おじさん、世界の広さを知る
おじさんはミラと魂の切り替えを祈った。
果たして二人の魂は切り替えることができるのだろうか。
そして、旅に出ることができるのだろうか。
ミラは大きな世界を見ることができるのか。
しばらく目の前が真っ白になっていると思ったら、目が開けられるようになった。
すると、周りは真っ暗でここがどこなのかわからなかったが、目の前に四角いテレビの様なものがあった。
その画面を見てみると、そこにはさっきまで見ていた光景が、ミラちゃんを含めて映し出されていた。
もしかして、これは入れ替われたという事なのだろうか。
『ミラちゃん。聞こえるかい?』
「あ、はい!聞こえます!」
『もしかして…成功した!?』
【そのようだな。】
『よっしゃ!』
成功した事に、喜びが隠せなかった。これでミラちゃん自身が自分の目で色んな事を見て回れる。
あんなところの記憶だけじゃなくて、もっといい記憶に上書きができるんだ。
【まさか、本当に成功できるとはな。】
『お、ゴロゴロしてなくていいのか?』
【やかましいわ!…いいか?こうして変われる事は奇跡に近い。】
「そう、なんですか?」
【そうだ。魂の意識交換は片方の魂が消える可能性もある。】
衝撃の事をディアが言い出す。
消えていた可能性があるとは聞いていない。もし消えていたとしたら、と思うとゾッとしたので抗議をする。
『おま、お前っ!!それを先に言え!!もし消えていたら、シャレにならないんだぞ!?』
【上手くいったのだから、問題あるまいて。】
『この猫が…!』
【誰が猫だ!】
俺たちが言い合っていると、ミラちゃんが止めに入ってくる。
「ま、待って、待ってください…。」
【そもそも貴様が吾輩を撫でてなければ、きちんと伝えることができたのだ!】
『撫でられてる状態でも伝えることができただろ!?』
【それは貴様が…。】
「待ってください…!!」
思ってもみないミラちゃんの大きな声に、思わず二人揃って口を閉ざす。
すると、ミラちゃんが俺たちに向かって言ってくる。
「い、今から一緒に旅を、するんです、よね…?」
『そう、だね。』
「なのに、喧嘩しちゃダメだと思うんです…!」
【う、うむ…そう、であるな。】
「だから、仲直りしてください…!』
『仲…』
【直り…。】
ミラちゃんの言葉に、二人揃って呆気にとられる。
確かにここから一緒に旅をしていく事になる。ミラちゃんを守る為にも、こいつの力が必要である事は間違いない。
でも、謝りたくない気持ちもある。しかし…。
確実に怒っている雰囲気が伝わってくる。
仕方ない、俺から折れてやるか。それじゃないと話が進まないし、ミラちゃんが怒ったままになってしまう。
『ディア。』
【な、なんだ。】
『悪かった。』
【うぐっ…!】
『これから一緒に旅をするんだ、こんなに喧嘩してちゃダメだよな。とりあえず、仲良くしよう。』
【…吾輩も、少しムキになりすぎた。すまぬ。とりあえず、仲良くしていこうではないか。】
互いに『とりあえず』の部分を強調して言ったが、俺たちが仲良くなってくれたと思ったミラちゃんが、嬉しそうな声を出す。
「よかったです。これからもこうしていきましょうね!」
『そ、そうだね、うん。』
【あぁ、そう、だな。】
嬉しそうなミラちゃんに対し、俺たちは複雑な気持ちになっていた。
明らかに気が合いそうではないと感じている。確実に喧嘩しそうな気しかしない。しかし、ここまで嬉しそうなミラちゃんを見ていると、喧嘩をすることはできない。
複雑な気持ちになっていると、頭の中で声が響いてくる。
【致し方ない。なるべく喧嘩をしない様にしていくぞ。】
『うっ、頭の中に声が…!』
【…しょうもない事を言うな。】
『ごめんて。…そうだな、気をつけよう。』
「え?何か言いましたか?」
『いや、何もないよ。そうだ!ミラちゃん。』
