【Chapter2】タカミチ君って…いつも急に来るね
近未来の日本。過疎化で荒廃した故郷・高知県から逃げてきたタカミチ君。しかし、ある日故郷のインフラ整備が不十分だった事で昔の彼女・ヒナが道路事故に巻き込まれ、亡くなってしまったという訃報を聞きつける。葬儀のため急いで故郷に戻ったタカミチは、その時公務員をしていたヒナの弟ゆうたを問い詰める。問い詰める時に偶然「壁ドン」をした時、タカミチは過去へタイムリープをしてしまうのだった。過去に戻った自分を理解し始め最初に彼が会いに行った人は…
どういうわけか過去の故郷に戻ってしまったタカミチ。
ここはどこなのか?
そんな疑問は町を歩いていくうちに理解できた。
どうやらここは俺が社会人になってすぐ。そう…まだ学生を卒業したばかりの頃の四万十町だ。
新聞やネットで状況は理解できた。
本当にまだ信じられないんだけど、ここはそう…10年くらい前の2021年。俺がこの町を見限って逃げ出した直前だってこと。
た:そうだ…「仕事も魅力もないこんな町に未来はない」とか言って、ここを飛び出して逃げていく前の段階だよな。
(でも、ここからの俺は実際、現実から逃げてばかりの人生だった…
何もかも逃げてた。そう、好きな人でさえも。
…でも今は逃げる前。
とすると…まだヒナは生きてる!
まずは確認だ。ヒナに会いに行こう。
本当に昔の四万十町に戻ってきるんだったら
…橘家にはヒナがいるハズ。
…信じられないけど、生きているヒナに合えれば確信できる。
葬儀の後でとても信じられないけど会いにいってみるか…
・・・・・・・・
半信半疑の中、足を進めるタカミチ。
彼女の家に行く途中、公園で子どもがいじめられているのを見つける。
た:おいそこ!なにやってんだ!
いじめっこ:あ、やべぇ。大人だ。くそっ運が良かったな!けっ
た:まったく、人を見た目だけで選びよって…ろくな大人にならねぇぞ!
おい、大丈夫か?
いじめられた子:ありがとう、おにいさん助けてくれて。
た:ああ、…ん?その覇気のない声はなんか面影があるぞ。
まさか、橘…ゆうた?か??
そのいじめられていた子は橘ゆうた、彼女の弟だった
ゆうた(以下”ゆ"):確か、おねえちゃんとよく一緒にいた…
た:間違いない!あぁそうだ。タカミチって言うんだ。覚えておけよ。
将来絶対にカリを返してもらわなきゃだからな…
ゆ:借り? …将来?
た:まぁそこは今は深く考えないでいい。「今は」だ。
それよりもゆうた!
突然だけど聞いてほしいことがあるんだ。
おれはお前のねえちゃんが大好きだ。それを交えたうえで真剣に聞いてほしい。
マジでちゃんと聞いてくれるか?
ゆ:うん…。
不安そうな顔ではあるが、自分を助けてくれたその人物を恐る恐る見る。
た:信じてくれなくてもいいけど…ホントちゃんと聞いてくれよ。
この先なんだけどな、今はちゃんと理由は分からないけど四万十町は滅茶苦茶衰退する。
町外と内乱起こしたりして、国からの印象が悪くなって税金とか入れてくれなくなるらしいんだ。
道路とか修繕してくれなくなるんだ。
想像できるか?
信じられないと思うけど、10年後の未来、そんな荒れ果てた四万十町で道路の事故に巻きこまれて、おまえの姉ちゃんは死んでしまうんだ。
そこでのおまえは役場勤め…をしてたんだけど…正直会って感じたよ。
おまえはねえちゃんが死んだってのに「仕方ない」「しょうがない」って言ってばかりのうつむき加減の弱弱しい表情している奴だった。
今のお前の根っこは将来も変わってない。
だからゆうた!おまえは警察、そう、警察官になれ。
ねえちゃんの事故を未然に防ぐためにも、役場じゃなくて警官になって、来るべき問題をきちんと解明する側になってほしい。
来るべき日、っと…これだ。この日。
メモ渡しとくから事故にまき込まれないようにねえちゃんを守ってやってほしい。
分かったな!。姉ちゃん、大事にしろよ。
ゆ:うん、なんだか突然で信じられなかったけど…僕が公務員を目指してた事、誰にも話したことなかったのにタカミチさんが言い当ててくれたから…一応信じて覚えておく。警察官だね。分かったよ。僕、警察官になるよ。
た:よし、未来のおまえよりいい返事だ。
男と男の約束だぞ。破んなよ!
