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侯爵様の子を売ったら奴隷印を刻まれて用無しになると売り払われた

 女衒は最近ツイていない。

 買ってくれと言ってくる子供はどの娘も醜女(しこめ)で銀貨一枚で買うことも出来ないような子供ばかりだった。

「醜女は人買いに売れ」と言って断ったのは一体何人目だろうか?


 何処かに振るい付きたくなるような女に育つ子供はいないものかと子供に目を走らせていた。

 そんな自分に嫌気が差して暫く村を回るのを止めて町で酒を飲んで(くだ)を巻いていた。


 そんな俺の前に振るい付きたくなるようないい女が通り過ぎた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 私は自分の子を買ってくれる人買いか、女衒を探していた。

 欲しくて産んだ子供ではない。

 貴族に手を出されて、抵抗しても不敬だと脅されながらいいように扱われて妊娠したと解った途端にあっさりと捨てられた。

 

 自分一人暮らしていくのが精一杯の世の中で、愛してもいない男の子供を一人で育てることなど出来るものではなかった。

 

 そして男に声を掛けられた。

「お前さん、自分を売ってみないか?」と。

「馬鹿を言いな・・・でも、私の子を買ってくれないかい?」

「ほぉぉ・・・女の子かい?」

「そうだよ」


「ご面相を見てからだな」

「あんた女衒かい?」

「そうだよ」

「うちの子は美人だよ」

「なら会わせてもらおうか」


 女衒を引き連れて我が家へと帰ると子供の泣き声が聞こえた。

「やかましい子だよ」

「なんだ、自分の子は可愛くないのかい?」

「可愛くない理由があるのさ」


 女衒は私の子を見て「銀貨一枚で買う」と言った。

「もうちょっと高くならないのかい?」

「ならないね」

 溜息一つで私は侯爵の子供を銀貨一枚で売り渡してやった。

 気持ちがスッキリした。



 それから五年の月日が経ち、私を(はら)ませた侯爵が子供を引き取りに来たと言て私の前に立った。

 私は嗤って「そんな子供、銀貨一枚で女衒に売り飛ばしたよ」と言ってやったら真っ青になって「なんという女衒だ?!」と怒鳴りつけてきた。


「そんなの知らないよ。歩いていたら声かけられて子供を買ってくれると言ったから売っただけさ」

 私は侯爵様に殴られて、馬車に乗せられた。


 女衒が集まる場所に連れて行かれて「子供を売った女衒を見つけろ」と言われたが何年も前に一度だけ話した女衒の顔なんか覚えていなかった。


 侯爵様は私に奴隷印を刻んで見つけるまで女衒を探すように命令された。

 監視に使用人を一人付けられて。


 私は侯爵様にも使用人にも「女衒の顔なんか覚えていない」と何度も訴えたが「見つけられなかったらお前を殺す」と血走った目で言われて私は震え上がった。

「いまさらなんで子供を探すんだい?」

「お前が気にするようなことではない!!」

 そう言って蹴られて殴られた。


 侯爵様にはそう言われたが私を監視している人が教えてくれたのは侯爵様が病気になって子供が作れない体になったたために血の繋がった私が産んだ子が必要になったということだった。


 ありがちな話にバカバカしくなって、私は侯爵家に食べさせてもらっている今の状況も悪くないと思いながら、女衒が行き交う特殊な村を眺めていた。


 泣き喚く女に、悪口雑言を人買いに言う男達を見ているといつぞや聞いたセリフで声を掛けられた。

「お前さん、自分を売ってみないか?」と。


 私を監視している人に「多分この人だよ。子供を売ったのは」と伝えると女衒のほうが考え込んで「あぁ、お前は子供を売った女だな」と言った。

「久しぶりだな。お前さんはやっぱり買えないねぇ。見た目はいいのに本当に残念な女だよ」

 と馴れ馴れしく肩を抱いてきた。


 私を監視している人が女衒に「この女が売った子供を買い戻したい」と伝えると「もう店に売ったからそっちで買い戻してくれ」と売った店を教えられた。

 店に行くと私の娘は格子の向こうで楽しそうに笑っていた。

 私は泣き顔しか見たことがなかったのに。

 

 監視人はその店のやりて(ばば)に話をつけに行った。

 銀貨一枚で売った子は、買い戻すのに金貨十五枚が必要だった。

 そして私の娘はその店から離れたくないと言って泣いていた。


 私と離れる時は泣きもしなかったのに。

 当然だ乳飲み子だったのだから。

 それなのになんだか悔しくて仕方なかった。


 泣く娘を監視人は無理やり抱き上げて馬車に乗せる。

 私も馬車に乗せてもらえると思っていたら「もうお前は必要ない」と言ってやりて婆に私をたった銀貨一枚で売り渡していた。


 私はその日からやりて婆に躾けられ客を取らされることになった。

 私は美人だから店に並ぶとすぐに買ってもらえたが、二度目三度目と買ってくれる人はいなかった。


 前に買ってくれた人に「なんで私を買ってくれないの?」と聞いたら「遊女として何のテクニックも持っていないし、高飛車で買った男を気分良くさせることも出来ない女に金を払う馬鹿はいないよ」と言われた。


 それを聞いたやりて婆が金も払わない男に私を預けて朝から晩まで男を喜ばす方法を教え込まれた。

 けれど男を気分よくさせる方法は体術だけでなく、人それぞれで私は対応できなかった。


 私は店を移され格がどんどん下がっていき、最後には私は銅貨二枚で男に体を売るようなところまで落ちた。

 病気を移されて苦しんで人生の幕を下ろした。

 

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