03 兄弟まとめて売られた子たち。残された二人。
鷹羽飛鳥さんに残された二人のことを言われて、完全に忘れていたことに気がついて書きました。
兄弟四人が急にいなくなって寝床が広くなったと喜んでいられたのは二〜三日だけだった。
父ちゃんと母ちゃんに「兄ちゃんたちはいつ帰ってくるの?」と聞くと「もう帰ってこないから口にするんじゃない!!」と叱られた。
「ベルは?お母ちゃんのお乳がなかったら死んじゃうんでしょう?」
「ベルも帰ってこないからもう口にするんじゃない!」
父ちゃんのあまりの剣幕に残された二人は両親のことが怖くて仕方なかった。
残された子供二人は家にいるのがなんだか怖くて家にはなるべく居ないようにした。
父ちゃんと母ちゃんは「家の手伝いをしな!」と怒るが「兄ちゃんたちがいないのにおらたちに何ができるっていうんだよ!!」
父ちゃんが持っていた茶碗を投げつけて「アイツラのことは話すな!!って言っただろう!!」
「知ってるんだからな!父ちゃんが酒を飲みたいからって兄ちゃんたちを売ったって村の皆が言ってるんだ!」
そう口答えした日は家から放り出された。
翌日母ちゃんに「二度と居なくなった子たちのことは口にするな」とまた言われた。
母ちゃんはまたお腹が大きくなり女の子を産んだ。
産まれて直ぐの子はたった十日程でいなくなり「また売ったんだな?!」 と母ちゃんに聞いたら「だったら何だって言うんだ!!」と言われてぶたれた。
残された二人は必死で考えた。もう少し大きくなったら売られるに決まっている。
前に人買いの人が言っていた。
『後二年ほどで買える』って言っていた。
次はおら達が売られる。なんとかしなきゃ!!
兄ちゃんたちが売られた春先にまた人買いが村を回っているのに出くわした。
おらはその人買いに「売りたい人がいるんだ!二人!!」
人買いはおらが言ったことを面白がるように「誰を売りたいんだ?」
「父ちゃんと母ちゃんを売りたいんだ!!」
「ほ〜。父ちゃんと母ちゃんを売ったらどうやって生きていくんだ?」
「街の孤児院に連れて行ってくれ!!」
「厚かましいお願いだな」
「父ちゃんと母ちゃんを売った金でなんとかならないか?」
「なるほど・・・。まぁ、いいだろう。お前の父ちゃんと母ちゃんを銀貨一枚で買ってやるよ」
「ありがとう」
おらは妹の手をギュッと握って、銀貨一枚を人買いからもらった。
「家はどこだ?」
「こっちだ」
人買いを家へと案内して、母ちゃんを荷馬車の中にある牢へ放り込んで、母ちゃんが叫んでいたけれど、人買いは母ちゃんの叫び声が聞こえないのか、知らん顔をしていた。
あまりにも大きな声で母ちゃんが叫ぶから近所の人が何事だ?と見に来たが、母ちゃんが牢の中に入れられているのを見て、父ちゃんがとうとう母ちゃんを売ったんだと納得していた。
その騒ぎを聞きつけ父ちゃんが家に帰ってきて、人買いの人に食って掛かったけれど、一撃で倒されてしまった。
自分の父ちゃんながら情けないと思って見ていたら、父ちゃんも牢に入れられ人買いは村長を呼んだ。
「この家の子供が親を売ったんだ」と伝えると村長は驚いて「そんな事できるのか?」
「当然、親でも買うよ。働けないのは困るがな。子供達は街の孤児院へ連れて行ってくれと言われたから、連れて行く。残った家や畑は村で好きにすればいいだろう」
人買いは村長に伝えるとおらたちに「馬車に乗れ」と言って馬車の御者席に乗せてくれた。
目を覚ました父ちゃんが「なんで俺達がこんな所に乗せられているんだ!!」と叫んでいる。
人買いがクツクツ笑って騒ぐ父ちゃんに、おらの頭を撫でながら「坊主に売られたんだよ。父ちゃんと母ちゃんを買ってくれってな。だから親二人を銀貨一枚で買い取ったんだよ」
「なっ!そんな事ができるわけないじゃないか!!」
「俺は買ってくれって言われて、買える相手なら買う主義だからな」
人買いはとても楽しそうに笑う。
「いままで子供を売ってきたんだ。子供に売られることもあるだろうさ」
街に着いて孤児院に連れて行ってくれて孤児の偉い人に話をつけてくれて、おらと妹を預けてくれた。
そこでは家にいたときより沢山食べ物を食べさせてくれた。自分のことはあまりわからないけど、妹がふっくらしてきているのが解る。
孤児院にいる子供達の話を聞いていると、孤児院でもここは特別いいところらしい。
成人しても仕事の斡旋もしてくれるらしい。
おらはいい孤児院に連れてきてくれた人買いの人に感謝した。
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「大人のお前たちには島送りしか仕事がないから覚悟しておくんだな。死ぬまで重労働だ。動けなくなったら直ぐ殺されるから気をつけるんだな」
「こんな事ありえないだろう!!」
「俺も長いこと人買いをしているけど、初めてだよ。感動したねー。ただ売るだけじゃなくて、孤児院に連れて行ってくれって言ったところが気に入って、お前たちを買うことにしたんだ。お前らが売った息子と娘は全員幸せになっているよ。去年連れいていった産まれて直ぐの赤ん坊は豪商の子どもとして買われた。だが残念ながらお前達に幸せな未来は待っていないけどな」
人買いは港に両親を連れていき、金貨一枚で二人を売り、二人は牢に入れられたまま船に運ばれた。
騒ぐ両親に「お前たちの子供のほうが聞き分けが良かったよ」と頬を掻きながら苦笑した。