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もののけタクシー  作者: 浅野案子
3/5

2m40cmの彼女

もののけタクシー第3話は、ネット掲示板で人気を博したあの女性です。

おたのしみに。

季節と関係なく乗車依頼が来るのは人間だけではない。

今回、ネット予約での依頼があったのは、高身長のためジャパンタクシーでもかなり厳しいので座席を倒して乗車したいとの備考付きのもの。


 「助手席は前に出して?それで、後部座席は倒すと。シートベルトは2点式にする。のか。大変だな。ワゴンタクシーで良かったんじゃ」


迎車料金1000円でも欲しいくらいだ。


 「お待たせしました。いまドアをお開けします」


遠目でも分かるほど田舎では目立つ身長。田畑がほとんどの田舎道にぽつんと立つ女性。

ツバの大きい白い帽子に、ワンピースがよく似合う女性。パッと見若い女性のようだが。


 「どちらまで行きましょうか」

 「ぽ。ぽぽ」

 「では、こちらのタブレットに行き先を書いていただけますか?」

 「ぽぽ」

 『あの車を追いかけてください』


双眼鏡で見ると2kmほど先を進む白い軽ワゴンが砂煙を上げながら走るのが見える。


 「かしこまりました。座りにくいとは思いますがお許しください」


後部座席をちょいちょいと見ながら走る。後部座席のお客様が苦しくないか。なにか言いたそうにしていないか。チェックしながら走る。タブレットは、話すことが困難なお客様のために筆談できるようにしている。相手が人間ならスケッチブックなどに書いてもらうことが出来るが、霊的な存在では紙に書くことがかなり困難であるとして、タブレットの液晶を介することで、波動などで文字にしやすくしてある。また、人間にも利用可能として重宝しているのである。


 「お客様苦しくはございませんか?」

 「ぽぽぽぽぽ」


問題なさそう。目は帽子で見えづらいが、口角が上がっているので多分満足なのだと思われる。


 「ぽ!」


前を注視していると砂煙が見えなくなっている。どこかで止まったようだ。

速度を落とし見落とさないよう注意して進む。


 「どちらで止まられたのでしょう」

 「ぽぽ!!」


民家に白い軽ワゴン車が止まっている。

女性は、ドアを開けようとする。


 「お待ち下さい。慌てる必要はないと思います。それに、いま出ていけば不審者扱いされかねません。もうしばらく車中でおまちいただけますか?」

 「ぽ。。。ぽ」


車内から少年が降りる。その少年を見るやいなや。


 「ぽぽぽ!」


チャイルドロックでドアは開けられない。悲しい目でこちらを見る。初めて目が見えた瞬間でもあった。


 「あの少年に用事があるのですね。なにか届け物でしょうか?それともお会いした喜びを伝えたかったのですか?」


タブレットに、A届け物、B会いたい

これらを表記したのを見せると両方を指さした。


 「でしたら、私がタクシーに来てもらえるように話をつけてきましょう。窓越しにお話されたらいかがですか?」

 「ぽ。。。ぽぽ」


了承を得た。


ピンポーン


家主と話す。


 「そちらの少年に届け物をしたいとお客様がタクシーでお待ちなのですが来ていただけますか?もちろん、保護者も同伴で結構です」


しぶしぶ話だけならと了承する家主。


 「ボク?外出ていいの?」

 「すみません。落とし物があったとかで。身に覚えはございますか?」

 「うん。大事にしてたお守りなんだ。初めてお爺ちゃんのお家にひとりで来たんだけど、来る途中お地蔵様があってそこでお祈りしてたらお地蔵様が倒れて。ボクが壊したわけじゃないんだよ。でも、倒れて。そのときに、お母さんの形見のお守りをそこで失くしちゃって。お地蔵様壊したのボクだと思われたら嫌だと思ってそのままにしてお爺ちゃんお家まで走って行ったんだ」

 「そうですか。慣れない土地で思わぬことが起きて怖くなったんですね。わかります」


少年に変わるように高齢の男性が話す。


 「運転手さんよ。ちょっとまってくれ。さっき、この子が帰ってすぐに家の前に大きな女が現れてな。その女は、2階の窓から顔が見えるほど大きな女なんだ。恐ろしくてな。あの女は、地蔵に封印されたとされる女だ。あの世に連れて行かれては困る。すまないがこの子を会わせるわけには行かねえ」

 「そうでしょうか。タクシーの後部座席はお客様が誰であれ私がドアを開けない限り開かないように出来ています。連れ去るようなことは不可能です。ですので、安心してお話されてはいかがでしょうか」


