夫に無断で娘を売られた女の末路
サブタイトル『魔が差して我が子の値段を聞いてしまった。』
の母親の末路の話です。
この話だけ読んでも大丈夫です。
3/23 19:00 少し手を入れました。
箇条書きのようなものが少しでもましになっていればいいのですが。
女衒は毎日移動してどこかの村を訪れている。
十の村を回ったら一人日二人は子供を仕入れることができてしまう。
それだけ貧しいものが多い国だ。
稀に罪を犯した成人女性を買ってくれと言われることがある。
村には憲兵等いないので犯罪者は村長が預かって、人買いや女衒に売りとばして被害者に支払われたり、村長が懐にしまい込む。
その女は大事に育てていた娘を夫が勝手に売ってしまい、夫を刺殺してしまった女だった。
農家の女丸出しの野暮ったい女だったが、顔はそこそこの見た目だった。
やりて婆が垢抜けた女に育てるだろう。だったらそれなりになるだろう。
いつもの銀貨一枚の値段をつけて買い取ることにした。
村長に銀貨一枚を渡してこの女を買いとる。
逃げられては困るので後ろ手でしばり、それを首に輪にして掛ける。腕を振ると首が締まる。
手癖足癖の悪い女には足も縛るのだがこの女は必要だろうかと少し悩んだ。
女は怒りに燃えた目をしていてその目がなぜか女衒の心を高揚させる。
女衒は買った商品には手を出さないと決めているが、既に子を生んだことのある女なら手を出してもいいかも知れないと心が揺れた。
けれど一度商品に手を付けたら次からも手を出してしまうかも知れないからと己を戒めた。
長い旅の暇つぶしに話しかけると初めは返事もしなかった女が、一言二言と返事するようになってきた。
なぜ夫を殺したのか聞いた。
「可愛い娘をたった銀貨一枚で売られたのよ。娘が味わうであろう地獄を想像すると許せなかったの」
「馬鹿だな。なら殺さずに人買いに売ればよかったんだよ」
「そんなっ!そうすれば良かった!!殺してあっさり終わらせるんじゃなかった!!」
女はその日一日泣き続けた。
「娘をどの女衒に売ったんだ?」
「顔を覚えているが名前は知らない」
眠っている時に時折娘の名を呼んでは涙を流している女を哀れに思った。
「自分が選んだ男が悪かったんだ。見る眼を養うことだな。だがまぁ、お前さんは死ぬまで娼館から抜けられることはないだろうがな」
それからいくつかの村を回って、四人の子供を手に入れて、女衒は子供と女を並べて娼館の買い手に見せて回った。
子供達は早々に売れ女一人が残ったので、やはりこの女は俺が飼おうかと考えていると、ある娼館のやりて婆に銀貨八枚で買われていった。
女衒は好みの女だったのに残念だ。
買われてからもやっぱり味見位はしておくべきだっただろうか?
そう思い悩んだ。
しかし不幸な女だったな。
いや、女衒が買った女、少女に赤子。
皆それぞれ幸せにはなれないのだと、女衒という仕事が嫌になった。
でもまぁ、辞めたりしないがな。




