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望郷リベンジャーズ  作者: DARVISH SHUSAKU
5/7

【Chapter5】1から…いえ、40010から!

 アユケン達主要メンバーにに会う事はできた。しかし未来の根拠のない話に取り入ってもらえないタカミチ。このままだと取り返しがつかない未来が待ち構えていると感じ焦るが、交渉は頓挫。『戦争は外交の失敗』と言われるが、自分一人ではどうしようもできない事を痛感していた。

起こるかどうか分からない彼の話に耳を傾けようともしない。次第に無力感を抱く様になり、彼は絶望に打ちひしがれていった。

うつむき加減で町をあてもなく歩くタカミチ。


た:ああ…もうどうすりゃいんだよ。

藁をもすがる思いで協力仰いだって誰も親身になって助けてくれない。

どいつもこいつも未来の事より今の事ばっかりかよ。

結局みんな自分が一番可愛いんだ。

未来を良くしようとか口ではどうとでも言える。

でも本当に変えようとしているやつはいない。

現状維持っていうゆるやかな衰退を本心では望んでんだ。

自分の面子を守りながら逃げ切れることを見越して。

もう救いがねぇよ…このクソみたいな町はよ…


一人ででも変えようとしたって反発食らうばかりで…

足引っ張って何が楽しいんだ。

ゆうたもゆうたでなんか有益な情報くれるかもと思ってたのに、結局精神論かよ。

(哺乳類の手なずけ方とか)関係ない資料しかないし、どう話付けていけばいいんだよ…

会って話する事すら叶わなくなってしまった…

…もう絶望的じゃねぇか…


ふと向かいから見覚えのある人影が。

ヒナタだった。



ヒ:あれ?タカミチ君…だよね。

なんか疲れてる感じだけど大丈夫。


た:あ、…そうだな…疲れてるのかもしれないな


ヒ:なんだかひどく顔が引きつってるけど…


------------------



その時だった。

ヒナを見て、何かハッと閃いたのか勢いよくヒナの手を掴んでタカミチは走り出した。


まるで何かから必死で逃げるように。


急に手をつかまれて走り出す現状に我に戻ったヒナタは、数メートル程走った後手をふりほどき、諭し始める。


------------------


ヒ:どうしたのよ。タカミチ君。急に走り出したりして。

わけわかんないよ。どこ行くかも全然言ってくれないし。


た:あ…あぁ。ご免。疲れててさ…なんかどうでもよくなってたのかもな…


ヒ:大丈夫?病院行く?


た:あぁ…そ、その…大丈夫だ。

なんかさ…その…やっと落ち着いたよ。

やっとなんか、「俯瞰して自分を見る」ってのが出来るようになったのかも…な…そうだよ。やっとわかったよ。

そうだよ…初めからこうすれば良かったんだよ。

まったく思い上がるにも程があるってことだ。


ヒ:何言ってるの?


た:ヒナ…


ヒ:うん。



頭を下げ、そっとヒナに向けてを差し出した。祈るような思いだった。



た:俺と一緒にこんな町出よう。

俺なんかがなんかしたところでダメになるだけだ。

この町にいちゃいけないんだ。

四万十町にいても俺は何もできない。

だからって色々画策しても無力さは変わらない。

それがよく分かったんだよ。だから俺と出ていこう。ヒナ。


ヒ:え、出ていくって…


た:俺か、俺以外か…選んでくれ。

高速バス使って東に向かおう。高知を出てずっと東。東京だ。

そこの世田谷あたりで小さなアパートでも借りて二人で暮らすんだ。

辛いことがあってもおまえがいればきっと頑張れる。

どれだけ疲れてもおまえが待っててくれるって思えばきっと…」




少し呼吸を整えてタカミチは話つづける




た:俺を選んでくれ。俺を選んでくれれば俺の全てをおまえに捧げる。

だから俺と一緒にこんな町出よう。俺と生きてくれ。


ヒ「たかみち君…


私はたかみち君と出ていく事はできません。

だって“その未来”を本当に望んでいるような顔じゃないから…

その選択をして本気で後悔無いって感じがしないんだもん。

町を出ていくって言った時、私と一緒にいたいと思ってくれたことが、今は心の底から嬉しい。


でもダメ。あきらめるのは簡単だけど、それは今のたかみち君の本心じゃないでしょう。

たかみち君がどんなにつらい思いをしたのか、何があってそんなに苦しんでいるのか、私にはわからない。

分かるなんて軽はずみに言ってはいけないと思う。

でも自分にだって分かってることがある。

あなたの本心はそんな簡単にあきらめられないってこと。」


た:諦めるのは簡単だぁ?

ふざけんな!

諦めるのが簡単なわけ無いだろうか!

もう悩んだんだ…考えたんだ…苦しんだんだ。だから諦めたんだよ。

諦めるのは簡単なんかじゃなかった。

戦おうって、どうにかしてやろうって、そう思う方がずっと楽だったよ。

だけど、どうにもならないんだよッ!!

道がどこにもないんだッ!!

諦める道にしか続いてないんだ!!

何とかできるんなら……俺だって、俺だって……

だから諦めたんだよ。

俺みたいなのがなんとかしようなんて、どだい無理なことだった。

お前におれの何が分かるんだ。俺はこの程度の男なんだよ。

力なんてないのに、望みは高くて。

知恵もないくせに、できることなんてないのに、無駄に足掻いて。

俺は……俺は、俺が大っ嫌いだよッ!!