じゃ、生きてるっていうと変だけど、生きてるねえちゃんに合わせてくれないか。自宅まで見送りしてやるからさ。
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この時代のゆうた、ヒナタの弟と約束を交わした後、ついに橘家へ向かう。
そう、彼女の家へ。
幼いゆうたに出会ったタカミチではあったが、まだ半信半疑だった。
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ゆ:ちょっと待って下さい。姉を呼んできます。
た:信じられないけど、生きてるんだよな。
本当に過去に戻ってきたんだよな…
もしかしたら階段から落ちたとかで長い夢を見てるだけかもしれねえ?
けど、きっと……神様が最後にもう一度、ヒナに会わせてくれたんだ。
橘ヒナタ(以下“ヒ”):どちら様ですか?
って、あれタカミチ君。
どうしたの?…っていうかさ…タカミチ君って…いつも急に来るね。
急に彼女に会い、生きている実感を得たタカミチは思わず涙ぐむ。
感情が抑えきれなかった。
た:ヒナ……あれ? 何で、泣いてんだ俺?
ヒナ…なのか?ヒナだよな?良かった本物だ。良かった。
その…ヒナ…無事で良かった。
本当に良かった。本当に……
…俺、どうしてもヒナに伝えたいことがあるんだ。
タカミチは感じた。
(未来の事実をきちんと伝えておかないといけない。そのためインパクトのある伝え方をしよう!彼女の命がかかってるんだから!)
た:ヒナ!絶対に近い将来、財政とかがまずくなって道路が荒れて事故が多発しはじめる、ここで暮らすんじゃなくて他の土地へ移り住め!この地を出ろ!
ヒ:どうしたのよ。怖そうな顔して。
そもそも無事って大げさよね~。さっきまでバイト行ってて戻ってきただけだよ。
た:(どう伝えたらいい…未来の話を普通に言ってもきっと信じてくれないし。逆に不吉がられて聞いてもらえないかもしれない…でもなんとか伝えておかないとこのままじやヒナが死んでしまう。
どう伝えばいいんだ…
なら…なら、いっそ壁ドンでもしてインパクトをつけてから……そんな…この頃ってまだ付き合って間もなかったのにそんな大胆な事したらキモいとか思われるんじゃ…
いやいやいや!恥ずかしがってる場合じゃない。ヒナの命がかかってるんだ。伝えるんだ!)
た:ヒナ!
ヒ:どうしたのよ。泣いたり急に真剣な顔になったり、今日のタカミチ君はほんと変!別人みたい。
た:どうしても伝えたいことがあるんだ!
俺の顔をよく見て!…たのむ!聞いてくれ。…って、おっとととと。」
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意を決して、勢いで告ろうとヒナに向かって壁ドンして話そうとするタカミチ。
…と、態勢が滑ってしまった。
そしてその勢いでよろけたタカミチは、となりにいた弟のゆうたに向けて壁ドンをしてしまった。
その途端、また葬儀の時に起きたような光に包まれたのである。
た:またこの感覚だ!
近未来の日本と世界情勢に関して少しでも沢山の方に感心を持ってもらいたいと思い制作しました。はじめは舞台脚本として2022年に執筆。ウクライナ侵攻が始まった年です。その時の情勢を若い世代にわかりやすく伝えるために、当時大人気だった「東京リベンジャーズ」のオマージュを入れつつ、決して重たくないコミカルな作品に仕上げています。
衝撃のラストまで全7部構成です。楽しみながら世界情勢に関して感心を持ってもらえたら幸いです。
引続き、この作品のいきさつを見てみたい方は、是非ブログへ遊びに来て下さい。
http://shu-darvish.com/2024/06/14/revengers/