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02 兄弟まとめて売られた子たち。ベル。

奇形児が産まれ、隠すという部分があります。

ご不快に思う方は読まれないほうがいいかと思います。

 私は子爵家のクランベルトとして何の苦労なく育てられていた。

 両親からはあまり愛されているとは言えなかったが、妹達は私に懐いていたし、仲も良かった。

 貴族学校を卒業する一ヶ月前に、両親に父の執務室に呼び出され「大事な話がある」と言われた。


 その話はひどい話だった。

 母がクランベルトを産んだけれど、その子は両足がない子として生まれてしまった。

 焦った両親はクランベルトの表の顔を演じてくれる者を求めて、クランベルトと良く似た子供を探して、私を金貨一枚で買い求めたのだというのだ。


 今まで入ってはいけないと言われていた最上階の部屋へ連れて行かれ、本当のクランベルトと私は初めて会った。

 よほど似た子を探したのか、私と本物のクランベルトは良く似ていたことに驚いた。


 私には婚約者がいるけれど、本物のクランベルトと結婚することになっていて、私は表向きのクランベルトを演じるだけだと言われた。

 結婚式を上げるのは私だけれど、宣誓書にサインするのは本物のクランベルトだというのだ。


 あれほど心の交流を持たされた婚約者のアエルラとは肉体的接触を禁じると言われた。

「お前は買われてきた農家の六人目の子供でベルとかいう名前だと聞き覚えている。親は金で子供達を売り渡すような人間らしい」


 両親から愛情は感じられなかったけれど、あまりにも酷いと思った。

 私は婚約者のアエルラを愛しているのに!!

 本物のクランベルトにアエルラを取られるというのか?!

 今更農家の子どもだと聞かされてどうしろと言うのか?!


「アエルラはそのことを知っているのですか?」

「当然知っている。何度も会わせているし、交流も交わしている」

「私一人が本当のことを知らなかったのですね?」

「そうだな・・・。農家の子供が貴族の子として育ってきたんだ。文句はあるまい!これからも表向きには何も変わりはない。ただアエルラと身体的接触を持てないだけだ」


 それが!それがどれだけ酷いことなのか解からないのか?!

 両親ではない人達に何をどう言っても受け止めてもらえることはないだろうと私は早々に諦めた。


 両親だと思っていた人達に言われたことを、聞かなければならないんだ。

 金貨一枚で買われた子供だから・・・。


 

 結婚式が行われ既にクランベルトがサインしてある宣誓書にサインするふりをして、アエルラにペンを渡してアエルラがサインする。


 触れないように頬に口づけをして、披露宴でこの世の幸せは全て自分にあるような顔をして、沢山の人と挨拶をした。

 今夜、アエルラは本物のクランベルトに抱かれるのだろう。

 そして子供が出来たら、私の子どもとして育てることになるんだ。


「私の性欲のはけ口はどこに向ければいいですか?買われた子だから、誰にも触れることは許されないのですか?」

「アエルラ以外なら、メイドに手を出してもかまわない」

「私が作った子供はどうなるんですか?」

「他所へやることになる」

「それは売られていくということですか?」

 両親はそのことにはっきりした返事はせず、有耶無耶にした。

 


 アエルラの執事とメイド二人が、私を見てはいつも嬉しそうにしているのを、不思議な気持ちで見ていた。

 私には何の記憶もないけれど、私と似ている気がしなくもない。


 私は一度手紙を書いた。

 それから何度か手紙のやり取りをして、私の本当の兄弟なのだと知った。

 兄や姉は私の幸せを心からうれしく思っていたが、私は幸せなんかじゃないと思った。


 兄に詳しい事情を手紙で知らせて、売られた子供は幸せになれないんだ。と伝えた。

 兄からはアエルラ様のことはとても残念だけど、もし子供が出来た時は、兄達が引き取って育ててくれると言った。


 私はそれで心が軽くなり、アエルラと友人関係より濃密な関係を築けていた。

 互いに口には出来ない本物のクランベルトの不安をアエルラは誰にも聞こえない小さな声でこぼしていた。

 私も実の両親だと思っていたのにと、悔しさをポロポロとこぼした。

 誰よりも中のいい夫婦を演じながら、アエルラは本当のクランベルトとの性交が怖くて仕方ないと思っているようだった。

 

