【Chapter6】Once upon a time
一時は絶望を感じたもののヒナの励ましから見事に立ち直ったタカミチ。そこからの彼は近隣の地域の協力も得て、目覚ましい活躍を見せる。そんな彼の軌跡をヒナの弟・ゆうたと振り返る。彼の目指した未来に至るまでの道を。
舞台は、橘ゆうたのオフィス。
席についたゆうたは、大型モニターの電源を入れ、タカミチへ話をふる。
ゆ:それでは、あなたのこれまでの報告をもう一度復唱してみましょうか。
では、プロジェクター、たのみます。
た:はい。では僕が対応してきた軌跡を流します
記録として撮影した写真を元に、これまで何があったか。
タカミチは写真をモニターに映していく。
そしてゆうたはその軌跡を確認するかのように話し始める。
・・・・・・・・・・・
ゆ:四万十川の情勢を把握したあなたは、その首謀者でもある鮎宮寺健氏。通称アユケンの下へと向かった。
話から分かった情報として、四万十卍會。その幹部内での仲のこじれが原因で四万十町が混とんとしていく内部事情が分かった。
今のインフラの不備や治安の乱れは、ここが根本の原因と推定される。
幹部をまとめるアユケンはその内部の乱れを止められずに殺されてしまったとみていいだろう。
なんとか話を聞きだしていく中で、争いの渦中となる二人の情報が明るみになった。
1人は、四万十卍會1番隊長、林田 夏樹。通称「パーチン」。
そしてその副隊長として四万十下流から海へとつながるルートを仕切っていた男。
名前は分からなかったが、おでんが大好きだという事から通称「オデンスキー」と呼ばれている男。
オデンスキーがパーチンの下を離れてしまうと、四万十卍会は川から海への航路が閉ざされてしまう。それだけは何としても避けようとしたため、パーチンは過激な行動をとらざるをえなかったのだろう。
彼ら二人の衝突を避け、来るべき最悪の事態を起こさない世界戦実現のために、二人の説得へと捜査は進んでいく。
ゆ:彼らを陰で操る存在が捜査線上で明らかになる。外部組織『NATTO』が、外堀から四万十卍会をつぶしにかかろうとしていることが分かってきた。
NATTOがパーチンの副隊長オデンスキーを調略させ、アユケンの仲間達が追い詰められて無茶をしたのが、殺伐となった現在に繋がっているわけです。
NATTOの動きがまったく読めないあなたは、俯瞰して思いとどまってほしいという一心で、一人パーチン、オデンスキーの説得に向かいます。
しかしあなたは軽くあしらわれる。
将来どうなるかなんて伝えても肝心の証拠がない為、話にならずに何度も突き返されてしまいます。
衝突は不可避とすでに腹をくくったオデンスキーさん。
なにか大きなコネクションもないあなたの立場では正直変えることは厳しいと感じていました。万策尽き、自暴自棄となったあなたですが、ここからなぜか視点を変え、他の町の協力を得ようと動き出します。
ここら辺の柔軟な考え方は私でも思いつきませんでしたよ。たかみちさん、あの後何かあったのですか?
今までの流れを見ていくほどに、この後の行動から嘘のように解決に向かっていったような気がするんですが…
た:いや…ちょっとな。まぁこっちの事だよ。
タカミチはヒナとの会話を思い出し、苦笑いしながら少し言葉をはぐらかす。
ゆ:四万十町からはずれにある黒潮町、中土佐町。
こちらのエリアは鰹漁をはじめとした漁業が盛んでしたが、長きにわたり「酔鯨」というクジラの被害にあい、漁師を苦しめてきました。
そんな二つの町へあなたは交渉に行き、見事哺乳類課である酔鯨を手なずけ、漁業を復興ささせます。
日本中でも大きく取り立たされた「酔鯨討伐戦」ではあなたの知識が十分に役立ちました。
そんなあなたに恩義を感じた二つの町は、あなたと四万十町に対しての援助を申し出てくれます。
二つの町の陣営の力を得て、崩れかけていた四万十卍会の皆さんへの休戦に成功。一方的に内部の人間が説得しても変えられなかった。
…これは外からの声という俯瞰して見た視点あってこその勝利と言えます。
結果今に至るまで、争いは防げました。
…………タカミチさん。
やってくれましたね。
結果、四万十町は以前のように他地域から見限られた土地ではなくなりました。
昔と変わらない雄大な自然溢れる景色は守られました。
四万十町を仕切るアユケンさんがいない世界だと、またNATTOの策略などで内部抗争が始まる恐れがありますが、アユケンさんは存命。結果、町が彼を軸にまとまっていくでしょう。
たかみちさん。僕は正直あたながここまで未来を変えてくれるとは思っていませんでした。
でもここまで未来を変えられたんです。
だからこそ会ってあげてください。
…姉に!