いつだって何ができるわけでもねえのに…

自分じゃ何もしねえくせに文句をつけるときだけは一人前だ。何様のつもりだッ!?

よくもまあ、恥ずかしげもなく生きてられるもんだよなあ!?

……空っぽだ。俺の中身はスカスカだ。

俺がこの年まで、何をしてきたか分かるか?

逃げ続けてきたんだ。

何一つ現実に向き合わず逃げてばっかだった。何もやってこなかった!! 

その結果がこれだ!!

その結果が今の俺だ!!

俺の無力も無能も全部が全部……俺の腐りきった性根が理由だ。

何もしてこなかったくせに、何かを成し遂げたいだなんて、思い上がるにも限度があるだろうよ!

怠けてきたツケが…

俺の盛大な人生の浪費癖が……

おまえやこの町の未来を殺すんだ。

俺はただ何もやってないわけじゃないんだって、分かりやすいポーズをとって自分を正当化してただけだ。

しょうがないって言いたい。

仕方がないって言われたい。

俺の根っこは……自分可愛さで人の目ばっかり気にしてるような、小さくて卑怯で薄汚い俺の根っこは、何も変わねえ!!

本当は分かってたさ……全部、逃げた俺が悪いんだってことぐらい。

俺は最低だ……俺は俺が……大嫌いだよ……



タカミチが話し終えた後、間を置いてヒナは言葉を発し始める。



ヒ:私は覚えてます。あなたが言ってくれたことを。

ここで…この町にいるお前が好きだって告白してくれたじゃない。

なのに簡単に未来を諦められない人だっていうのを知ってます。



また少し間を置いて静かに話し続ける



ヒ;…四万十川で育った鮎が好きです。

川の質が良い分、他の川鮎と比べてもおいしさの質が全然違うから。

県外からわざわざ鮎釣りにやってくるくらい人気なんです。


ヒ:四万十川で育ったお茶が好きです

渋みと香りがとても上品で、自分でお茶をたてたいと思えるほどの魅力がある逸品だってこと。

ペットボトルなんかに閉じ込めるのがもったいないくらい。


た:やめろ…


ヒ:四万十川で育ったお米が好きです。おいしさを引き出す特殊な技術なんか使われていて全国コンクール受賞レベルなのも伊達じゃないくらい。

そんなお米が…好きです。

…おいしいです。


た:どうして…


ヒ:たかみちくんがこの町のことを嫌いだって言うのなら、いいところがこんなにあるって、私が知っていることを知って欲しくなったから。


た:そんなものはまやかしだ。

全国どこ行っても似たようなものはある。お米なら東北とか…

お前は分かってないだけだ。

この町のことは自分がいちばんよく分かってる!


ヒ:タカミチ君は自分の見た四万十町のことしか知らない!

私が見ている四万十町のことを、どれだけ知っているの?


ヒ:私がいます。 たかみち君の言葉なら何だって聞きます。聞きたい。


た:誰にも期待されちゃいない。 

誰も俺を信じちゃいない。 

俺は俺が大嫌いだ。


ヒ:大丈夫です。 

空っぽで、何もなくて、そんな自分が許せないなら、 

今、ここから始めましょう?

1から…いいえ、 40010(しまんと)から!!


た:その言い方、ちょっと無理あるんじゃね?



ヒ: と~に~か~く!

一人で歩くのが大変なら、私が支えるから。

だから格好いいところを見せてよ。たかみち君。



しばらく間を置いてからタカミチは話し始めた。



た:ヒナ…


ヒ:うん。


た:俺はこの町が好きだ。


ヒ:うん。


た:この町の未来を救う手助けがしたい。辛くて苦しい未来がこの町を襲うんなら、みんなで笑っていられる未来に連れ出したい。


ヒ:うん。


た:手伝ってくれるか?

俺一人じゃ何もできない。

俺は何もかもが足りない。

まっすぐ歩けるような自信が無い。

弱くて、もろくてちっぽけだ。

だから、俺がまっすぐ歩けるように、間違っても気づけるように手を貸してくれないか?


ヒ:ふっ…たかみち君はひどい人だね。

バイト上がりでクタクタの相手にそんなことを頼むの?


た:俺だって疲れてるおまえににこんなこと頼みづらいよ…



お互い少し笑った後、間を置いてからヒナは答える。


ヒ:謹んでお受けします。それであなたの望む未来にたどり着けるなら…




ここからもう一度始めよう。そう決意したタカミチであった。

 近未来の日本と世界情勢に関して少しでも沢山の方に感心を持ってもらいたいと思い制作しました。はじめは舞台脚本として2022年に執筆。ウクライナ侵攻が始まった年です。その時の情勢を若い世代にわかりやすく伝えるために、当時大人気だった「東京リベンジャーズ」のオマージュを入れつつ、決して重たくないコミカルな作品に仕上げています。

衝撃のラストまで全7部構成です。楽しみながら世界情勢に関して感心を持ってもらえたら幸いです。

引続き、この作品のいきさつを見てみたい方は、是非ブログへ遊びに来て下さい。

http://shu-darvish.com/2024/06/14/revengers/

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