4 突然の連絡
【豆知識】
お盆・・・おぼん。食べ物が入った食器などを運ぶためのもの。トレイ。
それは突然のことだった。
僕はカメラの付いたパソコンにて、執筆作業をしていた。
読み専だったけど、ここまで読んだら何かひとつでも描けないか、って言われた。
小説家を目指していた近所の爺が、そう母に言ってくれたから機会ができた。
それで小説執筆を試みてるところで・・・
そこにカメラオンのマークが出て、「え?」って思った。
執筆中の小説は自動保存されます、みたいに解説の枠が現われてほっとする。
画面にノイズが入って間があって、そこに映し出されたのはローザ。
「あ・・・あの、明那?やっほー」
「・・・はぁっ!?」
そんな感じでやって来た突然の連絡は、両想いであることを仄かに告げるものだった。
「あれから気になって・・・」
「大丈夫だったの?契約ってやつ??」
「うん。これ・・・」
そう言って画面に現われたのは、多肉植物の寄せ植えミニ鉢。
ローザはその時、金銭を持っていなかったから市で買ってあげたんだ。
「・・・本当に起こってることなの、これ?」
「≪どうしたんです?≫」
画面の向こう側にいるローザが唖然とした。
僕はボシュンと言う三月生まれのうさぎを飼っている。
二足歩行種で、人語もかなりできる。
個性だと言って、チョッキを着るのが好きだ。
「う、うさぎがチョッキ着て・・・喋ってるっ!?」
更に僕のひざに登ってきたボシュンが、画面の近くに寄る。
書いておくけど、うさぎがひざに乗ると、けっこうずっしりと痛い。
「≪あんれぇ~?いつもの軍のひとじゃないですねっ、って・・・ローザ!?≫」
僕「えーっと・・・ボシュン、ローザだよ~。ローザ、こちらボシュン」
「・・・ああ・・・説明なの?」とローザ。
「ごめん、説明がムズカシイ体質なんだ」
「ああ、うん、分かった分かった。俺も説明、ムズカシイかもしれないから」
「そうなんだっ?」
向こう側のSPさんの苦笑が聞こえた。
どういう意味だろう?
話はそれからそれて、仕事の依頼になった。
「君を見た事務所のお偉いさんが、モデルに使いたいって」
「・・・へ?」
「うーん・・・突然のことだよね。君のお父さんと昔馴染みらしい」
「それで、なに?」
「身長差で、モデルさんがなかなか見つからないんだ」
ローザは身長約160センチ。
先鋒に低身長気味のイメージに合うひとがいないらしい。
「まさかっ・・・ディスクの表写真とかの話をしてるのっ?」
「そうなんだ。俺、男の時にはモデル。次回、君がいいなって」
「本当なのっ・・・?」
「本当にしたい」
「分かった。本当だったら、迎えに来て?」
「それでいいの?」
「母さんに相談してみないと・・・」
「うしろにいるよ?」
「え?」
振り向くと、そこには飲み物と夜食をお盆に持った母の姿。
「お母さんね・・・大賛成!!」
「ああ、うん・・・」
どうやら契約のために、近々(ちかじか)事務所のひとが自宅に来るらしい。