5 契約の日
【豆知識】
ファーストネーム・・・氏名の下の名前のこと。
ミドルネームと言って、氏名の苗字と下の名前の間に「別の名前」を持つひとは世界中にちらほらいる。
シューイーズ・・・この作品の世界観では、円がそう呼ばれている。
ローザとの共演願いについて、意外な展開をした。
ディスクの面表紙の写真モデルと、
初回購入限定の、映像にまで出て欲しいと言われた。
少し困惑。
反響はかなりあるだろう、と母が言う。
母「どうする?」
僕「うーん・・・」
契約書をなんとなく読み返す・・・これで何回目だろう?
「母さんね、正直、これ、出てみて欲しい」
「・・・本当なの?」
「うん」
「じゃあ、それでいいや。仕事受けます」
先鋒「じゃあ、こちらにサインを。横にお願いします。ファーストネームを先に」
アキナ・アイゼン・ベルク
明那・愛染・鐘宮・・・なかなか珍しい名前らしい。
それから、横に日本語で書いてって言われたからカタカナで表記してしまった。
先鋒さんがそれを見て苦笑している。
母が先鋒の契約係さんに手を差し伸べ、「え」って言ったそのひとと握手をした。
母はどこか可愛いひと。
母「頑張りましょうね」
先鋒「自分の仕事はここで」
母「大丈夫、大丈夫、色々あるんだろうけど、気にするな」
先鋒「・・・ひ、久しぶりにぃ・・・ひとがいるぅ」
ちょっと表情を崩して泣き出した先鋒さんをなだめて、ティッシュとか渡した。
泣いてしまってごめんなさいぃ、と言ったあと泣き崩れる先鋒さん。
先鋒さんの背中を「大丈夫、大丈夫」とさすってあげる母。
見る人が見たら、「ださい」とか言われる家庭なんだろうな、とか冷静に思う。
僕はモデルの仕事の話が来たりする、ちょっとした美形だ。
スキンケアとかの件で、学校に行ってる頃は女子の輪にいた。
問題は15歳を前にして、だった。
僕を性的な意味合いで見始める同級生が増えて、僕が悪いみたいに言った。
魅力的なお前が悪いんだ、みたいに。
だから母と、家を引っ越した。
父と兄が残した遺産で、家賃4万シューイーズの一軒家に住んでいる。
なんたってこの家には、「ボシュン」と言う喋るうさぎがいる。
それを理由に、家賃が格安な一軒家だ。
貸主たちはどうも、生前身内が可愛がっていたボシュンを受け入れきれないらしい。
ってことで、母も僕もうさぎが好きなので同居している。
変な関係にはならないし、うさぎを食べないひと、て言う条件もクリア済みだ。
さて、仕事の契約をしたし、何を準備するのかって・・・
僕の場合、当日まで特になにも必要ないらしい。
家から現場まで付き添い兼見学希望の母と送迎されるらしい。
15歳でよかった。
その事務所は16歳から親の付き添いダメらしい。