第7話 AI
階段を降りている途中で、高松先輩たちにあった。
「あれー?後輩くんじゃない。どうしたのこんなところで。検査の方は?抜け出して来ちゃった?」
そんな冗談を言う。
冗談だよな?
「検査の方はさっき終わったんですよ。俺たちが一番だったので。」
「そうなの?サボったわけじゃないんだったらいいんだけど。」
「おい、誰だ。この美少女は?」
後ろから氷焔が声をかけてくる。
美少女ってお前なぁ。
「こっちの方たちは先輩だよ。生徒会長と寮長。お前らもこれから関わっていくんじゃない?」
「はい、私は生徒会長の高松美桜です。我が学園の学生ならば私の守るべき子供達です。よろしくね。こっちは。」
「ヴァルゴの寮の寮長をやっています。神戸詩です。私の方が接する機械はあるかもね。これからよろしく。」
「はい!よろしくお願いします。」
氷焔のここ一番の超元気な挨拶であった。
「私はもう会ったことがあるんだけど、好美ちゃんはまだだよね。」
「うん、でも会長さんのお名前は存じ上げていて、雑誌なんかで読んだことがあります。」
「えー、嘘。雑誌に載ったのって数回だよ。よく知っていたね。」
数回はあるんだ。
「ちょっとだけ雑誌に載ったことがあるんだよね。ヴァルゴの生徒会長ってことで。」
「実力もすごくありますしね。」
好美さんがものすごく興奮気味に話してくれる。
「好美さん。ちょっと落ち着こうよ。」
「っは。ごめんね。ちょっと取り乱しちゃった。」
「「好美、さん?」」
ん?
先輩二人のどすの利いた声が響く。
「名前で呼んでいるの?後輩くん。」
「え、まぁ、そう言われたので。」
好美さんがそういって聞かなかったんだから仕方がない。
「じゃあ、私たちも名前で呼んでほしいな。」
「そうだそうだ。」
「えー、えーっと。じゃあ、美桜先輩。詩先輩。」
「はい。」
「うん。」
二人の先輩はすごく幸せそうだ。
こっちはものすごく恥ずかしい。
「そうだ、私たちは後輩くんたちに用事があったんだった。」
「そうそう、名前予備の件で忘れちゃっていたよ。」
大事なことなら忘れないでほしいんですけど。
まぁ、そんなことを言うと怒られそうなので言わないが。
「後輩くんは、っていうか。みんなはギルドのことって知っているかな?多分明日にも説明があると思うんだけど。」
「ギルド?」
氷焔が疑問符をあげる。
「ギルドというのは十二宮学園の生徒が各々の学園の生徒八人で構成するチームのことですね。不知火先生が少し話していましたけど、ギルド抗争戦が定期的や恣意的に行われます。そこでもランクが上下することがあるそうですね。」
「ついでに言うと、ギルドに所属するとそこでのランキングによって支給品があるね。」
支給品か、何がもらえるのだろうか。
「さて、そのギルドなんだけどね。みんなはどこに入るとか決まっているのかなって思ったんだ。たとえば、私たちみたいな先輩に誘われているとかね。」
「いえ、誰も誘われていないと思いますけど。」
その俺の言葉に全員が頷く。
「そう、じゃあ、みんなで新しいギルドを作らない?」
「ギルドをですか?お二人のギルドはないんですか?」
「ないはずですよ。お二人は無所属の方ですね。」
「よく知っているね。そうなんだよ。まだどこにも入っていないんだよね。だから後輩くんがギルドを作ってくれたら私たちも入ろうと思っているんだけどなぁ。」
新入生がギルドを作ることなんてあるんですかね。
「新入生がいきなりギルドを作るのは異例中の異例だけど、まぁ、大丈夫だよね。」
「それは大丈夫なのかなぁ。」
そのあとも二人からはどんどん推挙された。
それから、全員で学校を一通り回った後で寮の方へ帰ることになった。
「氷焔と好美さんは寮の部屋、どこなの?」
「俺は12―六だな。」
「私は10―一ですね。」
「じゃあエレベーター組だね。好美ちゃんはどっちでもいいんだろうけど。」
「私は申し訳ないですけど、エレベーター、使わせてもらっています。」
「いいのいいの、気にしちゃダメだよ。」
寮に帰ると俺らは何も言わずにリビングのソファーに座った。
ただ、何かをしゃべると言う訳ではなくとりあえず黙って、休憩しているといった様子だ。
そこで、タブレットに通知が来た音がする。
俺が変更した音が鳴ったので多分俺のタブレットだろう。
「キョウ、なんの通知が来たの?」
「はい、ご主人様。学園からです。今日の結果について話したいことがあるので明日の朝、研究棟の札幌先生の研究室へ来てほしいとのことです。」
「後輩くんはAIに名前を付けたんだね。」
美桜先輩の言い方的に付けない人もいるのだろうか。
「それって、不思議なことですか?」
「いや?する人もしない人もいるからね。」
「俺はキョウに付けるように言われたんですけど。」
「そう言う人は初めて見たね。不思議なAIもいたもんだ。」
詩先輩の言い分的には俺のAIは少しおかしいのだろうか。
そこでちらっとタブレットの方を見る。
「どうしましたか?ご主人様。何か不思議なものを見るような目ですけど。」
こいつはどう言う知能をしているのか。
少し怖くなった。
「今のを聞いて何か思うことは?」
「いえ、私は何も感じませんでしたが。」
「そう。」
「うーん。他のみんなはそう言うことあった?」
「名前は付けましたけど自分の意思でしましたよ。私は。」
「俺は、まだ付けてないなぁ。おい、とかで呼んでいますよ。」
「やっぱり不思議だね。機械に詳しい人がいたらその人に見てもらってもいいんじゃないかな?」
「いやぁ、こっち来たばかりでそう言う知り合いはいなくて。」
「私、機械いじれるよ。」
そこで、好美さんが声を出す。
「私、そう言う術式なので機械の扱いは上手いよ。」
そうか術式のジャンルによってはこういう生活に役立つこともあるのか。
でも、それじゃ、普段から使っている割には数値低かったような気がするけどな。
「じゃあ、ちょっと見てもらってもいいか?」
「うん、貸して。」
「ごめん、キョウ、ちょっと我慢してくれよ。」
俺はキョウに謝る。
キョウは大丈夫です、とだけ返す。
それから十分ほど彼女はタブレットをいじっていた。
俺には何をしているのかはわからなかったが彼女の技術がすごいことだけはなんとなくわかった。
「終わったよ。とりあえず、何か悪いものがある訳じゃなかった。ただ、そのAIは私のAIにはない知能領域というか、脳みそを持っているみたいだね。いわゆる、感情のようなものを持っている。個人が持つのにはちょっと危険かも。」
「危険なのか?」
「機械がちょっといじれる素人目にはね。専門の機関に出してどういう反応が返ってくるのかは私にはわからないな。」
「そっか、まぁ、やばくならない程度に使っていこうかな。」
「それでいいと思う。」
その時、誰かのお腹がなった。
「ふふ、いいタイミングなんじゃないかな。私もお腹が空いたし。」
好美さんは詮索はせずに話を進めた。
みんなでキッチンを使ってお昼ご飯を作って食べた