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第15話 主人公は過ちを犯す 中編

「その代わり今度はお前が下僕で俺がご主人様でいいよな?」


「え?」

 詩織の目が点になった。

 そうだよ、俺はその顔が見たかったんだよ。


「驚くような事か? 前に俺たちが付き合ってた頃、お前にお願いされた事は何だって聞いてやっただろ。だから今度は俺の頼みを聞いてくれって言ってるだけじゃないか」


「ち、違う……確かに優斗は私が頼んだら何だってしてくれた、でもわたしは優斗を下僕だなんて思った事は1度もないわ!」


「あっそう。この条件が嫌なら帰れば?」

 俺はそう言って詩織にわざと嫌らしい笑みを見せてやる。

 詩織は悔しそうに唇を噛んだ。


 決まったな、ざまぁ見ろ。


「分かった……わたし優斗の下僕になる」


「は? おっ、おまえ何言ってんだ?」


「わたし、何だってするって言ったでしょ! 私は今から優斗の下僕よ、もう取り消しは出来ないからね!」


「いや、ちょっと待てよ!」

「待たない! 私も今から優斗の恋人、わかったわね!」


 ふざけんなこのアマ、清秀院さんに詩織も恋人にしたなんて言える訳ないだろ!


「お、お、お、おい落ち着け。いいか俺と清秀院さんはあと1ヶ月、いや3週間したら正式な恋人になるんだぞ。つまりお前はその時捨てられるんだぞ」


「大丈夫、優斗は絶対に清秀院さんよりわたしを選ぶから」

 詩織はそう言って微笑んだ。


 お前頭沸いてんのかよー!

 どっからその自信が来るんだ!


 くそっ、くそっ、くそっ、どうすればいい。どうすれば無かった事に出来る?

 ……そうだ!


「分かった。じゃあ詩織が本当に下僕として俺の命令を聞くか今からテストしてやる。もし命令を拒否した場合は恋人の話しは無しだからな」


「いいわ。でもお金とか物理的に不可能なのはダメだからね」


「当たり前だろ。すぐに済む簡単なテストだから心配すんな」


 ニヤリ。

 もちろん物理的に可能ってだけで実際には無理だけどな。


 俺は自分のベッドに行き腰を掛けると、詩織に微笑んだ。


 それを見て詩織は頬を赤らめて小声でつぶやく。

(……まさか、優斗が私にさせたい事ってせ、せ……)


 馬鹿め、なに勘違いしてんだアバズレ。お前を抱いたら清秀院さんにマジで殺されるだろ。


 俺は靴下を脱ぎ左足を軽く上げる。


「舐めろ」


「……? ええっ!?」


 俺の言葉を、少し遅れて理解した詩織の赤みがかった顔が一気に青ざめた。


 よしいける!



「優斗。ほ、本気なの……?」


「当たり前だ。どこの世界に浮気した女を喜んで許す男がいるんだよ、まあどっかの芸能人は許したみたいだけど俺は違う。だからこれからもずっとこう言う命令をするぞ」


「……優斗」


 頼むから諦めてくれ、でないと俺が清秀院さんに殺される。

 そうだここはムチだけじゃなく飴も与えて宥めてやんわり断ろう。


「詩織はまともな人間だからこんな事出来ないだろ? でも俺は変態さんだからこう言う事がしたいんだ。だから詩織にはまともな男と付き合って欲しい」


「……分かったわ」


「そうか、分かってくれ……た…………え?」

 おい、なんで笑いながら近づいて来るんだよ。


 詩織は俺の前まで来ると両膝を床についた。

 ま、まさか本当に舐める気じゃないだろうな?


「うん、分かったわ、優斗がわざと私に無理難題を言って諦めさせようとしてるって。でもこれは優斗から私への罰、だからちゃんと受け入れる」


「は? お、おい、バカ止めろ!」

 詩織は俺の足を持つと自分の顔を近づけ。

 ペロ


 こ、こいつマジで俺の足裏を嘗めやがった!


 ペロペロ チュパ

 詩織の舌は足裏から親指と人差し指の間へと移り、最後に親指を咥え込んだ。


 あっ、これ意外と気持ちいいかも。

 ってそうじゃないだろ!

「もういい止めろ!」


「……ねえ優斗どうだった?」

 詩織が顔を赤らめ娼婦の如き怪しげな色香を漂わせて俺の顔を見てる。


「ど、ど、どうだったって………お、お前変態かよ!!」


 詩織は顔を真っ赤にして立ち上がった。

「酷い!! その変態行為を優斗が私に強要したんだからちゃんと責任取ってよね!」


「え? せ、責任?」

 タラリとイヤな汗が背筋を伝う。


「そうだなぁ、何がいいかな? ……そうだ、優斗が拒否出来ないお願いを3つ出来る権利を私にくれるとかどうかな?」


「そんなの無理に決まってんだろ! お前、清秀院さんと別れろとか私と本当の恋人になれとか言うつもりだろ!」


「えへへ、よく分かってるね。じゃあ、交渉可能なお願いをする権利100個ならどう?」


「多すぎだろ、絶対にイヤだ」

 ヤバい、いつもの詩織の甘えモードに入ってる。

 この流れは非常にマズイ。


「優斗変わったね、喋り方もそうだし何より私への愛が感じられないよ〜」

 そう言いながら詩織は俺の横に腰掛けて来た。


「当たり前だ、男子3日会わざれば刮目してみよだ」


「ふーん。でもそんな優斗も好きだよ。前より遠慮なく言ってくるから、距離が近くなった気がする」

 そう言って詩織は俺にしなだれかかった。


 いや、物理的に近くなってるから! 前はこんな事しなかっただろ!


「う、うるさい。男は好きな女の子は大切に扱うもんなんだ。でも好きな女の子じゃなければ雑に扱える、それが男だ。つまり遠慮がなくなったのはお前がどうでもよくなった証拠だ。あと勝手に俺のベッドに座るな」


「へ~、いいのかなそんな事を私に言っちゃって。今から優斗にさせられた事、詩織オバさんとうちのママに言い付けるわよ」


「な、何言ってんだ、お前そんな事言ったらお前だって困るだろ……」


「それはどうかな。うちのママ、優斗を息子にしたいって言ってるから、むしろ喜んで優斗に責任を取らせようと結婚をせまるんじゃないかな。もちろん香織おばさんも巻き込んでね」


 う、嘘だろ。

「お、俺にどうしろと……」


「そうね、わたし優しいから交渉可能なお願い20個で手を打ってあげるわよ」

「……20個は多い、10個で頼む」

「半分は酷い、12個ならいいよ」


 よし思ったより下がったぞ、最初に無理だと思う数を提示するのは交渉の基本だからな。

「分かった12個だな」


「交渉成立ね。じゃあさっそく1個使うわね。優斗わたしとキスして」


「は?」

 俺は詩織の目をじっと見る、だがそれを見返す詩織の目は――マジだった。

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