プロローグ
「任務完遂。次の指令を待つ」
通信機に向かってそれだけ言い、レイは夜路を我が家に向かって歩く。
トンネルに入った頃、後ろから足音が聞こえてきた。明らかにつけられたな。そうは思ったが、レイは歩調を変える事をしない。
「待ちなさい」
女性の声。それ以上の形容をすることを彼はしない。
こう言われて、立ち止まる人間がこの世界に何人いるのだろうか。しかし、レイは立ち止まり、振り返る。やはり彼女は銃を構えていた。
「両手を上げて」
そんなに親切な人間はそういないだろう。だがやはり、レイは両手を上げて、彼女に言われた通りにする。
「仮面をとりなさい」
これには流石に従えない。
「仮面の信者に、それを言うのは侮辱行為ですよ?」
レイは独り言のように言った。透き通る声がトンネル内に反響する。
「良いわ。そこを動かないで」
彼女はそう言って、こちらに近づいてくる。彼女は、手を伸ばすと俺の腕に触れる。
「もう一つだけ。こんなに近づいたら、殺されても文句は言えない」
レイは彼女の腕を捻り上げ、手刀で眠らせる。
「おやすみ。そしてさようなら」
レイは羽織っていた黒マントを女性に被せ、その場をあとにした。