「はい。」
『どこか行きたいところはあるかい?』
「行きたい、ところ…ですか…?」
『そうだよ。だって、これから旅に出るんだ!どこか、こういう所に行きたいっていうのはあるかな?』
「えっと…お花畑に、行きたいです。」
『お花畑か!いいね!』
控えめで可愛いお願いに俺は即答した。花畑なんて、俺も行ったことがない。忙しくて、そもそも旅行に行った事もないからな。
ちょうどいいから、行ってみよう。
『じゃあ、お花畑に連れて行ってもらおう。』
「え?誰にですか?」
『そりゃあ、ディアに。』
【吾輩か!?】
思わず、なんで驚いてんだコイツと思ってしまう。
お前以外に連れて行ける奴が誰がいるのだろうか。栄養失調の様な子に歩かせるきか?正気か?と思ったので、文句を言う。
『いいか。ミラちゃんの体では明らかにここいらではない花畑に、一人で行くことができるわけないだろ?』
【…確かにそうだな。】
『だろ?だから、連れて行ってやってほしい。』
【うーむ。…いいだろう。連れて行ってやる。】
『と、言うことで。ミラちゃん、ディアに乗って花畑に行こう!』
「い、いいんですか…?」
【其方の事は気に入っておるゆえ構わぬ。さぁ、吾輩の背に乗るといい。】
「わぁ…!ありがとうございます!」
ミラちゃんが嬉しそうな声をあげているのが聞こえてきて、顔も笑顔なのだろうと思うととても嬉しく感じた。
さっき触って見たいと言っていたし、これで触れし、花畑が見れるし、最高だな。
俺はうんうんと頷いてテレビの様なものから、ミラちゃんが乗ってディアが羽を広げる姿が見える。
「わぁ、ふかふか…!」
【さぁ、旅立つぞ。準備は良いな?】
「は、はい…!」
【では、背中より手を離すでないぞ!】
ディアがそう言った瞬間に、羽を羽ばたかせて空に舞い上がっていく。
飛んだ時の景色が俺にも見える。
世界ってこんなにも、広くて美しいのか。俺も知っているようで知らなかった。ここまで美しい景色を見れるなんて思ってなかった。
『すごいね、ミラちゃん!』
「はい!すごいです…これが、外の世界…!」
【素晴らしいだろう。この世界の美しさは。】
『あぁ…俺もこの美しさには感動してる。』
言葉にできない。こんなにも広くて、綺麗で…これ以上の言葉が出てこない。
俺の世界もどれだけ小さかったんだろうか。会社と家の行き来しかしてなかったから、ここまでの景色を見たことがない。
もしかしたら、小さい頃に見た事もあるのかもしれない。でも、大空を飛んで見たことなんてない。
『これが…この世界…異世界なんだな…。』
改めて実感する。ここが異世界なのだと。
現代にこんなにも広くて、綺麗な景色を見れることないだろうな。
たくさんの山々に囲まれて、広々とした大地があるなんて知らなかったんだ。俺はどんだけ小さい所で暮らしていたんだろう。
自分の体に合ってない小さいデスクに向き合い続けて、父さんが高校の時に居なくなってからは、家計を支えるために中退して働きづけてきた。
たまたま入れた会社で、ずっと仕事を続けてきた。たくさんの書類に囲まれて、それを黙々とこなしてきた。
それが家族の為には当たり前だと思っていたし、家族が出かける為には自分の事なんて二の次だった。
家族も同じ感じだったから、疑問にも思わなかったけど…。
本当はそんな事なかったんだ。俺の世界はとても小さくて、寂しい世界だったんだな。
こうしてミラちゃんと見れて、俺は本当に幸せなんだ。
ミラちゃんのおかげだと、改めて教えてもらった。
俺は心の中で、ミラちゃんにこっそりと『ありがとう』と、感謝の気持ちを詰め込んだ。
やぁっと旅の始まりに辿り着きました。
ここからは旅の始まりになります!
たくさんのところに行こうと思います。
どうか見守って行ってくれると嬉しいです!
よろしくお願いします。




