ってもない言葉が返ってくる。
『私が、おじさんを殺しちゃったの…。』
衝撃の事実におじさんはどうするのか!
今回の話はちょっとシリアスです。
衝撃の話から、次はどうなっていくのか!
次回へ続く!!