少年はお爺さんと言われる男性の顔を見る。


 「いいじゃないの。どうしてもと言うならあなたが見て判別しては?もう先も長くないんですし」

 「婆さん。それ言い過ぎ」

 「うふふ。お爺さんが行かないなら私が行くわ。女同士の方がまとまることもあるのよ」

 「なにを?儂を舐めるでないわ。孫のためなら儂が命を賭けてやるさ」


発破をかけられたお爺さんは孫の手前、怖気づいたと思われたくないのかガニ股で肩で風を切りタクシーに近づく。少年の肩には、お婆さんの優しいぬくもりのある手が置かれている。


 「これでいいか」

 「少しお待ち下さい」


そういうと、タブレットを音声入力に切り換え、翻訳アプリに切り替える。


 「はい。では窓を開けます」


うぃーん


 「ぽぽぽ」

 『お久しぶりです』

 「ええと会ったことあるかな」

 「ぽっぽぽぽ」

 『あなたがまだ幼い頃にお会いしたことがあります』

 「そう。か。すまない。記憶にないのだ」

 「ぽぽ。。ぽぽ、ぽぽぽぽぽ」

 『そうですか。。今日は、そちらの少年に用があって来ました』

 「ぽぽぽ」

 『お話させてもらってもよいでしょうか』

 「ああ。隣に儂がいるがな」

 「ぽぽ!ぽぽぽぽ!」

 『嬉しい!やはりあなたは子供の頃から変わらず優しい人だ!』

 「お爺さんなに照れて赤くなってるんです。若い女に言われてそんなに嬉しいですか」

 「婆さん。そんなつもりじゃ」

 「お姉さん。昨日も来てくれたのにごめんなさい。お地蔵様壊しちゃったのボクなんです」

 「ぽぽ。ぽぽぽぽ。ぽぽぽぽぽぽ。ぽぽ」

 『そう。正直に話してくれてありがとう。あなたもお爺さんの血を引くだけあって心根の優しい男児なのですね。嬉しいわ』

 「ぽぽぽ、ぽぽぽぽ?ぽぽ。ぽぽ。ぽぽぽぽぽぽぽぽ」

 『昨日あなたを探して、窓にノックしたの聞こえてた?あれ、私なの。直接あなたにこのお守り渡したくて』

 「ぽぽぽぽぽぽ」

 『結界が張られてたからか声が届けられなかったみたいなの』

 「お姉さん。聞こえてたよ。でも、お爺ちゃんから声がしても出てはいけないって。そう言われて。あとごめんなさい。怖かったんだ。何かわからないけど怖かったから丸くなってお布団被ってたらいつの間にか寝て朝になってたよ」

 「ぽぽ。ぽぽぽぽぽぽぽ。ぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽ。ぽぽぽぽぽ。ぽぽ」

 『よかった。それならいいの心配したわ。もう大事なお守り落としたらダメよ。お守りを失くしてもあなたのそばから離れないようにしたから。あとで中を見てね』

 「お爺さん。お姉さんすごくいい人だよ」

 「あっああ。そうだな。お嬢さんや。済まなかった。昔からの言い伝えがどこかでおかしくなってたようだ。あそこのお地蔵様は、儂が直すからどうかこれからも我らを助けて欲しい」

 「ぽぽ。ぽぽぽ」

 『ええ。まかせて』


話は無事に解決した。


 「ぽぽ。ぽぽぽ」

 『運転手さん。戻りましょう』

 「かしこまりました。よくお会いになられましたね。ありがとうございます。お客様をお送りします」

 「運転手さん。色々とご迷惑をおかけしました。窓越しだったので安心して話すことが出来ました」

 「いいえ。お客様も理解していただきましたし、お家の方々も納得していただけたようなので」

 「お爺さん。あとでお話があります。いいですね?」

 「婆さん。うっ腰が」

 「その手には乗りません。ああ。運転手さんちょっとまってもらえますか?」

 「はい。お客様少しお待ち下さい」


家の中に入り何かを取りに行く。


 「お待たせしました。こちらあちらのお嬢さん髪をまとめるリボンだとお渡しくださいますか?」

 「可愛らしいお色ですね。わかりましたお渡しします」


車に戻り庭への入口を少し借りて転回させ元の場所に戻る。


 「お客様。こちら、先程の女性がお客様にと。くださいましたよ。赤い大きなリボンですね」

 「ぽぽぽ!」

 『かわいい!』

 「ですね」

 「ぽぽ!」

 『付けてみる!』

 「ぽぽ、ぽぽ、ぽぽ。ぽ?」

 『りぼん、りぼん、りぼん、どう?』

 「よくお似合いですよ!」

 「ぽぽ!」

 『これで散歩するわ』


赤いリボンを付けた八尺様のとある田舎では大事にされたのでした。


八尺様を2m40cmの彼女と称しましたがいかがでしたでしょうか。

最後のリボンのくだりは、可愛らしさを表現したくて。

高身長スポーツ選手の結婚もあり、ふと思い浮かびました。

ご結婚おめでとうございます。


またみてね

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