た:ヒナ、生きてるんか!
良かった。マジで生きてるんだな!
彼女と一緒にここまで来れたんだ。
約束の未来にあいつをつれてってやれて良かったよ。
救えて…本当に…良かった…
少し涙ぐみながら感慨深い様子のタカミチ。
少し間を置いてタカミチは提案を話し始めた。
た:ヒナは今どこにいるんだ?
10年後だからキレイになってるんだろうな~きっと。
た:姉は今、学校の教師をしています。
今はまだ勤務中ですが、夕方には家に戻ってきますよ。
是非直接会っていただきたいのですが、もう暫くお待ちください。
御兄さん。
ゆ:お兄さんってちょっと照れるよな~
まぁそうでもあるかも…ははは…
た:姉と四万十町を救ってくれたんです。
ゆうたさんには感謝してもしきれませんよ。
この町を救ってくれた英雄に今日は家族でお礼させていただきます。
ゆ:そうか…なんかおまえにも苦労かけたな…
まさか“壁ドン”がこんな効果を生むなんて考えもしなかったし。
…“壁ドン”がまさかなぁ…
……というか、お前に壁ドンしてタイムリープできるっていうのは何も過去だけじゃないわけだよな。
ゆ:え?それはどういうことですか…
た:壁ドンでタイムリープして過去に行けたわけじゃんか。
だったら未来にも行けるんじゃないかって。
ゆ:未来にも行ける…確かに…
でも、そんなの今まで必死だったので考えもしませんでしたよ。
た:俺も今思いついたんだ。
でももし「未来に行ってみたい」って強く思いながら壁ドンしたなら…
ゆ:未来にタイムリープするのも不可能じゃないと…
た:そう、未来の俺たちがどうなってるのか無性に見てみたくなってきてさ…。
俺は…そう、ヒナとはもう結婚してて…
なんか子煩悩なパパとかになってるかもしれないし。
ヒナがかえってくるのは夕方だろ。
だいぶ時間あるんだし、その間少しだけでも見てみたいと思ったんだ。
行けたらの話なんだけど、ちょっとやってみてくれないか?
ゆ:まぁ未来に行って今が変わるわけではないと思いますので、いいですよ。
でもちょっと様子を見たらすぐに僕をみつけて戻ってきてくださいよ。
た:分かってるって。
俺たちの未来がどうなってるのか確認したいだけだから変な事はしないさ。
ゆ:分かりました。
では成功するかどうかは半信半疑ですが、やってみましょうか。
もうすっかり“壁ドン”に慣れた感じの2人。
ゆうたに壁ドンをして強く念じたタカミチ。
なんと彼の予想は当たり、見事に光とともに数年後の四万十川へたどり着くことが出来たのであった。
近未来の日本と世界情勢に関して少しでも沢山の方に感心を持ってもらいたいと思い制作しました。はじめは舞台脚本として2022年に執筆。ウクライナ侵攻が始まった年です。その時の情勢を若い世代にわかりやすく伝えるために、当時大人気だった「東京リベンジャーズ」のオマージュを入れつつ、決して重たくないコミカルな作品に仕上げています。
衝撃のラストまで全7部構成です。楽しみながら世界情勢に関して感心を持ってもらえたら幸いです。
引続き、この作品のいきさつを見てみたい方は、是非ブログへ遊びに来て下さい。
http://shu-darvish.com/2024/06/14/revengers/