 本物のクランベルトは体が思うように動かないことが腹立たしいのか、アエルラにきつく噛みついたり、力が強すぎて、ちょっと掴まれただけで体中に青あざが出来るのだそうだ。

 いつも体表が隠れる服を着ていたから全く気が付かなかった。


 私は両親に安心してもらうためにもお気に入りのメイドに手を付けて、日々楽しんでいた。

 メイドが妊娠しないように気をつけていたけれど、二年程経ったとき、妊娠させてしまった。


 私は兄に連絡を取り、メイドが妊娠してしまった。と伝えると、アエルラの元執事としてやってきて「グランベルト様がメイドに手を付けてしまったそうですね?アエルラ様がとても不快なので、そのメイドを何処かへやるようにと仰せつかってまいりました。メイドの紹介状だけいただければ、こちらで対処しようかと思っております」


 そう言って、メイドを連れ去っていってしまった。

 私はこれで我が子が売られる心配がなくなってホッとした。

 私のような不幸な子供にしたくなかった。


 産まれた子は男の子で、ベルトと名付けられ兄の子として、執事の教育を与えることになると書かれていた。

 私が手を付けたメイドは、子供に乳を与える必要がなくなったら、別の屋敷へと働きに出ていった。と聞かされた。


 アエルラはなかなか妊娠しなかったが、四年目でやっと妊娠し待望の男の子を生んだ。

 アエルラは嫡男を産んだのだから、本物のグランベルトと閨を共にしたくないと本物のグランベルトに伝えてしまい「出ていけ」と言われたが、私の妻としてこの家に居座った。

 本物のグランベルトの子供が三歳になった頃、アエルラはまた妊娠した。それは、俺の子供だった。

 両親は酷く怒ったが、私は強姦されたようなものだった。

 とても心弾む楽しいものだったが。


 眠っているとアエルラが私の上に乗り上げてきて、私を起立させ、咥え込んだのだ。

 アエルラは「嫡男がいるのですもの。問題ないでしょう?嫡男以外は何処かへ婿入するのですもの。わたくしも苦痛だけでなく、体の満足を得たいですわ」といけしゃあしゃあと両親に言ってのけた。


 本物のグランベルトが誤飲で亡くなり、誰にも知られないようにひっそりと家の中から出された。


 本物のグランベルトが亡くなってしまったことで母が後を追うように亡くなり、その一年後父までもが亡くなった。

 この家の実権は私が握ることになった。

 アエルラと二人で中継ぎとして領地経営を、家の全てを引き継いだ。


 心労が重なったのか執事が死にその妻のメイド長は辞めていった。

 本物のグランベルトを知っているものはいなくなった。

 嫁いでいった妹達も、私が本当の兄だと思っている。

 

 数年後、本物のグランベルトの子供は、好きな女の子ができてその子が嫡子なため、婿養子になりたいとアエルラに相談してきた。

 アエルラは許可を出し、私も喜んで結婚を認めた。

 そして、その婚姻を取り結んだ。

 本物のクランベルトの子供はとても幸せそうにこの家から出ていった。


 そして私とアエルラの子供がこの家の後継者となることになった。

 アエルラと私の間には五人の子供がいる。

単話と言いながら、三作ものになってしまいました。

後一話続きます。ほんと、ごめんなさい。


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― 新着の感想 ―
[良い点]  うわぁ、貴族だなぁ。  アエルラは、うまいこと乗っ取りを成功させたのですね。
[一言] 子爵家の人々は本当に事故や病気だったんですかねえ…?
[良い点] 何かの寓話のようです。 このような話を書けることに、憧れてしまいますを
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