3 すぐり
最近、0・5ミリくらい身長が伸びた気がした。
「髪の毛が増えたんじゃないの?」と母。
そうだね、髪を解いたらそう思った。
まぁ、豊かな髪の毛があるって、ある種の幸せだよね。
女のハゲほど悲しいものはない、って先祖が言っていた。
一応、僕は女子の部類・・・女性として生活しているっぽい。
ハゲたら多分、今よりも濃く「最悪だ」って思うんだろう。
なにも面白くない。
腕とか足とかに対して、ハゲる、って何も楽しくない。
綺麗にシールが家具から剥がれるくらいしか気持ちよくない。
小さい頃に大きめのシールを家具に貼ったんだ。
兄と一緒に。
兄は怒られそうになるのを「ほめてあげてよ」とか言ってくれた。
兄は優しいひとだった。
汚い部分が多分ないんだろう、ってくらいに。
優しいひとが好きかもしれない。
父も優しいひとだった。
僕も優しいひとでありたい、と切に思う。
そんな僕を好いてくれるひとはいませんか、って感じが、最近してる。
きっと恋の予感。
空想の相手とかじゃなくて、実在する・・・誰か。
それがローザだったらいいのに、ってやっぱり思ってた。
「すぐれてるひと」・・・僕の里のなまりなのかな?
「すぐり」。
僕的に、すぐれているひとは「本当の優しさを持ってるひと」だと思う。
何が本当なのかについて、うその優しさがあるもんだと思っている。
だから本当の優しさを持ってるひとがいい、って思う。
それは先祖から伝承されてきたもので、僕の一族はみんな「すぐり」と結婚した。
愛し愛されて結婚したら、すぐれている子供がきっと生まれる。
そんな考え方の一族で、僕はその件に感動してから、仕方ない部分を持ってるんだろう。
妙にひとの優しさにこだわってる気がする。
それは今の僕にはちょっとした大問題だ。
理想の相手が実在するのか分からないっていう、多感期。
そんな時に、「すぐり」だと思っていたローザに遭遇。
実在に気づいて、何かが目覚めた。
好きです、って素直に言えばよかった。
あの時。
嫌いじゃない、じゃなくて、好きです、って。
後悔していいのか分からない。
出会えただけで嬉しかった。
もうあとは、熱が冷めるのを待つだけだ。